【堕天】スキルのせいで速攻島流しされたけど、堕天希望の天使達が割と多いので、一緒に楽園を創ることにします

ゴトー

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Falling 4

アンリス

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「そんな詠唱今までやってなかっただろうが!」 

 突然の大惨事に、俺はユールを問い詰める。

「ちっと本気出しちった☆」

 そう言って舌出しウインクを決めたユールは、自分が出した水流に飲まれていく。

「カイネの言う通りじゃあ!どういうつもりじゃ!歌ったと思ったら、今度は水遊びして……子どもかお前は!?」

 ルガルが尻尾で波乗りしながらユールを叱咤する。
 器用な事してんなぁ、こいつも。

「別にこんな強く出すつもりなかったわよ!むしゃくしゃした時、たまにああやって下界に撃ってたけど、通り雨くらいにしかならなかったしぃ!」

 言い訳をしながら過去の罪状を告白するユール。
 もしかして、人間って結構知らない内に天使に絡まれてるのか?

「魔力って感情よりも火力高いから。早く加減できるように慣れないとね」

 洗濯中の衣服のように回されながら、ギリィが普通にアドバイスしてきた。

「私、通り雨の後の虹、好きですよ」

 続けて流されてきたルルフェルが、通過しながら何か言ってった。
 あっという間に遠ざかり、徐々に声がフェードアウトしていく。
 ていうか、こいつら何でこの状況で普通に会話してんだよ。
 エルは楽しそうに、レジャー感覚ではしゃいでるし。
 妙な適応力を発揮し、いつものようにわちゃわちゃし始めていると……。


── ぼごぉぉん!!!


「うお!?次は何だよ!?」

 今度は水底の方から鈍い爆発音が聞こえてきた。
 次から次へと異常事態ばかり起きて、何が何だか分からなくなってきた。

── ぼがぉぉぉん!!!どごぉぉぉん!!!ぼごぉぉぉん!!!

 しかも、その謎の爆発音は間隔を空けて、何回も聞こえてくる。

「ちょ、ちょっとみんなぁ!!壁に穴空いてるッスよ!?」

 音の直後、ラピスが壁の破損を報告する。
 どうやら、その爆発音は壁が破壊された音のようだ。
 穴は数箇所あり、そこから聖水がドバドバと外へ流れ落ちていく。

「そのままやと、あんたら水と一緒に外に放り出されるでぇ?はよ、ウチらに掴まっぇて」

 外に流れ出て行く水のせいで、どんどん体が穴の方へと吸い込まれていく。
 アリスとティアは体を伸ばし、器用に俺達を回収してくれた。

「あはは、排水溝のネットに引っかかるゴミみたいね!」
「誰がゴミだ、ルルフェル投げつけるぞ!」

 ちょっと安全が確保できると、すぐ軽口の投げ合いになる。

「メルっち何かツヤツヤしてるッスね」
「全身で聖水を浴びましたので、図らずも頭の花が潤いましたわ」

 後ろでは何か雑談してるし、驚くほど緊張感がない。
 だが、そんなフリートークタイムも長くは続かなかった。


「あ!久しぶりだね、アンリス」


 ギリィが不意に、俺達じゃない方向に声をかけた。
 俺ははっとして、さっきまで悪魔像があった場所を見る。
 そして、水かさが減るにつれて、段々と見えてきた。
 こちらをじっと見ている堕天使の悪魔の姿が。

「見て見てカイ姉ぇ、これ今朝拾った貝殻」
「……うん、後でな」

 信じられないタイミングで、どうでもいい報告をしてきたエルを横目に、俺はその堕天使兼悪魔と対峙する。
 凛とした顔立ちに、黒く滑らかな長髪。
 そして、何より目を引くのは、その背に生えた黒い翼だ。
 さっきまでは、白一色の像だったから分からなかったが、色とりどりな他の堕天使に比べ、全体的に黒っぽい。

 恐らく、壁をぶち抜いたのは彼女なのだろう。
 目覚めてすぐあの状況なら無理もないが……。

「何スかあの子、黙ってこっち睨んで……。カイネっち、何かびしっと言ってやってくださいッス!」

 沈黙するアンリスを見て、ラピスが俺に無茶振りしてきた。
 慣れは怖い、最近はラピスもノリが軽くなってきた。

「そうよ、舐められないようにあれやりなさいよ、あの一発ギャグ。誰が子ダヌキやねんって、やつ」
「ねえよ!そんな持ちネタ!あんのルガルのやつ、余計な事言いやがったな……」

 そして、俺が恥ずかしい過去を掘り返されていると、アンリスはゆっくりとこちらへ歩き出し始めた。
 目覚めて即水攻めされたんだから、何を言われるかかと身構えていたのだが、彼女の最初の言葉は、全く予想もしていないものだった。


「魔王様……?」


 アンリスは、俺を真っ直ぐ見つめてそう言った。

「は?」

 犯罪者と言われた事はあったが、魔王呼ばわりされたのは初めてだった。
 困惑のあまり俺は、周りのやつの顔を見て助けを求める。

「そうなんですか?カイネさん?」
「何よ、あんたユール達のこと騙してたの?」
「ずいぶん出世したッスね」
「これは一本取られましたわ」
「カイ姉、お腹空いたよぉ……」

 誰も助けてくれるやつはいなかった。

「ああ、良かったご無事で……!このアンリス、安心致しました……!」
「お、おい!違うって!お前ん中の魔王像、どうなってんだよ!?」
 
 勝手にエスカレートしていくアンリスは、俺の手を取って愛おしそうに頬擦りする。

「そうだよ、アンリス。その人間が魔王様に見えるのかい?寝ぼけてるの?」
 
 ここでギリィが、やっと助け舟を出してくれた。

「………………」

 アンリスはぐいっと顔を近づけ、俺の全身を注意深く観察し始める。
 そんな熱心に見つめられたら、なんか照れるだろと、咄嗟に彼女を遠ざけようとしたその瞬間……。


「誰だ貴様っ!!」


 無慈悲な一言と共に、俺は数十メートル程思いきり蹴飛ばされた。
 理不尽な一撃を受け、宙を舞っている時にふと思った。
 やっぱ翼欲しいなと……。
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