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Falling 3
アリスティア:ギリィ
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ずっとずっと昔の話。
薄暗い部屋の一角で、分厚い培養槽を粉々に割ってボクは生まれた。
ボクの目に一番最初に映ったものは、同じ培養槽から飛び散った青と赤の半液状の何か。
それがじっと、ボクの目を見ていたんだ。
恐怖か、憎悪か、悲哀か、嫉妬か。
何を考えているのか分からない虚ろな目。
あの時のボクは、確かそう……。
この世界でたった1人だって気がして、寂しかったんだと思う。
その物体の事は分からなかったけど、ボクはかろうじて形を成している2人の手を取った。
後から教えられた。
ボクは人間というものを模していて、戦火の絶えないこの国で、代替の効く痛みを感じない兵器として作られたらしい。一緒に培養槽に入っていた2人は、ボクが生まれる過程で出来た副産物らしい。
程なくしてボクには、アリスティア:ギリィという名前が与えられた。
頭の部分が型名で、ギリィが固有名らしい。
2人には名前は与えられなかった、というか無いものとして扱われていた。
だからボク達は3人で名前を分けたんだ。
こっそりボクの中に匿い、3人で生きていくことにしたんだ。
ある日、2人は人間になりたいと言い出した。
あまりにも突拍子のないことで、とても驚いたよ。
ボクにはそんなのどうでもいいし、叶いっこないことも分かっていたけど、何もやる事もなかったし、少しだけ付き合ってあげることにした。
でも、観察してみると人間って意外と面白いんだ。
兵器として作られたのに、いつからかそれがボクの目標になっていた。
試しにボク達は形から真似てみることにした。
ボクは2人に「お兄ちゃん」と呼ばせてみることにした。
同じ親から後に生まれた人間は、先に生まれた者をそう呼ぶらしい。
同じ過程で生まれたんだ、きっとボク達それでいいだろう。
2人は慣れない呼び方に戸惑って、ボク達は3人で笑いあった。
自分達が何なのか、何のために生まれたのかも忘れてしまいそうになるくらいに。
それから数カ月後、その戦争は突然終わった。
天使が降りてきて、あっという間に戦いを治めたらしい。
人間は相変わらず、狂ったように天使を信仰してるし。
結局ボクは、一度も実戦に投入されることはなかったんだけど、どうもボクは存在自体が条約とかに引っかかるみたい。
近い内に処分されるという話だった。
悲しくはなかったけど、少し残念だなって思ってた。
でも誰だったかな、ボク達を作った科学者の誰かだったと思う。
その人間が、ボク達を隠れてこのヘルヘイムに廃棄したんだ。
彼はすまないと謝っていた、そう言えば泣いてもいたような気がする。
人間には色々な言葉を投げかけられた。
失敗作、最高傑作、お前は人間にはなれない、本当の子供のよう、ただの化け物。
最後に聞いたその言葉は、今まで一番理解できなかった。
この島には、ボク達に似た歪な生き物がたくさんいた。
ボクの見た人間は、残酷で身勝手で、気まぐれで優しさを見せたりもする。
人間のように振る舞っていれば、きっと人間に近づけるはず。
そう思って、ボクは一生懸命人間らしく生きていたんだけど、そしたら魔王様の目に留まった。
そして、ボク達は力を与えられ悪魔になった。
人間になりたかったのに悪魔になんかなってさ、何をしているんだろうね?
その後ボクは、魔王様の許可を貰ってここに人間の街を作った。
人間のことをもっと知りたかったから、観察するために手元に置いておきたかったんだ。
ここに連れてこられた人間は、最初は怯えていたけど、すぐに人間らしくなった。
楽しいことは好きだけど、辛いことは嫌がる。
すぐ争うし、すぐ痛がるし。
人間も悪魔もそう大差ない生き物だと思った、決定的に違うのは不死かどうかという事かな。
そう思っていたのに、何だろうこのカイネという人間は?
ボクが知っている人間とは何か違う、なぜ天使の自由のために戦っている?
