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Falling 3
本当に怖かったんですからね!
しおりを挟む「おい、お前らぁ!!俺達、もう戦わねえことにしたから!!お前らももう帰るぞ!!」
何と声をかければいいか分からなかったから、俺はそのままの内容を叫んだ。
とにかく、本気でやりあっているルガルとユールを止めることが先決だ。
案の定、俺の言葉を聞いた2人はぴたっと動きを止めた。
「そういうことだよ、ルガル。ボク達、もう仲良しになっちゃったから☆」
続けてギリィはそう言った、俺の腕に急に抱き着きながら。
「や、やめろよ!バカじゃねえの!?」
こいつは俺の反応を楽しむためにやっている。
分かっていても俺は、こいつを楽しませるリアクションをしてしまう。
「こっちは死ぬほど大変なのに……。何遊んでんのよ、あのバカは」
無い胸をすりつけられてたじろぐ俺を、ユールは呆れた声で罵倒する。
「ギリィ、どういうことじゃ?」
対照的にルガルは、その言葉の真意を静かに問いかける。
その声からは沸々と怒りが感じ取れた。
「だって、カイネはここでたった1人の人間だよ?ボクは、カイネの悲しむような事はしたくないかな」
ねぇ?と俺の顔を見ながらギリィは続ける。
「それに侵入者は排除って風潮だけど、そういう決まりがある訳じゃないし、今までも例外はいくらでもあったし。彼女達に敵対する意思がない以上、そっとしときなよ」
どうやら悪魔の一般論的にも、ギリィの言ったことは正論らしい。
ぐぬぬと、ルガルは渋い表情をする。
あと一押しだとピンときた俺はユールの顔を見た。
そして、お前も何か言えと一生懸命目で合図を送る。
「悪かったわよ!謝るわよ!元はと言えばユールが悪かったのよ!あんたの仲間の、その、命を奪っちゃって……。だから、こんなのもうやめましょう!?」
ユールも本当は戦いたくなかったのだろう。
滅多に謝らないユールの、こんな全力の謝罪は初めて見た。合図した俺もびっくりした。
「うぅ!」
一番謝りそうにないやつに謝られたことで、ルガルも面食らったようだ。
いいぞ、このまま全員で丸め込めるぞと、俺が希望を見出したその時だった。
見覚えのある白い光、それが太い光の柱になって俺の目の前の地面から飛び出してきたのは。
「やめやめやめー!!みんな、ストップ―!!!」
そして、さっきのユールの謝罪よりも、ずっと必死な悲痛な叫びが響いた。
その声の主は、光の柱で空いた穴から羽ばたいて出てきた……。
「ルルフェル!?」
に、抱きかかえられた赤いスライムっ娘だった。
「あたし、もう戦うの嫌だから!だから、みんなももう……!」
何が言いたいのかよく伝わってこないが、妙な緊迫感だけは伝わってきた。
言葉に詰まった彼女は、ルルフェルに抱きかかえられながら何かを囁かれる。
「ルルフェルちゃんはお友達だから、もう戦いたくないです。はい」
「ルルフェルちゃんはお友達だから、もう戦いたくないですぅ!!」
あれ?
何かルルフェルが後ろで操っている……。
向こうで何があったが知らないが、痛覚もない不死のやつと、何をしたらああいう関係性になるんだ?
「何だ、お友達が出来たのかい?よかったじゃないか、アリス」
鈍いのかバカなのか、ギリィは妹の報告に素直に嬉しそうにしている。
「ルル姉ぇ!!ルル姉ぇ!!ルル姉ぇ!!」
「何よ、やっぱり無事なんじゃない」
エルとユールもルルフェルの無事に安堵している。
ルルフェルは地面に降り、解放されたアリスは一目散にギリィの元へ逃げ帰っていく。
「全然平気そうだな、心配して損したわ」
一息ついたルルフェルに、俺はそう声をかけた。
「え……? あ!ふえぇ、怖かったですよぉ!カイネさ~ん!!」
「おい!今「あ!」って言ったろ!?」
思い出したように怖がり出すルルフェルは、俺の指摘を無視して駆け寄り、勢いそのままに抱き着いてきた。
「……柄にもなく連れ去られてんじゃねーよ」
一応俺だって無事だった事に安心していた。
自然と軽口も漏れてしまう。
「えへへ。やっぱりカイネさん、心配してくれてたんですね?えへへ」
「し、してねーよ!えへへって2回も言うな!」
こいつは隙きあらばすぐ調子に乗る。
「あ、間違えた!全然嬉しくなんかないんですからね!」
「へったくそ!下手くそなツンデレ!やっぱお前、もう少しどっか行ってろ!」
どこで覚えてきたのか、小賢しい技法も披露するルルフェル。
どこかで引っ叩いておかないと、ずっとこのにやけた顔のままだろう。
そんな事を考えていたが、心配しなくてもその表情はすぐに変わる事になった。
「ぬああああ!!もう馴れ合いは沢山じゃ!!」
しまった。
あと少しだったルガルの説得も、このポンコツに気を取られて台無しになってしまった。
割りと落ち着いていたルガルも、今は炎を出しまくって物凄いヒートアップしている。
「わしはお前らみたいなのぉ……。自分で自分の居場所を捨てるようなやつが、大っ嫌いなんじゃあ!!」
俺はその姿に思わず息を呑んだ。
そう叫んだルガルの髪色は、さっきまでは灰色が勝っていたのに、今は全て綺麗な金色に輝き出したのだ。
そして何より、ルガルが言い放ったその言葉が、こいつが戦いをやめようとしない一番の理由のように聞こえた。
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