知らない世界に転生したと思ったら、すぐ側にガチ勢がいた件について

花宮

文字の大きさ
55 / 75
三章 〜半年が経って〜

十話 『精神世界』

しおりを挟む
「……様、…りー……様」


誰かが呼んでいる声で意識が浮上した。……誰?ここはどこ?私は一体どうなったの?


「ナタリー様!」


「……って。リリィか」


私を呼んでいる声の正体はリリィだった。……なんだか、リリィを久しぶりのような気がする。なんでだろうか? 


「リリィですが……それすら認識出来なくなったんですか?」


「違うよ!?ただ、少し混乱してただけ!」


毒舌を吐くリリィに反論しつつ、私は今の状況を把握するために頭を働かせながら、ため息を吐いているとリリィが話しかけてきた。


「まぁ、そんなことはどうでもよくて……ナタリー様。イザベル様のことを話しましょう」


「イザベル様のこと?もしかして、なにか進展があったの?」


「はい。実は……と、言いたいところなんですが。学校に遅れるので話は朝食を食べた後でもよろしいでしょうか?」


「えっ、今話してよ」


「ダメです。ほら、早く準備してください」


急かしてくるリリィに私は渋々起き上がり、支度を始めた。
制服に着替え、朝食を食べるために1階のリビングへと降りて行き、椅子に座る。そして、机の上にあったパンを齧り、紅茶を一口飲んだ。


「そ、それで……進展は?」


「ナタリー様。食べることに集中してください」


むー、こいつ……!意地でも話さないつもりだな……! 私はイラッとしながらも、朝食を食べ終わり、制服を着て、鞄を持ち、リリィと共に家を出て馬車へと乗り込む。そして、馬車に揺られながらイザベル様のことを聞いた。


「それで。どういうことなの?イザベル様がどうしたの?」


「それはですね……」


リリィは真剣な表情をして、話し始める。


「まず、イザベル様はナタリー様のことを恨んでいます。……調べたところ、ナタリー様はイザベル様を階段から突き落とした疑惑がかけられています」


「……はぁ?」


何言ってるの?私がイザベル様を階段から突き落とした?元のナタリー・アルディならしそうだが、私はそんなことしないし。


『あははっ。私を忘れちゃ困るわよ。偽者さん?』


「っ!」


頭に響いた声に私は思わずビクッとする。……元のナタリー・アルディの声が脳裏に響く。自称〝冬眠〟していたと言っていたナタリー・アルディ。なんで、今現れるわけ?!


『ようやくよ!貴方を追い出す方法がわかったの!貴方を……排除する方法がね!』


排除……ってどういうこと? 私は不安になりながらも、ナタリー・アルディに問う。すると、彼女は笑いながら答えた。


『もう、うんざりなのよ!この状況に!だから……もう返してもらうわ!私の身体!』


次の瞬間。私の頭に激しい頭痛が走った。私は頭を押さえながら、歯を食いしばる。
痛い……痛い……!!頭が割れそう……!! やがて、痛みが引いた頃には私の意識は途絶えていた。


△▼△▼


――私はずっと虐げられていた。私は出来損ないと呼ばれ、妹は愛想が良く、可愛がられていた。私はそんな妹に嫉妬した。そして、妬ましいと思った。


でも、そんなこと言えるはずもなく。私はただひたすらに我慢し続けた。どれだけ妹にバカにされようとも。……だって私には彼がいたから。だけど、その彼も妹に取られてしまった。


唯一の生き甲斐だった彼を失い、私は生きる意味を失った。そして、そのまま死んだ。……死ぬはずだったのに。


「ここは……どこ?」


私が目を覚ますと、そこは真っ暗闇の世界だった。何も見えない。私は困惑しながら周囲を見渡すが……黒しか見えない。あれ……私、馬車の中に乗ってなかったっけ? とりあえず、私は歩いてみる。しかし、どれだけ歩いても景色は変わらず、進んでいるのかさえ分からない。


「(ああ……思い出した。私排除されたんだ)」


望んでもないのにナタリー・アルディの身体に入ったあげく、返せと言われたんだ。まぁ、それを私に言われても困るんだけどね……。それに……


元のナタリー・アルディはちゃんと入れたのだろうか。ならば、リリィがめちゃくちゃ心配だ。二人っきりだしなぁ……まぁ、あいつはめちゃくちゃタフだし大丈夫か……


「(にしても本当にここは何処だ?夢の世界か?にしては現実味がありすぎるが……)」


私がそんな風に悩んでいると、後ろから足音が聞こえてくる。……え?この精神世界みたいなところで足音?え、怖。
私は恐る恐る後ろを振り返る。すると、そこには……


「お、お嬢様……ではない!誰ですか!?お嬢様を何処にやったんですか!」


そこにいたのはリリィだった。恐らく、このリリィは……


「貴方が元のリリィね?」


と、私がそう言うと、リリィは驚いた様な表情をしながらも頷いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい

斯波@ジゼルの錬金飴③発売中
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。 ※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。 ※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...