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Falling 4
クルエル・レイン
しおりを挟む「……この悪魔、堕天使だって。誰かこの子の事知ってる?」
自分達の同胞らしい悪魔を前に、とりあえずユールは挙手を募る。
「知らなーい!」
「そもそも堕天した天使の話なんて、少なくとも私が生まれてからは聞いた事もないですわ」
エルとメルメルは首を横に振る。
「ずぅーっと昔の天使ッスよね?だって、千年も前の戦いで石になっちゃってるし。アタシらが生まれたのが、確か大体……」
そこまで言ったところで、ルルフェルがラピスにタックルをかます。
「ストップ!ラピスちゃんストーーップ!!歳がバレちゃいます!!」
力づくでカミングアウトを止めに入ったルルフェル。
正直、今更そんな事とは思うが。
既にこいつらは「人間の物差しで測っちゃいけないやつら」と認識しているから、何年生まれとかはもうどうでもいい。
それよりも、今はこっちの堕天使の話だ。
「なあ、こいつは何で堕天したんだ?」
堕天なんか相当な事をしないとされないだろうし、自主的な堕天もできないはず。
他の堕天使達もその理由に興味ありそうな顔をする中、答えたのはギリィではなくルガルだった。
「そんなのわしらが知る訳ないじゃろが。アンリスは、記憶も力も全部失ってたんじゃからのぉ」
腕を組みながらルガルが偉そうに言う。
そんな状態で地上に堕とされるのか……。
こんな手軽に堕天させている自分が申し訳なくなってくる。
「それに天使だってのも、魔王様が昔大天使じゃったから知ってたんじゃし……」
その後、ルガルは確かにそう続けた。
「魔王が大天使だった」と。
ルガルがあまりに自然に言ったので、咀嚼するのに少し時間がかかってしまった。
少し遅れて俺達はその言葉に驚愕した。
「「「魔王が大天使!?」」」
俺達のびっくりした声にびっくりしたルガルは、はっとして慌ててギリィの顔を見る。
「ルガル?言ったよね、一気に色々教えたら面白くないって」
そう言うギリィの表情は柔らかいが、薄っすら張り付いただけの笑みが余計に怖い。
こいつら、この期に及んでまだ俺達に情報出し渋ってんのか……。
「あの、どういうことッスか!?魔王も堕天使だったって事ッスか!?堕天使がこの島を悪魔の島にしたって事ッスか!?」
取り乱したラピスが、悪魔達に質問を一方的に投げ続ける。
「自分ら、ホントなんも知らんのなぁ」
「キャハハハ!下っ端だから何も知らされてないんじゃないの!?」
ギリィの後ろのスライム2人が、調子に乗ってはしゃぎ出す。
「この面白モンスターは……。あんた、ルルフェルぶつけるわよ!?」
煽り耐性のないユールは、咄嗟にアリスの弱点をつきにいく。
あの時俺達の見ていないところで、ルルフェルに何かされた彼女はその言葉に怯える。
ルルフェルに聞いても誤魔化されるばかりだったが、本当何したんだろうな……。
ここで俺は少し違和感を感じた。
脅し文句に使われたルルフェルの反応が薄いのだ。
いつもならユールにじゃれつきながら、「私をぶつけてもいい匂いがするだけですよ!」くらい言いそうなのに。
「ルルフェル?」
どこか上の空な顔で、やけに静かなルルフェルに声をかける。
ルルフェルは2,3回声をかけてようやく振り向いた。
「え!?……あ、すいません!あの、その……晩ごはんの事考えてました!」
明らかに何か誤魔化した感じだった。
本当は何を考えていたのか、それは俺には分からないが、とりあえずほっぺを引っ張っておいた。
そんなわちゃわちゃした空気を無理矢理まとめるように、ギリィが声を張った。
「と・に・か・く!アンリスを助けてあげないと何も進まないよ。それに誰が昔何だったかなんて、別にそんな問題じゃないだろう?」
ギリィの言う事も尤もだ。
ここにいるやつらが昔何だったのか、どういう存在だったのか。
俺は全部知っている訳じゃない。
元々こいつらは、天界から逃げてきた訳ありっ娘だし、ルルフェルみたいな例もあるから、俺から過去を詮索するようなことはしていなかった。
今だけを見てればいいんだと、そう言い聞かせていた。
「という訳で……。さ、カイネ。思う存分ぶっかけてくれ」
どうも上手く言いくるめられた感があるが、やらなきゃ始まらない。
堕天使なら、俺達にも好意的かもしれない。
楽観的に考える事にした俺は、一旦ユールの方を見る。
「ユール、たまにはお前がやってみないか?」
悪魔像の浄化をユールにダメ元でお願いしてみた。
実は花の水やりからラピスの朝風呂と、今日は既に結構聖水を使っていてしんどかった。
「何ぃ?何よ、何よ急にぃ?ユールの聖水捌きを見たいの?空飛ぶ浄水場と呼ばれた浄化っぷりを見たいの?」
「……何で楽しそうなんだよ」
「嫌よ」とばっさり切り捨てられるかと思ったが、予想に反してにノリノリだった。
一度は失ったと思っていた能力が、また使えるようになって、結構楽しんでいる節があるのかもしてない。
「っし、行くわよ?」
そう言うとさっそくユールは、悪魔像から結構距離のある位置に立ち、両手を天に構える。
この時点で何かおかしいとは思ったが、俺は何かスルーしてしまったのだ。
「清廉なる祈りよ 空の灰に六花の白を 枯草の命に浄化の雨を」
「……え?なんて?」
ユールがぶつぶつ詠唱し出し、足元に妙な魔法陣が出た時にはもう遅かった。
── クルエル・レイン
上から聖水の大豪雨が螺旋状に降り出し、やけに広いこの部屋も一気に水浸しになり、あっという間に肩まで浸かる水位に達した。
「ごぼぼぼぼぼ!!お前、何してんだこの野郎!!」
ぐるぐる渦潮のような聖水に飲まれながら、俺は次からは絶対に自分でやると誓った。
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