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Falling 2
曖昧にしておいた方がいいこともある
しおりを挟む「ぬわあー!!もうやってられんわ!!もう嫌じゃ!!わし、今日はもう帰るぞ!!」
壁から引きずり出される時は大人しかったルガルだが、出てきた瞬間駄々っ子のように暴れ出した。
帰るってどこにだ、ここお前らの家だろ。
「ルガルさん、あんな不機嫌そうに……。もしかして私の説明、言葉足らずでした?」
「いや、足りてなかったのは言葉よりモラルじゃないか……」
首を傾げるルルフェルに一言投げていたら、ルガルはヘルウルフの群れを率いて、足早に去ろうとしていた。
「待てよ、最後に一つ聞いておきたいことがあるんだけど」
俺は背を向けたルガルを呼び止めた。
「何じゃ!?今日はもう誰とも話したくないんじゃが!」
明らかに嫌そうな顔をされたが、どうしても聞きたいことがあった。
そこまで重要なことではないが、ずっと気になって仕方がなかったのだ。
今聞いておかないと今日はぐっすり眠れなさそうなので、ここではっきりさせておこう。
「お前、狼じゃないだろ?」
俺の鋭利な指摘を受けたルガルは、口を開けたままポカンと固まった。
そして……。
「な、何じゃあ!?変な言いがかりをつけるでないわッ!!わしはどこからどう見ても猛々しい狼……って、なぜか同胞達が目を合わせてくれないんじゃが!?」
必死に反論するルガルだったが、周囲の狼達も何か申し訳なさそうな顔をしている。
多分、彼らもどことなく変だと感じていたのだろう。
「じゃあ、何で毛並みが曇り空のプリンみたいになってんだよ?」
こいつの毛並みは基本ヘルウルフ達と同じ灰色だが、端の方に行くに従って黄色っぽくなっている。
綺麗なグラデーションしやがって……。
「知らんわ!!素敵な表現をするな!バーカバーカ!」
ルガルは勢いで何とか押し切ろうとする。
「それに目つきも違いますわ、この狼さん達と比べて何か鋭さが見られませんわ」
「な、そ、それは……。わしが女の子、じゃから?」
メルメルも援護射撃を始めた。
「あ、尻尾もみんなと比べてモフモフですよ!」
ルルフェルも続く。
いい着眼点だ、さすが大天使。
「シャー!!間違い探しを始めるな、バカ者共が!!じゃあ、わしを一体何だと言いたいんじゃ!?」
ご立腹のルガルは、両手を上げて威嚇モードで問いかけてくる。
俺達は顔を見合わせただけで、互いに考えていることを読み取れた。
今までで一番心が通じ合っている気がする、俺は代表して答えた。
「キツネじゃないか?」
俺達はしっかり以心伝心できていたようだ、堕天使一同も頷いている。
「かー!そう言うと思ったわ!これだから素人は!困ったもんじゃのぉ、何かにつけて言いがかりばかりつけてのぉ!のぉ!のぉ!」
腕を組んで余裕ぶってはいるが、動揺しているのがまる分かりなくらい饒舌になっている。
耳もパタパタ、尻尾もピコピコと全身が今の心情を表している。
「ていうか火出す時、狐火って言ってたろ。攻撃の度に気になってたんだよ」
「ごちゃごちゃうっさいわ!!技名がたまたまそうなだけで、わしゃ狼じゃあ!!このクソババア!!」
「な、何だその悪口のチョイス!?俺はまだ伸び代たっぷりの男だ、真逆の存在だろうが!にしても、口悪りぃなぁおい!」
言われてこれほど戸惑う悪口は初めてだ。
まさか、生きている内に「クソババア」と罵られる日が来るとは、想像だにしなかった。
苦しい弁論を続けた後、最後にルガルは自信満々に自分の灰色の毛を見せつけてきた。
「その証拠に毛並みだって、灰色の部分の方が圧倒的に多いじゃろが!?」
まあ、それを言われたらそうなんだが……。
そもそも、灰色じゃない部分がある時点でどうかとは思うが。
しかし、俺が言い出したことではあるが、何だか可哀想になってきた。
6対4くらいで狼って結論にしておこうかな、どっちにしろ明確な根拠もないし。
俺はこの誰も得しない論争に終わりを告げようとしたが、今まで黙っていたユールが一言、とどめを刺す方が一足早かった。
「ていうか、灰色のキツネもいるわよ?」
穏やかな口調だったが、ルガルには今の発言が一番効いたらしい。
恐らく、毛の色を一番のヘルウルフ要素だと思っていたのだろう。
まるで、ヘルヘイム送りが決まった時の俺みたいな顔で絶句している。
多分だけどこいつ、自分でも自分が何なのかよく分かってないんじゃ……。
「こ、こ、こ、これで勝ったと思うなよ!?バーカバーカ!!」
涙目になってしまったルガルは、清々しいほどの捨て台詞を吐いて、自分の巣穴から逃げるようにどこかへ消えてしまった。
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