知らない世界に転生したと思ったら、すぐ側にガチ勢がいた件について

花宮

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三章 〜半年が経って〜

一話 『真実と嘘』

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あれから半年が経った。あの日からローラとは深く話してはないし、会ってもいない。
私は今、中庭のベンチに座ってぼんやりと空を眺めていた。雲一つない青空が広がっている。いい天気だ。


「(……ローラ、元気かな)」


同じクラスだが一言も話していないし、視線すら合わせていない。
たまにすれ違うことはあるけれど、それだけだ。


「(このまま……何も変わらないんだろうな)」


悲しくなるけれど、仕方ない。だって、私には最初からローラの隣に立つ資格などなかったのだから。私はただの脇役でしかないのだ。
私はつまらない道具。レオン様とローラの恋を盛り上げるためのつまらない小道具でした。


「(結局、私は原作と同じ運命を辿るんだろうな……)」  


私なんかが幸せになれるわけがない。回避すればするほど、運命が私を苦しめる。


これは私が幸せになれないという運命なのだろうか?それとも、私が幸せになることを世界が拒んでいるのか……
どちらにしても辛い現実は変わらない。だってローラとレオン様婚約結んだもん。


私はもう……諦めるしかないのだ。
リリィだってもう何も言ってこない。諦めてしまったのかわからないが、あれから彼女は仕事以外では私たちに関わろうとはしなかった。


世話はしてくれるものの、以前のような明るさはなく、暗い表情を浮かべて淡々とこなすようになった。そしてそれは本来あるべき姿なのだと思う。
私達がおかしかっただけで、本来はこれが正しいのだ。


従者と主人の距離はこの距離が普通。だから、もう……これでいいのだ。


「何で私この身体に入ったんだろう……」


この半年間ナタリー・アルディの声は聞こえてこない。こんなことならあの声をお祓いなんてしなければ良かった。
でも、後悔してももう遅い。私はもう戻れなくなってしまったのだ。
……これからのことを思うと憂鬱でしかない。


「おい。ナタリー」


そんなことを考えているとニコラス様が現れた。相変わらず仏頂面だが、これでも私の婚約者である。
そして、私の婚約は順調には進んでいる。……表面上は。


「何ですか。ニコラス様」


不機嫌さを隠さずに私は答えた。そんな私にニコラス様は鼻を鳴らすと、私の横に座った。


「まだローラ・クレーヴのことが好きなのか?」


直球な質問で、私は思わず動揺してしまった。しかし、平静を装って答えた。


「いいえ、もう何とも思っていません」


「………そうか」


ニコラス様はそう一言だけ呟くと黙り込んだ。そして、しばらく沈黙が続いた後……口を開いた。


「なぁ、ナタリー。自分に嘘を吐いてないか?」


「嘘、ですか……?」


「ああ。本当はローラ・クレーヴのことが好きなんだろう?まだ未練があるんだろう?」


図星を突かれて私は言葉を詰まらせた。確かに、私はまだ未練タラタラだ。でも……それを認めたらダメだと思うから。だから私は自分の気持ちを押し込めて嘘を吐く。


「いいえ、そんなことはないですよ」


私は笑顔でそう答えた。するとニコラス様は私を真っ直ぐ見つめてきた。その瞳には怒りが込められているように感じた。


「嘘をつくのが下手だな……そんなに悲しそうな顔をしてるのにまだ強がるのか?」


「っ……違います!!」


私はニコラス様の指摘に腹が立って思わず大きな声で言い返した。だってそれは図星だったから。だからそうとしか言い返せない。


「違わないだろ?君はまだローラ・クレーヴのことが好きなんだろう?」


グイグイと責めてくるニコラス様に私は段々イライラしてきた。どうしてこの人は私の気持ちを踏み躙るようなことをするのだろうか? 私がどれだけ我慢してるかも知らないで……っ!! 


そう思った瞬間、私の中で何かが弾けたような気がした。そして次の瞬間には口を開いていた。
今まで溜まっていた不満や怒りが一気に溢れ出すのを感じた。


「っ……私はもう諦めたんです!!もう終わったことなんですよ!?なのにどうして今更そんなこと言うんですか!?」


「未練タラタラだからだろう?お前が諦めてるならそんな顔はしないだろう」


「ニコラス様には関係ないでしょう!?放っておいてください!!」


「いいや、放っておけないな。僕はナタリーのことが好きだから」


ずっと言われてきた言葉。でも、それなら――、


「私のことが本当に好きならこっちの方が良いじゃありませんか。どうせ卒業後に私達は結婚するんですから」


「……本気でそう思うのか?」


「ええ。だってそうでしょう?結婚すれば私はニコラス様の妻になるんですから」


「僕はナタリーのことが好きだから、妻にしたいと思っているし、好きだ。でも、君は違うんだろう?未だにローラ・クレーヴのことを想っている。そんな状態のナタリーと結婚するつもりはない」


ニコラス様の言葉に私は何も言い返せなかった。確かにその通りだから。


「……ささっと素直になれ。それが僕にできる精一杯だ。……放課後、体育館裏で来てくれ」


それだけ言うと、ニコラス様は去って行った。私はただ呆然としたままその後ろ姿を見つめていた。
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