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『文化祭当日』
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翌日。文化祭の前日ということもあって、学校は大忙しだ。クラスの出し物の手伝いをしたり、部活の出し物を手伝おうとしたり、生徒会の仕事も山積みだし。
後は――
「ねぇ。菜乃花ちゃん、昨日の説明してくれる?私、納得してないんだけど」
真白はそう言いながら私達をジト目で見ている。
「説明と言われましても……」
困ったように笑う菜乃花。その隣では真美がうんざりした様子で私達の様子を見ている。
「……まぁ、その……菜乃花は悪くねーらしいし、私ら菜乃花を責めるつもりはねーから安心しろ。ただ……知りたいだけだ。どうして菜乃花があんなことをしたのか」
そう。私達はただそれが気になっているだけ。別に菜乃花が悪いと思っている訳ではない。
「……分かりました。全てお話しします」
菜乃花の表情を見て、私は思った。
あ、これ長くなるパターンでは?とは思ったものの、菜乃花は徐に語り始めた。
語り始めたけど――、
「………」
……意味が分からなかった。いや、分かるはずがない。だって菜乃花の話はあまりにも突拍子過ぎて理解不能だったのだから。
「えっと、つまり?菜乃花は昨日帰ってなくて、ずっと新聞部の部室にいたってこと?」
私が要約すると、菜乃花はコクリと首を縦に振った。……あいつ、菜乃花は家に帰らせたとか言ってた癖に!嘘つきじゃねーか!
「へぇ。あいつ私らに嘘ついたんだー。へぇ………」
あ、まずい。真白が怒りモードに入った。こうなった真白を止める術はない。長年の付き合いである私でも止められないのだ。
「……で?菜乃花先輩は新聞部の部室で何をしてたんです?」
「えーと……小説の執筆を……その……恥ずかしいことにまだ出来上がってなくてですね……」
なるほど。……あ。私も描き終わってないこと思い出してしまった……菜乃花の話聞いてる場合じゃなかった……!
「やべぇ。私も書くの終わってなかった!」
「あ、しまった……明日文化祭当日なのに……私もオチ書き終わってない……」
「……実は私も」
全員、自分の作業がまだ終わっていないことに気づき、焦り始める。まぁ、私はオチを書くだけなのですぐ終わるとはいえ、菜乃花を問いただしている場合ではなかったな……。
そんなこんなで結局話し合いどころではなく、各自作業をすることになったのだが……
「……ねぇ、明日出し物でさ、『愛してるゲーム』っていう奴やるじゃん?あれインスピレーション湧くためにやったんだけど……今考えたらあれ人が来るのかしら」
ズーンと真白の顔が曇る。……こういう時の真白は本当に面倒臭い。正直言って相手するの嫌だけど……。
「はぁ……安心しなくても人来るって。多分」
一応励ましておくことにした。ここで励まさないと後々もっと面倒臭くなりそうだし。
「でもー……」
真白はまだ不安げだ。だけど、小説の続きを書きたい気持ちの方が勝ったようで机に向かってペンを走らせていた。
……良かった。これで静かに執筆できる。
私はホッとして自分の席に戻った。
△▼△▼
そして文化祭当日になった。私のクラスは女子はメイド、男子は執事の格好をしている。いわゆる『メイド喫茶』と『執事喫茶』をしている。正直フリフリの衣装なんて着たくなかったが、仕事なのでしょうがない……と言い聞かせていると、
「奏ちゃーん。そろそろ交代の時間だよ~」
クラスメイトに呼ばれて時計を見るともう12時になっていた。どうやら考え事をしている間に時間が経っていたようだ。
私は急いで準備をして、休憩に入ることになった。文芸部にも顔を出しに行くと、
「愛してるよ!絵美ちゃん」
丁度、今『愛してるゲーム』が始まったところだった。
うっわ~……何この甘ったるい空気……
私は思わず顔をしかめる。『愛してるゲーム』はインスピレーションを掻き立てる為にやったと言っていたが、これはやりすぎではないか? 見ていて胸焼けしそうな程甘い空間なんだけど……
「わ、私も……す……す、好きです……はい」
男の人も女の人にタジタジになっているし。……こんなのでインスピレーションが湧くのか……?謎すぎる……
「閃いたわ!これよこれ!」
突然、真白が声を上げた。何か思いついたらしいが一体どんなものなんだろう?気になる。
「じゃ、私はこれで。こんな恥ずかしいこともうこれっきりよ!真白!」
「うんうん!ありがとうね!絵美ちゃん!」
知り合いか……てゆうか、あんな甘ったるい声で名前呼ぶなんて相当仲良いんだろうな。
私は2人の会話を聞きながらそう思ったのだった。
それから少しして、菜乃花は1人でやってきて、
「お客さん、連れてきました」
そう言って、菜乃花の後ろから入ってきたのは――……え? そこには――。
「あ!華恋さんに………姉貴じゃないですか」
真美が露骨に嫌な表情をする。まぁ、自分の姉が来たらそりゃそういう反応にもなるよね。
「酷いわ。真美ったら」
「真美ちゃんは恥ずかしがり屋だからね」
……まさかこの二人が『愛してるゲーム』をするのか?………インスピレーション湧くのか……と心配していたが…
「ねぇ。私、美咲のこと好きよ」
華恋さんはサラリとそう言ってのけた。そしてそれに対する美咲さんの返しは……
「ええ。私も愛してるわ」
淡々とした口調で返した。……何でだろう。先の人達にはインスピレーションが湧いてこなかったけど……こっちは凄いインスピレーションが湧いてきた……!!
