秋空

あきや

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冷たい風が頬を掠める

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暗くなり始めた屋上。
私は屋上の扉の前に立つ。
彼に、この気持ちを伝えたいから。
ずっと鳴りっぱなしの心臓は手で抑えても止まろうとしない。
用意していたシナリオは、全く頭に入らずに抜けてしまう。
これでいいのか。これで大丈夫なのか。
そう考えているだけで、時間は刻一刻と近づいてくる。
目を閉じて、息を整える。
大丈夫。大丈夫。
頭に言い聞かせて、ドアノブに手をかける。
一瞬躊躇う心を、首を振ることで払い除け、ドアノブを握る力を入れ直す。
心に合図を送って、扉を開ける。
途端に肌寒くなってきた空気が頬を掠めた。
それにも構わず、私は彼の元へ走った。
私に振り向いて貰えるように。
私の隣にずっといてくれるように。
私の想いが、願いが、届くように。

「あのね、私ー

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