31 / 74
Falling 2
どんぐりを投げつけるな
しおりを挟む
「カイネさん、急に訳の分からないこと言わないでください。頭おかしいと思われますよ?」
ルルフェルは腹の立つ顔で、突然叫んだ俺をたしなめた。
「でも、あれ見ろよ」
俺は海の向こうにある問題のものを指さす。
ルルフェルは手で双眼鏡を作って、その方向を曇りなき堕天使アイで見通す。
そして……。
「海から大っきいどんぐりが流れてきます!!」
俺の言ったことと、見事なまでに同じ反応だった。
「何ですかねあれ、何ですかねあれ?すっごい気になりますね!」
「十中八九でかいどんぐりだろ」
流れる異物を捉えたルルフェルは、興味津々の様子だった。
「んー、我慢できません!私、ちょっと取ってきます!」
そう言うとルルフェルは、ぷかぷか浮かぶどんぐりの方へ飛んで行った。
何なんだ、その好奇心と行動力は。
「おい!やめとけよ、あんなの絶対普通じゃねえよ!」
「大丈夫です!私の経験上、どんぐりに悪いものはないですから!」
「俺の経験上もないけど、経験で測ったらダメなやつだろ!」
俺の制止を振り切り、何の根拠にもならないデータを抱えて、堕天使は羽ばたいて行ってしまった。
でっかいどんぐりを拾いに。
「……ねえ、何騒いでるのよ?」
すると、今までその辺をふらふらしていたユールが、騒ぎを聞きつけてこちらへやって来た。
手は砂で汚れていて、遠くには小さな砂のオブジェが見える。
明らかに遊んでただろ、この野郎。
堕天使は砂遊び好きなのか?
「お前、今まで何して……。いや、ルルフェルが海にでっかいどんぐり拾いに行ったんだよ」
自分で説明しておいて、かなりバカなことを口走っていると思ったが、全て事実なのだ。
「どんぐり……?」
ユールが訝しげに首を傾げたところで、両手いっぱいにどんぐりを抱えたルルフェルが戻って来た。
「カイネさーん!!お、重いです、もう限界!……はい、パース!」
「は?」
言うや否や、ルルフェルはオーバーヘッドパスでどんぐりを投げてきた。
「うおおい!!」
そのどんぐりはスイカ5つ分くらいのサイズだった、かなりの質量がある。
こんなもの投げつけられたのは生まれて初めてだ、相変わらず無茶苦茶やってくる。
「ちょっと待って、カイネ!それ受け止めて!多分それ、大事なものだから!」
逃げようとした俺に、突然ユールがそう叫んだ。
そして、俺の背後につき、逃げられないようにがっちりホールドしてきた。
「おいコラ!!何してんだ、お前!?」
「ユールも後ろで支えててあげるから!しっかり受け止めなさい!」
こいつも滅茶苦茶しやがる。
何とか抵抗しようとするが、華奢な体の割にユールも意外と力強い、本当何なんだお前ら。
そうこうしている間に、俺の目にはもう鈍器にしか見えないどんぐりが、目の前まで迫っている。
そして……。
── どぼぉ!!
「うっ……!!」
鈍い音を響かせ、俺はしっかりとキャッチした。
そして、鋭い痛みと共にそのまま膝から浜辺に崩れ落ちる。
何やらされてんだ俺は。
でっかいどんぐりなんかのために……。
「ユール……。俺のことは、星がよく見える丘に埋めてくれ……」
「落ち着きなさいよ!開放骨折までなら聖水で治るわ!」
消え入りそうな薄ら笑いで別れの言葉を告げる俺に、ユールはいつものように聖水万能説を提唱する。
ああ、日光浴びた砂熱っつ……。
「カイネさん!!ご、ごめんなさい!!大丈夫ですか!?まさか人の体がこんな脆いなんて……」
顔色を変えたルルフェルが慌てて飛んできた。
今に分かったことじゃないが、天使の感覚は人間離れしてる。
こいつらの滅茶苦茶は悪意がない分、より質が悪い。
しかも、あんな威力のある投げ方しやがって……。
心配そうな顔で覗き込むルルフェルに、俺は優しい声で語りかける。
「いいんだ、ルルフェル。俺は大丈夫、全然怒ってない。だから、一回限界までお前のほっぺ引っ張ってもいいか?」
「嫌です。そろそろ戻らなくなりそうなので、やです」
ルルフェルは即答した。
こいつらに人間の限界ラインをいちいち実践して教えていたら、こっちの方が持たない。
痛みが徐々に引いていく中で、そんなことを考えていると……。
「あ……」
俺が全身で受け止めたあのどんぐり。
その笠が、突然落ちたのだ。
落ちたと言うよりは、開いたと表現した方が正しかったかもしれない。
俺は焦点の合ってきた目で、その中を見つめた。
そして、そこには見覚えのあるあの輪っかが映ったような気がした。
ルルフェルは腹の立つ顔で、突然叫んだ俺をたしなめた。
「でも、あれ見ろよ」
俺は海の向こうにある問題のものを指さす。
ルルフェルは手で双眼鏡を作って、その方向を曇りなき堕天使アイで見通す。
そして……。
「海から大っきいどんぐりが流れてきます!!」
俺の言ったことと、見事なまでに同じ反応だった。
「何ですかねあれ、何ですかねあれ?すっごい気になりますね!」
「十中八九でかいどんぐりだろ」
流れる異物を捉えたルルフェルは、興味津々の様子だった。
「んー、我慢できません!私、ちょっと取ってきます!」
そう言うとルルフェルは、ぷかぷか浮かぶどんぐりの方へ飛んで行った。
何なんだ、その好奇心と行動力は。
「おい!やめとけよ、あんなの絶対普通じゃねえよ!」
「大丈夫です!私の経験上、どんぐりに悪いものはないですから!」
「俺の経験上もないけど、経験で測ったらダメなやつだろ!」
俺の制止を振り切り、何の根拠にもならないデータを抱えて、堕天使は羽ばたいて行ってしまった。
でっかいどんぐりを拾いに。
「……ねえ、何騒いでるのよ?」
すると、今までその辺をふらふらしていたユールが、騒ぎを聞きつけてこちらへやって来た。
手は砂で汚れていて、遠くには小さな砂のオブジェが見える。
明らかに遊んでただろ、この野郎。
堕天使は砂遊び好きなのか?
「お前、今まで何して……。いや、ルルフェルが海にでっかいどんぐり拾いに行ったんだよ」
自分で説明しておいて、かなりバカなことを口走っていると思ったが、全て事実なのだ。
「どんぐり……?」
ユールが訝しげに首を傾げたところで、両手いっぱいにどんぐりを抱えたルルフェルが戻って来た。
「カイネさーん!!お、重いです、もう限界!……はい、パース!」
「は?」
言うや否や、ルルフェルはオーバーヘッドパスでどんぐりを投げてきた。
「うおおい!!」
そのどんぐりはスイカ5つ分くらいのサイズだった、かなりの質量がある。
こんなもの投げつけられたのは生まれて初めてだ、相変わらず無茶苦茶やってくる。
「ちょっと待って、カイネ!それ受け止めて!多分それ、大事なものだから!」
逃げようとした俺に、突然ユールがそう叫んだ。
そして、俺の背後につき、逃げられないようにがっちりホールドしてきた。
「おいコラ!!何してんだ、お前!?」
「ユールも後ろで支えててあげるから!しっかり受け止めなさい!」
こいつも滅茶苦茶しやがる。
何とか抵抗しようとするが、華奢な体の割にユールも意外と力強い、本当何なんだお前ら。
そうこうしている間に、俺の目にはもう鈍器にしか見えないどんぐりが、目の前まで迫っている。
そして……。
── どぼぉ!!
「うっ……!!」
鈍い音を響かせ、俺はしっかりとキャッチした。
そして、鋭い痛みと共にそのまま膝から浜辺に崩れ落ちる。
何やらされてんだ俺は。
でっかいどんぐりなんかのために……。
「ユール……。俺のことは、星がよく見える丘に埋めてくれ……」
「落ち着きなさいよ!開放骨折までなら聖水で治るわ!」
消え入りそうな薄ら笑いで別れの言葉を告げる俺に、ユールはいつものように聖水万能説を提唱する。
ああ、日光浴びた砂熱っつ……。
「カイネさん!!ご、ごめんなさい!!大丈夫ですか!?まさか人の体がこんな脆いなんて……」
顔色を変えたルルフェルが慌てて飛んできた。
今に分かったことじゃないが、天使の感覚は人間離れしてる。
こいつらの滅茶苦茶は悪意がない分、より質が悪い。
しかも、あんな威力のある投げ方しやがって……。
心配そうな顔で覗き込むルルフェルに、俺は優しい声で語りかける。
「いいんだ、ルルフェル。俺は大丈夫、全然怒ってない。だから、一回限界までお前のほっぺ引っ張ってもいいか?」
「嫌です。そろそろ戻らなくなりそうなので、やです」
ルルフェルは即答した。
こいつらに人間の限界ラインをいちいち実践して教えていたら、こっちの方が持たない。
痛みが徐々に引いていく中で、そんなことを考えていると……。
「あ……」
俺が全身で受け止めたあのどんぐり。
その笠が、突然落ちたのだ。
落ちたと言うよりは、開いたと表現した方が正しかったかもしれない。
俺は焦点の合ってきた目で、その中を見つめた。
そして、そこには見覚えのあるあの輪っかが映ったような気がした。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜
犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。
この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。
これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる