5 / 40
共通ルート
『服選びと面倒ごと』
しおりを挟む遊園地に行く前日のこと。私は悩んでいた。
「………服どうしよう」
そう、明日着ていく服装だ。よそ行きの服とか全く分からないや……みんなと休みの日に遊びに行ったことはあるけど、あれは上着を着ていたりしていつもの服を隠してたからなぁ……。
今は五月で上着なんて着てたら暑いだろうし……つまり、誤魔化しは効かないということだ。うーん……困った。どうしようか……と思った直後…。
「ねぇ!菜乃花!聞いて聞いて!」
……急にバンッと扉が開かれる。入ってきたのはお姉ちゃんだった。めちゃくちゃ嬉しそうに、私に対してこう言った。
「実はさ~!私に友達ができたんだよ!しかも、すっごい可愛い子!!それでさ、明日さー、その子と遊園地に行くんだ!それを誰かに報告したくて!!」
……なるほど、つまりこれは自慢かお姉ちゃんは昔からそうだもんね。自分が楽しいと思うことや嬉しいことがあったらすぐ人に話す癖がある。
まぁ、楽しい話は聞くの好きだし、良いんだけどね。
「……それでねー。明日、こういうので大丈夫かな?」
お姉ちゃんが今着ている服はロングカーディガン?みたいな感じのもので下にズボンを履いている。そして、髪も結んでいて全体的に大人っぽい印象を受けた。
「……うん、いいじゃないかな?似合ってる……と思うよ?」
私がそう言うとお姉ちゃんは満足そうな顔をして、ありがとうと言った。それから少し雑談をして――。
「そういえば、菜乃花も服散らばってるけど何処かに出掛けるの?」
「え……?あ、そうだった!明日、遊園地行く約束してたんだった!」
「菜乃花も?なら、私が選んであげるー!」
そう言ってお姉ちゃんは私の服……というかほとんどお姉ちゃんのお下がりだけれどね。
「あー……これ懐かしー。昔よく着てた奴だ……!これにしたら?」
お姉ちゃんが見せてきたのは青色のデニムパンツに黒のパーカーだ。……遊園地というのは動きやすさ重視……と、ネットとかでも書いてあった気がする。それならば……
「じゃあそれにしようかな……ありがとう。お姉ちゃん」
「んーん。私は何もしてないよー。……そういえば菜乃花は何処の遊園地
に行く予定なの?」
「えっとね……スマイル遊園地だよ」
「へぇー、スマイル遊園地?私も明日行くんだけど」
「え?そ、そうなんだ…」
そ、それって鉢合わせしたらどうなるんだろう……?お姉ちゃん、お喋りだから私のこと勝手にべらべら話しそう……あの三人に……。
「誰と行くの?真美ちゃんとか?あ、それとも告白してきた先輩方たちとか?それなら挨拶しなくちゃ!」
「ち、違うよ……っ!そんなんじゃなくて……ただ友達と遊びに行くだけ……」
咄嗟に嘘をつく。だって本当のこと言ったら絶対うるさいもん……
「ええー?そうなの?つまんなーい」
「つまんなくっていいから!早く出てって!」
私はそう言ってお姉ちゃんを部屋から追い出しながら、
「(………明日、絶対にお姉ちゃんと鉢合わせしないようにしないと……!)」
私はそう心に誓った。
0
あなたにおすすめの小説
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる