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Falling 2
どんぐり
しおりを挟む俺の「堕天使露出事件」が発生してから数日。
俺は未だにふと思い出し、恥辱に震える夜もある。
一方のルルフェルは、翌日から何事もなかったかのようにしている。何か一人で意識しているようで非常に悔しい、いつか俺の方が優位に立ってやりたい。
それともう一つ変わったことがある。
ルプスルガルとその仲間達がよく訪ねてくるようになった。
最初は無理矢理連れてきて、火を使った調理や暖房のあれこれを手伝わせていたが、焼いた魚やここに生える果物の味を覚えたやつらは、呼ばなくても自主的に来るようになった。
よく茂みに隠れてチラチラこちらを見ているので、「こっち来いよ」と声掛けてやると、「仕方ないのぉ」と尻尾を振りながら駆けてくる。
まあ、win-winの関係ってやつなのか……。
そんな比較的平和な日常を過ごしている今日この頃。
俺は今ルルフェルと並んで釣りをしている、いつだったか天使を釣り上げた時のように。昼時にはどうせルガル達もやってくるだろう、多く釣っておきたい。
メルメルは土いじりが好きなので、果樹園の方で作業中だ。
最近、「ミミズさんがいっぱいいますわ」とはしゃいでいた。
いい土壌にはミミズがいると言っていたが、あれはミミズなのだろうか。見た目はそれっぽいけど、こんな所に生息してるはずないと思うが……。
あと、ユールは……。
何してんだ、あいつ?働けよ、この野郎。
向こうでぼけーと海を眺めているユールを俺が睨んでいると、ご機嫌な様子のルルフェルが話しかけてきた。
「フフフ、今日は大漁ですね!」
釣りにも慣れたルルフェルは、すっかり魚の似合う堕天使になったいた。
「ああ、このミミズっぽいのを餌にしてから入れ食いだな」
例のミミズっぽいのは、釣り餌としても優秀だった。
メルメルが両手いっぱいにこれを持ってきた時は、反射的に破滅ノ光を放ちそうになった。
「何だかこうしてると、私達がどうしてここにいるのか……。忘れてしまいそうですね」
そう言って遠慮気味に微笑むルルフェルに、俺は抑揚のない声で答える。
「忘れてもいいんじゃないか、こんな時くらいさ」
こいつが背負ってるものは、俺が思う以上に重いものだった。
あの時は予想外のトラブルで有耶無耶になったが、こいつのためなら少しくらい頑張ってもいいかなと……。
そう思った、ほんの少しだけな。
絶対言わないけどな。
「カイネさん」
「何だよ?」
一拍おいてルルフェルはぴょいと、一人分距離を詰めてきた。
「えへへ、やっぱりカイネさんは優しいです!」
突然、至近距離で顔を覗き込まれた俺は、動揺して釣り竿を落としてしまった。
「よ、寄ってくるなよ、急に!お前魚ベタベタ触ってたろ!生臭いんだよ!」
「生臭…!?ひっどい!前言撤回です!ひどいです!聖水出してくださいよ!におい消しますからぁ!」
ぶんぶんと手を振り回すルルフェル。
漁港の香りがするその小さな手に、俺は乱暴に聖水をかけてやる。
そんな平和な時間が過ぎていたが、ふと海の方を見ると、何やら見慣れないものが浮かんでいる。
「ん、何だあれ?」
見たことあるような形状だが、俺の知っている限りでは、有り得ないサイズのものが、波に揺られこちらへ向かってきていた。
どんぶらこ、どんぶらこと。
そう、多分あれは……。
「海からでっかいどんぐりが流れてきたッ!!」
「カイネさん!?」
童話のワンシーンのような状況に、思わず説明口調で叫んでしまった。
ルルフェルもびっくりしている。
だが、流木すら漂着を躊躇うこのディストピアに、こんなサイズのどんぐりが漂流してきたのだ。
きっと、また面倒なことになりそうだなと、俺はそっと釣り竿を置いた。
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