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第3話 領主との面会
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エルフの男は兵舎で少し待った後、門番の兵士とは違った磨かれた綺麗な鎧の兵士に案内されて、街の真ん中付近にあるこの街で大きな屋敷へとやってきた。
兵士から使用人にバトンタッチして、通された部屋の中で少し待っていると、服装などから身分の高さがわかる男性が入室して来た。
「お待たせして申し訳ない。私がこの街の領主のガストンです」
「フォルテだ」
男は、領主だからといって態度を変える事なく挨拶をした。
「さて、エルフ様はどうしてこの街へやってこられたのでしょうか、やはりケミーニア様にご用事で?」
ガストンと名乗った領主の男は、挨拶が終わるとそのままフォルテに質問をしてきた。
「ケミーリア? いや、俺は食事をしに来たのだ。そうだ領主、どこか美味しい所はないか?肉が美味いところがいい」
フォルテは、ケミーニアと言う人物に興味は無かった。
それよりも、食事である。せっかく街に来たのだからそちらの方が気になって、この街の事に一番詳しいであろう領主におすすめの食事処を尋ねた。
エルフであるフォルテの質問に、領主ガストンは狐に化かされたかのようにポカンとした表情でフォルテを見つめた。
質問に対して、ガストンからの返事がない事に、フォルテがどうしたのかと訝しげに見ていると、ガストンは、わなわなと体を震わせながら今までよりも低い声で話し始めた。
「今、肉を食べたいとおっしゃったか?」
やっと返事を返したガストンに、フォルテは伝わっていたのかと教えてもらう店を楽しみにしながら質問に答える
「おお、そうだ。美味い肉が食べた____」
「エルフを偽装するなど無礼千万!であえ!この者を牢に!」
フォルテの言葉を遮ってガストンが怒気のこもった声で叫ぶと、部屋の外で待機していたであろう騎士が部屋へと入って来た。
フォルテは、意味の分からないままにあれよあれよと言う間に捕まって牢にぶち込まれてしまった。
抵抗して人を傷つけてはまずい気がしたので、とりあえずは大人しく捕まったのだが、錬金術を使えば簡単に牢から出て行けるので、さっさと出て行こうと考えていた時であった。
フォルテがその意見を180度変える出来事が起こった。
「お前も馬鹿な奴だな、エルフを騙るなんて。おら、飯だ」
牢屋番の兵士が、食事を持ってフォルテの所までやって来たのだ。
勿論、牢屋の中なので、先ほど希望した様な肉料理では無かったが、その差し出された飯の香りがフォルテの鼻に届いた瞬間、フォルテの思考は停止して、腹の虫が反応した。
木の器に適当に盛られたドロドロとした白い液体の様な飯。
見た目悪いが、鼻をくすぐる香りは極上のものである
目の前に置かれた食事は、パンのミルク粥であった。
質素ではあるが、キチンと人の手で調理された食事に、フォルテは逃げ出すのをやめてゆっくりと食事をいただく事にした。
一緒に出された木の匙を使って、待ち遠しさで震える手で零さないように、ゆっくりと、ミルク粥を口に運んだ。
口に入れた瞬間、口内に広がるのは薄味ながらキチンと取られたコンソメの味。
そして、何よりも塩の塩味
フォルテが前世で食べていた白くて柔らかいパンではなく、形が残って少し歯ごたえの残る硬めのパンの食感を少し楽しんで惜しむように喉へと送り出す。
飲み込めば、鼻から抜けるミルクのほのかな甘い香りがふんわりと香る
調理された味は、当然のようにあの美味いと感じた獣臭い肉の味を超えて、フォルテがこの世界に来てから一番の味になった。
牢屋の飯なので物足りないが、今までの食欲を満たすだけの肉と違って満足感で腹が膨らむ感じがした。
明日の朝は別のメニューが出るのだろうか?
ミルク粥をペロリと食べ終えたフォルテは次の食事に思いを馳せながら、脱獄を中止して牢屋に止まる事を決めたのであった。
___________________________________________
朝方、フォルテのいる街に豪華な馬車がやって来た。
街の門は、この時間に合わせて一般入門者を打ち切り、この馬車を迎える為に準備を整えていた。
馬車に乗っているのはケミーニア・フロストと言う名のエルフの女性。
本来、エルフには家名というものはないのだが、ケミーニアは先代の王の時代から王家に仕える選択をして、貴族となり家名を貰ったエルフである。
エルフは、人よりも魔力等の能力が高く、寿命が長い事から人の上位の種族として人々からは崇められている。
それなのに、人を尊み、国を守る為に人に仕える選択をしたケミーニアは国民の尊敬の対象であった。
先王が崩御した後も尚、この国を見守り、より良い国にする為に現在の国王を支える家臣の1人として仕えている。
そしてこの季節は、国王の代わりに各領土を不正などないか、飢饉はないか等を見て回る旅をしていた。
ガストンが、フォルテにケミーニアに会いに来たかを聞いたのも、この予定が決まっていたからであった。
馬車は、門から歓迎され、領主の館まで向かって進む。
街の人々が、馬車の中で見えるわけではないのに、もしかしたら美しいケミーニアの姿を観れるのではないかと集まり、領主の館まで道をつくった。
そして、領主の館でも、フォルテの時とは違い、決まっていた事だというのもあるのだろうが、ガストンや家令達が、表に出て出迎えている。
馬車から、それはそれは美しい女性が降りて来た。
その見た目からは100を越えているとはわからない。20代の様な見た目である。
初老のガストンと並んでみると、だちらが年上と聞かれて答えられる者は居ないだろう。
「出迎えご苦労様です」
「ケミーニア様、ようこそお越しくださいました。どうぞこちらへ」
ガストン自ら屋敷の中へと案内する。
部屋に着くまでの世間話として、ガストンは憤る思いで昨日の詐欺の話をした。
「昨日はエルフを語る詐欺がありましてな。嘆かわしいものです。ケミーニア様の加護を忘れ、エルフを語る者が出てしまうなど」
「その話、詳しく話しなさい」
ケミーニアは、話を聞いて目尻をヒクリと震わせてガストンに聞いた。
人の営みを好み、この国に使える選択をしたが、ケミーニアにはエルフとしての誇りがある。
エルフを語り犯罪を犯す者など、許せる者ではなかった。
「は、はい!」
ガストンは雰囲気が変わったケミーニアに恐れを感じた。
事情を説明して、応接室に案内する前に、ケミーニアの希望で詐欺の犯人に会う為に地下牢へと向かうのであった。
兵士から使用人にバトンタッチして、通された部屋の中で少し待っていると、服装などから身分の高さがわかる男性が入室して来た。
「お待たせして申し訳ない。私がこの街の領主のガストンです」
「フォルテだ」
男は、領主だからといって態度を変える事なく挨拶をした。
「さて、エルフ様はどうしてこの街へやってこられたのでしょうか、やはりケミーニア様にご用事で?」
ガストンと名乗った領主の男は、挨拶が終わるとそのままフォルテに質問をしてきた。
「ケミーリア? いや、俺は食事をしに来たのだ。そうだ領主、どこか美味しい所はないか?肉が美味いところがいい」
フォルテは、ケミーニアと言う人物に興味は無かった。
それよりも、食事である。せっかく街に来たのだからそちらの方が気になって、この街の事に一番詳しいであろう領主におすすめの食事処を尋ねた。
エルフであるフォルテの質問に、領主ガストンは狐に化かされたかのようにポカンとした表情でフォルテを見つめた。
質問に対して、ガストンからの返事がない事に、フォルテがどうしたのかと訝しげに見ていると、ガストンは、わなわなと体を震わせながら今までよりも低い声で話し始めた。
「今、肉を食べたいとおっしゃったか?」
やっと返事を返したガストンに、フォルテは伝わっていたのかと教えてもらう店を楽しみにしながら質問に答える
「おお、そうだ。美味い肉が食べた____」
「エルフを偽装するなど無礼千万!であえ!この者を牢に!」
フォルテの言葉を遮ってガストンが怒気のこもった声で叫ぶと、部屋の外で待機していたであろう騎士が部屋へと入って来た。
フォルテは、意味の分からないままにあれよあれよと言う間に捕まって牢にぶち込まれてしまった。
抵抗して人を傷つけてはまずい気がしたので、とりあえずは大人しく捕まったのだが、錬金術を使えば簡単に牢から出て行けるので、さっさと出て行こうと考えていた時であった。
フォルテがその意見を180度変える出来事が起こった。
「お前も馬鹿な奴だな、エルフを騙るなんて。おら、飯だ」
牢屋番の兵士が、食事を持ってフォルテの所までやって来たのだ。
勿論、牢屋の中なので、先ほど希望した様な肉料理では無かったが、その差し出された飯の香りがフォルテの鼻に届いた瞬間、フォルテの思考は停止して、腹の虫が反応した。
木の器に適当に盛られたドロドロとした白い液体の様な飯。
見た目悪いが、鼻をくすぐる香りは極上のものである
目の前に置かれた食事は、パンのミルク粥であった。
質素ではあるが、キチンと人の手で調理された食事に、フォルテは逃げ出すのをやめてゆっくりと食事をいただく事にした。
一緒に出された木の匙を使って、待ち遠しさで震える手で零さないように、ゆっくりと、ミルク粥を口に運んだ。
口に入れた瞬間、口内に広がるのは薄味ながらキチンと取られたコンソメの味。
そして、何よりも塩の塩味
フォルテが前世で食べていた白くて柔らかいパンではなく、形が残って少し歯ごたえの残る硬めのパンの食感を少し楽しんで惜しむように喉へと送り出す。
飲み込めば、鼻から抜けるミルクのほのかな甘い香りがふんわりと香る
調理された味は、当然のようにあの美味いと感じた獣臭い肉の味を超えて、フォルテがこの世界に来てから一番の味になった。
牢屋の飯なので物足りないが、今までの食欲を満たすだけの肉と違って満足感で腹が膨らむ感じがした。
明日の朝は別のメニューが出るのだろうか?
ミルク粥をペロリと食べ終えたフォルテは次の食事に思いを馳せながら、脱獄を中止して牢屋に止まる事を決めたのであった。
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朝方、フォルテのいる街に豪華な馬車がやって来た。
街の門は、この時間に合わせて一般入門者を打ち切り、この馬車を迎える為に準備を整えていた。
馬車に乗っているのはケミーニア・フロストと言う名のエルフの女性。
本来、エルフには家名というものはないのだが、ケミーニアは先代の王の時代から王家に仕える選択をして、貴族となり家名を貰ったエルフである。
エルフは、人よりも魔力等の能力が高く、寿命が長い事から人の上位の種族として人々からは崇められている。
それなのに、人を尊み、国を守る為に人に仕える選択をしたケミーニアは国民の尊敬の対象であった。
先王が崩御した後も尚、この国を見守り、より良い国にする為に現在の国王を支える家臣の1人として仕えている。
そしてこの季節は、国王の代わりに各領土を不正などないか、飢饉はないか等を見て回る旅をしていた。
ガストンが、フォルテにケミーニアに会いに来たかを聞いたのも、この予定が決まっていたからであった。
馬車は、門から歓迎され、領主の館まで向かって進む。
街の人々が、馬車の中で見えるわけではないのに、もしかしたら美しいケミーニアの姿を観れるのではないかと集まり、領主の館まで道をつくった。
そして、領主の館でも、フォルテの時とは違い、決まっていた事だというのもあるのだろうが、ガストンや家令達が、表に出て出迎えている。
馬車から、それはそれは美しい女性が降りて来た。
その見た目からは100を越えているとはわからない。20代の様な見た目である。
初老のガストンと並んでみると、だちらが年上と聞かれて答えられる者は居ないだろう。
「出迎えご苦労様です」
「ケミーニア様、ようこそお越しくださいました。どうぞこちらへ」
ガストン自ら屋敷の中へと案内する。
部屋に着くまでの世間話として、ガストンは憤る思いで昨日の詐欺の話をした。
「昨日はエルフを語る詐欺がありましてな。嘆かわしいものです。ケミーニア様の加護を忘れ、エルフを語る者が出てしまうなど」
「その話、詳しく話しなさい」
ケミーニアは、話を聞いて目尻をヒクリと震わせてガストンに聞いた。
人の営みを好み、この国に使える選択をしたが、ケミーニアにはエルフとしての誇りがある。
エルフを語り犯罪を犯す者など、許せる者ではなかった。
「は、はい!」
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