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第14章 明日を迎えるために
(4)
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高らかに宮廷吹奏楽団のファンファーレが鳴った。
ファンファーレの音とともに、そこにずらりと並んだ兵士たちがいっせいに敬礼をする。
リステリアス宮正面広場。
例の巨大ロボが大暴れしたそこである。
そして、まさにその巨大ロボ《ラブリー・ゴッド・マシンダー・X》が宮殿の正面に佇みその威容を誇示していた。朝の光に超合金のボディをがきらめいている。
宮殿のアプローチでリステリアス宮を正面に見ながら直立しているサンタは、隣に並んだ羽衣をちらりと見た。
「おい、羽衣」
「なあに?」
「何だか、これって、すげえ大袈裟じゃないか?」
「うん。まあ、そうかな」
サンタは不慣れな状況に我知らず緊張していたが羽衣は平然としている。いざとなると肝の据わった《バイオ・ドール》だった。
(いや、そもそもこいつのAIには緊張するなんてプログラムはされていないのかな?)
やがてリスタル国歌がしめやかに演奏され始めると正面玄関にスポットライトが当たった。
(スポット・ライト?)
その光の輪の中からしずしずと現れたのは大公モロク三世。
かれはぱっと右手を上げて周囲に向かって挨拶をする。
それからその場で巨体をくるりと回転させてさらに両手を広げて見せた。
豪華なマントが鷲の羽ばたきのようにはためいた。
兵士の後ろにきちんと整列していた臣下の者たちがその様子にどよめいた。
「何だ、この演出……」
「おお、スーパースターだね」
羽衣が明らかにワクワクした顔。相変わらずの能天気ぶりを発揮している。
さらに大公の後ろからは、大公妃イザベラ。
彼女は大公と違い、大仰な演出をすることはなく、にこやかな笑顔を浮かべて上品に手を振っているだけだった。
しかし。
「あれ? セロリがいないね」
羽衣が不思議そうに云うのへ、サンタは黙って頷いた。
その大公と大公妃に付き従っているのは、喜助、弥平次のふたりの馬車守じいさんとセロリの侍女ラフィンであった。
大公はアプローチから続く石段の上からサンタたちを見下ろすと、重々しく頷いて見せる。それから手を上げて楽団を制した。
音楽が止む。
しんと静まり返るリステリアス宮。
「ウイード殿」と、大公。
「この度のヌシの働き、大儀であった。おかげで我が娘セルリアも無事。また我が国を乗っ取ろうと云う邪な企みも防ぐことが出来た。礼を云う」
さすがにサンタが畏まる。
だが大公はちらりと巨大ロボに目をやると……。
「本当はあっちの女子たちが主役の方が場が盛り上がったのだがすでに行ってしまったのでは仕方ない。まあ、こちらにも美人の《バイオ・ドール》がおることだし、それで良しとするか」
ぶつぶつと呟いた。
なまじ静まり返っていたために正面のサンタにも丸聞こえである。
「あら、パパったら」
大公の横でイザベラ大公妃が囁くように云った。
「そんなおつもりだったの?」
びくっ、と、大公が緊張する。
大公妃の迫力に気圧されていた。
(この夫婦、見た目は確かに美女と野獣だが、性格はまったく逆だな)
おほん、と、大公はひとつ咳払いをする。
どうやらそれで話を誤魔化そうと云うところだろう。
それから大公はゆっくりと石段を降りてサンタに近づいて来た。大公妃、じいさんズ、そしてラフィンがそれに続く。
大公はサンタの正面に立つと、サンタをセロリと同じ琥珀色の目で見下ろした。
「本当にありがとう、ウイード殿。ヌシらがセルリアをここまで連れて来てくれなんだら、例えラスバルトの凶行がわかったとしてもわしらには何も出来なかった」
「いや……」と、サンタ。
「おれたちがセロリ……セルリア公女と出会ったのはただの偶然さ。おれたちが何かをしたって訳じゃない」
「結果としてはヌシらの働きによってリスタル公国が救われたことには変わりない。ありがとう」
そう云って大公は、がばっ、とサンタを抱き竦めた。
「うがあ……」
思わずサンタが苦悶の呻き声を上げる。
巨漢の『ネコ属性』亜人であり、かつては騎士長まで務めた武人であるモロク大公の力は決して人並ではない。
サンタは自分の体がみしみしと音を立てている錯覚に陥っていた。
いや、錯覚ではなく本当にみしみしと云っていたのかも知れないが。
(ま、また入院かも……)
意識が朦朧としかけたときに大公はやっとサンタを離してくれた。
サンタは人目もはばからず両膝に手をついて、ぜえぜえ、と息をする。
たぶんこれはこの宮廷では決して珍しい光景ではないらしく、誰ひとり、この惨状にツッコミを入れる者はいなかった。
「そして、羽衣殿」
大公がサンタの横の羽衣に目をやる。
「あ、あたし?」
「そうじゃ。羽衣殿も、ウイード殿と同様に、こう、がばっ、と抱きしめさせておくれ」
その言葉が終わらないうちに、大公妃が、ふわり、と華麗なジャンプをして、大公の後頭部にローリングソバットを見舞った。華麗で見事な技であった。
「パパ、いい加減になさってね?」
その言葉に大公が、しゅん、となる。
「ごめんなさいね、サンタさん。お怪我は大丈夫?」
「あ? ああ、大丈夫のようです」
サンタは無理やり笑って見せた。
「それよりも……、セルリア公女は?」
「ええ、ごめんなさい。実は体調を崩してしまって自室で休んでいるのです」
「体調を崩して?」
オウム返しに云う。
サンタの横で羽衣が首を傾げた。
「体調を崩したくらいでセロリが顔を出さないなんて……、これで最後かも知れないのにどうしてだろう……あ、まさか」
それから、きっ、とサンタを睨みつける。
「サンタ、セロリに何かした?」
「え? いや……」
そう云えばあのテラスでセロリに平手打ちをもらってからは、彼女に一度も会ってはいなかった。
「いや、何もしてない」
かれは、ぼそり、と呟く。
「何で?」
「え?」
「何で、何もしてないの?」
「は?」
「だから、何で、何もしてあげないのよ? それで拗ねちゃってるんじゃないの?」
(つまり、何もしていないのが、まずかった、と?)
「あら、そうなんですか?」
今度はイザベラ妃がサンタをじっと見つめた。
「ふ~ん、意外と朴念仁なんですのね。もっと無法者っぽくて、女なんかセックスの道具くらいにしか考えてない男かと思ったんですけど」
(え? いや、大公妃、ずけずけ云い過ぎだろう? おれってそんな風に思われてたのか?)
国の最高権力者のひとりにそんな風に思われていたことがショックである。
「そうそう、そうなんですよ、イザベラさん。朴念仁で困ってるんだよ」
(お~い、羽衣、おまえのAIには敬語とかねーのか? ここで大公家の怒りに触れて打首とかになったら、洒落にならないぞ)
「まあ、そうなの? あなたも大変ね、羽衣さん。がんばってくださいね」
「はい、がんばります」
そして、ふたりでがっちりと握手を交わす。
(なに、こいつら、意気投合してるんだ?)
「さあ、あなたたちも挨拶なさい」
イザベラ妃が促すとじいさんズとラフィンが歩み出る。
「世話になったのぉ」
「行っつまうとなると寂しいもんだべ」
じいさんズは口々に別れを惜しむ言葉をつむぎ出す。
羽衣に向かって――。
「おい、じいさんたち、おれじゃねーのかよ?」
「あ? 何じゃ、おまえは? 誰だったかのう?」
このじじいども、と、サンタはじいさんズを睨みつけた。
「あの、サンタ様」
呼ばれて振り返るとラフィンだった。
相変わらずの少し怯えたような視線でサンタを見つめていた。
「今回の件ではいろいろとありがとうございました。それからラスバルトが、弟が本当にご迷惑をおかけしてしまい、私、何とお詫びを申し上げてよいやら……」
「もういいさ。気にするな」
「でも、でも、それでは私の気が済みません。……あ、そうだ。お詫びに脱ぎましょうか?」
サンタは頭を抱えた。頭痛がした。
「いや、脱がなくていい。ってか、こんな国民がたくさんいるところで脱ごうとするな」
「え? おい、何で止めるんじゃ? せっかく本人が気持ち良く脱ぎたがっておると云うのに。年寄りには生オッパイが何よりの長生きの秘訣なんじゃぞ?」
じいさんズが不満そうな表情で抗議した。
「黙れ! エロじじい!」
一喝する。
(まったく、このオッパイマニアめ)
「それより、ラフィン。あんた、セロリ付の侍女じゃなかったのか? セロリが、その、体調が悪いと云うのなら、ついていなくちゃならないんじゃないのか?」
「え? ええ、ええ、そ、そうなんですが、その、城には他にも侍女はたくさんいますし、どうせ私など使い捨てのようなものですから、明日も仕事にありつけるか、明後日はどうだろうか、と、始終心配しているような女ですから」
「いや、あんたのそんな身の上を切々と話されてもな」
「と、ともかく、大丈夫です。お気になさらずに」
彼女は深々と頭を下げた。
何を云ってるんだ、と、サンタは不思議そうに彼女のそんな様子を眺めていた。
「さて」と、大公が後頭部を撫でながら切り出した。
「そろそろ出発の時間じゃな。門のところに馬車を用意してある。町の出口ではヌシらの乗ってきたビークルを準備してある。しっかりと整備済だ。心ばかりのお土産も積ませておいたぞ」
「はい。感謝します」
憶えたばかりの騎士の礼をして見せる。
大公はその礼に大公としての返礼をしてにっこりと笑った。かなり強面の野獣スマイルだった。
「名残惜しいがヌシらにもこれからのことがあろう。またリスタル公国に寄ってくれ。では達者でな」
「はい、大公殿下、大公妃殿下。それからラフィンも。――セロリによろしくな」
「ん? おい、わしらはどうしたんじゃ?」
「うるさい、色ボケじじい! 次に来た時はあんたらはどうせ墓の中だ。ついでに墓参りくらいはしてやるよ」
そしてサンタと羽衣は出発したのだった。
最後にセロリに会えなかったのが心残りではあったが。
ファンファーレの音とともに、そこにずらりと並んだ兵士たちがいっせいに敬礼をする。
リステリアス宮正面広場。
例の巨大ロボが大暴れしたそこである。
そして、まさにその巨大ロボ《ラブリー・ゴッド・マシンダー・X》が宮殿の正面に佇みその威容を誇示していた。朝の光に超合金のボディをがきらめいている。
宮殿のアプローチでリステリアス宮を正面に見ながら直立しているサンタは、隣に並んだ羽衣をちらりと見た。
「おい、羽衣」
「なあに?」
「何だか、これって、すげえ大袈裟じゃないか?」
「うん。まあ、そうかな」
サンタは不慣れな状況に我知らず緊張していたが羽衣は平然としている。いざとなると肝の据わった《バイオ・ドール》だった。
(いや、そもそもこいつのAIには緊張するなんてプログラムはされていないのかな?)
やがてリスタル国歌がしめやかに演奏され始めると正面玄関にスポットライトが当たった。
(スポット・ライト?)
その光の輪の中からしずしずと現れたのは大公モロク三世。
かれはぱっと右手を上げて周囲に向かって挨拶をする。
それからその場で巨体をくるりと回転させてさらに両手を広げて見せた。
豪華なマントが鷲の羽ばたきのようにはためいた。
兵士の後ろにきちんと整列していた臣下の者たちがその様子にどよめいた。
「何だ、この演出……」
「おお、スーパースターだね」
羽衣が明らかにワクワクした顔。相変わらずの能天気ぶりを発揮している。
さらに大公の後ろからは、大公妃イザベラ。
彼女は大公と違い、大仰な演出をすることはなく、にこやかな笑顔を浮かべて上品に手を振っているだけだった。
しかし。
「あれ? セロリがいないね」
羽衣が不思議そうに云うのへ、サンタは黙って頷いた。
その大公と大公妃に付き従っているのは、喜助、弥平次のふたりの馬車守じいさんとセロリの侍女ラフィンであった。
大公はアプローチから続く石段の上からサンタたちを見下ろすと、重々しく頷いて見せる。それから手を上げて楽団を制した。
音楽が止む。
しんと静まり返るリステリアス宮。
「ウイード殿」と、大公。
「この度のヌシの働き、大儀であった。おかげで我が娘セルリアも無事。また我が国を乗っ取ろうと云う邪な企みも防ぐことが出来た。礼を云う」
さすがにサンタが畏まる。
だが大公はちらりと巨大ロボに目をやると……。
「本当はあっちの女子たちが主役の方が場が盛り上がったのだがすでに行ってしまったのでは仕方ない。まあ、こちらにも美人の《バイオ・ドール》がおることだし、それで良しとするか」
ぶつぶつと呟いた。
なまじ静まり返っていたために正面のサンタにも丸聞こえである。
「あら、パパったら」
大公の横でイザベラ大公妃が囁くように云った。
「そんなおつもりだったの?」
びくっ、と、大公が緊張する。
大公妃の迫力に気圧されていた。
(この夫婦、見た目は確かに美女と野獣だが、性格はまったく逆だな)
おほん、と、大公はひとつ咳払いをする。
どうやらそれで話を誤魔化そうと云うところだろう。
それから大公はゆっくりと石段を降りてサンタに近づいて来た。大公妃、じいさんズ、そしてラフィンがそれに続く。
大公はサンタの正面に立つと、サンタをセロリと同じ琥珀色の目で見下ろした。
「本当にありがとう、ウイード殿。ヌシらがセルリアをここまで連れて来てくれなんだら、例えラスバルトの凶行がわかったとしてもわしらには何も出来なかった」
「いや……」と、サンタ。
「おれたちがセロリ……セルリア公女と出会ったのはただの偶然さ。おれたちが何かをしたって訳じゃない」
「結果としてはヌシらの働きによってリスタル公国が救われたことには変わりない。ありがとう」
そう云って大公は、がばっ、とサンタを抱き竦めた。
「うがあ……」
思わずサンタが苦悶の呻き声を上げる。
巨漢の『ネコ属性』亜人であり、かつては騎士長まで務めた武人であるモロク大公の力は決して人並ではない。
サンタは自分の体がみしみしと音を立てている錯覚に陥っていた。
いや、錯覚ではなく本当にみしみしと云っていたのかも知れないが。
(ま、また入院かも……)
意識が朦朧としかけたときに大公はやっとサンタを離してくれた。
サンタは人目もはばからず両膝に手をついて、ぜえぜえ、と息をする。
たぶんこれはこの宮廷では決して珍しい光景ではないらしく、誰ひとり、この惨状にツッコミを入れる者はいなかった。
「そして、羽衣殿」
大公がサンタの横の羽衣に目をやる。
「あ、あたし?」
「そうじゃ。羽衣殿も、ウイード殿と同様に、こう、がばっ、と抱きしめさせておくれ」
その言葉が終わらないうちに、大公妃が、ふわり、と華麗なジャンプをして、大公の後頭部にローリングソバットを見舞った。華麗で見事な技であった。
「パパ、いい加減になさってね?」
その言葉に大公が、しゅん、となる。
「ごめんなさいね、サンタさん。お怪我は大丈夫?」
「あ? ああ、大丈夫のようです」
サンタは無理やり笑って見せた。
「それよりも……、セルリア公女は?」
「ええ、ごめんなさい。実は体調を崩してしまって自室で休んでいるのです」
「体調を崩して?」
オウム返しに云う。
サンタの横で羽衣が首を傾げた。
「体調を崩したくらいでセロリが顔を出さないなんて……、これで最後かも知れないのにどうしてだろう……あ、まさか」
それから、きっ、とサンタを睨みつける。
「サンタ、セロリに何かした?」
「え? いや……」
そう云えばあのテラスでセロリに平手打ちをもらってからは、彼女に一度も会ってはいなかった。
「いや、何もしてない」
かれは、ぼそり、と呟く。
「何で?」
「え?」
「何で、何もしてないの?」
「は?」
「だから、何で、何もしてあげないのよ? それで拗ねちゃってるんじゃないの?」
(つまり、何もしていないのが、まずかった、と?)
「あら、そうなんですか?」
今度はイザベラ妃がサンタをじっと見つめた。
「ふ~ん、意外と朴念仁なんですのね。もっと無法者っぽくて、女なんかセックスの道具くらいにしか考えてない男かと思ったんですけど」
(え? いや、大公妃、ずけずけ云い過ぎだろう? おれってそんな風に思われてたのか?)
国の最高権力者のひとりにそんな風に思われていたことがショックである。
「そうそう、そうなんですよ、イザベラさん。朴念仁で困ってるんだよ」
(お~い、羽衣、おまえのAIには敬語とかねーのか? ここで大公家の怒りに触れて打首とかになったら、洒落にならないぞ)
「まあ、そうなの? あなたも大変ね、羽衣さん。がんばってくださいね」
「はい、がんばります」
そして、ふたりでがっちりと握手を交わす。
(なに、こいつら、意気投合してるんだ?)
「さあ、あなたたちも挨拶なさい」
イザベラ妃が促すとじいさんズとラフィンが歩み出る。
「世話になったのぉ」
「行っつまうとなると寂しいもんだべ」
じいさんズは口々に別れを惜しむ言葉をつむぎ出す。
羽衣に向かって――。
「おい、じいさんたち、おれじゃねーのかよ?」
「あ? 何じゃ、おまえは? 誰だったかのう?」
このじじいども、と、サンタはじいさんズを睨みつけた。
「あの、サンタ様」
呼ばれて振り返るとラフィンだった。
相変わらずの少し怯えたような視線でサンタを見つめていた。
「今回の件ではいろいろとありがとうございました。それからラスバルトが、弟が本当にご迷惑をおかけしてしまい、私、何とお詫びを申し上げてよいやら……」
「もういいさ。気にするな」
「でも、でも、それでは私の気が済みません。……あ、そうだ。お詫びに脱ぎましょうか?」
サンタは頭を抱えた。頭痛がした。
「いや、脱がなくていい。ってか、こんな国民がたくさんいるところで脱ごうとするな」
「え? おい、何で止めるんじゃ? せっかく本人が気持ち良く脱ぎたがっておると云うのに。年寄りには生オッパイが何よりの長生きの秘訣なんじゃぞ?」
じいさんズが不満そうな表情で抗議した。
「黙れ! エロじじい!」
一喝する。
(まったく、このオッパイマニアめ)
「それより、ラフィン。あんた、セロリ付の侍女じゃなかったのか? セロリが、その、体調が悪いと云うのなら、ついていなくちゃならないんじゃないのか?」
「え? ええ、ええ、そ、そうなんですが、その、城には他にも侍女はたくさんいますし、どうせ私など使い捨てのようなものですから、明日も仕事にありつけるか、明後日はどうだろうか、と、始終心配しているような女ですから」
「いや、あんたのそんな身の上を切々と話されてもな」
「と、ともかく、大丈夫です。お気になさらずに」
彼女は深々と頭を下げた。
何を云ってるんだ、と、サンタは不思議そうに彼女のそんな様子を眺めていた。
「さて」と、大公が後頭部を撫でながら切り出した。
「そろそろ出発の時間じゃな。門のところに馬車を用意してある。町の出口ではヌシらの乗ってきたビークルを準備してある。しっかりと整備済だ。心ばかりのお土産も積ませておいたぞ」
「はい。感謝します」
憶えたばかりの騎士の礼をして見せる。
大公はその礼に大公としての返礼をしてにっこりと笑った。かなり強面の野獣スマイルだった。
「名残惜しいがヌシらにもこれからのことがあろう。またリスタル公国に寄ってくれ。では達者でな」
「はい、大公殿下、大公妃殿下。それからラフィンも。――セロリによろしくな」
「ん? おい、わしらはどうしたんじゃ?」
「うるさい、色ボケじじい! 次に来た時はあんたらはどうせ墓の中だ。ついでに墓参りくらいはしてやるよ」
そしてサンタと羽衣は出発したのだった。
最後にセロリに会えなかったのが心残りではあったが。
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