食欲の錬金術師〜草しか食べれない転生草食エルフは錬金術で体をいじって食の旅に出る〜

シュガースプーン。

文字の大きさ
28 / 73

第28話 朝食うどん

しおりを挟む
 朝食に並んだのは昨日とは違ううどんであった。

 ・カルボナーラうどん

 ・豚しゃぶサラダうどん

 ・コンソメかき玉あんかけうどん

 の3種類である。

 朝なのであっさりした物を。

 カルボナーラうどんはあっさりだけでは物足りないとフォルテが考えたからである。

 テーブルに並んだ3種類のうどんを見て、国王は驚きの声をあげた。

「うどんとはどれだけでも姿を変えるのだな」

 昨日と同じ味なものは用意していないので、味の変化も楽しめるだろうと予想している。

 勿論、うどんを一年と言われると飽きそうなので、別のメニューも教えてから旅に出るつもりだが、間違いなくうどんは主食になるだろう。

 朝から昨日の晩ご飯を食べたメンバーが全員集まって一緒にいただきますをする。

「女性が朝食を食べに来るのは珍しいですな」

 宰相がそう話すと宰相の妻が恥ずかしそうに代表して答える。

「恥ずかしながら、今朝はいつもよりお腹が空いてしまって」

 恥ずかしがる女性陣に、フォルテが笑いながら答えた。

「それはちゃんとした晩ご飯を食べたことで胃が膨らんでいたからだ。胃もたれだなどは無いのだろう? 健康な証拠だ、恥ずかしがる事じゃない」

 エルフであるフォルテの言葉に、女性陣は胸を撫で下ろした。

「しかしな、健康な生活と言うのには食事だけではダメだぞ。バランスの取れた食事、それに加えて適度な運動が必要だ。それによって体を強く作っていく。食事ばかりでは、カロリーの取りすぎは体の毒になる。バランスが大事だ。これからヤコブは俺に付いて美味しい料理をたくさん覚えるだろう。その時の為に、今からゆっくり運動を始めるといい」

「頑張りますわ。ありがとうございます、フォルテ様」

 フォルテは前世で、そのバランスを崩して食に傾けすぎた為、病にかかり、大好きな食事を制限しなければならないという生き地獄を味わった。

 その苦しみをこの世界の人に味わって欲しく無い。
 みんなで、楽しい幸せな食事がしたいのだ。

 話をしていると、フォルテの隣に座っていたケミーニアのお腹が「ぐ~~」と鳴いた。

「ははは。そうだな、早く食べよう。話は食べながらでもできる」

 まるでケミーニアのお腹と会話をするような口調で、フォルテが話した事に顔を赤くしながらケミーニアは「そうですね、早く食べましょう」と元気に返事をした。

「きただきます」

「「「「「いただきます」」」」」

 全員がフォルテの号令に合わせて顔の前で手を合わせて挨拶をして食べ始める

「あなた、その豚しゃぶうどんをお願いします」

 王妃に言われて国王がうどんを取り分ける。

「他には豚しゃぶうどんはおらんか?」

 ついでとばかりに、国王が希望者に取り分けている。
 この食事の場に、遠慮と言う物はない。

 代わりに料理長がカルボナーラうどん、ケミーニアがかき玉うどんを取り分けたり、身分関係なく会話を楽しみながら朝食をいただく。

「フォルテ様!これは、このサラダうどんはなんなのですか!」

 隣のケミーニアがフォルテに語彙力を失った質問をしてくる。

「そんなに美味いか。どれ、俺も食べよう」

 フォルテは国王が取り分けてくれた豚しゃぶサラダうどんを豪快に啜った。

 鼻に抜ける濃厚な胡麻の香り。

 このうどんの為に、わざわざ作った胡麻ドレッシングがいい仕事をしている。
 その為にわざわざマヨネーズも作ったのだ。

 胡麻、醤油、味噌、マヨネーズ、お酢。

 調味料を掛け算して生み出される無限の可能性の一つだ。

 まろやかだが、食欲をそそる酸味のある味。

 そして冷やしうどんのモチモチとした食感、喉ごし。

 完璧である。

「美味いな!」

 フォルテはただ一言ケミーニアに笑顔で伝える。

 コメンテーターのような長ったらしい解説はいらない。
 食べている物が同じなら、それだけで伝わるのである。

「このスープは凄いです!この上の野菜は私がこれまで食べていた物と同じです!なのに、こんなにも、美味しい!」

 ケミーニアが興奮する理由もゴマだれであった。

 長年生野菜それも葉野菜ばかりを食べてきたケミーニアにとって、ゴマだれで野菜が美味しく食べる野菜が衝撃だったようだ。

 周りを見れば、国王他、野菜で過ごしてきた面々は感動した様子で野菜を食べている。

 ゴマだれを作っている時に料理人達に聞いたが、ドレッシングと言う物もこの世界には無いそうだ。

 味と言えば塩。

 それがこの世界。

 フォルテは肉が食べられるように慣れば食事が楽しめるかと思っていたが、まだまだ道のりは遠そうである。

 そんな事を考えながら、フォルテはこの美味しい朝食を楽しむのであった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...