ドラゴンレディーの目覚め

莉絵流

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自分が好きなことが分からない!?

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ランチタイムではあるけれど、ちょっと高めのお店ってことも
あって、それほど混雑することもないみたいで、注文した料理も
思ってたより早く出てきた。

それぞれ違うものを注文したのに、みんな、ほぼ同時に料理が出て
きたのにも驚いたけど、注文した人のところに、ちゃんと料理が
運ばれてきたのには、マジでビックリ!

やっぱり、このお店、庶民が気安く立ち寄れるようなお店じゃ
ないんだなって、改めて実感した。昼もそこそこ高級感あるけど、
夜はきっと、そこそこどころじゃなくて、めっちゃ高級店
なんだろうな(汗)

私のところにも間違われることなく、鯛茶漬けが運ばれてきた。
大好きなんだけど、お昼に食べるには、ちょっと高価だし、夜だと
ちょっと物足りない感じがして、食べる機会があまりないんだよね(汗)

そうだ!今度、アトランティーナにお願いしてみようかな。
アトランティーナだったら、チャッチャって作れそうじゃない?(笑)
それに、お家で鯛茶漬けが食べられるなんて、めっちゃ贅沢な感じが
して、良いよね。

私だけじゃなくて、運ばれてきた料理を目の前に、それぞれが感動してた。
そうだよね。だって、忙しい時なんて、コンビニでおにぎりとか買って
来て、食べながら仕事したりってこともあるしね(苦笑)そんなことを
考えてたら、谷潤也がみんなの気持ちを代表するような発言をした。

「藤崎さん、さっきレオンが、連絡もなしに来たって文句言ってました
けど、僕は、突然来て下さって感謝してます!」

「えっ、なんでですか?」

「だって、突然来てくださったから、こうして、みんなでランチって
ことにもなったと思うし、部長も一緒にってことになったと思うんですよ!
もし、事前に、こちらにいらっしゃることが分かってたら、たぶん、
こうはならなかったと思うんですよね」

「えっ、こうとは?」

「こうして、みんなで一緒に外に出てランチするってことですよ!
たぶんですけど、事前にいらっしゃることが分かってたら、お弁当を
用意してたと思うんです。お昼に大人数でってことになると予約とかも
しなきゃだし・・・。

でも、それだとこのお店には来られませんでしたからね(汗)
確か、このお店、昼の予約は受け付けてないんですよ。でも、僕、
このお店、来てみたかったんですよね(笑)だから、ホント、藤崎さん、
ありがとうございます!」

「あははは。こちらこそ、ありがとうございます。こんなことで
感謝されるなんて、思ってもみませんでしたよ(笑)」

「何を言い出すかと思ったら・・・(苦笑)それを言うんなら、部長にも
感謝しなさいよ!部長のお陰で、このお店に来ることが出来たんだからね」

「あっ、そうでした!部長、ありがとうございます!」

「いえいえ、皆さん、いつも頑張っていますからね。谷さん、このお店に
来てみたかったんですよね?いかがですか、お味は?」

「めちゃめちゃ美味しいです!もう、感動レベルですよ。こんなに
美味しいお昼、入社して初めてかもしれないです!」

「ずいぶんと大袈裟だなぁ(笑)でも、喜んでもらえてよかったです。
それにしても久遠さん、本当に良いチームですね。皆さん、素直で。
私は、素直が一番だと思うんですよ。本人にとって、これほどの強みは
ないと思っているんです。

素直な人は、嘘が少ないと思うんです。すぐ、顔に出てしまいます
からね(笑)でも、だからこそ、信頼されやすいとも思うんです。

それに、楽しいことを楽しいと言える。これは、本当に素晴らしいこと
なんですよ。残念なことに現代では、自分が何をしたら楽しいのかさえも
分からなくなってしまった人が多いですからね。

だから、何事も楽しみながら行えば良いと言っても、その楽しむということが
分からないということもあるんですよ」

「えっ、それって、自分が何したら楽しいのかが分からないってことですか?」

「そうなんですよ、中川さん。中川さんは、何をしている時が楽しいですか?」

「それは、美味しいものを食べてる時です(笑)だから、今、めっちゃ楽しい
です!あと、美味しいお店を探してる時も楽しいですね。あと、ぶらっと
入ったお店が、思いがけなく私好みの味だったりした時は、感動レベルで、
めっちゃ嬉しいです!」

「中川さんは食べることが好きなんですね」

「部長、食べることが好きなんじゃなくて、美味しいものを食べるのが
好きなんです。でも、あくまで私好みの味っていうことなので、他の人が
食べたら、そんなに美味しいと思わないものもあるかもしれないです
けどね(笑)」

「それが良いんですよ!自分がどう思うのか、自分がどう感じるのか、
それを大切にすることが大事なんです。自分は良いと思うけど、他の人は
どう思うんだろうって考えて、周りに合わせてしまう人が多いでしょ?

