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番外編
『松岡瞳の返事 〜後編〜』
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認めないまま数日が経った頃。相変わらず宮沢くんは私に話しかけに来ていた。そして今日も今日とて一緒に帰ろうと誘われる。
私がどんなに断っても、彼は毎日誘ってくる。もうこれは一種の執念のようなものを感じた。だけど、最近の私は、そんな宮沢くんのことが少し怖くなっていた。
だって……ねぇ?宮沢くんって、私のことが好きだからいつも話しかけてくるんでしょ? それなのに、私は彼に酷いことばかりしている。なのに彼はめげずに私に話しかけてくる。
それが、なんだか怖かった。
どれだけ酷いことをしても、彼は私のことを好きでいてくれるということだろう。それはなんて辛いことなんだろう。そして私はいつまで彼の優しさに甘えているんだろう。
「……宮沢くんは何で諦めないの?」
だから私はつい聞いてしまった。彼は少し驚いた顔をした後に、真顔になって私を見たがゆっくりと口を開く。
「それは……やっぱり、好きだからだよ。好きな人には振り向いて欲しいから」
そう言った彼の目はいつものようなヘラヘラとしたものではなく、真っ直ぐと私を見つめていた。
私はそんな彼の目を直視することが出来ずに、思わず目を逸らしたら――。
「松岡が洋介以外の奴を好きになったらこの恋は諦められるよ」
そんなことを彼は言った。何を言っているのだろう。私はもう中村くんのことなんて好きじゃないのに。
だけど宮沢くんの目を見ると、私は何も言えなかった。
「まだ好きなんでしょ?洋介のこと」
「ち、違うよ……。私はもう中村くんのことなんか……」
好きじゃない。そう言おうとして言えなかった。だって、宮沢くんの目を見てしまったから。彼の真っ直ぐで真剣な目を見てしまうと、言葉が詰まってしまうのだ。
「じゃあ何でまだ洋介のこと目で追ってるの?何で笹川と洋介が話していると面白くないような目にしてるの?」
畳み掛けるように言う宮沢くん。
私は何も言い返せなかった。だって、その通りだから。
中村くんと笹川さんが話していると面白くないような目を向けてしまうし、二人が一緒に帰っているのを見ると心がモヤモヤする。
でも、考えないようにしていた。だって、考えたら辛くなるし、苦しいから。
だけど、それを宮沢くんは許してくれない。逃げ出そうとする私の腕を力強く掴んだ。
「答えろよ。洋介のことが今も好きなんだろ?」
怖い。宮沢くんが怖い。だけど、その目は真剣そのもので、逃げ出すことも出来ない。
「……っ。あんたに何がわかるのよ!」
掴まれていた腕を離し、大きな声を出して彼を突き放した。
「私だって……私だってこんな気持ち捨てたいわよ!でもそんな簡単に忘れられるわけないじゃない!!」
八つ当たり。そんなことはわかっている。でも、止められなかった。だって、宮沢くんがあまりにも真剣に私を見るから……
「私だって……私だって忘れたいわよ……忘れることが出来たらどんなに楽か……でも……」
「そうか」
そうとしか言わなかった。宮沢くんは私を慰めたりなんてしない。それが、今の私にはありがたかった。
――しばらく沈黙が続いた後、ふと宮沢くんは口を開く。
「だったら忘れなきゃいいじゃん。そっちの方が戦い甲斐があるし」
「た、戦い甲斐って……何よ。戦いって何と戦ってるのよ」
「お前と戦う。俺は負けるつもりなんてねぇぞ。だから賭けをしよう」
「賭け?それってどういう……」
「俺は一週間以内にお前を振り向かせる。洋介のことなんて考えられないようにしてやる」
何を言っているのかわからなかった。だけど、宮沢くんの目を見て本気だということはすぐにわかった。……そして、
「でも、一週間経ってもお前が俺のことを好きにならなかったら……その時はもう諦める」
キッパリと彼はそう言った。諦める……その言葉にズキリと胸が痛む。だけど、宮沢くんはそんな私のことを気にする素振りも見せず、話を続ける。
「もし俺が勝ったら、その時は俺の彼女になれ」
言っていることはめちゃくちゃだ。だって、宮沢くんは私のことを好きになってくれるかなんてわからないのに。
だけど……
「………わかった」
