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第七話
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太郎
「あぁ……よく寝た……。」
今日も落ち着かない例の部屋で起床である。
体を起こし部屋を見渡す。
クマノミ
「ゴンザレス君弱いっすね……。」
魔王様と護衛たちは夜通しババ抜きをしていたようである。
太郎
「おはようみんな……いや待てゴンザレスの頭どこやったんだよ!?」
寝起きに首なし白骨死体と遭遇だ。
そいつとクマノミが眼前でババ抜きしてるんだからシュール極まりない。
クマノミ
「おはようございます。ゴンザレス君は罰ゲームを科してから泥沼大連敗中です。」
太郎
「負けた罰ゲームで頭外してるのか……。」
ガミジン
「ちなみに頭部は今あそこにあります。」
ガミジンさんが指差す方を見る。
……部屋の隅、クリスマスツリーの頂点にゴンザレスの頭が付けられており更にその眼窩に懐中電灯が刺され点灯している。
ツリーの本体も点滅する電飾の間でオニヒトデとウミケムシ、そしてテヅルモヅルが蠢いているという惨状だ。
太郎
「何すかこれ?」
クマノミ
「倉庫に眠っていた不良品だそうです。」
太郎
「『不良品』で済ませるにはツッコミどころ多過ぎませんかね……?」
クマノミ
「頂点にはゴンザレス君の頭ではなく本来あれを乗せるのですが……。」
ツリーの根本の隣に途轍もなく禍々しい物が置いてある……。
真っ赤な下地に黒で呪術文様が描かれた髑髏だ。しかも阿修羅の如く三面である。
三面全部の眼窩にはしなびた竹輪が刺さっている。
太郎
「不良品の理由って……。」
クマノミ
「竹輪の消費期限が切れてるから出せないようですね。」
太郎
「一応聞きますけど竹輪の穴から水雲流れたりします?」
クマノミ
「あっ、ご存じだったんですね。」
太郎
「……。」
よく見ると髑髏の後ろから水雲を送り出すチューブとポンプが出ているのが見える。
太郎
「……これ売れるの?」
クマノミ
「さあ?」
ガミジン
「去年フォルネウスさんがこのツリーを竜拝教国に寄与しようとしたんですがね。」
太郎
「マジかよ……。」
ガミジン
「国王様が顔を真っ青にして返却を申し出たそうでして……。」
太郎
「至極真っ当な反応ですね(白目)」
ガミジン
「でも大阿修羅宇宙教国の方ではすんなり貰ってくれたみたいですよ?」
太郎
「……!?」
髑髏が三面なら問題無い……?いや、そういう問題ではないと思うが……。
太郎
「これ一応クリスマスツリーですよね?」
クマノミ
「そうです。」
太郎
「この島にクリスマスの概念あるの……?」
ガミジン
「最初に木を用意したのは私なんですよ。」
太郎
「あぁ、納得。」
布教を目論むキリスト教徒だからね。
ガミジン
「それをデカラビアさんが勝手に飾り付けしてですね……。」
太郎
「星の代わりにヒトデを付けたのはデカラビアさんのセンスか……。」
ガミジン
「フォルネウスさんが大ウケして国外に持ち出しちゃったんですよ……。」
太郎
「真面目な人だと思ってたけどこれに大ウケしちゃうんですね。」
ガミジン
「三面髑髏とポンプはフォルネウスさんのアイディアですよ?」
太郎
「……マジかよ。」
飾り付けのセンスが常人離れしていらっしゃる……。もしかしてサハギン魚拓はあれでも自重していた……!?
太郎
「朝っぱらから凄まじい物見ちゃったなぁ……。上行って来ます。」
クマノミ
「お供します。」
扉の前で番をしていたクマノミが付いてきた。
……一階、開店前の店内でボラに指示を乞う。
太郎
「おはようございます。」
ボラ
「おはようございます。これを渡しておきますね。」
箒と塵取りを渡された。
ボラ
「開店前は表で掃き掃除をお願いします。」
太郎
「了解っす。……店内でのお仕事は?」
ボラ
「荷物運び等の力仕事は我々の領分ですので。」
人間よりサハギンのほうが力あるもんね……無理に手伝いに行ったらかえって邪魔だろうな。
……言われた通り店の前に出て掃き掃除を始める。
護衛のクマノミは玄関の両脇に立ち臨戦態勢だ。家電店にあるまじき緊張感である。
クマノミ
「開店時間になったら私がお知らせします。」
太郎
「それまで掃き掃除ですね。」
クマノミ
「先日の件もありますので我々の目の届くところで……おや?」
クマノミの視線を追って俺も振り返る。
……あれは村長か?今日は家政婦さんが車椅子を押しているようだ。蟷螂は安静だからね。
太郎
「まだ開店前なんですが……どうしました?」
村長
「庭にこんなものが落ちていてな……。」
太郎
「……!!」
村長が取り出したのはペットボトルロケットだ。一昨日発射したやつが村長宅の敷地内に落ちたらしい。
村長
「人の庭に不法投棄とは明らかな挑発行為だ。そうは思わんかね?」
村長怒っていらっしゃるぞ……シラを切って乗り切るよりは真実を話して謝るべきか。
太郎
「村長、こちらへ……。」
村長
「……?」
村長と家政婦さん、そしてクマノミ一匹を伴い裏の駐輪場へ向かう。
村長
「……これは!!」
太郎
「お察しの通り、ペットボトルはこの自転車から発射されたものです……。」
驚愕する村長。
俺は村長の前に一台の自転車を持って来て説明を始める。
太郎
「ベルの横にボタンがありますよね?それ押していただけます?」
村長
「これか?」
車椅子から身を乗り出し、ボタンを押す。
村長
「……飛んだ!!?」
ペットボトルロケットは不規則な軌道を描き飛翔。50メートルほど飛んだところで茂みに墜落した。
太郎
「このようにどこに飛ぶか予測不能なのです。だから誤射による墜落、悪意は無いってことで……。」
村長
「……。」
太郎
「……もちろん村長さんのお宅に落ちた物は私たちが回収させていただきます。」
掃除は中断。クマノミを伴って村長宅のお庭へお邪魔する。
太郎
「落ちた位置が近くならあと三本あるはずだ。村長さん、敷地はどこまでです?」
村長
「向こうに見える杭までだな。」
村長の指さす方向……見えないな、ちょっと歩いてみるか。
道沿いを歩き百メートルほど進むと茂みに隠れた杭を発見。敷地広いな……。
太郎
「敷地は把握できたので……ペットボトルロケットを探して回収させていただきますね。」
村長
「ああ、頼む。」
太郎
「クマノミさん、害獣が出たときはお願いしますね。」
クマノミ
「お任せくださ……!?」
固まるクマノミ。何か問題発生だろうか?
クマノミが口の前に人差し指のジェスチャー。黙る俺たち。
緊張した空気の中クマノミがゆっくりと射撃姿勢をとる。その先に視線を向けると……。
太郎
「あれは……オークか?」
だいぶ離れてはいるが遠目から見ても判別できる緑がかった肌とガタイ……。前回見た個体よりは小さいようだが……?
銃口をオークに向けたまま双眼鏡を渡すクマノミ。
俺はそれを受け取り早速覗き込んだ。
太郎
「あいつ全裸だ!」
クマノミ
「そのようですね(困惑)」
村長
「これは獣害ではなく変質者の不法侵入なのか……!?」
うろたえる俺たち。右手には鉈を握りつつも局部丸出しで仁王立ちという異様なオーク♂……。
しかしあのオークは何の目的で全裸なんだ?
クマノミ
「こちらにはまだ気付いていないようです。撃ちますか?」
村長
「う、うむ……。」
太郎
「あっ、何かするみたいですよ!?」
全裸オークが左手で何か掲げたぞ?
……あれってペットボトルやんけ!!
太郎
「すいません先に拾われちゃいました……。」
村長
「それはいいが奴は何をする気だ?」
俺たちの視線が全裸オークの手元に集中する。
全裸オーク
「……!!」
ペットボトルの口を鉈で切り落とし……なんと、股間に装着してしまった!
一同
「うわぁ……(ドン引き)」
オークは満足げな表情でそのまま敷地から出て行った……。踊るような動きで移動し、村の外へ向かうようだ。
太郎
「ペットボトルってそこそこ大きいけどそれが嵌まるって……オークのアレってかなり太いんですね。」
クマノミ
「そこに着目しますか。」
村長
「アレの話はよい!……それより監視は何をしていたのだ!!」
家政婦
「監視の人なら先週お給料の額で揉めて解雇したじゃないですか。」
村長
「……。」
漫才を行う村長をスルーしつつクマノミと打開策を練る。
クマノミ
「隣の村で効果が実証された忌避剤……使ってみます?」
太郎
「やっぱそれが無難ですよね。」
オークがくしゃみをしながら逃亡したという最新の忌避剤だ。敷地内で使うならライフルよりも安全だろうし最適解だな。
クマノミ
「今現在こちらで預かってる分だと足りるかな……?」
太郎
「在庫の問題があるのか……。」
村長
「足りなかったら後日追加注文で頼む。」
追加注文か……監視の人件費よりは安く上がる……のか?
村長
「ゴミの回収は……。」
クマノミ
「忌避剤散布後ですね。安全第一です。」
太郎
「そうなりますよね。」
あんなのに見つかったら何をされるかわからない。安全が確保されるまでペットボトルの回収は諦めよう。
店の敷地に戻り作戦会議を開始。
クマノミ1
「私が詰所に行って忌避剤を取ってきます。」
クマノミ2
「その間我々はこちらで待機です。」
太郎
「了解です。」
駐輪場へ向かうクマノミ。
太郎
「自転車で行くのか!?」
クマノミ1
「手で持ち運ぶよりは楽かと……。」
自転車が出発しようとしたとき店内からボラとガミジンさんが出てきた。
ボラ
「そろそろ開店時間……どこか行くんですか?」
クマノミ1
「忌避剤を取りに行きます。」
ガミジン
「よくわかりませんがお気をつけて。」
自転車を見送り、現状をガミジンさんたちに説明する。
村長
「家の庭に全裸のオークが出たのだ……。」
ガミジン
「それはまた……え?全裸??」
太郎
「オークにも露出癖がある奴って居るんですねぇ。」
ボラ
「衣服の有無にかかわらずオークは危険なのですが。」
太郎
「そうなんですよ。それで忌避剤を取りに行ってもらってるんです。」
ガミジン
「忌避剤ですか……私たちがこの村に来る時一緒に積んできたやつですね。」
その時には荷物はチェックしていなかったが一緒に持って来ていたらしい。準備がいいなこの人たち。
ボラ
「しかし大変ですね。昨日の後処理もあるのに……。」
村長
「うむ、悪いことは重なるものだなぁ……。」
太郎
「昨日の……武器の密売か。解決したんですか?」
村長
「売人は捕縛できたらしいぞ。」
ボラ
「ええ。今は自警団のところで拘留してもらってますね。」
拘留中……となると次は……
村長
「黒幕の情報を聞き出す段階だな。」
太郎
「ええと……尋問?」
村長
「尋問など生温い。拷問だ拷問。」
太郎
「……!?」
村長
「自警団には生粋のサディスト共を集めておる。すぐに情報を吐くだろう。」
太郎
「この村ヤバイよぉ!」
この物騒な物言いのおっさんを諫めてもらおうと魔王様に目配せするのだが……。
ガミジン
「立場上干渉すべきか悩みますね。」
太郎
「そこで慎重になっちゃうのか。」
暴走気味の村長だが……誰かブレーキ役のような人居ないのかな……。
ボラ
「ところで先日の蟷螂の様子はどうですか?」
村長
「家で安静にさせているが……いつもほど活発ではないな。」
太郎
「寄生虫をケツからひり出した後だから仕方ないね。」
ガミジン
「言い方が下品ですよ……。」
太郎
「すみません。」
それはそうと敷地に全裸オークが出た村長の家……果たして弱った蟷螂に留守番させて大丈夫なのだろうか?
太郎
「ちょっと様子を見に行ってみません?」
村長
「心配か?あいつには護身用にリボルバー拳銃を持たせているからオーク風情に後れを取ることは無いぞ。」
太郎
「蟷螂って拳銃使えるのか……。」
村長
「村一番のガンマンだぞ。」
太郎
「ガンマンのマンはマンティスのマンですねわかります」
沈黙が走る……滑ってしまった。
ガミジン
「行くなら私とボラさんで見てきますよ。太郎さんたちは危ないですからこっちで待っていてください。」
太郎
「まあ危なくはありますが……」
ガミジン
「私なら拳銃で誤射されても死にませんので。」
太郎
「そこかぁ。」
害獣より拳銃が危ないという事実。確かに誤射は怖い。
クマノミ
「ではこれを。」
すかさずアサルトライフルを渡してくるクマノミ。
ガミジン
「銃撃戦はしませんけど……。」
クマノミ
「一応です一応。立場上手ぶらで行かせるわけにもいかないので。」
ガミジン
「そうですか……?じゃ、すぐ行って来ますね。」
出かける魔王と半魚人。
実際目と鼻の先だし何事も無ければすぐ済むだろう。
……二人を見送ってベンチに腰掛ける。
チョウチンアンコウ
「そこに居ましたか。」
太郎
「はい。……何か用事ですか?あっ、開店時間だから仕事の話か……。」
チョウチンアンコウ
「いえ、太郎さんには昨日呼んだ獣医(?)の対応をお願いします。」
太郎
「了解……どんな人が来るんです?」
チョウチンアンコウ
「獣人だと聞いています。」
太郎
「情報それだけか……。」
チョウチンアンコウ
「護衛として魔物も来るのでそちらとも仲良くしてください。」
獣人と魔物……どうせまたイロモノだろうな……。
太郎
「できる限り善処します……。」
村長
「おい店員ちょっと来い。」
自販機の前に居る村長がお呼びだ……。
家政婦
「太郎さんはそちら側を持ってください。」
太郎
「車椅子持ち上げるの!?代わりに自販機のボタン押すくらいは……」
村長
「どうしても自分で押したいのっ!!」
太郎
「わかりました……。」
家政婦さんと共に車椅子を持ち上げる。思わぬところで重労働だ……。
太郎
「よし……高さはこのくらいで……。」
村長
「……!!」
真剣な表情で両手を駆使し、自販機の全ボタンを万遍無く連打する村長。
太郎
「そんなに押しちゃって大丈夫?」
家政婦
「お金は一本分しか入れていないので大丈夫かと。」
太郎
「……。」
やり遂げた顔でサムズアップする村長を見届け、車椅子を下ろす。
太郎
「……で、何をお買い上げに?」
村長
「幾つか同時に押したから何が出てくるかはわからんな。」
汗を拭いながら答える村長を尻目に自販機は缶を吐き出した。
村長
「取ってくれ。」
太郎
「はいはい。」
手に取った缶を確認、村長に渡す。
太郎
「どうぞ……。」
村長
「これは……青汁だ!」
家政婦
「あぁ……村長さん飲めないの出ちゃったねぇ……。」
太郎
「青汁飲めないんかい!普通に選んで買っていればこんなことには……。」
車椅子……持ち上げ損だった……。
ガミジン
「何やってるんですか(呆れ)」
太郎
「あっ、お帰りなさい。」
例の蟷螂を背負ってお二人が帰還した。
村長
「仕方がないから青汁は蟷螂に飲ませよう。」
太郎
「飲むのか……?」
ガミジン
「しかしまたどうして青汁なのですか?」
太郎
「自販機の商品を決めた人に聞いてください。」
答えながら自販機を改めて凝視するが……
太郎
「これはひどい。商品の半数が青汁で更にその半分が『温かい』青汁だ……。」
なぜこんなに青汁押しなんだ?普通の天然水やお茶もあるけど青汁よりも少ないし……。
ガミジン
「ボラさん、何故この自販機を……?」
ボラ
「品目に青汁が多い件ですね?それは単純に調達コストの問題です。」
太郎
「近くに青汁工場でもあるんですかね……。」
ボラ
「言ってしまえばそんなところです。」
太郎
「否定せんのかい。」
自販機のメニューにケチをつけていると自転車に乗ったクマノミが帰還。
クマノミ
「ただいま戻りました。」
太郎
「車体にポリタンクを縛り付けて自転車が凄い見た目に……。」
ガミジン
「多めに持ってきましたね。」
ポリタンクを降ろすクマノミ。この中に忌避剤が入っているようだ。
クマノミ
「撒いてきますのでその間皆さんはこちらで待機で。」
太郎
「了解です。村長さん聞いて……うわぁ!」
振り向くと蟷螂が隣村で見たでかい蟋蟀を鎌で捕らえていた。
太郎
「近付けんな!どこから持ってきたんだよそれ!?」
何故か俺の顔にそれを近付ける蟷螂……。
村長
「駐輪場の裏で捕まえたようだぞ。」
そんなところにも生息していたのか……。
蟋蟀を齧ろうとする蟷螂をボラが制止する。
ボラ
「食べさせないでください。先日の寄生虫も他の虫から入った可能性がありますので。」
太郎
「そりゃごもっとも。」
他に経路も無いだろうしなぁ……ん?
太郎
「ボラさん……俺とんでもないことをしちゃったかもしれないです……。」
ボラ
「……どうしたんですか?」
太郎
「隣村でその蟋蟀の同族を……鍋にブチ込んじゃいました☆」
ボラ
「は?(威圧)」
……あぁ、怒っていらっしゃる。
ボラ
「誰かに喰わせたの?」
太郎
「……いや、いろいろあって誰も食べられませんでした。」
ガミジン
「食べられない辛さにしちゃいましたからね。でも加熱処理もしてたしあれなら寄生虫の心配は無かったんじゃないですかね。」
ボラは呆れながら俺たちを更に叱る。
ボラ
「あの大きさですよ?鍋で煮たくらいで安心しないでください。」
怖いこと言うなこの魚。
ボラ
「どうしても昆虫が食べたかったら養殖されたものを……。」
太郎
「そこまでして食べたくはないな。」
いくら寄生虫が怖いからといって養殖してまで食べようとは思わない……だいたい調味料無しの段階で凄まじく不味かったし。
そんなことを考えていると突如後ろから銃声が!
ボラ
「店の敷地で発砲すんなや!!」
太郎
「今度は何……?」
振り返ると蟷螂がリボルバー拳銃を用いて蟋蟀を射殺していた。食べられない腹いせか的にして遊んでいるようだ。
太郎
「危ないから銃はしまってください。」
村長
「一発で命中させているんだしいいだろ。」
太郎
「そういう問題ではないです。」
ボラ
「次撃ったら出禁にしますね。」
仮に流れ弾等があったら洒落にならない。家電店勤務がここまで危険だったとは……。
ガミジン
「お取込み中のところ申し訳ありませんが……お客さんが来たみたいですよ?」
言われて振り返ると道の先には……砂煙を上げて走ってくる車が見える。軍用のオフロード車みたいなごつい見た目だ。
太郎
「車で来るってことはゴエティアの関係者か……先日呼んだお医者さん……?」
ガミジン
「でしょうねぇ。」
太郎
「ボラさん、応対は……!?」
後ろを見ると厄介なことになっていた。ボラが蟷螂を抑え込んで手(?)から拳銃を取り上げている。
一方の蟷螂は翅をばたつかせて興奮気味だ。
村長
「こいつ車を見るのは初めてなんだよ。エンジン音とかで警戒しているんだろう。」
太郎
「それで発砲されたらたまりませんよ……。撃たないように躾けてください。」
弾丸を没収して拳銃を返すボラ。蟷螂はしょぼくれている。
ガミジン
「ちょっと移動しましょう。車停めるとき私たちがここに固まっていると邪魔でしょうし。」
太郎
「そうですね。じゃあ村長の車椅子は俺が押して行きます。」
村長
「うむ、苦しゅうない。」
太郎
「出禁にされかけてこの余裕……!」
俺たちが自販機前に固まると駐車場に車が停車した。
太郎
「さて、どんなのが降りてくるのか……。」
運転席から降りてきたのは……着流しの着物を着たタチウオ顔のサハギンだ!
タチウオ顔のサハギン
「……吾輩はタチである。」
太郎
「その自己紹介は誤解されるから止めた方がいい。」
村長
「君が医者なのか?」
タチウオ
「いや、吾輩は護衛兼運転手だ。」
そんなやり取りをしていると助手席側から更に誰か降りてくる。
今度はサハギンではなく獣人……いや、節足動物!?
???
「初めまして。」
太郎
「あっ、ご丁寧にどうも。」
手に医療鞄らしきものを提げた蟻顔の昆虫人間のような奴が出てきたぞ……。
その見た目に圧倒されつつガミジンさんに耳打ちする。
太郎
「この方は獣人って括りには……」
ガミジン
「見ての通り昆虫ですし獣でも何でもないんですが……獣人同様に人権が与えられていますので細かいことは気にせず他の方と同じように接してください。」
太郎
「わかりました。」
ちゃんと言葉が通じれば見た目など些細な事だ。とにかく話を聞いてみよう。
太郎
「あの……」
蟻
「患者はどこです?」
ボラ
「こちらです。」
患者ファーストだ。医者だから当然ではあるが……いろいろ質問するのは診察が終わってからだな。
村長
「早速診てやってくれ。」
蟻
「……。」
蟻が蟷螂の顔面を両手で掴みまじまじと見つめる。
蟻
「瞳孔、異常無しです。」
太郎
「いや待て蟷螂の瞳孔は開いたり閉じたりしないから!」
蟻
「……で、患部は?」
ボラ
「お尻からハリガネムシを出したのでそこですかね。」
ツッコミスルーされたけど大丈夫かこいつ……?
ガミジン
「太郎さん、蟷螂の瞳って……。」
太郎
「蟷螂の眼は複眼だから瞳孔とか無いです。光の加減で瞳があるように見えるだけですよ。」
ガミジンさんにツッコミの意図を説明する。
ガミジン
「なるほど……でもそしたら蟻さんも複眼じゃないですか。もしかして……」
太郎
「判っててボケた可能性が微レ存……?」
ちょっと心配になってきたが……一応サハギンの護衛を伴ってきたんだよな。ゴエティア側の人選なはず……。
等と考えつつ離れた場所から訝しみの視線を投げかけていたが診察は終わったようだ。
蟻
「直ちに治療が必要な個所はありませんでした。これ、持参した虫下しです。再度寄生された場合はこれを飲ませてください。」
村長
「わかった。」
ボラ
「寄生虫が入った経路は分かりますか?」
蟻
「食事からだと思われます。絶対に拾い食いはさせないようお願いします。」
蟷螂のダメージはたいしたことなかったようである。一安心だ。
ガミジン
「じゃ、改めて挨拶しておきましょうかね。」
太郎
「そうですね。」
二人で蟻人間のほうに向き直る。
ガミジン
「お疲れ様です。わざわざ往診していただき助かりました。」
蟻
「いえ、お気になさらず。仕事ですので。」
太郎
「ゴエティアから派遣されたお医者さん……で、いいんですよね?」
蟻
「はい。自己紹介がまだでしたね。」
おもむろに医療鞄を漁り名刺入れを取り出す蟻。
名刺を受け取り、蟻の自己紹介を聞く。
蟻
「私、バレットと申します。節足動物専門の医者でして今までゴエティアで研修していました。」
太郎
「節足動物専門とは……ニッチな需要だ。」
ガミジン
「そう思うでしょ?でも最近は昆虫にも医者がいるんですよ太郎さん。」
太郎
「そのようですね。」
なにせ蟷螂が車椅子押してるようなところだからね。
バレット
「寄生虫等の案件は可能な限り早めに対処したいということで派遣されました。」
太郎
「確かに話を通してから実際に来るまで早かったですね。」
ガミジン
「まあ特例ですよね、生態系に関わることですから。」
太郎
「なるほど。」
生態系……でかい寄生虫の分布は確かに気になる。万が一人間に寄生されたら嫌だし。
ガミジン
「私たちも自己紹介しておきましょうね。」
太郎
「そうですね。」
ガミジンさんと一緒に軽く自己紹介を行う。俺も名刺作るか……。
自己紹介が終わるとボラがこちらに歩いてきた。
ボラ
「お荷物をお持ちします。」
バレット
「よろしくお願いします。」
医療鞄を預かり店内へ入って行くボラ。
この流れで店内ってことはもしかして……。
太郎
「村の宿じゃなくてここに泊まるのか。」
バレット
「ええ。地下室のほうが落ち着くので。」
太郎
「蟻だからか……。」
バレットさんとタチウオも店内へ……それに続いて村長ご一行も店内へ。村長たちは何か買うのか?様子を見るために俺たちも店に入る。
……家政婦さんの手を借り車椅子からマッサージチェアに移る村長。
家政婦
「昨日座れなかったって拗ねてたんですよ。」
太郎
「そんな理由で来たんかい!」
ガミジン
「電化製品に馴染んできていますねぇ。」
俺が村長の来店した理由に驚愕していると階段の前でボラが手招きしている。
村長の暴走が心配だが……仕方がない、ガミジンさんにこの場を預けて地下に行こう。
倉庫を通過し地下二階へ。
バレット
「凄い内装ですね。」
太郎
「落ち着きませんよね。」
タチウオ
「落ち着くぞ?」
太郎
「サハギン基準では落ち着くだろうけどさぁ……。」
蟻さん視点でも廊下を見ただけで凄いと言わしめている……。個室はもっと凄いんだが……。
ボラ
「こちらの部屋を開けておきました。これ、部屋の鍵です。どうぞ。」
バレット
「わかりました。ありがとうございます。」
太郎
「俺の部屋のお隣だった。」
バレット
「太郎さん隣人だったのですね。これからよろしくお願いします。」
脇腹から生える中脚で握手を求めるバレットさん。四本腕の相手と握手するのは流石に初めての体験だな……。
ボラ
「お二人さん、改めて注意事項がありまして……。」
太郎
「改めて?」
ボラ
「太郎さんが入居したときに言わなかったので。」
太郎
「はぁ……。」
ボラ
「壁の防音が不完全なので大きな音は出さないようお願いします。」
隣人トラブルを避けるためか……まあ妥当だな。
ボラ
「特に太郎さん、ツッコミを行う際も大声はご遠慮いただきたい。」
太郎
「俺名指しなのかよ。いやそれならボケなきゃいいでしょ……。」
地下なので外までは音漏れしないが隣室には聞こえてしまうとのことである。
壁の塗装にあれだけ拘っているんだから防音性も努力しろよ……。
ボラ
「先生は長旅でお疲れでしょう。部屋でくつろいでいてください。何かあれば太郎さんにお申し付けください。」
太郎
「そこで隣人を使うのかぁ。」
何かある度に階段上り下りするよりは隣人に頼ったほうがマシではあるが……。
ボラの話を聞きつつ自室を確認するバレットさん。
バレット
「強烈な内装ですね。」
太郎
「明かりを消すともっと凄いですよ。」
バレット
「何か隠された秘密が?」
太郎
「消してみてのお楽しみです。」
含んだ言い方でちょっと期待させてみる。
タチウオ
「吾輩は……」
ボラ
「タチさんは太郎さんと相部屋でお願いします。」
太郎
「何で!?バレットさんの護衛じゃないの!?」
ボラ
「別種族とはいえ異性との相部屋は認可されません。規則ですので。」
太郎
「あっ、そっかぁ……。」
中性的な声で気付かなかったがバレットさんは女性だったらしい。
よく考えたら蟻って個体の大半は雌だもんな……。
それとは別に新たな問題が発生した件、ガミジンさんに伝えねばなるまい。
太郎
「俺ちょっと上に行ってくるのでタチさん適当にくつろいでてください。」
タチウオ
「かたじけない。」
刀を立てたまま腰を下ろすタチウオを見届け階段を上る。
一階に戻りマッサージチェアのところに歩いて行くと……。
太郎
「どういう状況ですかこれ?」
ガミジン
「あぁ、それはそちらのサハギンさんが……」
ミノカサゴ顔のサハギン
「では行きますよ?」
マッサージチェアの上でなぜか上着を脱ぎ、うつ伏せの姿勢になっている村長。
そこに針を構えたミノカサゴが……これはまさか針治療!?
村長
「ふぉぉぉ……。」
太郎
「めちゃくちゃ気持ちよさそう。」
村長は背中に針を刺されてご満悦だ。
ドヤ顔サムズアップで俺を見るミノカサゴだが……ミノカサゴって毒があるんじゃなかったけ?
唐突に隣のマッサージチェアに蟷螂が仰向けに寝転がった。……こいつにも針治療を?
太郎
「お前は止めとけ。標本になっちゃうから。」
村長たちがどうなるのか気になったが後回しだ。まずはガミジンさんと階段前まで移動。
太郎
「ガミジンさん、ちょっと地下室の環境が変わったというか……」
ガミジン
「環境ですか?」
小声で語りだした俺に困惑の視線を投げかけるガミジンさん。
太郎
「秘密のお話は地下室ではできなくなっちゃいました。」
ガミジン
「そうなのですか?」
太郎
「さっきの蟻さんがお隣の部屋に滞在するそうなんですが……部屋の壁が薄くて話が漏れてしまうみたいで。」
ガミジン
「それは確かに困りますね……。」
代案の一つも出したいところだが……。
ガミジン
「しっかりと防音できてる部屋は無いのか後で聞いておきましょう。」
太郎
「そうですね……どのみち彼らに頼るしかないか。」
結局困ったときはサハギン頼みの俺たちだった。
ガミジン
「村長さんのところに戻……おや?」
ガミジンさんにつられて振り向くと階段からタチウオが上がってくる。
太郎
「どうかしましたか?」
タチウオ
「車の移動を命じられました。」
駐車場はそこまで広くないからな……。
入口へ歩いて行くタチウオの背中を見送り、俺たちは再度村長のもとへ向かった。
案の定針治療はまだ続いていた。
太郎
「ミノカサゴさん、一応お聞きしてもよいでしょうか?」
ミノカサゴ
「はい?」
太郎
「家電店で針治療を敢行した意図を教えて頂きたい。」
ミノカサゴ
「そこに針があるからだ。」
太郎
「答えになってないよぉ……。」
針治療を続けるなら場所を移動してほしいのだが……などと考えているとガミジンさんが俺の肩を叩く。
ガミジン
「クマノミさんが戻ってきたみたいですね。」
太郎
「あっ、本当だ。……空のポリタンクを店内に持ち込んでますけど。」
ポリタンクを担いだクマノミがこちらに歩み寄ってきた。
太郎
「お帰りなさい。で、それどうするんですか?」
クマノミ
「外に捨てるわけにもいかないのでお店で処分してもらおうと思いまして。」
太郎
「あぁ……一応これも資源ゴミか。」
店内の見取図を出してゴミの回収ボックスの位置を……いや、流石にポリタンクは入らないかな?
店に居るサハギンに助言を求めようと辺りを見回す。……ん?あいつ何故戻って来てるんだ?
車を動かしに行ったはずのタチウオがなんか速足でこちらに近付いてくる。
太郎
「何かありまし……!?」
問いかけようとした刹那、クマノミから空のポリタンク問答無用で渡される。
手早い動きで拒否できずそのまま受け取ってしまった……。
そしてクマノミはタチウオと黙って目配せするとハンドガンを取り出して歩いて行った。
タチウオ
「不審者らしき人が来た。下がっていてくれ。」
太郎
「マジかよぉ……。」
今日も災難だ……。ガミジンさんと一緒にマッサージチェアのところまで後退する。
幸いと言うべきか針治療は終わっており村長は仰向けになっていた。
ミノカサゴ
「どうしました?」
ガミジン
「不審者が出たそうです。村長さんをいつでも逃がせる状態にしてください。」
ミノカサゴ
「……了解です。」
ちょっと眠そうにしている村長を俺と家政婦さんで車椅子に乗せる。
村長
「ん?急にどうしたんだ?」
太郎
「……すぐ済みますからねー。」
ミノカサゴ
「あの人ですかね……?」
視線の先に黒いコートを着た怪しい中年が居る。
クマノミとタチウオが左右から挟み込むように監視しているが気付いているのか?
ガミジン
「コートの下に武器とか隠し持ってたら危ないですよね……。」
太郎
「いや……どうかな……?」
ガミジン
「……何か気付きました?」
あのファッションから察するに武装している線は薄いだろう。
コートの丈は膝下までだが……その下に微妙に生足が見えているのだ。
靴こそ動きやすいスニーカーのようなものを履いているが靴下が見受けられず靴の上方に脛毛が露出している。
その辺から推測してコートの中には何も着ていない可能性が高い。
太郎
「ガミジンさん見てください、あいつの脛毛!」
ガミジン
「す……脛毛……!?」
太郎
「俺の見立てではあいつは露出狂です。間違いない。」
ガミジン
「太郎さん……今朝方裸のオークを見かけたからって……。」
太郎
「あっ、信じてないですね!」
アホなやり取りをしている間に不審者がコートに手を掛けたぞ……!
ガミジン
「脱ぐ気でしょうか?」
太郎
「俺の予想が正しいか、これではっきりしますね。」
場に緊張が走る。左右で見張るサハギンも臨戦態勢……!
正面からチョウチンアンコウが声を掛ける。
チョウチンアンコウ
「何かお探しでしょうか?」
不審者
「動くんじゃねえ!!(大声)」
叫ぶと同時にコートを広げる不審者。
コートの下、果たしてその出で立ちは……下半身はブリーフ一丁だが上半身にはベルトらしきものを巻き付けているようだ。
ベルトに固定された大量の爆発物……ではなくデカいえんどう豆の鞘みたいなのが並んでいる。
太郎
「自爆テロは……無理だよな。豆だし。」
ミノカサゴ
「見た目で判断しないでください。豆に偽装された爆弾かもしれません。」
ミノカサゴは注意を促しつつ近くのテーブルから商品を降ろす。
そのままテーブルを立てて俺たちの前に配置。どうやら盾として使えってことらしい。
仮にあれが爆弾だった場合、テーブル一つでどこまで身を守れるか怪しいが……。
ガミジン
「とにかく退路を確保しましょう。」
太郎
「そうですね、テーブルの陰に隠れながら裏口を目指しましょうか。」
まずは避難が先決。しかしミノカサゴに目をやると……どこから取り出したのか吹き矢を構えて不審者に狙いを定めている。
太郎
「仕方ないな……村長さんの避難は俺たちだけで……」
不審者
「『種付けおじさん』に栄光あれ!!!」
太郎
「!!?」
掛け声と共に爆竹のような破裂音が店内に鳴り響く。そして間髪入れずに別な音も聞こえるが……豆の落下音だなこれは。
クマノミ
「確保!!」
タチウオ
「……!」
音と煙には驚いたがサハギンが不審者を無事捕縛したようだ。
村長
「何が……起こっているのだ?」
太郎
「避難訓練です。外に出ましょうか村長さん。」
裏口から店外へ出て駐輪場前で一息つく俺たち。
村長一行にガミジンさんと俺、全員怪我も無く無事だ。
太郎
「全く……一時はどうなることかと……。これからどうしましょう?」
ガミジン
「店内の安全が確保されるまでは外で待機ですかね。」
村長
「さっきは訓練と言っていたがやはり実戦だったか。」
太郎
「……。」
小声で話していたのに村長にも聞こえてしまったようだ。
結局バレちゃったよ……。
村長
「貴様ら……車椅子のジジイなど置いて逃げればよいものを……。」
太郎
「そうは行きません、お客様第一です。」
村長
「傲りだそれは。若い者が年寄りなんぞのために危険を冒すんじゃない。」
基本やりたい放題のこの人に突然そういうこと言われると調子狂うなぁ……。
バレット
「お取込み中のようですけど……一体何があったんですか?」
太郎
「あぁ、ちょっと不審者が……ん?どこだ?」
いきなり話しかけられたが声の出処が分からないぞ。
全員で辺りを見回すがバレットさんの姿は見当たらない。
バレット
「ここですよ。」
声のするほうには……駐輪場の端で2センチ程の蟻が角砂糖を持ち上げている。
太郎
「蟻人間からホンモノの蟻に!!?」
バレット
「何言ってるんですか……?」
蟻の後ろのマンホールの蓋が開き、バレットさんが顔を出した。
太郎
「そこ地下室に繋がってるんですね。」
バレット
「ええ。階段のほうが突然通行止めになって……あっ、村長さん。こちらの避難経路はご内密にお願いしますね。」
マンホールから器用に這い出すバレットさん。
太郎
「今店内のサハギンさんが不審者の対処をしてます。」
バレット
「不審者……店内に煙が漂っていましたけどただの不審者なんですかね?」
ガミジン
「それなんですが……おそらく『種付けおじさん』の構成員かと……。」
太郎
「叫んでましたもんね。」
『種付けおじさん』は環境破壊が目的だと聞いていたが……さっきのはなんか自爆テロみたいなノリだったなぁ。
ガミジン
「おそらくあの豆みたいなのを撒くのが目的だと思いますが……。」
太郎
「店内に撒いても芽は出ないですよね?」
ガミジン
「ですよね。床材もしっかりしてるし。」
村長
「田舎の店だと舐め腐って事前調査無しで来たのだろう。」
太郎
「いやいやそれは……テロリストって俺らが思ってるよりバカなのか……?」
不審者に対する考察を皆でしていると店の裏口が開いた。
武装解除された中年がクマノミとタチウオに脇を挟まれ引き摺られていた……。
危険物を剝ぎ取られ着衣はブリーフのみとなった中年はさながら『捕らえられた宇宙人』である。
太郎
「そいつどうするんです?」
クマノミ
「自警団に預けます。仕事を増やしてしまうことになりますが……。」
村長
「構わん。嬲る相手が増えれば奴らも喜ぶだろう。」
太郎
「村長さん、自警団の扱いおかしくない?」
不審者は怯えた様子でサハギンたちに連行されていった……。
遅れて裏口から出てきたチョウチンアンコウが俺に声を掛ける。
チョウチンアンコウ
「店内に危険物は確認されませんでした。太郎さんは片付けの手伝いをお願いします。」
太郎
「了解です。」
片付けか……あのでかい豆を処分するのだろうか?
村長
「片付けの邪魔になるだろうし年寄りは退散するか。」
太郎
「村長さん……。」
ガミジン
「では私が送って行きますね。」
太郎
「バレットさんは?」
バレット
「私は部屋に戻ります。」
言いながらまたマンホールの蓋を開けるバレットさん。
太郎
「階段使わないんですか……。」
バレット
「こちらのほうが上り下りしやすいんですよね。」
だよね、蟻だもんね……。
駐輪場の集まりは解散し、俺は裏口から店に入る。
中にはまだ煙が漂っているな……。
ボラ
「太郎さんは換気窓を開けてきてください。」
太郎
「了解です。」
窓のほうに移動しようとするが……クマノミが付いてきた。
太郎
「安全確認は終わったんですよね?」
クマノミ
「さっきの爆発はもう大丈夫ですけど……囮の可能性はありますからね。」
太郎
「あぁ……本命が別行動してるかもってことですね。あんまり考えたくないな……。」
クマノミ
「そういうわけで引き続き警戒です。」
話しながら窓を開ける。
太郎
「しかし……本命か。奴らの目的は……豆撒き?」
クマノミ
「もしそうなら囮が店で暴れている間に別働隊が豆を撒ける場所に……?」
太郎
「豆の撒き所……栄養のある土地か。」
クマノミ
「このあたりだと村長宅の裏の畑が最も肥沃な土地ですかね。」
なるほど。そう考えると結果的に村長を店内に釘付けにできたわけだし……囮としては機能したわけだ。
しかしあの場所はなぁ……。
太郎
「村長宅の敷地、今朝方オークが徘徊してましたよね。」
クマノミ
「らしいですね。」
今朝のクマノミとは別個体だから又聞きしたような薄い反応だな……。
太郎
「最初そっちに撒くつもりだったけどオークと鉢合わせして予定が狂ったのでこっちに来たって感じじゃないかな。」
クマノミ
「その可能性はありますが……それだったら出直したほうがマシじゃないですか?」
太郎
「いや、実際全裸のオークを見たら人の居るところに来たくなりますって。怖いもん。」
話している間に換気窓の作業が終わった。
次の指示を聞くためボラのところに移動する。
太郎
「換気窓、終わりました。」
ボラ
「お疲れ様です。次は……汚れた床を拭いてください。」
太郎
「雑巾掛けですね。」
バケツと雑巾を持って爆発のあった地点へ確認に行く。
太郎
「うわぁ……。」
幾つか潰れた豆の汁が床に零れていた。近くの棚にはほとんど被害が無いのは幸いだが……。
ボラ
「出せなくなった商品は我々で片付けていますので床お願いしますね。」
太郎
「爆発があったにしては被害が小さいですね。」
ボラ
「ええ……豆を飛ばすために使われたのが市販の爆竹でして……。」
太郎
「しょぼいな。」
ボラ
「真面目に自爆するのが怖かったんじゃないでしょうかね?」
自爆で死ぬよりは逮捕されたほうがマシ……なのか?
一瞬そう思ったが自警団次第だな……。
ボラが商品を台車に乗せて去って行く傍らミノカサゴが潰れた豆をトングで掴みゴミ袋に入れる。
ミノカサゴ
「うぅ……。」
太郎
「どうしました?……くっさ!?豆の汁臭ぇぇぇ!!」
ミノカサゴ
「雑巾で拭くだけで大丈夫ですか?」
太郎
「いや無理でしょこれ!消臭剤要るでしょ!」
俺は鼻を摘まみながら片手で床を雑巾掛けを開始。
ミノカサゴはゴミ袋の口を縛り消臭剤を取りに行った。
太郎
「なんなんだこの豆……毒とか入ってたりしないよね……?」
豆に詳しくない俺にとってこれは未知の植物である。
専門家の助言が欲しいところだが身内にそんな奴は居ない。
……ゴミ袋が透明だったので離れた位置から中の豆を凝視してみる。色は緑、多少でかいが外見は普通の豆だ。
亀裂から出ている汁は無色だ。匂いこそ酷いがヤバイ色はしていない。
太郎
「腐っているわけではないんだよな……。」
動けずにいると後ろから何かの袋を持ってクマノミが歩いてきた。
太郎
「臭くて仕事にならないよ~。助けて。」
クマノミ
「これで匂いを相殺しましょう。」
太郎
「それって……隣村で貰ったキビヤックじゃねーか!!!相殺は無理だろ!相乗効果で地獄を見ることになるぞ!!」
必死にキビヤックの開封を阻止しているとミノカサゴが戻ってきた。
ミノカサゴ
「じゃあまずはこれ。」
太郎
「消臭スプレーだ。」
クマノミ
「キビヤックを消臭してみましょう。」
太郎
「いや豆が先だから。無駄遣いしないでくれよ。」
ミノカサゴにクマノミを抑えさせつつ俺は豆の汁が残る床に消臭スプレーを吹きかけた。
ミノカサゴ
「次はこれ。念のため……。」
太郎
「はい。……医療用の消毒液かこれは。」
クマノミ
「その豆に毒は無いと思いますけどね。」
太郎
「ん?豆に詳しかったり?」
クマノミ
「いえ、仮に毒があったら地肌に触れていた不審者が無事なのはおかしいかと。」
太郎
「確かに。」
不審者はブリーフ一丁にされていたが致命的な傷や毒の症状みたいなのは確認できなかった。無毒と判断していいだろう。
雑巾を新しい物に取り換え再度床を拭く。
一応床に跡が残らない程度には拭いたが……今度は若干消毒液臭いな……。
太郎
「雑巾で対処できるのはここまでだな。」
一息ついて立ち上がる。
ボラ
「太郎さん、作業はそこまでで。指名が入っています。」
太郎
「え?指名ですか?」
呼ばれたのでボラのほうへ歩いて行く。
ボラの他にバレットさん、あとタチウオも居る。遅れてミノカサゴも合流。何の集まりだろうか?
太郎
「何の御用でしょうか?」
バレット
「今から自警団のところに行きますので太郎さんにもご同行願います。」
太郎
「言われれば行きますけど俺何か役に立ちますかね?」
バレット
「太郎さんを入れないと魔物と獣人だけで行くことになりますので。」
言われてみればこの中で人間は俺だけだが……。
バレット
「人間の視点でのブレーキ役が必要と思いまして。」
太郎
「なんだそれちょっと嫌な予感がするぞ……。」
タチウオ
「待たせると悪い。すぐに出るぞ。」
詳しく聞く時間は無いらしい。
……店の外に出て車に乗車。
運転席にタチウオ、助手席にバレットさん。
後ろの席、俺の隣にはミノカサゴが座る。そしてミノカサゴの毒針が……
太郎
「棘をこっちに向けないでね!」
ミノカサゴ
「車内が狭いのでどうしようもないのですが……。」
バレット
「もし刺さっても解毒剤はありますので安心してください。」
太郎
「刺す前提っておかしいだろォ!?」
タチウオ
「いいから早くシートベルト締めろや!」
乗車で一悶着あったが無事出発。
十分程度で目的地に着いた。
タチウオ
「到着だ。」
バレット
「じゃあ荷物も降ろしましょう。」
ミノカサゴが持ち込んでいた段ボール箱……これか?
ミノカサゴ
「降ろします。そっちを持ってください。」
太郎
「はい。……で、これには何が入っているんですか?」
ミノカサゴ
「自警団から注文のあった……尋問用の小道具ですね。」
……つまり拷問器具か。呼ばれた理由が分かった気がする。一線を超えそうなら俺が止めるしかあるまい。
車を降りて目の前の建物を見る。表札には『自警団集会所』と書いてある。
タチウオ
「これも頼む。」
太郎
「ん?もう一箱?」
タチウオ
「水槽が入っているから慎重に扱ってくれ。」
太郎
「……水槽!?」
タチウオ
「君の部屋に有毒生物が居たから使えると思ってそれを連れてきた。」
太郎
「あぁ……オニヒトデとウミケムシか……。」
今朝方クリスマスツリーに付いていたアレだな……。
太郎
「しかしこれ尋問に使うとか外道の所業やぞ……。」
タチウオ
「確かにウミケムシは釣りの外道だな。」
太郎
「……。」
なんかいろいろな意味で不安になってきたが……立ち止まっていても仕方がない。
意を決して集会所に入って行くのだった……。
「あぁ……よく寝た……。」
今日も落ち着かない例の部屋で起床である。
体を起こし部屋を見渡す。
クマノミ
「ゴンザレス君弱いっすね……。」
魔王様と護衛たちは夜通しババ抜きをしていたようである。
太郎
「おはようみんな……いや待てゴンザレスの頭どこやったんだよ!?」
寝起きに首なし白骨死体と遭遇だ。
そいつとクマノミが眼前でババ抜きしてるんだからシュール極まりない。
クマノミ
「おはようございます。ゴンザレス君は罰ゲームを科してから泥沼大連敗中です。」
太郎
「負けた罰ゲームで頭外してるのか……。」
ガミジン
「ちなみに頭部は今あそこにあります。」
ガミジンさんが指差す方を見る。
……部屋の隅、クリスマスツリーの頂点にゴンザレスの頭が付けられており更にその眼窩に懐中電灯が刺され点灯している。
ツリーの本体も点滅する電飾の間でオニヒトデとウミケムシ、そしてテヅルモヅルが蠢いているという惨状だ。
太郎
「何すかこれ?」
クマノミ
「倉庫に眠っていた不良品だそうです。」
太郎
「『不良品』で済ませるにはツッコミどころ多過ぎませんかね……?」
クマノミ
「頂点にはゴンザレス君の頭ではなく本来あれを乗せるのですが……。」
ツリーの根本の隣に途轍もなく禍々しい物が置いてある……。
真っ赤な下地に黒で呪術文様が描かれた髑髏だ。しかも阿修羅の如く三面である。
三面全部の眼窩にはしなびた竹輪が刺さっている。
太郎
「不良品の理由って……。」
クマノミ
「竹輪の消費期限が切れてるから出せないようですね。」
太郎
「一応聞きますけど竹輪の穴から水雲流れたりします?」
クマノミ
「あっ、ご存じだったんですね。」
太郎
「……。」
よく見ると髑髏の後ろから水雲を送り出すチューブとポンプが出ているのが見える。
太郎
「……これ売れるの?」
クマノミ
「さあ?」
ガミジン
「去年フォルネウスさんがこのツリーを竜拝教国に寄与しようとしたんですがね。」
太郎
「マジかよ……。」
ガミジン
「国王様が顔を真っ青にして返却を申し出たそうでして……。」
太郎
「至極真っ当な反応ですね(白目)」
ガミジン
「でも大阿修羅宇宙教国の方ではすんなり貰ってくれたみたいですよ?」
太郎
「……!?」
髑髏が三面なら問題無い……?いや、そういう問題ではないと思うが……。
太郎
「これ一応クリスマスツリーですよね?」
クマノミ
「そうです。」
太郎
「この島にクリスマスの概念あるの……?」
ガミジン
「最初に木を用意したのは私なんですよ。」
太郎
「あぁ、納得。」
布教を目論むキリスト教徒だからね。
ガミジン
「それをデカラビアさんが勝手に飾り付けしてですね……。」
太郎
「星の代わりにヒトデを付けたのはデカラビアさんのセンスか……。」
ガミジン
「フォルネウスさんが大ウケして国外に持ち出しちゃったんですよ……。」
太郎
「真面目な人だと思ってたけどこれに大ウケしちゃうんですね。」
ガミジン
「三面髑髏とポンプはフォルネウスさんのアイディアですよ?」
太郎
「……マジかよ。」
飾り付けのセンスが常人離れしていらっしゃる……。もしかしてサハギン魚拓はあれでも自重していた……!?
太郎
「朝っぱらから凄まじい物見ちゃったなぁ……。上行って来ます。」
クマノミ
「お供します。」
扉の前で番をしていたクマノミが付いてきた。
……一階、開店前の店内でボラに指示を乞う。
太郎
「おはようございます。」
ボラ
「おはようございます。これを渡しておきますね。」
箒と塵取りを渡された。
ボラ
「開店前は表で掃き掃除をお願いします。」
太郎
「了解っす。……店内でのお仕事は?」
ボラ
「荷物運び等の力仕事は我々の領分ですので。」
人間よりサハギンのほうが力あるもんね……無理に手伝いに行ったらかえって邪魔だろうな。
……言われた通り店の前に出て掃き掃除を始める。
護衛のクマノミは玄関の両脇に立ち臨戦態勢だ。家電店にあるまじき緊張感である。
クマノミ
「開店時間になったら私がお知らせします。」
太郎
「それまで掃き掃除ですね。」
クマノミ
「先日の件もありますので我々の目の届くところで……おや?」
クマノミの視線を追って俺も振り返る。
……あれは村長か?今日は家政婦さんが車椅子を押しているようだ。蟷螂は安静だからね。
太郎
「まだ開店前なんですが……どうしました?」
村長
「庭にこんなものが落ちていてな……。」
太郎
「……!!」
村長が取り出したのはペットボトルロケットだ。一昨日発射したやつが村長宅の敷地内に落ちたらしい。
村長
「人の庭に不法投棄とは明らかな挑発行為だ。そうは思わんかね?」
村長怒っていらっしゃるぞ……シラを切って乗り切るよりは真実を話して謝るべきか。
太郎
「村長、こちらへ……。」
村長
「……?」
村長と家政婦さん、そしてクマノミ一匹を伴い裏の駐輪場へ向かう。
村長
「……これは!!」
太郎
「お察しの通り、ペットボトルはこの自転車から発射されたものです……。」
驚愕する村長。
俺は村長の前に一台の自転車を持って来て説明を始める。
太郎
「ベルの横にボタンがありますよね?それ押していただけます?」
村長
「これか?」
車椅子から身を乗り出し、ボタンを押す。
村長
「……飛んだ!!?」
ペットボトルロケットは不規則な軌道を描き飛翔。50メートルほど飛んだところで茂みに墜落した。
太郎
「このようにどこに飛ぶか予測不能なのです。だから誤射による墜落、悪意は無いってことで……。」
村長
「……。」
太郎
「……もちろん村長さんのお宅に落ちた物は私たちが回収させていただきます。」
掃除は中断。クマノミを伴って村長宅のお庭へお邪魔する。
太郎
「落ちた位置が近くならあと三本あるはずだ。村長さん、敷地はどこまでです?」
村長
「向こうに見える杭までだな。」
村長の指さす方向……見えないな、ちょっと歩いてみるか。
道沿いを歩き百メートルほど進むと茂みに隠れた杭を発見。敷地広いな……。
太郎
「敷地は把握できたので……ペットボトルロケットを探して回収させていただきますね。」
村長
「ああ、頼む。」
太郎
「クマノミさん、害獣が出たときはお願いしますね。」
クマノミ
「お任せくださ……!?」
固まるクマノミ。何か問題発生だろうか?
クマノミが口の前に人差し指のジェスチャー。黙る俺たち。
緊張した空気の中クマノミがゆっくりと射撃姿勢をとる。その先に視線を向けると……。
太郎
「あれは……オークか?」
だいぶ離れてはいるが遠目から見ても判別できる緑がかった肌とガタイ……。前回見た個体よりは小さいようだが……?
銃口をオークに向けたまま双眼鏡を渡すクマノミ。
俺はそれを受け取り早速覗き込んだ。
太郎
「あいつ全裸だ!」
クマノミ
「そのようですね(困惑)」
村長
「これは獣害ではなく変質者の不法侵入なのか……!?」
うろたえる俺たち。右手には鉈を握りつつも局部丸出しで仁王立ちという異様なオーク♂……。
しかしあのオークは何の目的で全裸なんだ?
クマノミ
「こちらにはまだ気付いていないようです。撃ちますか?」
村長
「う、うむ……。」
太郎
「あっ、何かするみたいですよ!?」
全裸オークが左手で何か掲げたぞ?
……あれってペットボトルやんけ!!
太郎
「すいません先に拾われちゃいました……。」
村長
「それはいいが奴は何をする気だ?」
俺たちの視線が全裸オークの手元に集中する。
全裸オーク
「……!!」
ペットボトルの口を鉈で切り落とし……なんと、股間に装着してしまった!
一同
「うわぁ……(ドン引き)」
オークは満足げな表情でそのまま敷地から出て行った……。踊るような動きで移動し、村の外へ向かうようだ。
太郎
「ペットボトルってそこそこ大きいけどそれが嵌まるって……オークのアレってかなり太いんですね。」
クマノミ
「そこに着目しますか。」
村長
「アレの話はよい!……それより監視は何をしていたのだ!!」
家政婦
「監視の人なら先週お給料の額で揉めて解雇したじゃないですか。」
村長
「……。」
漫才を行う村長をスルーしつつクマノミと打開策を練る。
クマノミ
「隣の村で効果が実証された忌避剤……使ってみます?」
太郎
「やっぱそれが無難ですよね。」
オークがくしゃみをしながら逃亡したという最新の忌避剤だ。敷地内で使うならライフルよりも安全だろうし最適解だな。
クマノミ
「今現在こちらで預かってる分だと足りるかな……?」
太郎
「在庫の問題があるのか……。」
村長
「足りなかったら後日追加注文で頼む。」
追加注文か……監視の人件費よりは安く上がる……のか?
村長
「ゴミの回収は……。」
クマノミ
「忌避剤散布後ですね。安全第一です。」
太郎
「そうなりますよね。」
あんなのに見つかったら何をされるかわからない。安全が確保されるまでペットボトルの回収は諦めよう。
店の敷地に戻り作戦会議を開始。
クマノミ1
「私が詰所に行って忌避剤を取ってきます。」
クマノミ2
「その間我々はこちらで待機です。」
太郎
「了解です。」
駐輪場へ向かうクマノミ。
太郎
「自転車で行くのか!?」
クマノミ1
「手で持ち運ぶよりは楽かと……。」
自転車が出発しようとしたとき店内からボラとガミジンさんが出てきた。
ボラ
「そろそろ開店時間……どこか行くんですか?」
クマノミ1
「忌避剤を取りに行きます。」
ガミジン
「よくわかりませんがお気をつけて。」
自転車を見送り、現状をガミジンさんたちに説明する。
村長
「家の庭に全裸のオークが出たのだ……。」
ガミジン
「それはまた……え?全裸??」
太郎
「オークにも露出癖がある奴って居るんですねぇ。」
ボラ
「衣服の有無にかかわらずオークは危険なのですが。」
太郎
「そうなんですよ。それで忌避剤を取りに行ってもらってるんです。」
ガミジン
「忌避剤ですか……私たちがこの村に来る時一緒に積んできたやつですね。」
その時には荷物はチェックしていなかったが一緒に持って来ていたらしい。準備がいいなこの人たち。
ボラ
「しかし大変ですね。昨日の後処理もあるのに……。」
村長
「うむ、悪いことは重なるものだなぁ……。」
太郎
「昨日の……武器の密売か。解決したんですか?」
村長
「売人は捕縛できたらしいぞ。」
ボラ
「ええ。今は自警団のところで拘留してもらってますね。」
拘留中……となると次は……
村長
「黒幕の情報を聞き出す段階だな。」
太郎
「ええと……尋問?」
村長
「尋問など生温い。拷問だ拷問。」
太郎
「……!?」
村長
「自警団には生粋のサディスト共を集めておる。すぐに情報を吐くだろう。」
太郎
「この村ヤバイよぉ!」
この物騒な物言いのおっさんを諫めてもらおうと魔王様に目配せするのだが……。
ガミジン
「立場上干渉すべきか悩みますね。」
太郎
「そこで慎重になっちゃうのか。」
暴走気味の村長だが……誰かブレーキ役のような人居ないのかな……。
ボラ
「ところで先日の蟷螂の様子はどうですか?」
村長
「家で安静にさせているが……いつもほど活発ではないな。」
太郎
「寄生虫をケツからひり出した後だから仕方ないね。」
ガミジン
「言い方が下品ですよ……。」
太郎
「すみません。」
それはそうと敷地に全裸オークが出た村長の家……果たして弱った蟷螂に留守番させて大丈夫なのだろうか?
太郎
「ちょっと様子を見に行ってみません?」
村長
「心配か?あいつには護身用にリボルバー拳銃を持たせているからオーク風情に後れを取ることは無いぞ。」
太郎
「蟷螂って拳銃使えるのか……。」
村長
「村一番のガンマンだぞ。」
太郎
「ガンマンのマンはマンティスのマンですねわかります」
沈黙が走る……滑ってしまった。
ガミジン
「行くなら私とボラさんで見てきますよ。太郎さんたちは危ないですからこっちで待っていてください。」
太郎
「まあ危なくはありますが……」
ガミジン
「私なら拳銃で誤射されても死にませんので。」
太郎
「そこかぁ。」
害獣より拳銃が危ないという事実。確かに誤射は怖い。
クマノミ
「ではこれを。」
すかさずアサルトライフルを渡してくるクマノミ。
ガミジン
「銃撃戦はしませんけど……。」
クマノミ
「一応です一応。立場上手ぶらで行かせるわけにもいかないので。」
ガミジン
「そうですか……?じゃ、すぐ行って来ますね。」
出かける魔王と半魚人。
実際目と鼻の先だし何事も無ければすぐ済むだろう。
……二人を見送ってベンチに腰掛ける。
チョウチンアンコウ
「そこに居ましたか。」
太郎
「はい。……何か用事ですか?あっ、開店時間だから仕事の話か……。」
チョウチンアンコウ
「いえ、太郎さんには昨日呼んだ獣医(?)の対応をお願いします。」
太郎
「了解……どんな人が来るんです?」
チョウチンアンコウ
「獣人だと聞いています。」
太郎
「情報それだけか……。」
チョウチンアンコウ
「護衛として魔物も来るのでそちらとも仲良くしてください。」
獣人と魔物……どうせまたイロモノだろうな……。
太郎
「できる限り善処します……。」
村長
「おい店員ちょっと来い。」
自販機の前に居る村長がお呼びだ……。
家政婦
「太郎さんはそちら側を持ってください。」
太郎
「車椅子持ち上げるの!?代わりに自販機のボタン押すくらいは……」
村長
「どうしても自分で押したいのっ!!」
太郎
「わかりました……。」
家政婦さんと共に車椅子を持ち上げる。思わぬところで重労働だ……。
太郎
「よし……高さはこのくらいで……。」
村長
「……!!」
真剣な表情で両手を駆使し、自販機の全ボタンを万遍無く連打する村長。
太郎
「そんなに押しちゃって大丈夫?」
家政婦
「お金は一本分しか入れていないので大丈夫かと。」
太郎
「……。」
やり遂げた顔でサムズアップする村長を見届け、車椅子を下ろす。
太郎
「……で、何をお買い上げに?」
村長
「幾つか同時に押したから何が出てくるかはわからんな。」
汗を拭いながら答える村長を尻目に自販機は缶を吐き出した。
村長
「取ってくれ。」
太郎
「はいはい。」
手に取った缶を確認、村長に渡す。
太郎
「どうぞ……。」
村長
「これは……青汁だ!」
家政婦
「あぁ……村長さん飲めないの出ちゃったねぇ……。」
太郎
「青汁飲めないんかい!普通に選んで買っていればこんなことには……。」
車椅子……持ち上げ損だった……。
ガミジン
「何やってるんですか(呆れ)」
太郎
「あっ、お帰りなさい。」
例の蟷螂を背負ってお二人が帰還した。
村長
「仕方がないから青汁は蟷螂に飲ませよう。」
太郎
「飲むのか……?」
ガミジン
「しかしまたどうして青汁なのですか?」
太郎
「自販機の商品を決めた人に聞いてください。」
答えながら自販機を改めて凝視するが……
太郎
「これはひどい。商品の半数が青汁で更にその半分が『温かい』青汁だ……。」
なぜこんなに青汁押しなんだ?普通の天然水やお茶もあるけど青汁よりも少ないし……。
ガミジン
「ボラさん、何故この自販機を……?」
ボラ
「品目に青汁が多い件ですね?それは単純に調達コストの問題です。」
太郎
「近くに青汁工場でもあるんですかね……。」
ボラ
「言ってしまえばそんなところです。」
太郎
「否定せんのかい。」
自販機のメニューにケチをつけていると自転車に乗ったクマノミが帰還。
クマノミ
「ただいま戻りました。」
太郎
「車体にポリタンクを縛り付けて自転車が凄い見た目に……。」
ガミジン
「多めに持ってきましたね。」
ポリタンクを降ろすクマノミ。この中に忌避剤が入っているようだ。
クマノミ
「撒いてきますのでその間皆さんはこちらで待機で。」
太郎
「了解です。村長さん聞いて……うわぁ!」
振り向くと蟷螂が隣村で見たでかい蟋蟀を鎌で捕らえていた。
太郎
「近付けんな!どこから持ってきたんだよそれ!?」
何故か俺の顔にそれを近付ける蟷螂……。
村長
「駐輪場の裏で捕まえたようだぞ。」
そんなところにも生息していたのか……。
蟋蟀を齧ろうとする蟷螂をボラが制止する。
ボラ
「食べさせないでください。先日の寄生虫も他の虫から入った可能性がありますので。」
太郎
「そりゃごもっとも。」
他に経路も無いだろうしなぁ……ん?
太郎
「ボラさん……俺とんでもないことをしちゃったかもしれないです……。」
ボラ
「……どうしたんですか?」
太郎
「隣村でその蟋蟀の同族を……鍋にブチ込んじゃいました☆」
ボラ
「は?(威圧)」
……あぁ、怒っていらっしゃる。
ボラ
「誰かに喰わせたの?」
太郎
「……いや、いろいろあって誰も食べられませんでした。」
ガミジン
「食べられない辛さにしちゃいましたからね。でも加熱処理もしてたしあれなら寄生虫の心配は無かったんじゃないですかね。」
ボラは呆れながら俺たちを更に叱る。
ボラ
「あの大きさですよ?鍋で煮たくらいで安心しないでください。」
怖いこと言うなこの魚。
ボラ
「どうしても昆虫が食べたかったら養殖されたものを……。」
太郎
「そこまでして食べたくはないな。」
いくら寄生虫が怖いからといって養殖してまで食べようとは思わない……だいたい調味料無しの段階で凄まじく不味かったし。
そんなことを考えていると突如後ろから銃声が!
ボラ
「店の敷地で発砲すんなや!!」
太郎
「今度は何……?」
振り返ると蟷螂がリボルバー拳銃を用いて蟋蟀を射殺していた。食べられない腹いせか的にして遊んでいるようだ。
太郎
「危ないから銃はしまってください。」
村長
「一発で命中させているんだしいいだろ。」
太郎
「そういう問題ではないです。」
ボラ
「次撃ったら出禁にしますね。」
仮に流れ弾等があったら洒落にならない。家電店勤務がここまで危険だったとは……。
ガミジン
「お取込み中のところ申し訳ありませんが……お客さんが来たみたいですよ?」
言われて振り返ると道の先には……砂煙を上げて走ってくる車が見える。軍用のオフロード車みたいなごつい見た目だ。
太郎
「車で来るってことはゴエティアの関係者か……先日呼んだお医者さん……?」
ガミジン
「でしょうねぇ。」
太郎
「ボラさん、応対は……!?」
後ろを見ると厄介なことになっていた。ボラが蟷螂を抑え込んで手(?)から拳銃を取り上げている。
一方の蟷螂は翅をばたつかせて興奮気味だ。
村長
「こいつ車を見るのは初めてなんだよ。エンジン音とかで警戒しているんだろう。」
太郎
「それで発砲されたらたまりませんよ……。撃たないように躾けてください。」
弾丸を没収して拳銃を返すボラ。蟷螂はしょぼくれている。
ガミジン
「ちょっと移動しましょう。車停めるとき私たちがここに固まっていると邪魔でしょうし。」
太郎
「そうですね。じゃあ村長の車椅子は俺が押して行きます。」
村長
「うむ、苦しゅうない。」
太郎
「出禁にされかけてこの余裕……!」
俺たちが自販機前に固まると駐車場に車が停車した。
太郎
「さて、どんなのが降りてくるのか……。」
運転席から降りてきたのは……着流しの着物を着たタチウオ顔のサハギンだ!
タチウオ顔のサハギン
「……吾輩はタチである。」
太郎
「その自己紹介は誤解されるから止めた方がいい。」
村長
「君が医者なのか?」
タチウオ
「いや、吾輩は護衛兼運転手だ。」
そんなやり取りをしていると助手席側から更に誰か降りてくる。
今度はサハギンではなく獣人……いや、節足動物!?
???
「初めまして。」
太郎
「あっ、ご丁寧にどうも。」
手に医療鞄らしきものを提げた蟻顔の昆虫人間のような奴が出てきたぞ……。
その見た目に圧倒されつつガミジンさんに耳打ちする。
太郎
「この方は獣人って括りには……」
ガミジン
「見ての通り昆虫ですし獣でも何でもないんですが……獣人同様に人権が与えられていますので細かいことは気にせず他の方と同じように接してください。」
太郎
「わかりました。」
ちゃんと言葉が通じれば見た目など些細な事だ。とにかく話を聞いてみよう。
太郎
「あの……」
蟻
「患者はどこです?」
ボラ
「こちらです。」
患者ファーストだ。医者だから当然ではあるが……いろいろ質問するのは診察が終わってからだな。
村長
「早速診てやってくれ。」
蟻
「……。」
蟻が蟷螂の顔面を両手で掴みまじまじと見つめる。
蟻
「瞳孔、異常無しです。」
太郎
「いや待て蟷螂の瞳孔は開いたり閉じたりしないから!」
蟻
「……で、患部は?」
ボラ
「お尻からハリガネムシを出したのでそこですかね。」
ツッコミスルーされたけど大丈夫かこいつ……?
ガミジン
「太郎さん、蟷螂の瞳って……。」
太郎
「蟷螂の眼は複眼だから瞳孔とか無いです。光の加減で瞳があるように見えるだけですよ。」
ガミジンさんにツッコミの意図を説明する。
ガミジン
「なるほど……でもそしたら蟻さんも複眼じゃないですか。もしかして……」
太郎
「判っててボケた可能性が微レ存……?」
ちょっと心配になってきたが……一応サハギンの護衛を伴ってきたんだよな。ゴエティア側の人選なはず……。
等と考えつつ離れた場所から訝しみの視線を投げかけていたが診察は終わったようだ。
蟻
「直ちに治療が必要な個所はありませんでした。これ、持参した虫下しです。再度寄生された場合はこれを飲ませてください。」
村長
「わかった。」
ボラ
「寄生虫が入った経路は分かりますか?」
蟻
「食事からだと思われます。絶対に拾い食いはさせないようお願いします。」
蟷螂のダメージはたいしたことなかったようである。一安心だ。
ガミジン
「じゃ、改めて挨拶しておきましょうかね。」
太郎
「そうですね。」
二人で蟻人間のほうに向き直る。
ガミジン
「お疲れ様です。わざわざ往診していただき助かりました。」
蟻
「いえ、お気になさらず。仕事ですので。」
太郎
「ゴエティアから派遣されたお医者さん……で、いいんですよね?」
蟻
「はい。自己紹介がまだでしたね。」
おもむろに医療鞄を漁り名刺入れを取り出す蟻。
名刺を受け取り、蟻の自己紹介を聞く。
蟻
「私、バレットと申します。節足動物専門の医者でして今までゴエティアで研修していました。」
太郎
「節足動物専門とは……ニッチな需要だ。」
ガミジン
「そう思うでしょ?でも最近は昆虫にも医者がいるんですよ太郎さん。」
太郎
「そのようですね。」
なにせ蟷螂が車椅子押してるようなところだからね。
バレット
「寄生虫等の案件は可能な限り早めに対処したいということで派遣されました。」
太郎
「確かに話を通してから実際に来るまで早かったですね。」
ガミジン
「まあ特例ですよね、生態系に関わることですから。」
太郎
「なるほど。」
生態系……でかい寄生虫の分布は確かに気になる。万が一人間に寄生されたら嫌だし。
ガミジン
「私たちも自己紹介しておきましょうね。」
太郎
「そうですね。」
ガミジンさんと一緒に軽く自己紹介を行う。俺も名刺作るか……。
自己紹介が終わるとボラがこちらに歩いてきた。
ボラ
「お荷物をお持ちします。」
バレット
「よろしくお願いします。」
医療鞄を預かり店内へ入って行くボラ。
この流れで店内ってことはもしかして……。
太郎
「村の宿じゃなくてここに泊まるのか。」
バレット
「ええ。地下室のほうが落ち着くので。」
太郎
「蟻だからか……。」
バレットさんとタチウオも店内へ……それに続いて村長ご一行も店内へ。村長たちは何か買うのか?様子を見るために俺たちも店に入る。
……家政婦さんの手を借り車椅子からマッサージチェアに移る村長。
家政婦
「昨日座れなかったって拗ねてたんですよ。」
太郎
「そんな理由で来たんかい!」
ガミジン
「電化製品に馴染んできていますねぇ。」
俺が村長の来店した理由に驚愕していると階段の前でボラが手招きしている。
村長の暴走が心配だが……仕方がない、ガミジンさんにこの場を預けて地下に行こう。
倉庫を通過し地下二階へ。
バレット
「凄い内装ですね。」
太郎
「落ち着きませんよね。」
タチウオ
「落ち着くぞ?」
太郎
「サハギン基準では落ち着くだろうけどさぁ……。」
蟻さん視点でも廊下を見ただけで凄いと言わしめている……。個室はもっと凄いんだが……。
ボラ
「こちらの部屋を開けておきました。これ、部屋の鍵です。どうぞ。」
バレット
「わかりました。ありがとうございます。」
太郎
「俺の部屋のお隣だった。」
バレット
「太郎さん隣人だったのですね。これからよろしくお願いします。」
脇腹から生える中脚で握手を求めるバレットさん。四本腕の相手と握手するのは流石に初めての体験だな……。
ボラ
「お二人さん、改めて注意事項がありまして……。」
太郎
「改めて?」
ボラ
「太郎さんが入居したときに言わなかったので。」
太郎
「はぁ……。」
ボラ
「壁の防音が不完全なので大きな音は出さないようお願いします。」
隣人トラブルを避けるためか……まあ妥当だな。
ボラ
「特に太郎さん、ツッコミを行う際も大声はご遠慮いただきたい。」
太郎
「俺名指しなのかよ。いやそれならボケなきゃいいでしょ……。」
地下なので外までは音漏れしないが隣室には聞こえてしまうとのことである。
壁の塗装にあれだけ拘っているんだから防音性も努力しろよ……。
ボラ
「先生は長旅でお疲れでしょう。部屋でくつろいでいてください。何かあれば太郎さんにお申し付けください。」
太郎
「そこで隣人を使うのかぁ。」
何かある度に階段上り下りするよりは隣人に頼ったほうがマシではあるが……。
ボラの話を聞きつつ自室を確認するバレットさん。
バレット
「強烈な内装ですね。」
太郎
「明かりを消すともっと凄いですよ。」
バレット
「何か隠された秘密が?」
太郎
「消してみてのお楽しみです。」
含んだ言い方でちょっと期待させてみる。
タチウオ
「吾輩は……」
ボラ
「タチさんは太郎さんと相部屋でお願いします。」
太郎
「何で!?バレットさんの護衛じゃないの!?」
ボラ
「別種族とはいえ異性との相部屋は認可されません。規則ですので。」
太郎
「あっ、そっかぁ……。」
中性的な声で気付かなかったがバレットさんは女性だったらしい。
よく考えたら蟻って個体の大半は雌だもんな……。
それとは別に新たな問題が発生した件、ガミジンさんに伝えねばなるまい。
太郎
「俺ちょっと上に行ってくるのでタチさん適当にくつろいでてください。」
タチウオ
「かたじけない。」
刀を立てたまま腰を下ろすタチウオを見届け階段を上る。
一階に戻りマッサージチェアのところに歩いて行くと……。
太郎
「どういう状況ですかこれ?」
ガミジン
「あぁ、それはそちらのサハギンさんが……」
ミノカサゴ顔のサハギン
「では行きますよ?」
マッサージチェアの上でなぜか上着を脱ぎ、うつ伏せの姿勢になっている村長。
そこに針を構えたミノカサゴが……これはまさか針治療!?
村長
「ふぉぉぉ……。」
太郎
「めちゃくちゃ気持ちよさそう。」
村長は背中に針を刺されてご満悦だ。
ドヤ顔サムズアップで俺を見るミノカサゴだが……ミノカサゴって毒があるんじゃなかったけ?
唐突に隣のマッサージチェアに蟷螂が仰向けに寝転がった。……こいつにも針治療を?
太郎
「お前は止めとけ。標本になっちゃうから。」
村長たちがどうなるのか気になったが後回しだ。まずはガミジンさんと階段前まで移動。
太郎
「ガミジンさん、ちょっと地下室の環境が変わったというか……」
ガミジン
「環境ですか?」
小声で語りだした俺に困惑の視線を投げかけるガミジンさん。
太郎
「秘密のお話は地下室ではできなくなっちゃいました。」
ガミジン
「そうなのですか?」
太郎
「さっきの蟻さんがお隣の部屋に滞在するそうなんですが……部屋の壁が薄くて話が漏れてしまうみたいで。」
ガミジン
「それは確かに困りますね……。」
代案の一つも出したいところだが……。
ガミジン
「しっかりと防音できてる部屋は無いのか後で聞いておきましょう。」
太郎
「そうですね……どのみち彼らに頼るしかないか。」
結局困ったときはサハギン頼みの俺たちだった。
ガミジン
「村長さんのところに戻……おや?」
ガミジンさんにつられて振り向くと階段からタチウオが上がってくる。
太郎
「どうかしましたか?」
タチウオ
「車の移動を命じられました。」
駐車場はそこまで広くないからな……。
入口へ歩いて行くタチウオの背中を見送り、俺たちは再度村長のもとへ向かった。
案の定針治療はまだ続いていた。
太郎
「ミノカサゴさん、一応お聞きしてもよいでしょうか?」
ミノカサゴ
「はい?」
太郎
「家電店で針治療を敢行した意図を教えて頂きたい。」
ミノカサゴ
「そこに針があるからだ。」
太郎
「答えになってないよぉ……。」
針治療を続けるなら場所を移動してほしいのだが……などと考えているとガミジンさんが俺の肩を叩く。
ガミジン
「クマノミさんが戻ってきたみたいですね。」
太郎
「あっ、本当だ。……空のポリタンクを店内に持ち込んでますけど。」
ポリタンクを担いだクマノミがこちらに歩み寄ってきた。
太郎
「お帰りなさい。で、それどうするんですか?」
クマノミ
「外に捨てるわけにもいかないのでお店で処分してもらおうと思いまして。」
太郎
「あぁ……一応これも資源ゴミか。」
店内の見取図を出してゴミの回収ボックスの位置を……いや、流石にポリタンクは入らないかな?
店に居るサハギンに助言を求めようと辺りを見回す。……ん?あいつ何故戻って来てるんだ?
車を動かしに行ったはずのタチウオがなんか速足でこちらに近付いてくる。
太郎
「何かありまし……!?」
問いかけようとした刹那、クマノミから空のポリタンク問答無用で渡される。
手早い動きで拒否できずそのまま受け取ってしまった……。
そしてクマノミはタチウオと黙って目配せするとハンドガンを取り出して歩いて行った。
タチウオ
「不審者らしき人が来た。下がっていてくれ。」
太郎
「マジかよぉ……。」
今日も災難だ……。ガミジンさんと一緒にマッサージチェアのところまで後退する。
幸いと言うべきか針治療は終わっており村長は仰向けになっていた。
ミノカサゴ
「どうしました?」
ガミジン
「不審者が出たそうです。村長さんをいつでも逃がせる状態にしてください。」
ミノカサゴ
「……了解です。」
ちょっと眠そうにしている村長を俺と家政婦さんで車椅子に乗せる。
村長
「ん?急にどうしたんだ?」
太郎
「……すぐ済みますからねー。」
ミノカサゴ
「あの人ですかね……?」
視線の先に黒いコートを着た怪しい中年が居る。
クマノミとタチウオが左右から挟み込むように監視しているが気付いているのか?
ガミジン
「コートの下に武器とか隠し持ってたら危ないですよね……。」
太郎
「いや……どうかな……?」
ガミジン
「……何か気付きました?」
あのファッションから察するに武装している線は薄いだろう。
コートの丈は膝下までだが……その下に微妙に生足が見えているのだ。
靴こそ動きやすいスニーカーのようなものを履いているが靴下が見受けられず靴の上方に脛毛が露出している。
その辺から推測してコートの中には何も着ていない可能性が高い。
太郎
「ガミジンさん見てください、あいつの脛毛!」
ガミジン
「す……脛毛……!?」
太郎
「俺の見立てではあいつは露出狂です。間違いない。」
ガミジン
「太郎さん……今朝方裸のオークを見かけたからって……。」
太郎
「あっ、信じてないですね!」
アホなやり取りをしている間に不審者がコートに手を掛けたぞ……!
ガミジン
「脱ぐ気でしょうか?」
太郎
「俺の予想が正しいか、これではっきりしますね。」
場に緊張が走る。左右で見張るサハギンも臨戦態勢……!
