【完結】君に伝えたいこと

かんな

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〜青春編〜

二十五話 『湧き出た感情』

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姉ちゃんに相談してから二週間が経った。笹川さんとは連絡を取り合ってはいるし、頻繁に一緒に帰っているが、俺らは受験生なので勉強を優先しているからか、まだデートは出来てないし、ましてやキスをすることもしていない。


このまま"受験"を言い訳にして、自然消滅していくんじゃないかと不安になっている今日この頃であるのだが――、


「(今日は一緒に帰ってるし……自然消滅とかしてない……よな?)」


俺は隣にいる彼女の横顔を見ながらそんなことを考えていた。


『キスすればいいじゃん』


ふと思い出すのは姉ちゃんの言葉だ。あれから頻繁に催促してくる。めちゃくちゃ鬱陶しいし――、


「(笹川さんの唇ってどんな感触なんだろう……)」


こんなことばかり考えてしまう始末。きっとキスしたら気持ち良いんだろうなって思うけど……


『あの……中村くん?大丈夫……?』


突然声をかけられハッとする。どうやらずっと黙っていたせいで心配させてしまったようだ。


「ご、ごめん!ちょっとボーッとしてただけだ!」


慌てて誤魔化すと彼女は安心したように微笑んでいる。心配してくれたのに俺の頭の中にはキスのことしか考えてなかったなんて言えない……。


「あーー!みのりちゃんだ!」


そんなことを思っていると、男の声が聞こえてきた。その方向を見ると、そこには――、


「あ、正弘くん……」


「あ!そっちはこの前の……!」


そう言いながら俺の方を指さす男。……誰だ?面識があって……どこかであったような気がするんだけど思い出せない……


「ほら!サッカーの試合の時に俺のこと助けてくれただろ?」


サッカーの試合…?助けた……?……あっ、もしかして――


「あのときのキーパーくん!?」


あいつにいじめられていたキーパーくんじゃねーか。笹川さんと知り合いだったのか……。


「キーパーくんって!俺の名前は萩原正弘だよ」


そう言いながら萩原くんは笑った。にしても、この二人、知り合いなのか……? お互い下の名前で呼び合っているし……


「こんなところでみのりちゃんに会うなんて偶然だねぇ」


『正弘くんこそ!』


二人は楽しげに話している。まるでカップルみたいに見える。その光景を見ていて胸の奥が暴れてゆく。……今、笹川さんと付き合っているのは俺の筈なのに…


他の男と楽しく話している彼女を見たくないと思ってしまう自分がいた。そして気付いたときには――


「え……!?」


笹川さんの手を繋ぎ、その場から逃げ出した。


「な、なかむらくん……っ!?」


後ろから彼女が戸惑う声が聞こえる。だけど今は聞こえなかった。
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