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二章 〜思惑〜
三十五話 『お祓い』
しおりを挟むお祓いすると言ったものの、私はお祓い知識が全くなかった。その上――。
『は?私をお祓い出来るとか思っていることが思っているの?とゆうか、私を祓うって……!お祓いなんて出来るわけないじゃない!!』
脳内に響くナタリー・アルディの声に私は耳を塞ぎながらも、私は考えていたことがあった。もし仮にスティーブン様が祓えたとしても、その場合……
「(私が追い払えるのでは……?)」
これはずっと考えていたことである。お祓いをするのはいいが、私の方がナタリー・アルディの身体を乗っ取っているのは変わらない。いや、私だって好きに身体を奪ったわけじゃないけど……!
「(……まぁ、このお祓いだって確定的ではないらしいし……やっぱり無理かもだけど)」
お祓いで脳内にいるナタリー・アルディを追い払える保証なんてどこにもない。これは賭けだ。
とりあえず、私はスティーブン様にお祓いをしてもらうことにした。
しかし、それについては問題がある。それは……
「スティーブン様。あの……お祓いをして頂くのはいいんですが、何処でするのですか?」
「ん?それは俺の部屋。俺の部屋には特別なお札があるから大丈夫」
お札、かぁ……。お札のお祓いで本当に追い払えるかは心配だけど……。
でも、このまま放置していても何も解決しないので私もスティーブン様の提案に頷いたのだ。
「さぁ、ここが俺の部屋だ」
そう言って連れてこられた部屋はとても広く、豪華だった。そして壁にはいくつかお札が貼っている。側から見たら病んでる?と思われてもおかしくない部屋だ。
「あ、これ今日のためにお札を貼ったんだ」
「……なるほど」
準備がいいというか、なんというか……まぁ、今はそんなことどうでもいいか。とりあえず、私はスティーブン様に促されるまま椅子に座るとスティーブン様は私の頭に手を置いた。
「……じゃ、お祓いを始めるけど……これは効果を約束するものではない。あくまでも気休めだ。……それでもいいか?」
「はい」
私はしっかりとスティーブン様の目を見て頷く。すると、スティーブン様も頷き返してくれた。そしてゆっくり目を閉じて深呼吸をする。そして小さく呟くように詠唱を唱えたのだ。
『滑稽ね。こんなので追い払えると思ってるの?愚かね。本当、笑えるわ!』ナタリー・アルディの高笑いが脳内に響き渡る。その声を無視し、私は深呼吸をして心を落ち着けた。
スティーブン様の詠唱が終わり、私の頭に乗せていた手を離される頃にはもう……ナタリー・アルディの声は聞こえなくなっていた。
「どう?これで声は聞こえなくなったか?」
スティーブン様にそう言われ、私は目を閉じて集中する。だが、ナタリー・アルディの声は聞こえない。
「……聞こえなくなりました……!」
声はしないし、お祓いも成功した……と思っていいのか?でも、声しないしな……ナタリー・アルディの声が脳内に響かないだけで少し落ち着いた。
でも、私はお祓いをしたからと言って油断はしなかった。何故なら、ナタリー・アルディの声が響かなくなっただけで今は黙ってるだけの可能性も少しあるからだ。油断は禁物である。
「また声聞こえたらまた別の方法考えるから、とりあえず今日はこれで終わりだな」
「はい。ありがとうございます」
スティーブン様は優しく微笑んで私の頭を撫でてくれる。その手が心地よくて、私は目を細めたのだった。
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