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君の隣を夢見てる
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SED:キリト
トナリさんとの二度目のコラボが叶い、ホラーゲームが苦手な彼とは対照的に、俺はわくわくしながらそのプレイを見守った。
案の定、トナリさんは「初見じゃない」と言いつつ、ほとんどすべてのギミックに驚いていた。
思わず「本当に見たことあるんですか?」と突っ込むと、「見たけど内容を覚えていない」というオチが返ってくる。……それはもう、ほぼ初見というやつじゃないか。
彼の部屋には防音設備がないらしく、大声は出せない。ホラー実況といえば派手なリアクションが売りだが、トナリさんの場合は、絞り出すような呻き声と、キャラごと硬直(つまり本人がフリーズ)という、なんとも静かなホラー実況だった。だが、俺にはそれがたまらなくツボだった。
俺が爆笑して代わりにリアクションしていると、それが逆に新鮮だったらしく、三本目の動画を投稿する頃には、再生数もコメント数もぐんと伸びていた。トナリさんの登録者数もこのシリーズだけで三十人以上増えて、もうすぐ二百人に届きそうだ。
「トナリさん、ホラーゲームめちゃくちゃ好調ですね。登録者、明日には二百人突破しそうですよ!」
「……そうですね……嬉しいです……」
「今日も疲弊してますね(笑)」
「ん……驚き疲れちゃいますね……」
ホラー実況の後のトナリさんは、いつもこうしてグッタリしている。その様子が、もう……愛でまくりたい。
(は~……これ、もし一緒に同じ空間でゲームしてたら、終わったあとに“お疲れ様ハグ”とかできんのになー。あ、でも……ハグって付き合ってなきゃ無理か。いや、トナリさんなら普通にさせてくれそう……)
そんなことを考えてしまう自分に苦笑する。
『画面越しの、このくらいの距離感がちょうどいい。』そう、わかってはいるのだが……。
ゼットで流れてくるBL漫画の広告なんかをつい見てしまうと、「もしこれが俺とトナリさんだったら」なんて、つい想像してしまう。
そして想像してしまうと、色々なことが知りたくなる。
年齢はいくつくらいなんだろう。
普段どんな服を着てるんだろ。
どんな顔してるんだろう。
恋愛経験、あるのかな。
どんな……キスをするんだろう。
好きな人とか、いたりするのかな。
まさか、彼女がいたりして……
まさか既婚者ってことは……いや、それは流石にないよな。
考え出すと止まらなくなる。でも結局、いつも最後にぶち当たるのは「恋愛対象」の問題だ。
いくら色々知ったところで、きっとトナリさんは“男”なんて眼中にない。俺は、スタートラインにすら立てない。
だからこうして遠くから、可愛いな、愛しいなって思っているだけで十分なんだ。
……本当は、十分じゃないんだけど。
少しだけ落ち込んだ気持ちを振り払うように、俺は明るく声をかけた。
「来週は空いてますか?空いてたらこの続きを撮りましょうよ!」
「あ、来週は……ちょっと予定が入ってて、できないんです。すみません」
「あ、そうなんですね!了解です~!」
元気よく返したつもりだったけど、内心では心臓がドキドキしていた。
予定、か……もしかして、デート……?
いや、違うか。仕事だろ?そうだよな。……いや、でももし本当にデートだったら……。
勝手な想像にぐるぐるしながら、思わず聞いてしまった。
「え、ちなみに、予定って……お仕事とかですか?」
「いえ。友達と出かける予定があって」
友達。うん、友達ね。
「え~まさか、デートとかだったりして~?」
少しウザ絡みかもしれないけど、本気で聞いてしまいそうだったから、冗談のフリをした。
「いやいや、そんな人いませんよ!男友達です。……実は俺、劇団季節が好きで、ずっと楽しみにしてた舞台のチケット、ようやく取れたんです」
声のトーンから、本当に楽しみにしてたんだなってことが伝わってきた。
「へぇ~!(彼女はいないんだ。良かった……)劇団季節好きなんですね。俺も一度見てみたいなぁ。ちなみに、どんな作品なんですか?」
「えっとですね、俺が見に行くのは──」
そこからは世間話に花を咲かせて、次の録画予定をざっくり決めて、その日はお開きになった。
通話を切ってから、しばらく俺はぼんやりとスマホを見つめていた。
「いいなぁ……俺も、トナリさんと出かけたいなぁ……男友達かぁ……」
女じゃなくてよかった。そう思う一方で、男ってのも……やっぱり嫌だ。二人の間には友情しかないのはわかってる。でも、羨ましくて仕方がない。
「いいなぁ……」
目を閉じて、想像してみる。
彼の隣に並んで、肩を並べて歩く自分。笑い合って、何気なく手をつないで──
……そんな未来は、きっと俺には訪れないのに、想像を止めることができなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お気に入り登録、たくさんのいいねありがとうございます。
嬉しいなぁとニヤニヤしてます。本当に嬉しいです。
そしてキリトに幸あれ。ちょっとキリト視点が多くなりつつある。主人公はお前じゃないぞ。トナリだぞ!
でもキリト視点楽しんですよね。へへ。
トナリさんとの二度目のコラボが叶い、ホラーゲームが苦手な彼とは対照的に、俺はわくわくしながらそのプレイを見守った。
案の定、トナリさんは「初見じゃない」と言いつつ、ほとんどすべてのギミックに驚いていた。
思わず「本当に見たことあるんですか?」と突っ込むと、「見たけど内容を覚えていない」というオチが返ってくる。……それはもう、ほぼ初見というやつじゃないか。
彼の部屋には防音設備がないらしく、大声は出せない。ホラー実況といえば派手なリアクションが売りだが、トナリさんの場合は、絞り出すような呻き声と、キャラごと硬直(つまり本人がフリーズ)という、なんとも静かなホラー実況だった。だが、俺にはそれがたまらなくツボだった。
俺が爆笑して代わりにリアクションしていると、それが逆に新鮮だったらしく、三本目の動画を投稿する頃には、再生数もコメント数もぐんと伸びていた。トナリさんの登録者数もこのシリーズだけで三十人以上増えて、もうすぐ二百人に届きそうだ。
「トナリさん、ホラーゲームめちゃくちゃ好調ですね。登録者、明日には二百人突破しそうですよ!」
「……そうですね……嬉しいです……」
「今日も疲弊してますね(笑)」
「ん……驚き疲れちゃいますね……」
ホラー実況の後のトナリさんは、いつもこうしてグッタリしている。その様子が、もう……愛でまくりたい。
(は~……これ、もし一緒に同じ空間でゲームしてたら、終わったあとに“お疲れ様ハグ”とかできんのになー。あ、でも……ハグって付き合ってなきゃ無理か。いや、トナリさんなら普通にさせてくれそう……)
そんなことを考えてしまう自分に苦笑する。
『画面越しの、このくらいの距離感がちょうどいい。』そう、わかってはいるのだが……。
ゼットで流れてくるBL漫画の広告なんかをつい見てしまうと、「もしこれが俺とトナリさんだったら」なんて、つい想像してしまう。
そして想像してしまうと、色々なことが知りたくなる。
年齢はいくつくらいなんだろう。
普段どんな服を着てるんだろ。
どんな顔してるんだろう。
恋愛経験、あるのかな。
どんな……キスをするんだろう。
好きな人とか、いたりするのかな。
まさか、彼女がいたりして……
まさか既婚者ってことは……いや、それは流石にないよな。
考え出すと止まらなくなる。でも結局、いつも最後にぶち当たるのは「恋愛対象」の問題だ。
いくら色々知ったところで、きっとトナリさんは“男”なんて眼中にない。俺は、スタートラインにすら立てない。
だからこうして遠くから、可愛いな、愛しいなって思っているだけで十分なんだ。
……本当は、十分じゃないんだけど。
少しだけ落ち込んだ気持ちを振り払うように、俺は明るく声をかけた。
「来週は空いてますか?空いてたらこの続きを撮りましょうよ!」
「あ、来週は……ちょっと予定が入ってて、できないんです。すみません」
「あ、そうなんですね!了解です~!」
元気よく返したつもりだったけど、内心では心臓がドキドキしていた。
予定、か……もしかして、デート……?
いや、違うか。仕事だろ?そうだよな。……いや、でももし本当にデートだったら……。
勝手な想像にぐるぐるしながら、思わず聞いてしまった。
「え、ちなみに、予定って……お仕事とかですか?」
「いえ。友達と出かける予定があって」
友達。うん、友達ね。
「え~まさか、デートとかだったりして~?」
少しウザ絡みかもしれないけど、本気で聞いてしまいそうだったから、冗談のフリをした。
「いやいや、そんな人いませんよ!男友達です。……実は俺、劇団季節が好きで、ずっと楽しみにしてた舞台のチケット、ようやく取れたんです」
声のトーンから、本当に楽しみにしてたんだなってことが伝わってきた。
「へぇ~!(彼女はいないんだ。良かった……)劇団季節好きなんですね。俺も一度見てみたいなぁ。ちなみに、どんな作品なんですか?」
「えっとですね、俺が見に行くのは──」
そこからは世間話に花を咲かせて、次の録画予定をざっくり決めて、その日はお開きになった。
通話を切ってから、しばらく俺はぼんやりとスマホを見つめていた。
「いいなぁ……俺も、トナリさんと出かけたいなぁ……男友達かぁ……」
女じゃなくてよかった。そう思う一方で、男ってのも……やっぱり嫌だ。二人の間には友情しかないのはわかってる。でも、羨ましくて仕方がない。
「いいなぁ……」
目を閉じて、想像してみる。
彼の隣に並んで、肩を並べて歩く自分。笑い合って、何気なく手をつないで──
……そんな未来は、きっと俺には訪れないのに、想像を止めることができなかった。
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お気に入り登録、たくさんのいいねありがとうございます。
嬉しいなぁとニヤニヤしてます。本当に嬉しいです。
そしてキリトに幸あれ。ちょっとキリト視点が多くなりつつある。主人公はお前じゃないぞ。トナリだぞ!
でもキリト視点楽しんですよね。へへ。
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