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『ライブ』
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そして、それからも文化祭を真美ちゃんと回った。昨日と同じだったけども、昨日よりも楽しかった。
そして――、
「菜乃花先輩。明日は最終日ですね」
文化祭も残すところ、明日の後夜祭のみとなった。
真美ちゃんはそう言って、私の顔を覗き込んでくる。
「………そうね。あっという間だったね」
「ですね。楽しかったですか?」
「ええ。楽しかったわ」
私は素直にそう答える。奏先輩と真白先輩とは一緒に回らなかったけれども、その分、真美ちゃんと回れて本当に楽しかった。
「……明日の最終日。私、奏先輩や真白先輩とライブするんです」
………これ、二人にも言われたやつだ。真美ちゃんもライブするんだ……
「ええ。真白先輩と奏先輩に聞いたわ」
「…そうですか。じゃあ、ライブ終わりに私のクラス――一年A組に来てくれませんか?」
真剣そうな顔で真美ちゃんは言った。
私はその言葉に静かに頷いた。
△▼△▼
「――贅沢な選択肢ね」
誰かが言った言葉。
その言葉に頷くことしかできなかった。だって本当に、その通りなんだもん。私は、奏先輩と真白先輩から告白された。でも、そのどちらにも返事をしていない。
…だから周りの人から見れば、私が贅沢な選択をしているようにしか見えない、と言われても、しょうがない。
……でも――、
『好き』という気持ちは嘘じゃない。
だから私は今、真白先輩と奏先輩と真美ちゃんの三人から告白されている。――でも、どちらかに決められないでいる。
本当、贅沢な選択肢だ。
私は真白先輩も奏先輩も真美ちゃんも好き。でも、誰かに優劣をつけることなんてできない。いや、しちゃいけない。
でも――、
「(と、とりあえず……ライブを観に行こう)」
そう思いながら私は体育館に行くと、
「あら、桜田さんじゃーん?桜田さんもライブを観に来たの?」
川崎さんがブンブンと手を振ってきた。
私は川崎さんに向かって手を振り返すと川崎さんはニコニコしながら、私の隣まで来て、
「ねぇ、誰を選ぶの?」
微笑みながらそう聞いてきた。このタイミングでその話題はやめてよ……!
「ま、誰でもいいけど。でも、まぁ。桜田さんが誰を選んだとしても残りの二人は任せなさい。私が慰めてあげるから」
そう言って、川崎さんは私の肩をポンポンと叩いたのと同時に、体育館の電気が消えて、ステージにスポットライトがついた。
すると、パッと舞台袖から真白先輩と奏先輩と真美ちゃんが出てきて……演奏が始まった。
「今日は来てくれてありがとー!早速だけど、一曲目行くぜー!」
真白先輩が叫ぶと同時に、ステージがカラフルな色で照らされて――三人の声が合わさる。
それはとても綺麗で、そして……とても楽しそうだった。
真白先輩のギター&ボーカルが、奏先輩のベースが、真美ちゃんのドラムが一つの音となって、体育館に響き渡る。
初めはカバー曲。
でも、真白先輩の歌声はオリジナルのように聞こえてしまうから不思議だ。そして、奏先輩は流石としか言えないほど、ベースを弾く姿が様になっていて格好いい。そして真美ちゃんのドラムも、真白先輩や奏先輩に負けず劣らず、格好いい。
「(あ、これ……確か…お姉ちゃんのアニメのエンディング曲だ……)」
真白先輩が歌う、アニメのエンディング曲――『ライバル』。
この曲、お姉ちゃんがすごく好きで、よく聴いていたのを覚えている。まぁ、自分が原作の曲だしなぁ。
「(そういえば、お姉ちゃん……今頃、どうしてるかな?)」
文化祭には来ていない。それはお姉ちゃんから聞いていた。でも――今、何してるんだろ……?てゆうか、美咲さんと仲直りしたのかな……?
「(……って、今はライブに集中しなきゃ)」
私は心の中で首を横に振りながら、ステージを見る。ライブはドキドキするけど……とても楽しい。
そして、あっという間に一曲目が終わって――、 二曲目はカバー曲ではなくオリジナル曲だった。しかも……それは真白先輩が作詞作曲したオリジナルソングらしい。
その曲は……とても綺麗で切なくて――でも、どこか温かかった。奏先輩のベースが優しく包み込んでいて、真美ちゃんのドラムが力強く、それでいて楽しそうに叩いている。
『僕と君との出会いは偶然なんかじゃない。運命だって僕は知ってるよ』という歌詞がなんだかとても印象的だった。
『僕らは出会うべくして出会ったんだ』
その歌詞が、私の胸に深く刺さる。
真白先輩も奏先輩も真美ちゃんも、私に向かって歌っているような気がしたから。
「(………私は――)」
三人の記憶が、感情が、想いが――私の中に流れ込んできて、涙腺が緩んでいく。
そして、三曲目は真白先輩のオリジナル曲。――『My Story』という曲で、とても優しいメロディだった。
「(……私は……本当に幸せ者だ)」
この三人と出会えて良かった。そう心から思えた。
そして――、
「菜乃花先輩。明日は最終日ですね」
文化祭も残すところ、明日の後夜祭のみとなった。
真美ちゃんはそう言って、私の顔を覗き込んでくる。
「………そうね。あっという間だったね」
「ですね。楽しかったですか?」
「ええ。楽しかったわ」
私は素直にそう答える。奏先輩と真白先輩とは一緒に回らなかったけれども、その分、真美ちゃんと回れて本当に楽しかった。
「……明日の最終日。私、奏先輩や真白先輩とライブするんです」
………これ、二人にも言われたやつだ。真美ちゃんもライブするんだ……
「ええ。真白先輩と奏先輩に聞いたわ」
「…そうですか。じゃあ、ライブ終わりに私のクラス――一年A組に来てくれませんか?」
真剣そうな顔で真美ちゃんは言った。
私はその言葉に静かに頷いた。
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「――贅沢な選択肢ね」
誰かが言った言葉。
その言葉に頷くことしかできなかった。だって本当に、その通りなんだもん。私は、奏先輩と真白先輩から告白された。でも、そのどちらにも返事をしていない。
…だから周りの人から見れば、私が贅沢な選択をしているようにしか見えない、と言われても、しょうがない。
……でも――、
『好き』という気持ちは嘘じゃない。
だから私は今、真白先輩と奏先輩と真美ちゃんの三人から告白されている。――でも、どちらかに決められないでいる。
本当、贅沢な選択肢だ。
私は真白先輩も奏先輩も真美ちゃんも好き。でも、誰かに優劣をつけることなんてできない。いや、しちゃいけない。
でも――、
「(と、とりあえず……ライブを観に行こう)」
そう思いながら私は体育館に行くと、
「あら、桜田さんじゃーん?桜田さんもライブを観に来たの?」
川崎さんがブンブンと手を振ってきた。
私は川崎さんに向かって手を振り返すと川崎さんはニコニコしながら、私の隣まで来て、
「ねぇ、誰を選ぶの?」
微笑みながらそう聞いてきた。このタイミングでその話題はやめてよ……!
「ま、誰でもいいけど。でも、まぁ。桜田さんが誰を選んだとしても残りの二人は任せなさい。私が慰めてあげるから」
そう言って、川崎さんは私の肩をポンポンと叩いたのと同時に、体育館の電気が消えて、ステージにスポットライトがついた。
すると、パッと舞台袖から真白先輩と奏先輩と真美ちゃんが出てきて……演奏が始まった。
「今日は来てくれてありがとー!早速だけど、一曲目行くぜー!」
真白先輩が叫ぶと同時に、ステージがカラフルな色で照らされて――三人の声が合わさる。
それはとても綺麗で、そして……とても楽しそうだった。
真白先輩のギター&ボーカルが、奏先輩のベースが、真美ちゃんのドラムが一つの音となって、体育館に響き渡る。
初めはカバー曲。
でも、真白先輩の歌声はオリジナルのように聞こえてしまうから不思議だ。そして、奏先輩は流石としか言えないほど、ベースを弾く姿が様になっていて格好いい。そして真美ちゃんのドラムも、真白先輩や奏先輩に負けず劣らず、格好いい。
「(あ、これ……確か…お姉ちゃんのアニメのエンディング曲だ……)」
真白先輩が歌う、アニメのエンディング曲――『ライバル』。
この曲、お姉ちゃんがすごく好きで、よく聴いていたのを覚えている。まぁ、自分が原作の曲だしなぁ。
「(そういえば、お姉ちゃん……今頃、どうしてるかな?)」
文化祭には来ていない。それはお姉ちゃんから聞いていた。でも――今、何してるんだろ……?てゆうか、美咲さんと仲直りしたのかな……?
「(……って、今はライブに集中しなきゃ)」
私は心の中で首を横に振りながら、ステージを見る。ライブはドキドキするけど……とても楽しい。
そして、あっという間に一曲目が終わって――、 二曲目はカバー曲ではなくオリジナル曲だった。しかも……それは真白先輩が作詞作曲したオリジナルソングらしい。
その曲は……とても綺麗で切なくて――でも、どこか温かかった。奏先輩のベースが優しく包み込んでいて、真美ちゃんのドラムが力強く、それでいて楽しそうに叩いている。
『僕と君との出会いは偶然なんかじゃない。運命だって僕は知ってるよ』という歌詞がなんだかとても印象的だった。
『僕らは出会うべくして出会ったんだ』
その歌詞が、私の胸に深く刺さる。
真白先輩も奏先輩も真美ちゃんも、私に向かって歌っているような気がしたから。
「(………私は――)」
三人の記憶が、感情が、想いが――私の中に流れ込んできて、涙腺が緩んでいく。
そして、三曲目は真白先輩のオリジナル曲。――『My Story』という曲で、とても優しいメロディだった。
「(……私は……本当に幸せ者だ)」
この三人と出会えて良かった。そう心から思えた。
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