でも、そんなことをしていたら、そのうち、自分は何が好きで、何が楽しくて、
何に喜びを感じるのかということが、分からなくなってしまうんですよ。
その人にしか分からないことなのにね(苦笑)」

「本当にそうですよね。そんなに周りから良く思われたいのかなって。
周りから良く思われたら、何か良いことがあるのかなって考えちゃいます(笑)」

「そうですよね。じゃ、久遠さんにも聞いてみようかな。久遠さんは、
何をしている時が楽しいですか?」

「私ですか!?私は、今、一緒に住んでいる人がいるんですけど。
あっ、女性ですよ!(笑)彼女と色々なことを話してる時が、今は一番
楽しいですね。話すっていうより、教えてもらってるって言った方が
良いんですけどね(笑)

話をしていると、どんどん広がって行って、どこまでも行けそうな感じに
なるんですよ。それに、たぶん、知らないことなんてないんだろうなって
いうくらい、色々なことを知ってる人だから、いっぱい勉強になるし、
話しながら、自分の新たな一面を発見したりなんてこともあるから、
刺激的だし、楽しいですね」

「それは、素晴らしい人と一緒にいるんですね」

「ええ、お陰さまで。ホント、感謝してもし切れないほどなんですよね」

「そうですか。そういう人が近くにいると良いですね」

「はい!ホント、そう思います。身近に目標に出来る人がいるっていうか、
見本になる人がいるっていうのは、恵まれていると思います」

「本当にそうですね。『こういう人になりたいな』『こんな考え方が
出来たらステキだな』って思える人が近くにいると、自然と自分も
そうなっていくので、そういう存在を見つけると良いですね」

「私も近くに見本っていうか、目標の人がいます」

「中川さんもですか?」

「はい!私の目標はチーフです!チーフなのに、全然偉そうじゃないし、
私たちと同じ目線でいてくれるし。だけど、チーフとしての責任感も
あって、勇敢で、行動力もあって。こういうことを言うと真実味に
欠けちゃうような気がして、言いづらかったんですけど、私が何年か経って、
チーフになれた時には、久遠チーフみたいなチーフになりたいって
思ってます!」

「ありがとう、理沙ちゃん。なんか、嬉しいし、泣きそうだよ(笑)
私は、自分では、まだまだだなっていつも思ってるのね。だから尚更、
嬉しい。もっともっと良いチーフになれるよう、努めていきます!」

「え~っ、どんどんハードルが上がっちゃうから、これ以上は勘弁して
くださいよ(笑)」

「僕も性別の違いはありますけど、久遠チーフが目標なんです。メンバーの一人
ひとりと向き合ってくれて、頼り甲斐があって、優しくて。でも、仕事に
対しては厳しくて、妥協がなくて、めっちゃカッコイイって思ってます」

「久遠さんは、メンバーから憧れられるチーフなんですね。素晴らしい!
チーフだからといって、誰もがそういう存在になれるわけではありません。
久遠さんの日頃の努力が報われた瞬間に立ち会えてよかったです。

それに、私が言うのも何ですが、三神さんって、あまり発言する方では
ありませんよね?その三神さんが、性別の違いを超えて、上司として
憧れているということ、そして、発言したということは、とても大きな
ことだと思いますよ」

「本当にそうですね。私もちょっとビックリしましたもん(笑)
でも、嬉しいです。理沙ちゃんも優一くんもありがとね」

「あっ、僕も!」

「潤也くんは、大丈夫(笑)」

「えっ、何ですか、それ?(笑)」

「もう、お腹いっぱいだから、また今度ね(笑)」

「マジかぁ~!」

こうして、みんなで楽しくランチタイムを過ごすことが出来た。
もちろん、仕事の話もリラックスしながら出来たことは大きいと思う。

実は、ちょっとだけビクビクしてたんだよね(苦笑)さっき、会議室では
何も言わなかったけど、このランチの時間を使って、五十嵐智美が
何か言い出すんじゃないかなって(汗)でも、谷潤也の発言を皮切りに、
話が進んで行ったお陰で、彼女が何か言い出すことはなかったんだ。

もしかしたら、部長は、それも見越して、上手く誘導してくれたのかな?
っていうよりも谷潤也かな?彼がどうこうしたっていうのではなくて、
それこそ、舌の上にあった言葉をそのまま発言した的な?

ウチのチームは、素直な人が多いから、宇宙の導きっていうか、図らいって
いうか、そういうのに乗りやすいもんね。乗りやすいっていうより、
使われやすいって言った方が合ってるかな?(笑)

でも、使われるって言っても、変な使い方じゃないし、宇宙や神さまに
使われるんだったら、私も嬉しいから、どんどん使ってくださいって
感じなんだけどね(笑)


<次回へ続く>
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