君は誰の手に?

花宮

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『服選びと面倒ごと』

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遊園地に行く前日のこと。私は悩んでいた。


「………服どうしよう」


そう、明日着ていく服装だ。よそ行きの服とか全く分からないや……みんなと休みの日に遊びに行ったことはあるけど、あれは上着を着ていたりしていつもの服を隠してたからなぁ……。


今は五月で上着なんて着てたら暑いだろうし……つまり、誤魔化しは効かないということだ。うーん……困った。どうしようか……と思った直後…。


「ねぇ!菜乃花!聞いて聞いて!」


……急にバンッと扉が開かれる。入ってきたのはお姉ちゃんだった。めちゃくちゃ嬉しそうに、私に対してこう言った。


「実はさ~!私に友達ができたんだよ!しかも、すっごい可愛い子!!それでさ、明日さー、その子と遊園地に行くんだ!それを誰かに報告したくて!!」


……なるほど、つまりこれは自慢かお姉ちゃんは昔からそうだもんね。自分が楽しいと思うことや嬉しいことがあったらすぐ人に話す癖がある。


まぁ、楽しい話は聞くの好きだし、良いんだけどね。


「……それでねー。明日、こういうので大丈夫かな?」


お姉ちゃんが今着ている服はロングカーディガン?みたいな感じのもので下にズボンを履いている。そして、髪も結んでいて全体的に大人っぽい印象を受けた。


「……うん、いいじゃないかな?似合ってる……と思うよ?」


私がそう言うとお姉ちゃんは満足そうな顔をして、ありがとうと言った。それから少し雑談をして――。


「そういえば、菜乃花も服散らばってるけど何処かに出掛けるの?」


「え……?あ、そうだった!明日、遊園地行く約束してたんだった!」


「菜乃花も?なら、私が選んであげるー!」


そう言ってお姉ちゃんは私の服……というかほとんどお姉ちゃんのお下がりだけれどね。


「あー……これ懐かしー。昔よく着てた奴だ……!これにしたら?」


お姉ちゃんが見せてきたのは青色のデニムパンツに黒のパーカーだ。……遊園地というのは動きやすさ重視……と、ネットとかでも書いてあった気がする。それならば……


「じゃあそれにしようかな……ありがとう。お姉ちゃん」


「んーん。私は何もしてないよー。……そういえば菜乃花は何処の遊園地
に行く予定なの?」


「えっとね……スマイル遊園地だよ」


「へぇー、スマイル遊園地?私も明日行くんだけど」


「え?そ、そうなんだ…」


そ、それって鉢合わせしたらどうなるんだろう……?お姉ちゃん、お喋りだから私のこと勝手にべらべら話しそう……あの三人に……。


「誰と行くの?真美ちゃんとか?あ、それとも告白してきた先輩方たちとか?それなら挨拶しなくちゃ!」


「ち、違うよ……っ!そんなんじゃなくて……ただ友達と遊びに行くだけ……」


咄嗟に嘘をつく。だって本当のこと言ったら絶対うるさいもん……


「ええー?そうなの?つまんなーい」

「つまんなくっていいから!早く出てって!」


私はそう言ってお姉ちゃんを部屋から追い出しながら、


「(………明日、絶対にお姉ちゃんと鉢合わせしないようにしないと……!)」


私はそう心に誓った。
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