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第65話 魚粉
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フォルテ達は港町に付いて、この町の漁港組合の会館に来ていた。
勿論、真ん中に立つのはフォルテ。ではなくトリントである。
「この雪の中、ようこそおいで下さいました。お連れ様も、どうぞこちらへ」
通された部屋で、トリント、フォルテ、ケミーニアはソファに案内され、ヤコブとレイアはソファの後ろに案内された。
本来なら、これが正解なのだが、フォルテは、その対応に意を唱えた。
「ソファはまだ空いてるぞ。ヤコブもレイアも座るといい。勿論、君達もだ」
フォルテは、トリントを差し置いて、ヤコブとレイアだけでなく、案内した組合長の背後に控えていた2人の人物にもそう声をかけた。
「そ、それは……」
組合員はトリントと組合長をチラチラと確認して顔をこわばらせた。
ヤコブとレイアもどうしたものかと顔を見合わせている。
「フォルテ様の言う通りに。これは、我が国の成長に関わる大きな話である」
トリントも認めた事で、ヤコブとレイア、組合員達もソファに腰を下ろした。
「それで、今回はどのようなご用件でいらしたのでしょうか?」
「ここからは、私ではなくフォルテ様にお願いする」
トリントがそう言ってフォルテを見ると、フォルテが頷いた。
「俺がここに来たのはこの国で取れる食材の為、それをアルヴとの貿易に繋げて、双方の国を豊かにする為だ」
フォルテの言葉に、組合長、組合員は不思議な顔をした。
「あの、質問をよろしいでしょうか?」
「なんだ? 言ってみろ」
「はい。我が国がアルヴと貿易をするには物資が足りないはず。塩と、観賞用の魚くらいの物だと思っております。それを、双方に豊かにとは想像ができません」
組合長の質問に、フォルテは頷いた。
「ヤコブ、馬車で作った豚バラ大根を出せ」
「はい!」
ヤコブは、多めに作ったから保存しておけと言われていた豚バラ大根の入った容器をテーブルに出した。
「トリントは馬車で食べたからお前達、これを食べてみろ」
フォルテの言葉に、組合長と組合員は豚バラ大根に箸をつけた。
馬車で温めた後に保存したので、まだ湯気が立つ大根や豚バラをそれぞれ口に運ぶ。
時間が経ったので、味がグッと染みた豚バラ大根を食べると、組合長と組合員は目を見開いた。
「なんですかこれは……力を入れなくても噛み切れる柔らかい白根っ子にピギー。それに、なんと表現していいか分かりませんが、塩とは違う味の、でも今までで1番美味しい」
「美味いだろう。その味を出すには重要な食材がある。その一つが、これだ」
フォルテは机の上に魚粉の入った容器を置いた。
「拝見しても?」
組合長の言葉にフォルテが頷くと、組合長は容器を開けて中の魚粉を手で触ったり匂いを嗅いだりした。
「この匂い、日のたった魚の死骸ににている? でも、臭くない……」
「そうだ。それは魚を乾燥させて粉にした物だ。アルヴに輸入された観賞用の魚をな」
フォルテの言葉に組合長も組合員も、それにこの話をまだ聞いていなかったトリントも驚いて魚粉をじっと見た。
「アルヴではその魚しか手に入らなかったがな。この国に来て驚いたが魚の価値が低いだろう? 海とは食材の宝庫だ。魚は調理の仕方が繊細になるが、しっかり調理すれば肉に劣ることはない。それに、海老や蟹、貝、雲丹。場合によってはその辺の肉を凌駕する食材が豊富にある。アルヴは、食を豊かにして国を豊かにする政策をとる。トリトニアも、アルヴと手を取り合い色の豊かな国にならないかと提案に来たんだ。 その為に、船を出せるこの組合に強力を依頼しに来たのだ」
トリントにはさわりだけ話してあったが、フォルテの提案を聞いた組合長は唸った。
「一つお聞きしたい。それが本当なら、私達から買い叩く事もできたはずだ。それなのに、なぜ手を差し伸べるような真似を?」
組合長の質問にフォルテは笑顔を作った。
「そんなもの、みんなで食べた方が美味いからだ。それにな、食うものがないほど貧しい国と食材が豊かな国が隣り合わせになれば戦争が起こる。そうなれば食事どころではないではないか」
