歌が・・・

あきや

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歌が・・・

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僕は歌が好きだった。
現実の音をかき消してくれる、否定してくれる歌が、好きだった。

僕はある日、歌うことも好きなことに気づいた。
僕が歌うと誰かが喜んでくれた。
誰かが笑顔になってくれた。

僕はある日、曲を作ることも好きなことに気づいた。
僕が曲を作ると誰かが感動してくれた。
歌ってくれた。

僕はある日、テレビに出た。
カメラがあたる広い部屋で、僕は笑顔を作り続けた。
みんなが笑ってくれる方法を考え続けた。

僕はある日、スランプに陥ったことに気づいた。
紙に書く字が化け物に見えた。
それでも僕は書き続けた。
誰かの笑顔が見たくて、自分がそうだったように、誰かを救いたくて。

僕はある日、歌が嫌いになっていることに気づいた。
新しい曲を探しすぎて、完璧な曲を目指しすぎて、僕は使命感に囚われていたのだ。

それでも僕は歌い続けた。
誰かの笑顔を見るため。
いつか、生きがいが見つかるように。
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