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Falling 4
堕天使のような悪魔のような
しおりを挟む目隠しを外された俺の視界に飛び込んできたのは、黒絵の具をぶちまけたかのような空と、可能なら絶対に関わりたくない見た目の城、魔王城。
残念ながら俺達の目的地はここらしい。
どんどん高度を落とし、その城が近づいていく。
だが、ここにきてまた一つ不可解なことがあった。
さっきまでは寒気がしていたくらいなのに、着地しようと地面に近づくと段々暑くなってきたのだ。
その理由は、地上へ降下していくにつれ明白になってきた。
「なんか燃えてるッスね……」
まさにラピスが言った状態、そのままの光景だった。
空からは地表がモヤモヤしているくらいにしか見えなかったが、近づくとその地獄のような有様がよく分かった。
大地が一面黒い炎で燃えているのだ。
比喩だとかではなく、確実に燃えている。
さっきまで絶唱していた堕天使達も、下に降りていく程に絶句している。
「お前らが変なの歌ったからじゃないのか?」
「そんな訳ないじゃないですか!私達を何だと思ってるんですか!?」
冗談半分、半分本気でルルフェル達にそう言っていると、器用に炎の隙間を縫って着地したルガルが何食わぬ顔で言った。
「この辺はいっつもこんな感じじゃぞ」
ルガルのけろっとした表情から察するに、それは本当らしい。
慣れた様子でギリィも安全な場所に着地する。
「どんな城だよ……。立地悪過ぎんだろ、絶対住みたくねえ」
「ほーら!ぶつくさ言っとらんとぉ、さっさと降りよーやぁ」
魔王城の悪環境に気を取られていると、ティアが俺の胴体から勝手に足を出し、着地体制に入った。
「お前、体の内側から何かするのやめろ!怖いんだよ!てか、さっさと体の主導権返せ!」
◇◇◇◇◇◇
そんなこんなで、全員無事に魔王城前に到着した。
すっかり錆びつき、とても素手では開けられそうにない城門を、ギリィは思い切り蹴飛ばして強引に開城した。
「さ、どうぞ。いつまでも外にいたら暑くないかい?」
ギリィは自宅に友人を招き入れるかのような軽さで城の中へと誘う。
躊躇いはしたが、外は火炎地獄だし、ここでこいつらから離れるのも怖いしで、促されるがまま俺達は城の中へと入っていく。
「……中は結構ちゃんとしていますのね」
ギリィの後を追いながら、メルメルは感心したように言った。
おどろおどろしい外観とは違い、中は小綺麗で品のある雰囲気だった。
魔王城とは言っても、基本は人間の城と大差はない。
どこの誰が描いたかも分からない絵画や彫刻が、至るところに飾られている。
貴族していた時も思ったが、力を持つとどうしてこう、どいつもこいつもよく分からないものを飾りたがるのか。
そんな思い出に耽りながら、暗い城内を歩き続けていると……。
「見て見てカイ姉ぇ!こっちにすごいのあるぅ!!」
エルが何か見つけたようで、俺の袖を一生懸命引っ張る。
どんぐりでも見つけたのかと、軽い気持ちでついて行った俺は、目に映ったそれにビビった。
「うわ、何だこの悪趣味なやつ!?」
エルが示した先には彫刻が……。
少なくとも人間ではない、何かを象った物が乱雑に投げ出されている。
「まったく、ちゃんと片付けときなさいよね。子どもじゃないんだから」
「でもこの躍動感……。この製作者、かなりいい仕事してるッスよぉ」
ユールとラピスがその光景に各々好き勝手に感想を述べていると……。
「そいつら全部悪魔じゃぞ」
悔しそうな顔でルガルは、吐き捨てるようにそう言った。
「え?」
その彫刻は、皆共通して苦しそうな表情をしている。
作り物でここまで表現するのは難しいが、これが全て生きている悪魔の像だと言われれば、この鬼気迫るリアリティも納得だ。
もしかしたら。ここに来るまでに飾られていた物もそうなのかもしれない……。
そう思うと途端にぞっとしてきた。
「下手に動かさない方がいいよ、もし目覚めたらボクでも少し手に余るから」
「手に余るって……。お前らの仲間じゃないのかよ、助けなくていいのか?」
無念の同胞を前にしても、ギリィは相変わらずドライだ。
「ふぇ?仲間に決まっとるやん?」
「そいつらは後回し!人数だけ多くても足手まといだしな!」
アリスとティアが息ぴったりにそう言った。
ギリィ達は何と言うか、同じ悪魔でもルガルとは人間くささが全然違う気がする。
「ほら、彼女がそうだよ」
そんな事をモヤモヤ考えていると、急にギリィがぴたっと足を止めて指を差す。
道中ずっと雑談しながら進んでいたので感じなかったが、だいぶ城の奥部まで進んでいたらしい。
気づけばやたらと広い大広間……。
いや、謁見の間と言った方がいいかもしれない厳かな部屋に着いた。
そして、ギリィの視線の先には、悪魔の像が鎮座している。
「あれ?なんだかこの悪魔……」
その悪魔像を見たルルフェルは、何やら訝しげな顔をした。
ルルフェルがそんな表情をした理由は、俺でもすぐ察する事ができた。
その悪魔は見惚れるほど美しい翼を持っており、ルルフェル達とそっくりの容姿をしていたのだ。
そう、まるでそれは頭に輪のない天使のような……。
「紹介するよ。魔王様のお気に入り、堕天使のアンリスちゃんだよ」
そう言ってギリィは、いつもの全く笑ってなさそうな笑顔で微笑む。
俺の力で堕天させた訳では無い、ガチの堕天使の登場に、後ろの即席堕天使達も目を丸くしていた。
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