転校先の学園で、夢で見た異世界の仲間たちと再会しました

杠静流

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第2話 遊びに行こう

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 今日から授業が始まるのかと憂鬱な気持ちを押し込めながらも教室の扉を開ける。教室にいる何名かがこちらに注目する。

 自分の席に向かい、カバンを下ろすと瑞希が話しかけてくる。
「おはよう高槻くん!今日は道に迷わなかった?」
 いたずらっぽく笑いながら聞いてきた。
「お陰様で」
「それは良かった!なにか困ったことがあったら言ってね!協力するから」
 まっすぐ俺の目を見て瑞希は頼もしいことを言ってくれる。
 そんな話をしていると再び教室の扉が開き、「うい~っす」と情けない声を出しながら蓮が入ってくる。

「遅かったじゃない、蓮」
「いやぁ、生徒会の仕事があって直接生徒会室に行ってたんだわ」
 気だるそうに席まで歩くと、肩に掛けていた通学カバンを机にかける。
「あらそう、役員様は大変ね」
「そうだぜ~。生徒会役員様は忙しいんだ」
 瑞希の悪態に乗っかるように蓮はにやりと笑った。
「あっそう、ただの書紀なのにね」
 瑞希が吐く悪態に「何だよ~」と苦笑する。

「君たち、仲いいんだね」
 この会話を見ていた俺は思わず思ったことを言ってしまった。

「そうだぜ!俺らは仲良しだからね」
 蓮は笑いながら瑞希の肩に手を回す。
「やめてよ!そんなわけないでしょ!」
 嫌そうな顔をしながら蓮の腕を払い除けた。
 
 そのあと俺の方を見て机に手をついた。
「そういえば、高槻くんは週末空いてる?」
「空いてたと思うけど……。なんで?」
「ほら、最近引っ越してきたばかりなんでしょ?週末空いてるなら街の方を案内しようかな~って……」
「いいじゃねぇか!いこうぜ」
 俺と瑞希の間に蓮が割り込んでくる。
「あら、あんたも来るの?」
 相変わらず瑞希は蓮に対して厳しい。
「そりゃあ行くだろうよ!仲間はずれにしないでくれ!」
「仕方ないわね。ならあんたは当日荷物持ちよ」

 蓮は「うへー」と嫌な顔をしながらも、当日はちゃんと来るようだ。
「ってことで、連絡先交換しない?」
 そういえば連絡先を交換していなかった。
 俺はカバンからスマートフォンを取り出すと、メッセージアプリを立ち上げる。
「交換は二次元コードでいいかな?」
「うん、これでお願い」
 スマートフォンの画面に二次元コードを表示して提示する。瑞希と蓮は読み込むと、ピロンと2回ほど友達追加の通知が鳴る。
 友達一覧に猫のアイコンと車のアイコンが並んだ。

「高槻くん、このいっしょに写ってる女の子はだれ?彼女?」
 瑞希は俺のプロフィール画面を提示しながら、アイコンを指差す。

 そこには白髪の男女が肩を並べている。
 男はもちろん俺なんだが、隣りにいる女子のことが気になるんだろう。
「妹だよ」
「そうなんだ!めっちゃかわいいね!」
「本当にな!紹介してくれよ優斗!」

 ふたりとも俺の妹に興味津々なようだが、紹介するという点に関してはあまり乗り気でなかった。
「ん~……、機会があったらね。妹は地元にいるから」
「へー、そうなんだ。一緒に引っ越してこなかったんだね」
 妹が一緒に引っ越して来なかったのには理由があるわけだけど、あまりこの場で話すことでもない。
「そうだね……。まぁ、ほんとに機会があったら紹介するよ!」
「楽しみにしてるぜ!」
 二人は少し残念そうな表情をしたが、改めて紹介するかもと言った話をしたら喜んでいた。
 ちょうど会話を終えたタイミングでチャイムが鳴り、教師が教室に入ってくる。ありふれた朝礼などを終えると授業が始まった。
 
 ◇◆◇
 土曜日の朝、今日は瑞希たちと街へ遊びに行く予定だ。一通り準備を整えると家を出る。
 家を出て歩き始めたタイミングでスマートフォンが鳴動する。立ち止まってメッセージアプリを開くと送信元は瑞希だった。俺と瑞希、蓮が参加しているグループに「蟹名駅東口に11:00集合で!」と残されている。
 了解と返信すると再び歩き始める。

 電車に乗り、目的の蟹名駅につくと東口へ向かった。ここは駅直結で商業施設が入っており、普段から賑わっているらしい。
 東口を出ると、今回の目的地である商業施設に通じる通路が伸びていた。その分岐のあたりに瑞希が立っている。
 可愛らしいフリルのついたブラウスと、プリーツがきれいに糊付けされたスカートを履いている。
 小柄で華奢なことも相まって彼女はとても可愛くて、周囲の人間からも注目されていた。瑞希の元へと向かい、「おまたせ!待った?」とベタなことを言ってみる。

