君は誰の手に?

花宮

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『後悔のない選択肢』

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――劇が終わった。白雪姫役の人凄く可愛くて演技も上手くて拍手喝采だった。私も思わず見惚れてしまったほどだ。……この前の私に詰め寄った人とは同一人物とは思えなかった。


「この劇、王子も小人も出てこない代わりに、お姫様や魔女に取り合いされてたな。白雪姫の話ってそんな話じゃないのに」


奏先輩が苦笑しながら言った。奏先輩ってアレンジもの好きじゃないもんね……


「で、でも、あの白雪姫の役の人、凄く演技がうまかったですよね!」


「まぁ、それに関しては同意するけどさ……」


はぁとため息をつきながら奏先輩は言った。……奏先輩的には納得いかなかったんだろうな……。


「……ま、明日は真白と一緒に行くか」


……なんだかんだ言って気に入っているみたいだね。私はその言葉を聞いて嬉しくなった。


「……ま、今はそんなことより次にいくか!」


なんて言って、奏先輩は私の手を引っ張った。


△▼△▼


二日目の文化祭では、色々なところを回った。真白先輩のときには行けなかったところを中心に回っていたから楽しかった。そして――。


「なぁ、菜乃花。私最終日にライブがあるんだ。それでもし、菜乃花が私を選ぶのならライブが終わった後……私のクラス――三年B組に来てくれ」


真剣な眼差しをした奏先輩にそう言われたのだ。……真白先輩と同じことを言われたことに少しだけ驚いてしまったけれど。きっとこれについては三人に共有しているのだと思う。だから私はこう答えた。


「……はい。分かりました」


私が返事をすると同時にチャイムが鳴る。
こうして文化祭二日目は終わったのであった。


△▼△▼


――この話のことを何千回考えているのだろう。奏先輩に真白先輩に真美ちゃんのことをどれを選ぶのかという選択肢を出されたとき、私はどうすればいいのか分からない。


小説だったら、優柔不断で決めれない主人公とか叩かれる展開だ。私もそんな展開は嫌いだったはずだったのに……いざ自分がそうなると嫌になるものだ。


「ふぅー……」


私は主人公じゃない。普通の小説なら脇役にもならないようなモブキャラだ。だって私ならこんなやつを主人公にしたいとは思わないからだ。
自分の意見を持たずに流されるまま生きてきた。自分で考えて行動したことなんかない。ただ周りに合わせてきただけだ。
だけど、そんな自分にも好きだと言ってくれる人がいる。 


そんな人たちの気持ちを踏み躙るようなことはしたくはない。だからこそ悩んでいるのだ。どうすればいいのか――なんて、もう分かっているはずなのに考えてしまうのだ。


誰も傷付かずに済む方法なんてあるわけがないのだと分かっていても……。


「あのときは、保留にして逃げてしまったけど今度は……」


逃げちゃダメだ。向き合わなくてはいけない。それがどんな結果になったとしても……だ。


「――絶対に後悔だけはしない選択をしないといけないよね」


私は覚悟を決めた。例え、誰かを傷つけることになったとしても……私は後悔なんてしない。それだけは自信を持って言えることだ。
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