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異世界素材、オークションで売れます
第2話前編「初めての異世界と冒険者ギルド」
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朝、鳥の声で目が覚めた。
……いや、正確には、よくわからない動物の鳴き声だった。羽音も風の音も、何もかもが現実離れしている。
「今日も……夢じゃない、よな」
祖父の倉庫を通って、異世界の森へ再び降り立つ。
目の前には昨日と変わらない、広大な緑と、まだ見ぬ世界が広がっていた。
⸻
道らしい道はなかったが、昨日遠くに見えた赤い屋根の建物を目指して歩く。
森を抜け、草原を越え、小さな川を渡った先に――
ようやく、街のようなものが見えてきた。
⸻
🏙街「ファーネラ」
高い石壁と木製の門。
人の出入りがあることから、どうやらここがこの世界の拠点らしい。
服装はさまざまだが、俺のジャージ姿はかなり浮いているようで、すれ違う人々がチラチラと視線を向けてくる。
中には「異国の旅人かな?」と囁く声もあった。
門番らしき男に止められたが、名前を名乗って「旅人です」とだけ伝えると、あっさり通してくれた。
物騒な雰囲気もなく、初見にしては随分と平和な街だ。
⸻
石畳の道を進んでいくと、雑貨屋、鍛冶屋、パン屋、露店……賑やかで、温かくて、活気にあふれていた。
まるでRPGの序盤の街そのものだ。いや、もしかしたら、RPGの方がこっちをモデルにしてるのかもしれない。
「さて、まずは……情報収集、か」
そう思って立ち止まっていたところ、道端でリンゴを売っていたおばさんが声をかけてきた。
「旅人さんかい? ギルドなら、あっちの大通りをまっすぐ行って右手さね」
「ありがとうございます!」
異世界語なのに、ちゃんと意味がわかるのも不思議だが――たぶん、あの“扉”をくぐったときに何かしらの処理が入ったのだろう。深くは考えない。
⸻
🏢冒険者ギルド・ファーネラ支部
大通りを抜けた先、街の中央近くに、それはあった。
大きな二階建ての建物。剣と盾のマークが掲げられていて、出入りする人の大半が武器を背負っている。
威圧感のある場所だが、どこか酒場のような活気もある。
意を決して、扉を開ける。
――ガヤガヤとした酒場のような喧騒、そして木の香りと焼けた鉄のような匂いが漂ってくる。
「いらっしゃいませ、冒険者登録ですか?」
声をかけてきたのは、カウンターに立つ金髪ポニーテールの少女だった。年の頃は俺と同じか、少し下くらい。
表情は明るく、訓練された接客口調だが、どこか親しみやすさもある。
「はい。旅人なんですが、登録できますか?」
「もちろんです! こちらの水晶に手をかざしてくださいね」
案内された小さな台座の上には、青白く光るクリスタルが置かれていた。
⸻
言われた通りに手をかざすと、ひときわ強い光が弾けた。
「うわっ……」
「はい、神託完了です! では……登録カード、発行しますね……っと」
そう言って、彼女が差し出した一枚のカード。そこに書かれていた職業は――
【職業:料理人(Lv1)】
「……は?」
「おめでとうございますっ! ええと、りょ、料理人ですね! ふふっ、希少職ですからね、きっと役に立ちますよっ!」
……受付の子の声が震えてる気がするのは、気のせいか?
⸻
戦士でも魔法使いでも、鍛冶師でもない。よりによって――料理人。
装備スロットもスキル欄も空っぽで、唯一習得していたスキルは「スープ煮込み(初級)」。
「……終わった……」
せっかくの異世界、せっかくの新生活。
その第一歩で、俺は絶望を味わうことになるとは思わなかった。
……いや、正確には、よくわからない動物の鳴き声だった。羽音も風の音も、何もかもが現実離れしている。
「今日も……夢じゃない、よな」
祖父の倉庫を通って、異世界の森へ再び降り立つ。
目の前には昨日と変わらない、広大な緑と、まだ見ぬ世界が広がっていた。
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道らしい道はなかったが、昨日遠くに見えた赤い屋根の建物を目指して歩く。
森を抜け、草原を越え、小さな川を渡った先に――
ようやく、街のようなものが見えてきた。
⸻
🏙街「ファーネラ」
高い石壁と木製の門。
人の出入りがあることから、どうやらここがこの世界の拠点らしい。
服装はさまざまだが、俺のジャージ姿はかなり浮いているようで、すれ違う人々がチラチラと視線を向けてくる。
中には「異国の旅人かな?」と囁く声もあった。
門番らしき男に止められたが、名前を名乗って「旅人です」とだけ伝えると、あっさり通してくれた。
物騒な雰囲気もなく、初見にしては随分と平和な街だ。
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石畳の道を進んでいくと、雑貨屋、鍛冶屋、パン屋、露店……賑やかで、温かくて、活気にあふれていた。
まるでRPGの序盤の街そのものだ。いや、もしかしたら、RPGの方がこっちをモデルにしてるのかもしれない。
「さて、まずは……情報収集、か」
そう思って立ち止まっていたところ、道端でリンゴを売っていたおばさんが声をかけてきた。
「旅人さんかい? ギルドなら、あっちの大通りをまっすぐ行って右手さね」
「ありがとうございます!」
異世界語なのに、ちゃんと意味がわかるのも不思議だが――たぶん、あの“扉”をくぐったときに何かしらの処理が入ったのだろう。深くは考えない。
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🏢冒険者ギルド・ファーネラ支部
大通りを抜けた先、街の中央近くに、それはあった。
大きな二階建ての建物。剣と盾のマークが掲げられていて、出入りする人の大半が武器を背負っている。
威圧感のある場所だが、どこか酒場のような活気もある。
意を決して、扉を開ける。
――ガヤガヤとした酒場のような喧騒、そして木の香りと焼けた鉄のような匂いが漂ってくる。
「いらっしゃいませ、冒険者登録ですか?」
声をかけてきたのは、カウンターに立つ金髪ポニーテールの少女だった。年の頃は俺と同じか、少し下くらい。
表情は明るく、訓練された接客口調だが、どこか親しみやすさもある。
「はい。旅人なんですが、登録できますか?」
「もちろんです! こちらの水晶に手をかざしてくださいね」
案内された小さな台座の上には、青白く光るクリスタルが置かれていた。
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言われた通りに手をかざすと、ひときわ強い光が弾けた。
「うわっ……」
「はい、神託完了です! では……登録カード、発行しますね……っと」
そう言って、彼女が差し出した一枚のカード。そこに書かれていた職業は――
【職業:料理人(Lv1)】
「……は?」
「おめでとうございますっ! ええと、りょ、料理人ですね! ふふっ、希少職ですからね、きっと役に立ちますよっ!」
……受付の子の声が震えてる気がするのは、気のせいか?
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戦士でも魔法使いでも、鍛冶師でもない。よりによって――料理人。
装備スロットもスキル欄も空っぽで、唯一習得していたスキルは「スープ煮込み(初級)」。
「……終わった……」
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その第一歩で、俺は絶望を味わうことになるとは思わなかった。
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