転生先では幸せになります

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少女期 スイレン国編

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「嘘でしょ…」

私はエンペラーウッドを見上げる。

書物でしか見た事がない伝説の魔物に、驚きを隠せない。

エンペラーウッドとは、SSランクの魔物だ。生態としては、ダークウッドの上位種で何千体ものダークウッドを従えていると言われている。生息地はダークウッドと同様だが、ダークウッドとの違いは元々巨木だったものに長い年月をかけて大量の魔素が吸収されて生まれる事。基本は動かず、動いても微々たる動きのため通常は気づかれない。しかし、エンペラーウッドの生命活動に仇をなす存在と認識されると即刻で命を狙われる。

巨木のため、大変長寿な魔物だ。食事も滅多には取らないが、逆に食事の時期は1~2年かけて大量の食料を食べると言われている。

「まさかと思うが…」

ショウさんの呟きに対して

「その、まさかですよ。この巨木は…」

「「「SSランク、エンペラーウッド」」」

「そりゃ、ポイズンスパイダーが寄らないわけですよ…」

ヘイドが更に呟いた。

エンペラーウッドはコチラを見つめたが、興味がないようで直ぐに視線を外した。

「う、うわぁぁあ!た、助けてくれ!」

男性が叫ぶが、エンペラーウッドは気にする素振りも見せず、枝に巻き付けている人をまた口に運んだ。

「おいおい!アイツらって…最近いなくなっていた冒険者達だぞ!?」

ショウさんは彼らの顔を知っていたようで食べられる直前に思い出したように言った。

「えっ!?てことは…みんな…」

最近の冒険者不足はエンペラーウッドが原因だった。

そして、ダークウッドの大量発生もエンペラーウッドが食事期になったため、配下のダークウッド達が大量発生して、それを討伐しにきた冒険者達をここに連れてきてエンペラーウッドの餌にしていたのだろう。

「これは、想定以上の最悪な事態ですね」

私は取り急ぎギルドから貰っていた非常灯を手に取り、まっすぐ上空に飛ばした。

非常灯が上空で赤く輝く。

(よし、とりあえず非常灯は上げられた…)

私が空を確認しているとヘイドさんから声をかけられる。

「非常灯か…これって誰が助けに来てくれるんだ?」

「そうですね…元々他のギルドの冒険者にも来てもらう予定だそうですが、非常灯をあげればこの国のSSランク冒険者を緊急派遣してくれるってギルドマスターが言ってました。」

「そ、そうなのか?それは助かる。」

ヘイドさんが少し安心した顔をした。

「…なら、アイツらを、助けねぇと…」

私たちの会話を聞いてか、ショウさんが再び呟いた。

「こんなの、どうやって助けるんだよ!?俺らが返り討ちにあって死ぬだけだぞ!?」

ショウさんの言葉にヘイドさんは焦ったように返す。

「で、でもよ!?」

2人が少し言い争いをしているが

「どうしましょうね…」

私はそれに構っている余裕は無かった。

私自身、エンペラーウッドを見たのは初めてなのだ。

前世では一丁前にSSランク冒険者だなんて呼ばれていたが、経験も浅くて、同じSSランク同士では下の方の実力でしかなかった。

一応手に魔力を込めるが

(今の私で、何とかなるのだろうか…)

正直、怖気付きそうである。

当のエンペラーウッドは相変わらずこちらに目もくれず自分の枝に絡まっている人たちで遊んでいる。

「アーシェンリファーちゃんは、逃げてもいいんだよ」

「…逃がしてくれると思いますか?」

「今ならまだ可能性はある。あいつ、俺らに眼中なさそうだからな」

「そうだぞ。危険を冒すのは大人だけで十分だ。」

2人はそう言って私の前に出て微笑んだ。

「ありがとうございます…でも、お気持ちだけ貰っておきます!」

私も2人の覚悟に感化され、この場に残ることにした。

「さぁて、応援が来てくれるまで、頑張るしかないよな」

「それまでに死なない事を祈ろう。」

捕らえた人を遊ぶようにして振り回していたエンペラーウッドが枝の動きを止めてこちらを見る。

(凄い魔力…魔力で押し潰されそう…)

私達はエンペラーウッドに立ち向かう、と意気込んだ矢先に向こうの魔力圧で動けなくなっていた。

そんな私達の姿にエンペラーウッドはニヤリと笑う。

すると、太いツタのようになっている枝をこちらに振り下ろしてきた。


「っ!!あ、危ない!!」

「っ!?」「くっ!?」

私は咄嗟に横にいるショウとハイド、更には自分自身を風魔法で吹き飛ばした。

「いってぇ…」

私に飛ばされたショウさんよろよろと立ち上がる。

「…とんでもないな。」

私は先程まで自分がいた場所を見る。

そこはエンペラーウッドの枝の衝撃により地面が破壊されクレーターのようになっていた。

額に一筋の汗が流れるのが分かる。

「こんなの、くらったら即死じゃない?」

エンペラーウッドの枝は地面で蠢いている。
枝は再びこちらに向かってきた。

私はそれを何とか避ける。

ショウとハイドもエンペラーウッドの枝を必死に避けている。

「【火の鞭フォーコフルスタ】」

火属性の2段魔法だ。避けるだけでは埒が明かないので、こちらも攻撃を仕掛ける。

しかし

バチンッ、という音を立てながらエンペラーウッドは枝をぶつけた事により私が放った【火の鞭フォーコフルスタ】は無惨にも消えてしまう。

(木なんだから火属性は弱点のはずでしょ!?狡すぎない!?)

と内心で愚痴を言う。

それから私達は何度も魔法を放ち、エンペラーウッドけ攻撃をする。

その巨枝で軽く去なされながらも必死に抵抗をし続けた。

私の魔法を受けた時もあったが、向こうからしたら擦り傷程度にもなっていないのだろう。びくともしない。

(こんなの、どうしたらいいのよ!)

半分ヤケクソである。

その時

「【地の槍グランドランス】」

ショウさんの放った魔法がエンペラーウッドの巨枝に当たった。

そしてエンペラーウッドの巨枝に傷が付いた。

「おい!あいつの枝!傷が出来たぞ!」

「ほ、本当ですね!凄いです!」

ショウさんの魔法で出来た傷を見て感心した、その時

『バァアアァアアァアッッ』

エンペラーウッドが悍ましい叫び声をあげた。

怒り状態というやつだ。

更に、目に見えてエンペラーウッドが魔力を込め出した。
しかし、あまりの悍ましさに、私達は唖然とその姿を見ていることしかできなかった。

エンペラーウッドの魔力が膨らんでいく。

「…」

(怖い…)

私の心には一瞬で恐怖が広がって行く。

そんな自分を奮い立たせ、足を動かす。

それと同時に、エンペラーウッドの巨枝が無数に動き出した!

「っ!! 【光の盾ホーリーシールド】!!」

私は咄嗟に光属性の結界を展開する。

エンペラーウッドの魔力が込められた巨枝が何本も展開した結界にぶち当たる。

「ぐっ…た、耐えて!」

私は展開した結界が崩れないように必死で魔力を込める。

何度も攻撃を受けて、もうダメかと思ったが、エンペラーウッドの攻撃が止まった。

(動きが止まった!?)

辺りは砂埃が舞いきっており、自分の身の回りすらよく見えない。

少しづつ晴れていく砂埃と共にエンペラーウッドが再びニヤリと笑っているのが見えた。

(余裕そう、悔しいけど、私は遊ばれてるって事だね。)

結界を解く。しかし、そんなことより2人の安否が心配だ。

「…お2人共!無事ですか!?」

私はさっきの猛攻で2人がどうなったのかが気になった。

砂埃が晴れているのに2人の姿が見えない。

「何処ですか!?」

探していると、クレーターとなってしまっていた地面の下に2人の姿が見えた!

「良かった!大丈夫ですか!?」

私はエンペラーウッドの枝を避けながら2人に駆け寄る。

しかし、駆け寄ると2人は既に息が上がっいた。更に、

「わ、悪い…もう、動けそうにない…」

「み、右に、同じく…」

「えっ…」

2人の言葉に固まる。

よく見ると2人はクレーターによって出来た地面の塊に足が埋もれてした。

「そ、そんな…」

「あ、あいつ…お、俺たちの足を見て笑ってやがったぜ…魔物の癖に悪趣味過ぎる、だろ…」

ショウさんがキレそうな息を振り絞って話をする。

「しかも、お、俺たちが動けないのを確認したら…攻撃を止めやがった…最初から狙ってやがったんだ。」

「俺たちは…ここまでかな…」

「そんな!諦めないでください!」

「でも、なぁ…」

2人が顔を見合わせる。

「助けを呼んだんだから、助けが来るんです!それまで、何としてでも耐えますよ!」

私は諦めることなんてできなかった。

(私が、この2人も、守ってみせる!)

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