いや、天使ですら無い。
祈る価値すら無い墜天使達のために。
勝ち目のない敵を相手にして、無意味な戦いを挑んで、ドブ底で光る小石みたいな目でボクを見つめてくる。
それに彼からは、どこか妙な雰囲気を感じる……。
ボクは人間になりたいのに、人間のことが何も分からない。
人間を、今はこの人間のことを理解したい。
この堕天使達が居なくなったら、カイネは悲しむだろうな。
彼を知るためには、きっとこの堕天使達を消してはいけない気がする。
そう、もし期待はずれだったら、邪魔になったらその時処分すればいい、きっとその後でもいい。
だから、それまでは……。
「おい……。おいってば!!」
ぼーっと回想に浸るボクを、カイネが現実に呼び戻した。
「なな、何かな!?」
「急に何ボケッとしてんだよ、俺はお前を信じていいんだよなって聞いたんだよ?」
そんなくだらない質問してたのか…。
それ聞いてどうするの、ボクが本当のことを言うとは限らないのに。
そう思って、半分呆れながら適当に答えた。
「まあ、五分五分かな」
「おし。それじゃあ、一緒にあの野良暴れギツネ止めるぞ」
それだけ聞くとカイネは、両手をパンパンと叩いて勇ましくルプスルガルの方を見据える。
五分五分って言ったのに、何でそんなにやる気満々なんだろう。
何を考えているのか全然理解できないカイネの横顔を見て、ボクは訳も分からず笑ってしまったんだ。
薄暗い部屋の一角で、分厚い培養槽を粉々に割ってボクは生まれた。
ボクの目に一番最初に映ったものは、同じ培養槽から飛び散った青と赤の半液状の何か。
それがじっと、ボクの目を見ていたんだ。
恐怖か、憎悪か、悲哀か、嫉妬か。
何を考えているのか分からない虚ろな目。
あの時のボクは、確かそう……。
この世界でたった1人だって気がして、寂しかったんだと思う。
その物体の事は分からなかったけど、ボクはかろうじて形を成している2人の手を取った。
後から教えられた。
ボクは人間というものを模していて、戦火の絶えないこの国で、代替の効く痛みを感じない兵器として作られたらしい。一緒に培養槽に入っていた2人は、ボクが生まれる過程で出来た副産物らしい。
程なくしてボクには、アリスティア:ギリィという名前が与えられた。
頭の部分が型名で、ギリィが固有名らしい。
2人には名前は与えられなかった、というか無いものとして扱われていた。
だからボク達は3人で名前を分けたんだ。
こっそりボクの中に匿い、3人で生きていくことにしたんだ。
ある日、2人は人間になりたいと言い出した。
あまりにも突拍子のないことで、とても驚いたよ。
ボクにはそんなのどうでもいいし、叶いっこないことも分かっていたけど、何もやる事もなかったし、少しだけ付き合ってあげることにした。
でも、観察してみると人間って意外と面白いんだ。
兵器として作られたのに、いつからかそれがボクの目標になっていた。
試しにボク達は形から真似てみることにした。
ボクは2人に「お兄ちゃん」と呼ばせてみることにした。
同じ親から後に生まれた人間は、先に生まれた者をそう呼ぶらしい。
同じ過程で生まれたんだ、きっとボク達それでいいだろう。
2人は慣れない呼び方に戸惑って、ボク達は3人で笑いあった。
自分達が何なのか、何のために生まれたのかも忘れてしまいそうになるくらいに。
それから数カ月後、その戦争は突然終わった。
天使が降りてきて、あっという間に戦いを治めたらしい。
人間は相変わらず、狂ったように天使を信仰してるし。
結局ボクは、一度も実戦に投入されることはなかったんだけど、どうもボクは存在自体が条約とかに引っかかるみたい。
近い内に処分されるという話だった。
悲しくはなかったけど、少し残念だなって思ってた。
でも誰だったかな、ボク達を作った科学者の誰かだったと思う。
その人間が、ボク達を隠れてこのヘルヘイムに廃棄したんだ。
彼はすまないと謝っていた、そう言えば泣いてもいたような気がする。
人間には色々な言葉を投げかけられた。
失敗作、最高傑作、お前は人間にはなれない、本当の子供のよう、ただの化け物。
最後に聞いたその言葉は、今まで一番理解できなかった。
この島には、ボク達に似た歪な生き物がたくさんいた。
ボクの見た人間は、残酷で身勝手で、気まぐれで優しさを見せたりもする。
人間のように振る舞っていれば、きっと人間に近づけるはず。
そう思って、ボクは一生懸命人間らしく生きていたんだけど、そしたら魔王様の目に留まった。
そして、ボク達は力を与えられ悪魔になった。
人間になりたかったのに悪魔になんかなってさ、何をしているんだろうね?
その後ボクは、魔王様の許可を貰ってここに人間の街を作った。
人間のことをもっと知りたかったから、観察するために手元に置いておきたかったんだ。
ここに連れてこられた人間は、最初は怯えていたけど、すぐに人間らしくなった。
楽しいことは好きだけど、辛いことは嫌がる。
すぐ争うし、すぐ痛がるし。
人間も悪魔もそう大差ない生き物だと思った、決定的に違うのは不死かどうかという事かな。
そう思っていたのに、何だろうこのカイネという人間は?
ボクが知っている人間とは何か違う、なぜ天使の自由のために戦っている?
いや、天使ですら無い。
祈る価値すら無い墜天使達のために。
勝ち目のない敵を相手にして、無意味な戦いを挑んで、ドブ底で光る小石みたいな目でボクを見つめてくる。
それに彼からは、どこか妙な雰囲気を感じる……。
ボクは人間になりたいのに、人間のことが何も分からない。
人間を、今はこの人間のことを理解したい。
この堕天使達が居なくなったら、カイネは悲しむだろうな。
彼を知るためには、きっとこの堕天使達を消してはいけない気がする。
そう、もし期待はずれだったら、邪魔になったらその時処分すればいい、きっとその後でもいい。
だから、それまでは……。
「おい……。おいってば!!」
ぼーっと回想に浸るボクを、カイネが現実に呼び戻した。
「なな、何かな!?」
「急に何ボケッとしてんだよ、俺はお前を信じていいんだよなって聞いたんだよ?」
そんなくだらない質問してたのか…。
それ聞いてどうするの、ボクが本当のことを言うとは限らないのに。
そう思って、半分呆れながら適当に答えた。
「まあ、五分五分かな」
「おし。それじゃあ、一緒にあの野良暴れギツネ止めるぞ」
それだけ聞くとカイネは、両手をパンパンと叩いて勇ましくルプスルガルの方を見据える。
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