4 / 5
一章-魔獣 ①
しおりを挟む
-森へ向かう道-
……木々の景色が前から後ろへと流れて行く。
今俺達は、車の中で揺られながら、森へ到着するのを待っていた。馬車では無い。車なんだ。
魔族や神等、多数の種族が住んでいるこの世界はそもそも、人間や獣族等が互いに支え合い、発展させてきた世界。やっと道路や鉄道を通らせた段階で、突如訳の分からない所から神や魔族がやって来て、勝手に争ったもんだから、みんなその防衛等に手がいっぱいで、発展自体がそこで止まっている。
だから、実の所魔族や神なんてのは追い出すべき対象で。所詮邪魔者でしかないのだ。しかし…
「ねぇ、アンバーちゃん。あなたは外の世界、見た事はあるの?」
「あぁ……外交等で少しな。しかし……触りくらいしか知らないぞ?ほとんど自国で修行か会議だ。」
「軍に務めるのも大変なのね……人間って大変だわ…」
……目の前で会話をしている少女「ハイム・インフェルニア」は、俺に能力を与えてくれた…少なくとも、神か何かの類である事は間違いないと考える。
「どうしたの?そんな難しい顔して…やっぱり…人間ってこのシチュは気まずいものなの?」
「いや、むしろ眼福って感じだね。」
「なっ……馬鹿者め、不埒な事を考えるなと…」
やべ、言葉を間違えた。
可愛いんだけど…説教となるとまた話が長くなる…
なんて考えていると、隣にいたハイムが、
「アンバー、眼福って何?」
と尋ねた。ナイス。説教は一応回避出来た…のか?
「…眼福ってのは…美しいものを見た時に使う言葉でな……」
「へぇ…アンバーちゃん、もしかして…シヴァン、アンバーちゃんの事考えて今もソワソワしてるかも~……しれないよ?」
「なっ…なななっ…ッ」
水を差す様ですまないが…
違うハイム、俺は君の事を考えてるんだ。
…いや、アンバーさんはアンバーさんで好き…ではあるけども。嫌いって訳では無いけど。でも…それを抜きにしても君の事がちょっと引っかかってしょうがない。というのも、ハイムはあの平原の、あの祠から突然出てきた存在。先述の通り、神かそれと同等の何かであることは間違いない。ただ、度々出てくる言葉が気になるというか…世を知らない様な喋り方をしているのが気になるのだ。まるで、随分と長いこと眠っていたような……
「……シヴァン。どうした?そんな真剣な顔をして…」
「いや、何でもないですよ。アンバーさん。」
「そ…そうか?お前にしては随分厳しい表情だったんでな…腹でも下したかと思った。無事ならいいんだ。」
暫くの沈黙が車の中を襲った後、車がやっと森の入口辺りのような場所で止まった。
「ここが……森か?」
外から見た感じでは特に変な様子もなく、ただただ普遍的な森だった。あまりにも異変の無さすぎる、目の前に広がる一面の緑に思わず、「……とても魔獣が居る森とは思えないな…」とこぼした。
「まぁ…普段は運送車等がこの森を突っ切って行くんで、ここだとまだ普通の森ですよ。問題はこの奥です。」
「まぁ……そうだな。迂回させようにも西は崖、東は魔獣の巣窟だからな。」
運転手とアンバーさんの会話を聞きながらも尚、俺は森の中をじっと眺める。
森の中に…俺と同じくらいの少年が居るのが見えた。
少年の服装は……見た事も無い、白い服に……黒いズボン?を履いていた。
少年の方も俺に気付いたようで、森の奥へと笑いながら去っていった……
「…とりあえずは行ってみないと分からんな。よし、ここからは徒歩だ。いいな?ハイム。シヴァン。」
「分かったわ。絶対……ぶっ潰してやるんだから!」
士気を上げ、気分だけでも高めている仲間たちを後目に、僕は何をしているかというと。
仲間の事を疑って、考察して。
信用なんて言葉は頭の中になかったんだ。
ただ、それが分かるのは……まだ後になる。
- 森の最深部 -
「……ダメだね。これじゃ、邪魔者を倒せない……。魔族として呆れるよ。」
異装の少年は、眠る怪物を見て、呆れたように告げた。
