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番外編
『偽恋人 〜後編〜』
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今日は、雄太さんと一緒に帰る日だ。好きな人と一緒だから嬉しいはずなのに、今日は全然嬉しくなかった。理由は簡単である。それは――。
「あ、石崎さん。お疲れ。一緒に帰ろう?」
この男がいるからである。なんなんだよ、こいつ。さっきから私の横に並んで歩いてくるんだけど……ストーカーなのかしら。
「……も、申し訳ございませんが、私、用事があるので失礼します!!」
と言ってダッシュして逃げようとしたのだが、腕を掴まれてしまった。ちょ、力強いんだけどっ……!痛いし、離せよ!!
「ねえ、どうして逃げるの?僕何かした?」
………イケメンというのはずるい生き物だと思う。こんな風に悲しげな表情を浮かべて、そう言ったらまるで私が悪者みたいじゃない!
「あ、あの……私、急いでいるので……すみません!」
私は彼の手を無理やり振り払おうとしたが、彼はそれを許してくれず、逆に引っ張られた。そして、耳元でこう囁かれた。
「逃さないよ」
ゾクッとした感覚に襲われた。背筋が凍るとはこの事を言うのかと思った。怖い……ただその感情だけが頭を支配した。私は、恐怖心を抑えつつ、彼に反論する。
「わ、私は別に逃げたわけじゃありません。本当に用事があっただけです」
「なら、尚更行かせないよ。君がいないと僕は寂しいんだ。せっかく2人きりになれたっていうのに」
ど、どうしよ……怖い……。このままだと何をされるかわかったもんじゃない。今までは強気にいけていたけれど、今回は無理かもしれない……。私は怖くなって俯いたまま固まっていると、
「石崎さん!」
という声と共に誰かが私たちの間に入ってきた。誰だろうと思って顔を上げるとそこには――
「な、中村くん!?」
「桜木先輩!何やってるんですか!?彼女は嫌がっているでしょう!?離してあげてください!!」
そういって、中村くんは私の手を握ってこの場から連れ出した。
△▼△▼
「はぁ……ここらへんまで来たら大丈夫かな……」
私たちは学校を出て少し歩いたところにある公園に来ていた。ここは普段あまり人が来ないので落ち着いて話せる場所なのだ。
「ありがとうね、助けてくれて……」
「いえいえ、当然のことですよ!石崎さんにはいつもお世話になっていますからね!」
そう言ってニコッと笑った。……本当、お似合いだよ。みのりちゃんと中村くんは。そんなことを思っていると、
「………つばめちゃん?」
雄太さんの声がした。…その隣にはみのりちゃんもいる。……対して、私と中村くんは先の勢いでまだ手を繋いだままだった。
えっと……これって結構まずい状況なのでは……? とりあえず、誤解を解くために説明しようとした時だった。
「え、ちょ!?み、みのり!?」
みのりちゃんが中村くんの手を握りその場から走り去っていってしまったのだ。あー……これは浮気現場を見られて修羅場になるパターンですね……。
「……なぁ。つばめちゃん、今のはどういうことかな?」
不意に後ろを振り向くと、鬼の形相をした雄太さんの姿が目に入った。……怒っている理由は分かっている。
恋人であるみのりちゃんじゃなく、他の女の手を握ったから怒っているんでしょう?彼氏なのに。だけど――。
「……中村くんは助けてくれただけだよ?」
「………助けた?」
「うん、そう。桜木先輩に絡まれてる時に中村くんが割って入ってくれたの」
嘘偽りのない真実を伝えたつもりだった。しかし、彼は納得していない様子だ。拳を握り締め、今にも殴りかかってきそうな勢いでいる。私は、怖くて目を瞑っていた。すると、
「ごめん……」
…どうして謝るのか分からなかった。雄太さんは何も悪くない。悪いとすれば、あの男だ。
「偽恋人しているのは俺なのに……これじゃ、中村洋介のこと悪く言えねぇよな。ごめん……本当にごめん……!」
正直意外だった。彼がそんなに自分の事を責めるなんて思ってもいなかったからだ。
「……大丈夫ですよ。私、雄太さんと偽恋人してたときも陰口は減ったし、何より楽しかったですし!」
これは事実。女子達の陰口は現に減ったし、何よりも楽しい時間を過ごせた。だから、私は雄太さんに感謝してもしきれない程だと思っている。だから、私は雄太さんに笑っていてほしいの。だから、私は――。
「もう少しだけ続けてください!お願いします!」
そういって、私は頭を下げて懇願した。
「……分かった。続けよう」
そう言って雄太さんは笑う。……この関係はいつか終わる。だから、それまでは精一杯楽しんでやろう。私は、そう心に決めた。
「あ、石崎さん。お疲れ。一緒に帰ろう?」
この男がいるからである。なんなんだよ、こいつ。さっきから私の横に並んで歩いてくるんだけど……ストーカーなのかしら。
「……も、申し訳ございませんが、私、用事があるので失礼します!!」
と言ってダッシュして逃げようとしたのだが、腕を掴まれてしまった。ちょ、力強いんだけどっ……!痛いし、離せよ!!
