【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす

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桃色の約束は夢心地

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SED:キリト


配信者という生き物は、概して朝に弱い。
想像は容易いだろう。夜な夜な画面に向かい、リスナーたちと喋り倒す日々を送っていれば、自然と生活リズムは夜型に傾いていく。
――が。
そんな俺が、今朝に限ってはバッチリ目を覚ましていた。理由はただ一つ。

「トナリさんと、コラボの約束を取り付けるんだっ!」

昨夜の配信後、トナリさんから改めて謝罪のDMが届いた。
きっと、俺の配信が終わるのを待ってから送ってくれたんだろう。明日も仕事だっていうのに。

……なんて律儀な方なんだ、惚れてしまうよ……いや、もう惚れてるんだった。
感動しながらも、これはチャンスだと判断した俺は、すかさず「気にしないでください」という返事に加え、ちゃっかり「DEIMのID、交換しませんか?」の一文を添えて送信。
だって、この流れで断るのは難しいだろうし……ずる賢いと言われようが、こんなチャンス逃せるわけがない。
結果は見事成功。トナリさんは快くID交換に応じてくれて、俺はひとりきりの部屋で勝利の舞を踊った。

そして迎えた翌朝。
朝からメッセージを下書きして、送信のタイミングを今か今かと待ち構える。早すぎれば迷惑だし、遅すぎれば「こいつ今まで寝てたな」と思われかねない。まあ、実際はいつも寝てるんだけど。

悩みに悩んだ末、始業時間ちょい前に決行。DEIMにメッセージを送った。

『おはようございます!昨日は遅くまで付き合わせちゃってすみませんでした。今日もお仕事ですよね?頑張ってください!本日お仕事終わりましたら、少しお話しさせてください!』

……と、そこまでは真面目に送ったが、少しでも和んでくれればと“おばあちゃんシリーズ”のスタンプを添えた。
正体不明、どこの誰かも知らないおばあちゃんの写真を使った、絶妙にシュールなスタンプだ。

「……これ、やっぱチョイス間違えたかな……」

送信してから押し寄せる後悔に頭を抱えるも、既読マークがつき、数秒後には「シュポッ」と返信が届いた。

『おはようございます。わかりました、帰って落ち着いたらこちらからご連絡します(^^)』
「トナリさんから『おはようございます』いただきましたぁ~……!」

俺はベッドの上でスマホを抱きしめながらゴロゴロ転がっているうちにそのまま眠ってしまったらしく、気がつけば辺りは真っ暗だった。

「えっ、寝過ごした!?」

飛び起きて時計を見ると、時刻は18時。スマホにはまだ連絡は来ていない。
ほっと胸を撫で下ろして風呂に入り、さっぱりしたあと腹ごしらえ。
それからは、のんびりとトナリさんからの連絡を待った。
そして22時。スマホが震える。

『お待たせしました。今、大丈夫ですか?』
「控えめなところも好き……」

思わず声が漏れる。すぐさま返信を打ち込む。

『こんばんわ!お疲れ様です!』
『こんばんわです。すみません、遅くなってしまって』
「“こんばんわです”って、可愛すぎないか? 他の誰が言っても何とも思わないのに……恋は盲目ってこういうことか……」

そんな独り言をこぼしつつ、俺はすぐに本題を切り出した。

『いえいえ、お気になさらず!それで、早速なんですが___』

引き延ばすつもりはなかった。長引けばまた警戒されるかもしれないし、なによりこれはトナリさんにとってもプラスになる話だ。
きっと「いいですよ」って返ってくる――そう思っていたのだが。

『……なんで俺なんかとって、思ってまして……』


俺なんか。


聞き捨てならない。それは違う。
だって、ここに「トナリさんのおかげで毎日が明るくなった男」がいるんだから。

『びっくりさせちゃいましたよね……でも、実はというかなんというか……俺、本当にトナリさんの実況スタイルが好きで……(実況っていうか、もうトナリさんが好きなんですけど)全部の実況、見てます!(擦り切れるほど)』

勢いのままに想いをぶつけた。

『特に「シャナ」が好きで!(俺がトナリさんを知った運命の動画ですっ)だんだんトナリさんがシャナに感情移入していって(この時点であなたに骨抜きです)、最後に泣いちゃうところとか、もう……(抱きしめたいっていうか)……ほっこりするっていうか(よしよししたいっていうか)、可愛いっていうか(たまんないっていうか)、トナリさんの優しさにメロメロっていうか(メロメロなんですっ!)』

――最後はちょっと、心の声が漏れすぎたかもしれないが、どうでもよかった。
とにかく「俺なんか」なんて言わないでほしい。それだけは伝えたかった。
本人相手でも、それだけは許せなかった。
すると、トナリさんは少ししゅんとした様子で、『すみません、気をつけます』と返してくれた。
――よし。じゃあここで一気に畳みかける。
「じゃあ、コラボしましょ~」と送ろうとしたそのとき。やはり、“隣の根暗”を名乗るだけのことはある。まだ渋る。

今度は、俺のファンの反応を気にしているらしい。
だが、そこも俺は心配していない。昨日の配信チャット欄を見ていて、確信していた。

「“この人か!”って、逆に湧く予感しかしないんだよなぁ……」

だから、俺は迷わずこう送った。

『“誰だコイツ”って言われたら、俺の好きな配信者だって言いまくるんで、なんの問題もないっす!』

言い切ってやった。

けれど――その後、しばらく返事は来なかった。
悩んでいるのか、迷っているのか。俺は少し卑怯かもと思いながら、控えめに一言送った。「押してダメなら、引いてみろ」戦法だ。

『俺と一緒にゲームをするの、嫌ですか?』

俺は知っている。トナリさんは優しい人だ。だから、きっと――

『嫌じゃないです!むしろしたいです!』

その返事に、俺は満足しつつも、続くメッセージを読む。どうやら、トナリさんは「やりたいけど、ちょっと怖い」と思っているようだった。ならば、こう提案するしかない。

『録画とかしないで、純粋に一緒にゲームして遊びましょう!』

一緒に遊んで、俺にも慣れてもらって、それからコラボすればいい。
――絶対に名案だ!
そう思って送った提案に、トナリさんは「それなら……」と納得してくれた。
OKをもらった瞬間、俺のテンションは爆上がり。
「なにして遊ぼう!」とワクワクしながら、あれこれとゲームの候補を挙げ、スケジュールもばっちり押さえた。
明日もトナリさんは仕事。これ以上遅くまで付き合わせては悪いと、ちょうど話が落ち着いたところで、お開きとなった。

最後に「おやすみなさい」とメッセージを送り、俺はベッドにダイブする。

「わぁ……夢のようだ……トナリさんと遊ぶ約束、しちゃった……」

夢じゃないことを確かめたくて、もう一度メッセージアプリを開いて、やり取りを何度も読み返す。

「夢じゃない……やったっ!」

俺はベッドの上でバタバタと、子供のようにはしゃいだのだった。



__________

キリトさんがどんどんアホな子になっていくのを止めることができない。。。
後もう一話キリト編で、おそらくその後話が進む予定です。
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