……木々の景色が前から後ろへと流れて行く。
今俺達は、車の中で揺られながら、森へ到着するのを待っていた。馬車では無い。車なんだ。
魔族や神等、多数の種族が住んでいるこの世界はそもそも、人間や獣族等が互いに支え合い、発展させてきた世界。やっと道路や鉄道を通らせた段階で、突如訳の分からない所から神や魔族がやって来て、勝手に争ったもんだから、みんなその防衛等に手がいっぱいで、発展自体がそこで止まっている。
だから、実の所魔族や神なんてのは追い出すべき対象で。所詮邪魔者でしかないのだ。しかし…
「ねぇ、アンバーちゃん。あなたは外の世界、見た事はあるの?」
「あぁ……外交等で少しな。しかし……触りくらいしか知らないぞ?ほとんど自国で修行か会議だ。」
「軍に務めるのも大変なのね……人間って大変だわ…」
……目の前で会話をしている少女「ハイム・インフェルニア」は、俺に能力を与えてくれた…少なくとも、神か何かの類である事は間違いないと考える。
「どうしたの?そんな難しい顔して…やっぱり…人間ってこのシチュは気まずいものなの?」
「いや、むしろ眼福って感じだね。」
「なっ……馬鹿者め、不埒な事を考えるなと…」
やべ、言葉を間違えた。
可愛いんだけど…説教となるとまた話が長くなる…
なんて考えていると、隣にいたハイムが、
「アンバー、眼福って何?」
と尋ねた。ナイス。説教は一応回避出来た…のか?
「…眼福ってのは…美しいものを見た時に使う言葉でな……」
「へぇ…アンバーちゃん、もしかして…シヴァン、アンバーちゃんの事考えて今もソワソワしてるかも~……しれないよ?」
「なっ…なななっ…ッ」
水を差す様ですまないが…
違うハイム、俺は君の事を考えてるんだ。
…いや、アンバーさんはアンバーさんで好き…ではあるけども。嫌いって訳では無いけど。でも…それを抜きにしても君の事がちょっと引っかかってしょうがない。というのも、ハイムはあの平原の、あの祠から突然出てきた存在。先述の通り、神かそれと同等の何かであることは間違いない。ただ、度々出てくる言葉が気になるというか…世を知らない様な喋り方をしているのが気になるのだ。まるで、随分と長いこと眠っていたような……
「……シヴァン。どうした?そんな真剣な顔をして…」
「いや、何でもないですよ。アンバーさん。」
「そ…そうか?お前にしては随分厳しい表情だったんでな…腹でも下したかと思った。無事ならいいんだ。」
暫くの沈黙が車の中を襲った後、車がやっと森の入口辺りのような場所で止まった。
「ここが……森か?」
外から見た感じでは特に変な様子もなく、ただただ普遍的な森だった。あまりにも異変の無さすぎる、目の前に広がる一面の緑に思わず、「……とても魔獣が居る森とは思えないな…」とこぼした。
「まぁ…普段は運送車等がこの森を突っ切って行くんで、ここだとまだ普通の森ですよ。問題はこの奥です。」
「まぁ……そうだな。迂回させようにも西は崖、東は魔獣の巣窟だからな。」
運転手とアンバーさんの会話を聞きながらも尚、俺は森の中をじっと眺める。
森の中に…俺と同じくらいの少年が居るのが見えた。
少年の服装は……見た事も無い、白い服に……黒いズボン?を履いていた。
少年の方も俺に気付いたようで、森の奥へと笑いながら去っていった……
「…とりあえずは行ってみないと分からんな。よし、ここからは徒歩だ。いいな?ハイム。シヴァン。」
「分かったわ。絶対……ぶっ潰してやるんだから!」
士気を上げ、気分だけでも高めている仲間たちを後目に、僕は何をしているかというと。
仲間の事を疑って、考察して。
信用なんて言葉は頭の中になかったんだ。
ただ、それが分かるのは……まだ後になる。
- 森の最深部 -
「……ダメだね。これじゃ、邪魔者を倒せない……。魔族として呆れるよ。」
異装の少年は、眠る怪物を見て、呆れたように告げた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる