知らない世界に転生したと思ったら、すぐ側にガチ勢がいた件について

花宮

文字の大きさ
36 / 75
二章 〜思惑〜

二十七話 『冗談だから!』

しおりを挟む
テストも無事に終わり。ゆっくりと出来る時間になっていた。紅茶を飲み、一息ついていると、


「よー。ナタリーちゃん元気?」


そんなことを思っていると、スティーブン様がやってきた。相変わらずヘラヘラとした笑顔を浮かべているわー。自分がイケメンだと理解しているムーブだ。


「スティーブン様。お久しぶりです。何か用ですか?」


「いやー。君の専属メイドに話があるんだよねぇ。……ちょっと、いいかな?」


「リリィに……?」


スティーブン様がリリィに話があると? 一体なんなのだろうか?因みに、リリィは今先生に呼ばれており、この場にはいないがすぐ戻っては来るだろう。


「そう。リリィちゃんに。ね? いいでしょ?」


有無を言わせない笑顔だ。絶対に拒否させてやらないという意志と圧をビシビシと感じるし……。


「だから放課後。リリィちゃんを貸して……ね?」


イケメンスマイルで見つめられて、断れる人がいるだろうか……?
――いや、いない。スティーブン様は苦手だけど顔だけ見たら好みだし……。


「はぁ……分かりました」


だからつい了承してしまった。リリィにこの後どんな恨み言を言われるか……。想像するだけで胃が痛いわー!胃薬を用意しておこう……なんて思った。


△▼△▼


そして放課後。リリィには返事も聞かずに用件だけを言って、スティーブン様にリリィを引き渡し、私はそそくさと退散した。


リリィにはめちゃくちゃ睨まれたが、まぁ仕方ないよね?私は悪くないよね? そんなことを思いながら、私はローラと合流した。ローラと一緒ならリリィは文句は言わないし。


「ローラ!今日から寮に入るんでしょう?荷物は大丈夫?」


ローラは今日から寮生活で、学校に残るらしい。家のトラブルがあったとかそんなのではなく、純粋に学校から遠いから、という理由でだ。


今までは寮に住むとなると金がいるがローラは成績優秀者だったのでタダで寮に住めるようになったらしい。


「寮生活。とても楽しみです。今まで一人で生活したことなかったですし、不安ですが……」


不安そうな顔を見せるがすぐに笑顔になる。いじめとかなければいいかな、とは思うが、ローラなら大丈夫だとは思うが……


「何かあったら言ってね? 私で解決出来ることなら協力するし。必ずレオン様やアシュリーより先に相談してね?」


「はい、わかりました。でも、何でレオン様より先にですか?」


「負けたくないからよ!」


そう、負けたくないのだ。レオン様にアシュリーにも!私はレオン様やアシュリーにローラを取られたくないし。


「…な、何にですか?」


「私はローラのことが好きなのよ。だから、レオン様とかにローラを取られたくないの!」


先の宣戦布告以来の告白をした。私はローラが好きだ。だから、私が一番になりたいし、他の奴に取られるなんて御免だ。


「す、好き……ですか? 私の事が?」


「そうよ!だから、私以外に取られたくないの!」


ぐいっと勢いよくローラに詰め寄る。私は真剣だ。本気でローラのことが好きなんだ。


「えっ、えっと……私も、ナタリー様のことは……好きですよ?」


私があまりにも勢いよく迫ってきたからか若干困惑しながらもローラはそう言った。


「そうなのね?じゃあ、お付き合いしましょう!」


勢い余っての言葉でもちろん、本気では言ってなかった。冗談で言ったつもりだった。だけど、


「え?」


まじもんの反応をされてしまった。
――真面目に嫌そう! ローラの顔色が困惑を通り越して、嫌悪感が出ている。これはまずいやつでは?と私は思い直し、冗談だと言おうとしたら、


「ご、ごめんなさい! わ、私……ナタリー様とはお付き合い出来ません!」


冗談だと弁明する前にローラからそう言われてしまった。冗談だと言いづらすぎる!


「あ、あのね……今のはあの冗談で……」


「あ……そ、そうで……すか……」


何か私が滑ったみたいになってる……いや、実際に滑ったんだけど。


「と、とにかく!冗談だから! 本気にしないでね!」


嗚呼!もう!今日はダメ!帰って寝て忘れよう!と思いながら私は立ち去った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい

斯波@ジゼルの錬金飴③発売中
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。 ※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。 ※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...