57 / 73
第57話 グラコロ
しおりを挟む
翌日のお昼は約束通りにフォルテはグラタンコロッケバーガーを作っていた。
昨日の夜のうちにもう一度仕込んでおいたグラタンソースを雪の降る外に放置して凍らせてある。
勿論ただ放置するだけでは無く雪にあたらないようにだとか衛生面だとかには配慮はしている。
その凍ったグラタンソースに小麦粉、卵、パン粉を付けてコロッケと同じように揚げればグラタンコロッケは完成である。
「グラコログラコロ~」
「フォルテ様、ご機嫌ですね」
フォルテと並ぶようにしてグラタンソースをコロッケの形に整えていたレイアがフォルテの様子を見てつぶやいた。
「グラコロの季節になれば人々は浮き足立つのだ」
「グラコロの季節?」
「そうだ。昨日のグラタンは美味かっただろう? あれが変身して美味しくなるのだ」
「それはとても楽しみです!」
「「グラコログラコロ~」」
フォルテとレイアは完成が待ち遠しい思いを同じように鼻歌に乗せて楽しそうに作業をしている。
2人の姿を、微笑ましそうに見ながらヤコブは小麦粉をこねていた。
今回、ヤコブはフォルテに任されてバーガー用のパンを任されている。
フォルテに教えられた形をイメージしながら、グラコロバーガー用のパン、バンズを一生懸命作っていく。
鼻歌を歌っているフォルテとレイアだが、グラタンコロッケ作りはスピード勝負だ。
凍っているソースが溶けてしまう前にパン粉を付けて揚げなければいけない。
フォルテはレイアに小麦粉、卵、パン粉の順番を指示すると、パン粉がついて準備ができた物を鍋の周りを滑らせるようにして揚げていく。
油の温度は少し低めの170℃でゆっくり色がつくまで揚げていく。
一度揚げは少し色が変わる程度。
この後バンズに挟む時にもう一度揚げてサクサク感をだす為に油を切っておく。
待っている間にキャベツの千切りをするのだが、今回はレイアに練習させてみる。
自分がやったり、スライサーを使えば速いのだが、料理に興味を持っているレイアに色々と料理をさせてあげて、上達して欲しいという思いもあった。
「難しいです、フォルテ様!」
「ははは! なんだその太さは。ゆっくりでもいい。猫の手を忘れずに細く切ってみろ」
「頑張るぜ!」
集中しているからか、気おつけて使うようになっている敬語が崩れている。
フォルテは慎重に千切りを行うレイアを、隣で千切りがしやすいようにキャベツの芯を切り外して一枚ずつ重ねながら見守っている。
時間はかかったが、レイアが切り終わったキャベツが水にさらされている物を見ると、いい感じの細さに切ってあり、レイアの丁寧さがわかる。
ちょうど、ヤコブのバンズも焼き上がったようなので、二度揚げの為に油を温め直す。
温度が上がるまでの間に、キャベツの千切りを少量水気を切って、小皿に取り分けて少しだけマヨネーズをかけると、フォルテはレイアの前に差し出した。
「お前が頑張ったキャベツを食べてみろ」
レイアは小皿のキャベツを一口で口に入れると、ゆっくりと噛みしめる。
シャキシャキとした食感の音がフォルテにも聞こえてくる。
「細く切ったのに歯応えがしっかりあって甘い?」
「キャベツの切る方向を線維に沿って切ったからより歯ごたえが出るんだ。ただ、細くキレてないともそもそしてしまうから、その歯ごたえが感じられるのは上手く切れた証拠だ」
「うん!」
フォルテの褒める言葉に、レイアは嬉しそうに笑顔を作った。
「それじゃ、グラコロバーガーの仕上げをするぞ! ヤコブも手伝え」
「はい!」
ヤコブの焼いたバンズを半分に切り、下のバンズにマヨネーズソースを塗ってキャベツの千切りを置く。
その上にグラタンコロッケを置いて、ソースをかけたら、上のバンズを乗せて完成だ。
もちろん、一個づつで足りる訳はないので、たくさん作っていく。
厨房からは、楽しそうなフォルテとレイア。それから恥ずかしそうなヤコブの「グラコログラコロ~」と歌う声が響いていた。