正面からチョウチンアンコウが声を掛ける。
チョウチンアンコウ
「何かお探しでしょうか?」
不審者
「動くんじゃねえ!!(大声)」
叫ぶと同時にコートを広げる不審者。
コートの下、果たしてその出で立ちは……下半身はブリーフ一丁だが上半身にはベルトらしきものを巻き付けているようだ。
ベルトに固定された大量の爆発物……ではなくデカいえんどう豆の鞘みたいなのが並んでいる。
太郎
「自爆テロは……無理だよな。豆だし。」
ミノカサゴ
「見た目で判断しないでください。豆に偽装された爆弾かもしれません。」
ミノカサゴは注意を促しつつ近くのテーブルから商品を降ろす。
そのままテーブルを立てて俺たちの前に配置。どうやら盾として使えってことらしい。
仮にあれが爆弾だった場合、テーブル一つでどこまで身を守れるか怪しいが……。
ガミジン
「とにかく退路を確保しましょう。」
太郎
「そうですね、テーブルの陰に隠れながら裏口を目指しましょうか。」
まずは避難が先決。しかしミノカサゴに目をやると……どこから取り出したのか吹き矢を構えて不審者に狙いを定めている。
太郎
「仕方ないな……村長さんの避難は俺たちだけで……」
不審者
「『種付けおじさん』に栄光あれ!!!」
太郎
「!!?」
掛け声と共に爆竹のような破裂音が店内に鳴り響く。そして間髪入れずに別な音も聞こえるが……豆の落下音だなこれは。
クマノミ
「確保!!」
タチウオ
「……!」
音と煙には驚いたがサハギンが不審者を無事捕縛したようだ。
村長
「何が……起こっているのだ?」
太郎
「避難訓練です。外に出ましょうか村長さん。」
裏口から店外へ出て駐輪場前で一息つく俺たち。
村長一行にガミジンさんと俺、全員怪我も無く無事だ。
太郎
「全く……一時はどうなることかと……。これからどうしましょう?」
ガミジン
「店内の安全が確保されるまでは外で待機ですかね。」
村長
「さっきは訓練と言っていたがやはり実戦だったか。」
太郎
「……。」
小声で話していたのに村長にも聞こえてしまったようだ。
結局バレちゃったよ……。
村長
「貴様ら……車椅子のジジイなど置いて逃げればよいものを……。」
太郎
「そうは行きません、お客様第一です。」
村長
「傲りだそれは。若い者が年寄りなんぞのために危険を冒すんじゃない。」
基本やりたい放題のこの人に突然そういうこと言われると調子狂うなぁ……。
バレット
「お取込み中のようですけど……一体何があったんですか?」
太郎
「あぁ、ちょっと不審者が……ん?どこだ?」
いきなり話しかけられたが声の出処が分からないぞ。
全員で辺りを見回すがバレットさんの姿は見当たらない。
バレット
「ここですよ。」
声のするほうには……駐輪場の端で2センチ程の蟻が角砂糖を持ち上げている。
太郎
「蟻人間からホンモノの蟻に!!?」
バレット
「何言ってるんですか……?」
蟻の後ろのマンホールの蓋が開き、バレットさんが顔を出した。
太郎
「そこ地下室に繋がってるんですね。」
バレット
「ええ。階段のほうが突然通行止めになって……あっ、村長さん。こちらの避難経路はご内密にお願いしますね。」
マンホールから器用に這い出すバレットさん。
太郎
「今店内のサハギンさんが不審者の対処をしてます。」
バレット
「不審者……店内に煙が漂っていましたけどただの不審者なんですかね?」
ガミジン
「それなんですが……おそらく『種付けおじさん』の構成員かと……。」
太郎
「叫んでましたもんね。」
『種付けおじさん』は環境破壊が目的だと聞いていたが……さっきのはなんか自爆テロみたいなノリだったなぁ。
ガミジン
「おそらくあの豆みたいなのを撒くのが目的だと思いますが……。」
太郎
「店内に撒いても芽は出ないですよね?」
ガミジン
「ですよね。床材もしっかりしてるし。」
村長
「田舎の店だと舐め腐って事前調査無しで来たのだろう。」
太郎
「いやいやそれは……テロリストって俺らが思ってるよりバカなのか……?」
不審者に対する考察を皆でしていると店の裏口が開いた。
武装解除された中年がクマノミとタチウオに脇を挟まれ引き摺られていた……。
危険物を剝ぎ取られ着衣はブリーフのみとなった中年はさながら『捕らえられた宇宙人』である。
太郎
「そいつどうするんです?」
クマノミ
「自警団に預けます。仕事を増やしてしまうことになりますが……。」
村長
「構わん。嬲る相手が増えれば奴らも喜ぶだろう。」
太郎
「村長さん、自警団の扱いおかしくない?」
不審者は怯えた様子でサハギンたちに連行されていった……。
遅れて裏口から出てきたチョウチンアンコウが俺に声を掛ける。
チョウチンアンコウ
「店内に危険物は確認されませんでした。太郎さんは片付けの手伝いをお願いします。」
太郎
「了解です。」
片付けか……あのでかい豆を処分するのだろうか?
村長
「片付けの邪魔になるだろうし年寄りは退散するか。」
太郎
「村長さん……。」
ガミジン
「では私が送って行きますね。」
太郎
「バレットさんは?」
バレット
「私は部屋に戻ります。」
言いながらまたマンホールの蓋を開けるバレットさん。
太郎
「階段使わないんですか……。」
バレット
「こちらのほうが上り下りしやすいんですよね。」
だよね、蟻だもんね……。
駐輪場の集まりは解散し、俺は裏口から店に入る。
中にはまだ煙が漂っているな……。
ボラ
「太郎さんは換気窓を開けてきてください。」
太郎
「了解です。」
窓のほうに移動しようとするが……クマノミが付いてきた。
太郎
「安全確認は終わったんですよね?」
クマノミ
「さっきの爆発はもう大丈夫ですけど……囮の可能性はありますからね。」
太郎
「あぁ……本命が別行動してるかもってことですね。あんまり考えたくないな……。」
クマノミ
「そういうわけで引き続き警戒です。」
話しながら窓を開ける。
太郎
「しかし……本命か。奴らの目的は……豆撒き?」
クマノミ
「もしそうなら囮が店で暴れている間に別働隊が豆を撒ける場所に……?」
太郎
「豆の撒き所……栄養のある土地か。」
クマノミ
「このあたりだと村長宅の裏の畑が最も肥沃な土地ですかね。」
なるほど。そう考えると結果的に村長を店内に釘付けにできたわけだし……囮としては機能したわけだ。
しかしあの場所はなぁ……。
太郎
「村長宅の敷地、今朝方オークが徘徊してましたよね。」
クマノミ
「らしいですね。」
今朝のクマノミとは別個体だから又聞きしたような薄い反応だな……。
太郎
「最初そっちに撒くつもりだったけどオークと鉢合わせして予定が狂ったのでこっちに来たって感じじゃないかな。」
クマノミ
「その可能性はありますが……それだったら出直したほうがマシじゃないですか?」
太郎
「いや、実際全裸のオークを見たら人の居るところに来たくなりますって。怖いもん。」
話している間に換気窓の作業が終わった。
次の指示を聞くためボラのところに移動する。
太郎
「換気窓、終わりました。」
ボラ
「お疲れ様です。次は……汚れた床を拭いてください。」
太郎
「雑巾掛けですね。」
バケツと雑巾を持って爆発のあった地点へ確認に行く。
太郎
「うわぁ……。」
幾つか潰れた豆の汁が床に零れていた。近くの棚にはほとんど被害が無いのは幸いだが……。
ボラ
「出せなくなった商品は我々で片付けていますので床お願いしますね。」
太郎
「爆発があったにしては被害が小さいですね。」
ボラ
「ええ……豆を飛ばすために使われたのが市販の爆竹でして……。」
太郎
「しょぼいな。」
ボラ
「真面目に自爆するのが怖かったんじゃないでしょうかね?」
自爆で死ぬよりは逮捕されたほうがマシ……なのか?
一瞬そう思ったが自警団次第だな……。
ボラが商品を台車に乗せて去って行く傍らミノカサゴが潰れた豆をトングで掴みゴミ袋に入れる。
ミノカサゴ
「うぅ……。」
太郎
「どうしました?……くっさ!?豆の汁臭ぇぇぇ!!」
ミノカサゴ
「雑巾で拭くだけで大丈夫ですか?」
太郎
「いや無理でしょこれ!消臭剤要るでしょ!」
俺は鼻を摘まみながら片手で床を雑巾掛けを開始。
ミノカサゴはゴミ袋の口を縛り消臭剤を取りに行った。
太郎
「なんなんだこの豆……毒とか入ってたりしないよね……?」
豆に詳しくない俺にとってこれは未知の植物である。
専門家の助言が欲しいところだが身内にそんな奴は居ない。
……ゴミ袋が透明だったので離れた位置から中の豆を凝視してみる。色は緑、多少でかいが外見は普通の豆だ。
亀裂から出ている汁は無色だ。匂いこそ酷いがヤバイ色はしていない。
太郎
「腐っているわけではないんだよな……。」
動けずにいると後ろから何かの袋を持ってクマノミが歩いてきた。
太郎
「臭くて仕事にならないよ~。助けて。」
クマノミ
「これで匂いを相殺しましょう。」
太郎
「それって……隣村で貰ったキビヤックじゃねーか!!!相殺は無理だろ!相乗効果で地獄を見ることになるぞ!!」
必死にキビヤックの開封を阻止しているとミノカサゴが戻ってきた。
ミノカサゴ
「じゃあまずはこれ。」
太郎
「消臭スプレーだ。」
クマノミ
「キビヤックを消臭してみましょう。」
太郎
「いや豆が先だから。無駄遣いしないでくれよ。」
ミノカサゴにクマノミを抑えさせつつ俺は豆の汁が残る床に消臭スプレーを吹きかけた。
ミノカサゴ
「次はこれ。念のため……。」
太郎
「はい。……医療用の消毒液かこれは。」
クマノミ
「その豆に毒は無いと思いますけどね。」
太郎
「ん?豆に詳しかったり?」
クマノミ
「いえ、仮に毒があったら地肌に触れていた不審者が無事なのはおかしいかと。」
太郎
「確かに。」
不審者はブリーフ一丁にされていたが致命的な傷や毒の症状みたいなのは確認できなかった。無毒と判断していいだろう。
雑巾を新しい物に取り換え再度床を拭く。
一応床に跡が残らない程度には拭いたが……今度は若干消毒液臭いな……。
太郎
「雑巾で対処できるのはここまでだな。」
一息ついて立ち上がる。
ボラ
「太郎さん、作業はそこまでで。指名が入っています。」
太郎
「え?指名ですか?」
呼ばれたのでボラのほうへ歩いて行く。
ボラの他にバレットさん、あとタチウオも居る。遅れてミノカサゴも合流。何の集まりだろうか?
太郎
「何の御用でしょうか?」
バレット
「今から自警団のところに行きますので太郎さんにもご同行願います。」
太郎
「言われれば行きますけど俺何か役に立ちますかね?」
バレット
「太郎さんを入れないと魔物と獣人だけで行くことになりますので。」
言われてみればこの中で人間は俺だけだが……。
バレット
「人間の視点でのブレーキ役が必要と思いまして。」
太郎
「なんだそれちょっと嫌な予感がするぞ……。」
タチウオ
「待たせると悪い。すぐに出るぞ。」
詳しく聞く時間は無いらしい。
……店の外に出て車に乗車。
運転席にタチウオ、助手席にバレットさん。
後ろの席、俺の隣にはミノカサゴが座る。そしてミノカサゴの毒針が……
太郎
「棘をこっちに向けないでね!」
ミノカサゴ
「車内が狭いのでどうしようもないのですが……。」
バレット
「もし刺さっても解毒剤はありますので安心してください。」
太郎
「刺す前提っておかしいだろォ!?」
タチウオ
「いいから早くシートベルト締めろや!」
乗車で一悶着あったが無事出発。
十分程度で目的地に着いた。
タチウオ
「到着だ。」
バレット
「じゃあ荷物も降ろしましょう。」
ミノカサゴが持ち込んでいた段ボール箱……これか?
ミノカサゴ
「降ろします。そっちを持ってください。」
太郎
「はい。……で、これには何が入っているんですか?」
ミノカサゴ
「自警団から注文のあった……尋問用の小道具ですね。」
……つまり拷問器具か。呼ばれた理由が分かった気がする。一線を超えそうなら俺が止めるしかあるまい。
車を降りて目の前の建物を見る。表札には『自警団集会所』と書いてある。
タチウオ
「これも頼む。」
太郎
「ん?もう一箱?」
タチウオ
「水槽が入っているから慎重に扱ってくれ。」
太郎
「……水槽!?」
タチウオ
「君の部屋に有毒生物が居たから使えると思ってそれを連れてきた。」
太郎
「あぁ……オニヒトデとウミケムシか……。」
今朝方クリスマスツリーに付いていたアレだな……。
太郎
「しかしこれ尋問に使うとか外道の所業やぞ……。」
タチウオ
「確かにウミケムシは釣りの外道だな。」
太郎
「……。」
なんかいろいろな意味で不安になってきたが……立ち止まっていても仕方がない。
意を決して集会所に入って行くのだった……。
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