恋が芽生えて

花宮

文字の大きさ
8 / 16

八話 『語り合いと告白』

しおりを挟む
屋上につくと、本当に開いていた。俺は、屋上の扉をゆっくりと開けた。
するとそこには、上原悠馬がいた。
俺に気づいたのか、上原悠馬は笑顔で手を振ってきた。


「屋上の鍵とかって……どうやって手に入れたんだ?」


俺は、屋上の扉を閉めながら、上原悠馬にそう聞いた。


「あぁ、それはね……コネだよー」


「コネ?」


上原悠馬の言葉に少し驚いた。だって……コネって……
俺が、驚いた顔をしていたからか、上原悠馬は笑いながら続けた。


「教師に脅す……とでも言ったらいいのかな? まぁ、そんな感じだよ?」


上原悠馬は笑いながらそう言った。さらっととんでもないこと言ってるよ!この人……!


「……それにさ。屋上なら誰でも、いつでも入れるわけじゃないでしょ?ここなら……稔のことも独占できるし、〝貴方に花束を〟のことを思う存分に語れるし……ね?」


上原悠馬は、そう言いながら俺の横に来て、フェンスにもたれかかりながら、俺を見た。その目は単純に好きな作品を語りたい……というそんな目だった。
所謂、オタクの目ってやつだ。


「ああ。俺もあの漫画好きだぞ。あの……悪女はストレスだったけど」


「ああ。城ヶ崎透華ねー。あれは、確かに悪女だったね。でもさ……僕は、あの悪役が結構好きだったなー」


「ええ!?そう?俺は、あの悪女が嫌いだったなー」


「あははは!稔らしいね!」


それから俺達は、漫画の感想を言い合った。好きなシーンや、名言など……とにかく語りまくった。そして――。


「……なぁ。〝貴方に花束を〟にはキスシーンあるんだけどさぁ、それってちょうど屋上なんだよねぇ」


上原悠馬は、少し顔を赤らめながらそう言った。
確かにそうだ……キスシーンは屋上だったはず。……ん?屋上……? 俺は、あることに気づいた。だって……俺と上原悠馬は屋上にいる。


これって……もしかして……いや、もしかしなくてもこれは……! 俺が、そう思った瞬間。唇に何かが触れた。それが何かなんてすぐにわかった。
それは――上原悠馬の唇だった。


「ん……!んん……!」


俺は、抵抗しようとしたが……力が入らなかった。息が苦しく、頭がボーッとする。俺は、上原悠馬の胸を叩くが、無視され、さらに深くなっていく。そして……唇の隙間から、舌が入ってくる。
そして、俺の舌と絡める。
俺は、息が苦しくなっていくのに……何故だろう。


「(気持ち……いい……)」


俺は、抵抗することをやめた。そして……上原悠馬は、満足したのか唇を離す。俺と上原悠馬の間には銀色の糸が引いていた。
俺がボーッとしていると、上原悠馬は俺を抱きしめてきた。
そして、耳元で囁いた。


「好きだよ。俺……稔のこと」


その言葉を聞いた瞬間。俺の顔は熱くなっていくのを感じる。そして、俺は……無意識に頷いていた。
それから俺達は、付き合うことになった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

両片思いの幼馴染

kouta
BL
密かに恋をしていた幼馴染から自分が嫌われていることを知って距離を取ろうとする受けと受けの突然の変化に気づいて苛々が止まらない攻めの両片思いから始まる物語。 くっついた後も色々とすれ違いながら最終的にはいつもイチャイチャしています。 めちゃくちゃハッピーエンドです。

目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?

綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。 湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。 そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。 その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

上手に啼いて

紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。 ■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

手切れ金

のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。 貴族×貧乏貴族

処理中です...