昨日の夜のうちにもう一度仕込んでおいたグラタンソースを雪の降る外に放置して凍らせてある。
勿論ただ放置するだけでは無く雪にあたらないようにだとか衛生面だとかには配慮はしている。
その凍ったグラタンソースに小麦粉、卵、パン粉を付けてコロッケと同じように揚げればグラタンコロッケは完成である。
「グラコログラコロ~」
「フォルテ様、ご機嫌ですね」
フォルテと並ぶようにしてグラタンソースをコロッケの形に整えていたレイアがフォルテの様子を見てつぶやいた。
「グラコロの季節になれば人々は浮き足立つのだ」
「グラコロの季節?」
「そうだ。昨日のグラタンは美味かっただろう? あれが変身して美味しくなるのだ」
「それはとても楽しみです!」
「「グラコログラコロ~」」
フォルテとレイアは完成が待ち遠しい思いを同じように鼻歌に乗せて楽しそうに作業をしている。
2人の姿を、微笑ましそうに見ながらヤコブは小麦粉をこねていた。
今回、ヤコブはフォルテに任されてバーガー用のパンを任されている。
フォルテに教えられた形をイメージしながら、グラコロバーガー用のパン、バンズを一生懸命作っていく。
鼻歌を歌っているフォルテとレイアだが、グラタンコロッケ作りはスピード勝負だ。
凍っているソースが溶けてしまう前にパン粉を付けて揚げなければいけない。
フォルテはレイアに小麦粉、卵、パン粉の順番を指示すると、パン粉がついて準備ができた物を鍋の周りを滑らせるようにして揚げていく。
油の温度は少し低めの170℃でゆっくり色がつくまで揚げていく。
一度揚げは少し色が変わる程度。
この後バンズに挟む時にもう一度揚げてサクサク感をだす為に油を切っておく。
待っている間にキャベツの千切りをするのだが、今回はレイアに練習させてみる。
自分がやったり、スライサーを使えば速いのだが、料理に興味を持っているレイアに色々と料理をさせてあげて、上達して欲しいという思いもあった。
「難しいです、フォルテ様!」
「ははは! なんだその太さは。ゆっくりでもいい。猫の手を忘れずに細く切ってみろ」
「頑張るぜ!」
集中しているからか、気おつけて使うようになっている敬語が崩れている。
フォルテは慎重に千切りを行うレイアを、隣で千切りがしやすいようにキャベツの芯を切り外して一枚ずつ重ねながら見守っている。
時間はかかったが、レイアが切り終わったキャベツが水にさらされている物を見ると、いい感じの細さに切ってあり、レイアの丁寧さがわかる。
ちょうど、ヤコブのバンズも焼き上がったようなので、二度揚げの為に油を温め直す。
温度が上がるまでの間に、キャベツの千切りを少量水気を切って、小皿に取り分けて少しだけマヨネーズをかけると、フォルテはレイアの前に差し出した。
「お前が頑張ったキャベツを食べてみろ」
レイアは小皿のキャベツを一口で口に入れると、ゆっくりと噛みしめる。
シャキシャキとした食感の音がフォルテにも聞こえてくる。
「細く切ったのに歯応えがしっかりあって甘い?」
「キャベツの切る方向を線維に沿って切ったからより歯ごたえが出るんだ。ただ、細くキレてないともそもそしてしまうから、その歯ごたえが感じられるのは上手く切れた証拠だ」
「うん!」
フォルテの褒める言葉に、レイアは嬉しそうに笑顔を作った。
「それじゃ、グラコロバーガーの仕上げをするぞ! ヤコブも手伝え」
「はい!」
ヤコブの焼いたバンズを半分に切り、下のバンズにマヨネーズソースを塗ってキャベツの千切りを置く。
その上にグラタンコロッケを置いて、ソースをかけたら、上のバンズを乗せて完成だ。
もちろん、一個づつで足りる訳はないので、たくさん作っていく。
厨房からは、楽しそうなフォルテとレイア。それから恥ずかしそうなヤコブの「グラコログラコロ~」と歌う声が響いていた。
0
あなたにおすすめの小説
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる