星海の運び屋~Star Carrier~

ろんど087

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第3章 事件の匂いがプンプンしてきた

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 サンタはセロリを見つめた。
 彼女はまっすぐにサンタを見つめ返す。相変わらず何かの決意を秘めた瞳で。

(確かに何か裏がありそうな話だし、この目を見ていると助けてやりたくはなるんだが)

「理由としては不十分ですか?」
「いや……」と、サンタ。
「話はわかった。バス・ステーションまで送ることについては、まあ、約束したから、約束は守るさ。けど……」
「『けど』? それは、気が進まない、と云う意味ですか?」

 セロリが不愉快そうな顔を向ける。

「そうだ。悪いがおれはこれでも真っ当な『運び屋』なんだ。人を運ぶことがある、とは云ったが子供の家出を助けるなんてのは……」

 セロリが、むう、と、頬を膨らませる。

「サンタは、羽衣の云うとおり、変なところで堅物ですね」
「悪いことじゃないだろう」
「だいたい、無法者アウトローなんじゃないんですか?」
「相手が無法者の場合はそれなりの対応をするってだけだ」
「夜這いするために私にダブルベッドの部屋を用意したような悪漢なのにですか?」
「夜這いのためじゃない! だいたいおまえの方が逆夜這いしてただろうが?」
「あれは冗談です。羽衣にそそのかされてちょっとしたイタズラをしただけです」

「は・ご・ろ・も!」

 羽衣はいつの間にか席を立ち、カウンターでジョーと談笑していた。

(あいつめ!)

「どうしても納得していただけないですか?」
「納得しなくても送っていくよ。それでいいんだろ?」
「それでは私が納得できません。お互いの信頼が必要です。そもそも私の話を信じていないですね? 私がただのワガママな家出娘だと思っているんでしょう?」
「まあ、そうだ」

 にべもなく、サンタは答えた。

「そうですか」と、セロリ。
「信用していただけないとなると……」

 思いつめた眼差しで、サンタを見つめる。

 そして。

「泣きますよ?」
「え?」
「泣きます!」

 そう云うと、サンタを睨みつけているセロリの琥珀色の目に見る見る涙がたまって行く。

「お、おい……」

 次の瞬間。

「びええええ!」

 泣いた。泣きようもあるだろうに、三歳児のような声を上げて。

「おいおい、セロリ」
「びええええ!」

 大量の涙を流しながら、号泣する。

 カウンターのふたりが、驚いた顔でセロリとサンタに目をやった。
 ジョーは、ああ、やっちまったな、と云うような表情であったが、羽衣の方はきつい視線をサンタに浴びせかける。

「サンタ、泣かしたの? やさしくしなさい、って云ったのに」

 ドスの効いた声。怒っている。

「びええええ!」

 セロリはさらに声のトーンを上げた。羽衣の応援を察知したようだ。
 サンタは、頭を抱えた。

(おれが泣きたくなってきた)
「わかった。わかったよ。おれの負けだ」

 観念して、呟く。
 同時にセロリの泣き声が、ぴたり、と止んだ。

「では?」
「わかったよ。バス・ステーションで無事にバスに乗るまでは送ってやるし、おまえの話を信じる。おまえがただのワガママな家出娘じゃなく、何かに巻き込まれているのもわかったから、そのあたりも考慮してすみやかに『運び』を完遂するさ。神に誓って、な」

(無神論者だけどな)

「ホント?」

 セロリが、可愛らしく、サンタの顔を覗き込む。

「本当だ。別に泣かれたから折れた、とか、そう云う訳じゃないぞ。正直、少々そのリストが気になっているのも確かだしな。ただおまえの話だと、この話を聞いた知り合いのシスターが大怪我をしたって事実がある。それが偶然ならいいがそうでなかったとしたら、つまりおれたちにも被害が及ぶ可能性があるってことだ。おまえ本人でなく」

「私、本人でなく?」

 きょとんとした顔つきである。

(そうか。こいつ、気づいてなかったのか)
(セロリは、身の危険、と云ったが、それは少し違う。身の危険が降りかかるのはどうやら周囲の人間らしい。むしろ、そのトッテンワイヤーにしても、アズナガにしても、セロリを傷つける気はなく、セロリが見てしまった何かを他の人間に洩れないように監視している、と云うのが正解だろう)
(ジョーの話にあった神父の態度ってのも、気になるし)

「いずれにしても気をつけて行くことにしようぜ、相棒」

 セロリの表情がぱっと明るくなる。同時に安堵の微笑を見せた。

「わかりました。ありがとうございます。これで初めてちゃんと契約が締結されたような気がします。安心しました」
「バス・ステーションまで送るだけだからそんなに大袈裟なことじゃないんだがな」
「ええ。それはプロの『運び屋』さんにとっては大したことではないのかも知れませんが、私としては大変、安心しました」

 それから思いついたようにサンタの方に身を乗り出し、顔を近づけると囁くように云った。
 
「それからですね、もしも報酬が不足ならば、今度はイタズラではなく、もう一度、きっちりと、夜這いの続きをさせていただいても構いません」
 一瞬、サンタは黙り込んで、まじまじとセロリを眺め、ふっとため息をついた。

「いらね~よ!」
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