「ありがとうございます!お二人とも!インスピレーション湧いてきました!」
「あら?そう?湧いたのなら良かったわ~」
といって華恋さんは微笑んだ。
後は――
「ねぇ。菜乃花ちゃん、昨日の説明してくれる?私、納得してないんだけど」
真白はそう言いながら私達をジト目で見ている。
「説明と言われましても……」
困ったように笑う菜乃花。その隣では真美がうんざりした様子で私達の様子を見ている。
「……まぁ、その……菜乃花は悪くねーらしいし、私ら菜乃花を責めるつもりはねーから安心しろ。ただ……知りたいだけだ。どうして菜乃花があんなことをしたのか」
そう。私達はただそれが気になっているだけ。別に菜乃花が悪いと思っている訳ではない。
「……分かりました。全てお話しします」
菜乃花の表情を見て、私は思った。
あ、これ長くなるパターンでは?とは思ったものの、菜乃花は徐に語り始めた。
語り始めたけど――、
「………」
……意味が分からなかった。いや、分かるはずがない。だって菜乃花の話はあまりにも突拍子過ぎて理解不能だったのだから。
「えっと、つまり?菜乃花は昨日帰ってなくて、ずっと新聞部の部室にいたってこと?」
私が要約すると、菜乃花はコクリと首を縦に振った。……あいつ、菜乃花は家に帰らせたとか言ってた癖に!嘘つきじゃねーか!
「へぇ。あいつ私らに嘘ついたんだー。へぇ………」
あ、まずい。真白が怒りモードに入った。こうなった真白を止める術はない。長年の付き合いである私でも止められないのだ。
「……で?菜乃花先輩は新聞部の部室で何をしてたんです?」
「えーと……小説の執筆を……その……恥ずかしいことにまだ出来上がってなくてですね……」
なるほど。……あ。私も描き終わってないこと思い出してしまった……菜乃花の話聞いてる場合じゃなかった……!
「やべぇ。私も書くの終わってなかった!」
「あ、しまった……明日文化祭当日なのに……私もオチ書き終わってない……」
「……実は私も」
全員、自分の作業がまだ終わっていないことに気づき、焦り始める。まぁ、私はオチを書くだけなのですぐ終わるとはいえ、菜乃花を問いただしている場合ではなかったな……。
そんなこんなで結局話し合いどころではなく、各自作業をすることになったのだが……
「……ねぇ、明日出し物でさ、『愛してるゲーム』っていう奴やるじゃん?あれインスピレーション湧くためにやったんだけど……今考えたらあれ人が来るのかしら」
ズーンと真白の顔が曇る。……こういう時の真白は本当に面倒臭い。正直言って相手するの嫌だけど……。
「はぁ……安心しなくても人来るって。多分」
一応励ましておくことにした。ここで励まさないと後々もっと面倒臭くなりそうだし。
「でもー……」
真白はまだ不安げだ。だけど、小説の続きを書きたい気持ちの方が勝ったようで机に向かってペンを走らせていた。
……良かった。これで静かに執筆できる。
私はホッとして自分の席に戻った。
△▼△▼
そして文化祭当日になった。私のクラスは女子はメイド、男子は執事の格好をしている。いわゆる『メイド喫茶』と『執事喫茶』をしている。正直フリフリの衣装なんて着たくなかったが、仕事なのでしょうがない……と言い聞かせていると、
「奏ちゃーん。そろそろ交代の時間だよ~」
クラスメイトに呼ばれて時計を見るともう12時になっていた。どうやら考え事をしている間に時間が経っていたようだ。
私は急いで準備をして、休憩に入ることになった。文芸部にも顔を出しに行くと、
「愛してるよ!絵美ちゃん」
丁度、今『愛してるゲーム』が始まったところだった。
うっわ~……何この甘ったるい空気……
私は思わず顔をしかめる。『愛してるゲーム』はインスピレーションを掻き立てる為にやったと言っていたが、これはやりすぎではないか? 見ていて胸焼けしそうな程甘い空間なんだけど……
「わ、私も……す……す、好きです……はい」
男の人も女の人にタジタジになっているし。……こんなのでインスピレーションが湧くのか……?謎すぎる……
「閃いたわ!これよこれ!」
突然、真白が声を上げた。何か思いついたらしいが一体どんなものなんだろう?気になる。
「じゃ、私はこれで。こんな恥ずかしいこともうこれっきりよ!真白!」
「うんうん!ありがとうね!絵美ちゃん!」
知り合いか……てゆうか、あんな甘ったるい声で名前呼ぶなんて相当仲良いんだろうな。
私は2人の会話を聞きながらそう思ったのだった。
それから少しして、菜乃花は1人でやってきて、
「お客さん、連れてきました」
そう言って、菜乃花の後ろから入ってきたのは――……え? そこには――。
「あ!華恋さんに………姉貴じゃないですか」
真美が露骨に嫌な表情をする。まぁ、自分の姉が来たらそりゃそういう反応にもなるよね。
「酷いわ。真美ったら」
「真美ちゃんは恥ずかしがり屋だからね」
……まさかこの二人が『愛してるゲーム』をするのか?………インスピレーション湧くのか……と心配していたが…
「ねぇ。私、美咲のこと好きよ」
華恋さんはサラリとそう言ってのけた。そしてそれに対する美咲さんの返しは……
「ええ。私も愛してるわ」
淡々とした口調で返した。……何でだろう。先の人達にはインスピレーションが湧いてこなかったけど……こっちは凄いインスピレーションが湧いてきた……!!
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「あら?そう?湧いたのなら良かったわ~」
といって華恋さんは微笑んだ。
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