食事ファーストの話を楽しそうにするフォルテに、トリントや組合長は、無駄な勘繰りをしたのだと苦笑いであった。
勿論、真ん中に立つのはフォルテ。ではなくトリントである。
「この雪の中、ようこそおいで下さいました。お連れ様も、どうぞこちらへ」
通された部屋で、トリント、フォルテ、ケミーニアはソファに案内され、ヤコブとレイアはソファの後ろに案内された。
本来なら、これが正解なのだが、フォルテは、その対応に意を唱えた。
「ソファはまだ空いてるぞ。ヤコブもレイアも座るといい。勿論、君達もだ」
フォルテは、トリントを差し置いて、ヤコブとレイアだけでなく、案内した組合長の背後に控えていた2人の人物にもそう声をかけた。
「そ、それは……」
組合員はトリントと組合長をチラチラと確認して顔をこわばらせた。
ヤコブとレイアもどうしたものかと顔を見合わせている。
「フォルテ様の言う通りに。これは、我が国の成長に関わる大きな話である」
トリントも認めた事で、ヤコブとレイア、組合員達もソファに腰を下ろした。
「それで、今回はどのようなご用件でいらしたのでしょうか?」
「ここからは、私ではなくフォルテ様にお願いする」
トリントがそう言ってフォルテを見ると、フォルテが頷いた。
「俺がここに来たのはこの国で取れる食材の為、それをアルヴとの貿易に繋げて、双方の国を豊かにする為だ」
フォルテの言葉に、組合長、組合員は不思議な顔をした。
「あの、質問をよろしいでしょうか?」
「なんだ? 言ってみろ」
「はい。我が国がアルヴと貿易をするには物資が足りないはず。塩と、観賞用の魚くらいの物だと思っております。それを、双方に豊かにとは想像ができません」
組合長の質問に、フォルテは頷いた。
「ヤコブ、馬車で作った豚バラ大根を出せ」
「はい!」
ヤコブは、多めに作ったから保存しておけと言われていた豚バラ大根の入った容器をテーブルに出した。
「トリントは馬車で食べたからお前達、これを食べてみろ」
フォルテの言葉に、組合長と組合員は豚バラ大根に箸をつけた。
馬車で温めた後に保存したので、まだ湯気が立つ大根や豚バラをそれぞれ口に運ぶ。
時間が経ったので、味がグッと染みた豚バラ大根を食べると、組合長と組合員は目を見開いた。
「なんですかこれは……力を入れなくても噛み切れる柔らかい白根っ子にピギー。それに、なんと表現していいか分かりませんが、塩とは違う味の、でも今までで1番美味しい」
「美味いだろう。その味を出すには重要な食材がある。その一つが、これだ」
フォルテは机の上に魚粉の入った容器を置いた。
「拝見しても?」
組合長の言葉にフォルテが頷くと、組合長は容器を開けて中の魚粉を手で触ったり匂いを嗅いだりした。
「この匂い、日のたった魚の死骸ににている? でも、臭くない……」
「そうだ。それは魚を乾燥させて粉にした物だ。アルヴに輸入された観賞用の魚をな」
フォルテの言葉に組合長も組合員も、それにこの話をまだ聞いていなかったトリントも驚いて魚粉をじっと見た。
「アルヴではその魚しか手に入らなかったがな。この国に来て驚いたが魚の価値が低いだろう? 海とは食材の宝庫だ。魚は調理の仕方が繊細になるが、しっかり調理すれば肉に劣ることはない。それに、海老や蟹、貝、雲丹。場合によってはその辺の肉を凌駕する食材が豊富にある。アルヴは、食を豊かにして国を豊かにする政策をとる。トリトニアも、アルヴと手を取り合い色の豊かな国にならないかと提案に来たんだ。 その為に、船を出せるこの組合に強力を依頼しに来たのだ」
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「一つお聞きしたい。それが本当なら、私達から買い叩く事もできたはずだ。それなのに、なぜ手を差し伸べるような真似を?」
組合長の質問にフォルテは笑顔を作った。
「そんなもの、みんなで食べた方が美味いからだ。それにな、食うものがないほど貧しい国と食材が豊かな国が隣り合わせになれば戦争が起こる。そうなれば食事どころではないではないか」
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