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エピローグ
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「なあ、羽衣?」
サンタはオフロード・ビークルを走らせながら、先ほどから黙りこくってずっと窓の外を眺めていた助手席の羽衣に声をかけた。
「ん? なあに?」
「どうかしたのか?」
羽衣はサンタの言葉にかれに視線を向けた。
「だって……サンタは寂しくないの?」
彼女は逆に訊ね返す。
今度はサンタが黙り込む。
首都の大門で馬車からビークルに乗り換え、すでにかれらは首都の郊外に差し掛かるところだった。
来たときには整備されたていたはずの道路は何故か舗装もされずに拡幅されて、道の両側に立っていたはずの木々が大量に薙ぎ倒されている。
まるで巨大で破壊的な何かが通り過ぎた後のような惨状であった。
「セロリ、どうしちゃったんだろ」
羽衣が呟く。
「サンタのせいだよ」
「……」
「サンタがセロリに何もしないから」
「いや、マジにそっちなのか?」
「そうだよ。いい、サンタ? もし今度セロリにあったらちゃんとしてあげて」
「ちゃんと?」
「ちゃんと彼女の話を聞いてちゃんと彼女の希望通りにしてあげること。わかった?」
「いや……、そうは云っても何でもかんでもって訳には行かないだろ? 相手は仮にも一国のお姫様なんだぞ」
「それでも、だよ。一国のお姫様である前にひとりの女の子なんだから」
羽衣が頬を膨らませて睨みつける。
サンタはその顔を見て苦笑した。
(こいつ、自分のことは棚に上げやがって……。相当セロリが気に入ったんだな)
サンタは羽衣にゆっくりと頷いて見せた。
「わかったよ、羽衣。もしもまた会えるようなことがあったら、あいつの云うことをちゃんと聞いてやる。約束だ」
「本当ですね? 聞きましたよ、サンタ!」
突然、背後から声がした。
サンタは慌てて急ブレーキをかけ、羽衣も素早く振り返る。
後部座席の後ろにある荷台。
そこにあった荷物が、ごそごそ、と動いた。
そして。
「セロリ?」
羽衣が叫んだ。
荷物の中からセロリが、ぷふーっ、と息を吐きながら顔を出したのだ。
「今、しっかり聞きましたよ、サンタ。私の云うことを聞いてくださるそうで、ありがとうございます。へっへっへっへ」
「いや、変な笑い方をするな。ってか、おまえ、密航したのか?」
「実は夕べから潜んでいたのです。お父様とお母様に無理を云ってここに隠れさせてもらったのです。修行の旅に出ると云う名目で」
「修行の旅、って、おまえは武道家かよ!」
「それよか、ここから出るのを手伝ってください、羽衣」
能天気に羽衣にお願いするセロリ。
羽衣が後部座席に移り、荷物をどけてセロリを荷台から発掘し始める。
「さすがに一晩はきつかったです。まさしく修行ですね」
「何を呑気に……。本当に大公殿下と大公妃殿下が許してくれたのか?」
「ええ。何だか急に私に、兄弟が欲しいか? とか訊くので、はい、と答えたところ、それなら旅に出ろ、と云われまして」
(それって厄介払いじゃないのか? ってか、大公の云っていた『心ばかりのお土産』ってセロリのことかよ? お土産と云うか『お荷物』じゃねーか!)
「大丈夫なのか、おまえの国は?」
「ええ、平和な良い国です」
「平和ボケの国だろ!」
やがて荷物の中からセロリは無事に発掘され、後部座席にちょこんと座ってサンタに改めて笑いかける。
真っ赤な修道衣。
胸と背中と袖に大きく白い十字架がプリントされている例のコスプレ衣装である。
おまけに腰に巻いたガンベルトのホルスターには44マグナムが鈍い光を放っていた。
「何で、その恰好なんだ?」
サンタがうんざりとして訊ねた。どうあっても一緒に行動したくないファッションである。
「この恰好は……」
セロリが少し照れたように、笑う。
「だって、これはサンタが初めてプレゼントしてくれたものですから。まあ、最初のプレゼントがコスプレショップ、と云うのもどうかとは思いますけどね」
「おまえ、コスプレショップだってわかってたのかよ?」
「当然です」
やれやれ、である。
「おれは一生、コスプレ嗜好のロリ扱いかな」
「大丈夫、私が立派なレディになれば少なくともロリ扱いからは解放されますから」
そう云ってセロリは後部座席から運転席のサンタに抱きついた。
サンタの頬にキスをする。
「あ、セロリ、ずるい!」
「羽衣、これからはサンタを独占させませんからね」
「云ったわね? 望むところだよ」
サンタは何とも切ない長い長いため息をついた。
「ともかく、出発するぞ。ちゃんと席につけ」
「はあ~い」
羽衣とセロリのシンクロした良い返事。まるで子供である。
サンタは苦笑するとビークルを発進させた。
(こんな奴らと一緒で、おれはこの先、大丈夫なんだろうか?)
(『私が立派なレディになれば』か……)
とりあえずは、その言葉を信じてみよう、と、そう思うサンタだった。
サンタはオフロード・ビークルを走らせながら、先ほどから黙りこくってずっと窓の外を眺めていた助手席の羽衣に声をかけた。
「ん? なあに?」
「どうかしたのか?」
羽衣はサンタの言葉にかれに視線を向けた。
「だって……サンタは寂しくないの?」
彼女は逆に訊ね返す。
今度はサンタが黙り込む。
首都の大門で馬車からビークルに乗り換え、すでにかれらは首都の郊外に差し掛かるところだった。
来たときには整備されたていたはずの道路は何故か舗装もされずに拡幅されて、道の両側に立っていたはずの木々が大量に薙ぎ倒されている。
まるで巨大で破壊的な何かが通り過ぎた後のような惨状であった。
「セロリ、どうしちゃったんだろ」
羽衣が呟く。
「サンタのせいだよ」
「……」
「サンタがセロリに何もしないから」
「いや、マジにそっちなのか?」
「そうだよ。いい、サンタ? もし今度セロリにあったらちゃんとしてあげて」
「ちゃんと?」
「ちゃんと彼女の話を聞いてちゃんと彼女の希望通りにしてあげること。わかった?」
「いや……、そうは云っても何でもかんでもって訳には行かないだろ? 相手は仮にも一国のお姫様なんだぞ」
「それでも、だよ。一国のお姫様である前にひとりの女の子なんだから」
羽衣が頬を膨らませて睨みつける。
サンタはその顔を見て苦笑した。
(こいつ、自分のことは棚に上げやがって……。相当セロリが気に入ったんだな)
サンタは羽衣にゆっくりと頷いて見せた。
「わかったよ、羽衣。もしもまた会えるようなことがあったら、あいつの云うことをちゃんと聞いてやる。約束だ」
「本当ですね? 聞きましたよ、サンタ!」
突然、背後から声がした。
サンタは慌てて急ブレーキをかけ、羽衣も素早く振り返る。
後部座席の後ろにある荷台。
そこにあった荷物が、ごそごそ、と動いた。
そして。
「セロリ?」
羽衣が叫んだ。
荷物の中からセロリが、ぷふーっ、と息を吐きながら顔を出したのだ。
「今、しっかり聞きましたよ、サンタ。私の云うことを聞いてくださるそうで、ありがとうございます。へっへっへっへ」
「いや、変な笑い方をするな。ってか、おまえ、密航したのか?」
「実は夕べから潜んでいたのです。お父様とお母様に無理を云ってここに隠れさせてもらったのです。修行の旅に出ると云う名目で」
「修行の旅、って、おまえは武道家かよ!」
「それよか、ここから出るのを手伝ってください、羽衣」
能天気に羽衣にお願いするセロリ。
羽衣が後部座席に移り、荷物をどけてセロリを荷台から発掘し始める。
「さすがに一晩はきつかったです。まさしく修行ですね」
「何を呑気に……。本当に大公殿下と大公妃殿下が許してくれたのか?」
「ええ。何だか急に私に、兄弟が欲しいか? とか訊くので、はい、と答えたところ、それなら旅に出ろ、と云われまして」
(それって厄介払いじゃないのか? ってか、大公の云っていた『心ばかりのお土産』ってセロリのことかよ? お土産と云うか『お荷物』じゃねーか!)
「大丈夫なのか、おまえの国は?」
「ええ、平和な良い国です」
「平和ボケの国だろ!」
やがて荷物の中からセロリは無事に発掘され、後部座席にちょこんと座ってサンタに改めて笑いかける。
真っ赤な修道衣。
胸と背中と袖に大きく白い十字架がプリントされている例のコスプレ衣装である。
おまけに腰に巻いたガンベルトのホルスターには44マグナムが鈍い光を放っていた。
「何で、その恰好なんだ?」
サンタがうんざりとして訊ねた。どうあっても一緒に行動したくないファッションである。
「この恰好は……」
セロリが少し照れたように、笑う。
「だって、これはサンタが初めてプレゼントしてくれたものですから。まあ、最初のプレゼントがコスプレショップ、と云うのもどうかとは思いますけどね」
「おまえ、コスプレショップだってわかってたのかよ?」
「当然です」
やれやれ、である。
「おれは一生、コスプレ嗜好のロリ扱いかな」
「大丈夫、私が立派なレディになれば少なくともロリ扱いからは解放されますから」
そう云ってセロリは後部座席から運転席のサンタに抱きついた。
サンタの頬にキスをする。
「あ、セロリ、ずるい!」
「羽衣、これからはサンタを独占させませんからね」
「云ったわね? 望むところだよ」
サンタは何とも切ない長い長いため息をついた。
「ともかく、出発するぞ。ちゃんと席につけ」
「はあ~い」
羽衣とセロリのシンクロした良い返事。まるで子供である。
サンタは苦笑するとビークルを発進させた。
(こんな奴らと一緒で、おれはこの先、大丈夫なんだろうか?)
(『私が立派なレディになれば』か……)
とりあえずは、その言葉を信じてみよう、と、そう思うサンタだった。
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