「ねえ、どうして逃げるの?僕何かした?」
………イケメンというのはずるい生き物だと思う。こんな風に悲しげな表情を浮かべて、そう言ったらまるで私が悪者みたいじゃない!
「あ、あの……私、急いでいるので……すみません!」
私は彼の手を無理やり振り払おうとしたが、彼はそれを許してくれず、逆に引っ張られた。そして、耳元でこう囁かれた。
「逃さないよ」
ゾクッとした感覚に襲われた。背筋が凍るとはこの事を言うのかと思った。怖い……ただその感情だけが頭を支配した。私は、恐怖心を抑えつつ、彼に反論する。
「わ、私は別に逃げたわけじゃありません。本当に用事があっただけです」
「なら、尚更行かせないよ。君がいないと僕は寂しいんだ。せっかく2人きりになれたっていうのに」
ど、どうしよ……怖い……。このままだと何をされるかわかったもんじゃない。今までは強気にいけていたけれど、今回は無理かもしれない……。私は怖くなって俯いたまま固まっていると、
「石崎さん!」
という声と共に誰かが私たちの間に入ってきた。誰だろうと思って顔を上げるとそこには――
「な、中村くん!?」
「桜木先輩!何やってるんですか!?彼女は嫌がっているでしょう!?離してあげてください!!」
そういって、中村くんは私の手を握ってこの場から連れ出した。
△▼△▼
「はぁ……ここらへんまで来たら大丈夫かな……」
私たちは学校を出て少し歩いたところにある公園に来ていた。ここは普段あまり人が来ないので落ち着いて話せる場所なのだ。
「ありがとうね、助けてくれて……」
「いえいえ、当然のことですよ!石崎さんにはいつもお世話になっていますからね!」
そう言ってニコッと笑った。……本当、お似合いだよ。みのりちゃんと中村くんは。そんなことを思っていると、
「………つばめちゃん?」
雄太さんの声がした。…その隣にはみのりちゃんもいる。……対して、私と中村くんは先の勢いでまだ手を繋いだままだった。
えっと……これって結構まずい状況なのでは……? とりあえず、誤解を解くために説明しようとした時だった。
「え、ちょ!?み、みのり!?」
みのりちゃんが中村くんの手を握りその場から走り去っていってしまったのだ。あー……これは浮気現場を見られて修羅場になるパターンですね……。
「……なぁ。つばめちゃん、今のはどういうことかな?」
不意に後ろを振り向くと、鬼の形相をした雄太さんの姿が目に入った。……怒っている理由は分かっている。
恋人であるみのりちゃんじゃなく、他の女の手を握ったから怒っているんでしょう?彼氏なのに。だけど――。
「……中村くんは助けてくれただけだよ?」
「………助けた?」
「うん、そう。桜木先輩に絡まれてる時に中村くんが割って入ってくれたの」
嘘偽りのない真実を伝えたつもりだった。しかし、彼は納得していない様子だ。拳を握り締め、今にも殴りかかってきそうな勢いでいる。私は、怖くて目を瞑っていた。すると、
「ごめん……」
…どうして謝るのか分からなかった。雄太さんは何も悪くない。悪いとすれば、あの男だ。
「偽恋人しているのは俺なのに……これじゃ、中村洋介のこと悪く言えねぇよな。ごめん……本当にごめん……!」
正直意外だった。彼がそんなに自分の事を責めるなんて思ってもいなかったからだ。
「……大丈夫ですよ。私、雄太さんと偽恋人してたときも陰口は減ったし、何より楽しかったですし!」
これは事実。女子達の陰口は現に減ったし、何よりも楽しい時間を過ごせた。だから、私は雄太さんに感謝してもしきれない程だと思っている。だから、私は雄太さんに笑っていてほしいの。だから、私は――。
「もう少しだけ続けてください!お願いします!」
そういって、私は頭を下げて懇願した。
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