「ううん、いま来たところ!ってそれ私のセリフだよ!」
 本来は俺が先に来てるべきだったんがだ、失敗したな。
「そういえば蓮は?」
「まだ来てないよ」
 集合時間十分前だったため、しばらくは瑞希と与太話にでも花を咲かせよう。
 周囲からの目線が気まずいから気をそらそう。うん。

 十一時十分を回った頃だろうか。ようやく遅刻してきた蓮が姿を表した。
「悪い!遅くなった」
 本当だよ。本当に目立って大変だったんだからな。

 三人が揃ったところでどこに行こうかという話になる。
「ここは無難にまずはゲーセンだろ!」
「いや、まずはクレープを食べるのが基本でしょ?」

 先程から二人はどこに行くのかと言い争っている。
「あの、ふたりとも……」
「高槻くん、ちょっと待ってて」

 仲介しようとしたら止められてしまった。このあと俺に振られたらどうしようかな……。

 結果を言うと、まずはクレープを食べることになった。
 理由はゲームセンターよりもクレープ屋のほうが近いからだ。瑞希が蓮を押し切ったこともあるけど。
 瑞希に引き連れられながらクレープ屋に向かう。階段を少し降りると広い広場があり、その中央付近に行列ができている。
 彼女はそこを指差すと「ほら、あそこね」といった。
 俺と蓮は「え~……」と声を上げる。

 流石にあれを並ぶのは嫌だなぁ……。
 渋々列の最後尾に並ぶ。甘味処だからかほとんどが女性でキャッキャと盛り上がっている。常々思うけど、女性の甘味に対する執着心ってすごいなと。全員ではないんだろうけど。

 しばらく待ち続けると、やっと自分たちの番になる。
 先頭に並んでた瑞希がメニューを指さす。
「私はキャラメルカスタードで!高槻くんは?私が出すよ」
 彼女は奢ってくれるようで俺にどれを食べるか聞いてきた。
「俺もキャラメルカスタードで!」
 蓮が横槍を入れてくる。
「あんたには奢らないわよ。自分で出しなさい」
 瑞希にあしらわれると、しゅんとしていた。
「さぁ、高槻くん。どれにする?」
 気まずさを感じながら小豆いちごクリームを選ぶ。
 
 全員が注文を終え商品を受け取ると、タイミングよくテーブルが空いたため座る。
「さあ、食べよっか」
 瑞希は満面の笑みでクレープを頬張る。
 やはり、女子らしく甘いものが好きなんだなと、その表情をみて思った。

 夢でよく見るミスティアという少女も甘いものが好きだった。時代もあって甘味は高級品で、依頼の報酬を得ては自分へのご褒美だなんて言っていた。
 俺たちメンバーの中では特にオシャレ好きでオフのときはよく街にくり出していた。そんなところも瑞希とよくにているなと思った。顔も似ていて、趣味嗜好も同じなんて、偶然か……?

「高槻くん!そのクレープ私にも一口ちょうだい!」
 唐突に瑞希が言ってきた。俺は驚いてえっ?!と声を上げてしまった。
「いやぁ、キャラメルカスタードも美味しいんだけどね、違う味も試してみたくなっちゃって」
「なら俺のをやるよ」
 蓮は立ち上がり、瑞希と俺の間に入る。瑞希はそんな蓮の顔を睨みつけるようにして行った。
「あんた、私と同じやつじゃん」
 痛いところを突かれたのか、元いた席に戻ってシュンとしている。
「私のも上げるからいいでしょ?」
 そう言いながら手に持っているクレープを差し出してくる。

「わかったから!ほら」
 瑞希の押しに負けて、自分の手に持っているクレープを差し出すと、少しだけかじった。
「ありがとう!こっちも美味しいね」と口を膨らませながらこもった声で感想を言うと、手に持っているクレープを押し付けてくる。
「高槻くんもどうぞ!あーん!」
 渋々一口食べると、キャラメルの甘みとバニラの香りが口の中に広がった。だけどゆっくり味わう余裕はなく、自分の顔が若干の熱を帯びているのを感じた。
「美味しい?」
「う、うん。美味しいよ」
「でしょ~!」
 感想を聞いた瑞希は得意げだった。

 しばらくして、全員がクレープを食べ終わる。
「さてと、じゃあ蓮のお望み通りゲーセンにいこうか」
「やったぜ!俺のテクを優斗にも見せてやらんとな!」
 腕を回す蓮を先頭に、俺達はゲームセンターに向かった。
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