私は何故か頷いていた。そして私は知らない。この一週間後、私は宮沢くんのことを好きになってしまうことを。
そう遠くない未来でそれを知ることになるのはまだ誰も知らないことである。
私がどんなに断っても、彼は毎日誘ってくる。もうこれは一種の執念のようなものを感じた。だけど、最近の私は、そんな宮沢くんのことが少し怖くなっていた。
だって……ねぇ?宮沢くんって、私のことが好きだからいつも話しかけてくるんでしょ? それなのに、私は彼に酷いことばかりしている。なのに彼はめげずに私に話しかけてくる。
それが、なんだか怖かった。
どれだけ酷いことをしても、彼は私のことを好きでいてくれるということだろう。それはなんて辛いことなんだろう。そして私はいつまで彼の優しさに甘えているんだろう。
「……宮沢くんは何で諦めないの?」
だから私はつい聞いてしまった。彼は少し驚いた顔をした後に、真顔になって私を見たがゆっくりと口を開く。
「それは……やっぱり、好きだからだよ。好きな人には振り向いて欲しいから」
そう言った彼の目はいつものようなヘラヘラとしたものではなく、真っ直ぐと私を見つめていた。
私はそんな彼の目を直視することが出来ずに、思わず目を逸らしたら――。
「松岡が洋介以外の奴を好きになったらこの恋は諦められるよ」
そんなことを彼は言った。何を言っているのだろう。私はもう中村くんのことなんて好きじゃないのに。
だけど宮沢くんの目を見ると、私は何も言えなかった。
「まだ好きなんでしょ?洋介のこと」
「ち、違うよ……。私はもう中村くんのことなんか……」
好きじゃない。そう言おうとして言えなかった。だって、宮沢くんの目を見てしまったから。彼の真っ直ぐで真剣な目を見てしまうと、言葉が詰まってしまうのだ。
「じゃあ何でまだ洋介のこと目で追ってるの?何で笹川と洋介が話していると面白くないような目にしてるの?」
畳み掛けるように言う宮沢くん。
私は何も言い返せなかった。だって、その通りだから。
中村くんと笹川さんが話していると面白くないような目を向けてしまうし、二人が一緒に帰っているのを見ると心がモヤモヤする。
でも、考えないようにしていた。だって、考えたら辛くなるし、苦しいから。
だけど、それを宮沢くんは許してくれない。逃げ出そうとする私の腕を力強く掴んだ。
「答えろよ。洋介のことが今も好きなんだろ?」
怖い。宮沢くんが怖い。だけど、その目は真剣そのもので、逃げ出すことも出来ない。
「……っ。あんたに何がわかるのよ!」
掴まれていた腕を離し、大きな声を出して彼を突き放した。
「私だって……私だってこんな気持ち捨てたいわよ!でもそんな簡単に忘れられるわけないじゃない!!」
八つ当たり。そんなことはわかっている。でも、止められなかった。だって、宮沢くんがあまりにも真剣に私を見るから……
「私だって……私だって忘れたいわよ……忘れることが出来たらどんなに楽か……でも……」
「そうか」
そうとしか言わなかった。宮沢くんは私を慰めたりなんてしない。それが、今の私にはありがたかった。
――しばらく沈黙が続いた後、ふと宮沢くんは口を開く。
「だったら忘れなきゃいいじゃん。そっちの方が戦い甲斐があるし」
「た、戦い甲斐って……何よ。戦いって何と戦ってるのよ」
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「賭け?それってどういう……」
「俺は一週間以内にお前を振り向かせる。洋介のことなんて考えられないようにしてやる」
何を言っているのかわからなかった。だけど、宮沢くんの目を見て本気だということはすぐにわかった。……そして、
「でも、一週間経ってもお前が俺のことを好きにならなかったら……その時はもう諦める」
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言っていることはめちゃくちゃだ。だって、宮沢くんは私のことを好きになってくれるかなんてわからないのに。
だけど……
「………わかった」
私は何故か頷いていた。そして私は知らない。この一週間後、私は宮沢くんのことを好きになってしまうことを。
そう遠くない未来でそれを知ることになるのはまだ誰も知らないことである。
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