当て馬ポジションに転生してしまった件について

花宮

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四章 〜原作突入〜

九十五話 『定番の展開』

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――恋する乙女は可愛い。
これは私の持論である。……まあ、私も今絶賛恋する乙女な訳だが。
しかし、美月さんが颯斗くんに恋をしているとなると……少し大変な展開になるのでは?と予想できるのだが。
でもまあ、それはそれか。私は私で頑張るしかないし。それに、もう既に原作崩壊もしているし。


よくよく考えてみたら私が転生している時点で、原作通りなんて無理ということに今更気付いた。何が原作通りだ、出来るわけないだろ。そもそも、私が破滅回避をしている時点で原作通りもクソもない。


だって原作の城ヶ崎透華は当て馬兼悪役で破滅することが決まっているのだから。冗談じゃない!ただの当て馬だけならともかく、破滅なんて絶対にごめんである。


「……透華様……?」


不意に、美月さんに声をかけられる。私はハッとして、彼女に視線を向けた。


「な、何?美月さん」
「いえ……その、急に黙り込んでしまったので……」
「……ああ。少し考え事をしていただけですわ」


私はそう言って、小さく笑う。……考え事というか、今後の展開について考えていただけだけども。
まあでも、こればかりは考えても意味が無いか。
私はそう思いながら、美月さんを見る。……彼女は不安げな表情で私を見つめていた。


「お疲れなのでは?透華様、バイトと塾の両立で大変でしょうし……」

「いいえ。確かに忙しいですが、苦ではありませんわ」


私はそう言って微笑む。…それに、大変ではあるが苦ではないのは確かだ。だって楽しいし。塾は……ちょっとだけ大変だけど。


「……そうですか」


美月さんがそういった直後だった。


「はぁ?貴方、何その態度!?私のこと馬鹿にしてるの?!」


……と、そんな怒鳴り声が聞こえてきた。私と美月さんは思わずそちらに視線を向ける。するとそこには、一人の女子生徒を囲うようにして立っている三人の女子生徒がいた。


てゆうか……あいつ、緑川やん……最近大人しくなったと思っていたら……。
私は思わず顔を顰める。……あんな奴に構うのは嫌だけども、流石に無視する訳にもいかない。私は小さくため息を吐いてから、彼女たちに近付いていこうとした瞬間だった。


「ちょっと。何をしてるの?」


声をかける前に美穂ちゃんが緑川たちに声をかけてしまった。………え?!美穂ちゃん……?
 私は驚きのあまり固まってしまう。美穂ちゃんは緑川たちの元まで歩いていくと、彼女たちに、


「私の友人に何か用ですか?緑川さん」


はぁ?と、緑川たちは美穂ちゃんを見ているが、美穂ちゃんは気にせずに続けた。すげぇ~~~!
流石美穂ちゃん!かっこいい!惚れちゃうわ~! 私は思わず感動してしまう。しかし、緑川はそんな美穂ちゃんを鼻で笑った。


「何?あんたに関係ある?」


睨みながら言う緑川。……しかし、美穂ちゃんは怯むことなく続けた。
私はそんな美穂ちゃんを見て感動すると同時に、やっぱり原作通りの展開になるのでは?と、内心わくわくしていた。
だって、美穂ちゃんと緑川だよ?絶対何か起こるじゃん。


こういうのはヒーローが助けに入るのが定番なのだ。だって緑川は私……城ヶ崎透華のポジションだよ?つまり緑川は当て馬兼悪役ってことじゃん?ということは、だ。


「おい」


ほらーー!やっぱり来た!王子が! 私は思わずニヤリとしてしまう。だって、王子だよ?ヒーローだよ? 


胸キュン展開待ったナシでしょ! 私はそう思っていると、


「い、伊集院様……!」


緑川たちが、慌てたように王子を見る。……いや、私も驚いたわ。まさか彼が出てくるなんて思わなかったから。


「……何をしているんだ?お前たち」


王子が冷たい声で言う。その声音はどこか怒りを孕んでいるような気がした。
全く。……本当に、王子は美穂ちゃんのことになると人が変わってしまうのだから。


「べ、別に何もしていませんわ。ただ話をしていただけです」


緑川が慌てたように言う。……いや、明らかに喧嘩ふっかけようとしてたでしょ。私は思わず眉を顰める。
しかし王子はそんな彼女の言葉を聞くと、小さくため息を吐いただけだった。彼はちらりと美穂ちゃんの方を見ると、静かに口を開く。


「……おい、月坂、ちょっと来い」


グイッと、王子が美穂ちゃんの腕を引っ張る。……いくらなんでも強引では?とは思っても言い出せない。
だって、王子が怖いから。私は思わず身震いをした。
美穂ちゃんは驚いたような表情で王子を見る。しかしすぐに小さく頷いたかと思うと、彼と共にその場から立ち去ったのだった。……いや、何この展開は……。
私は呆然としながら、二人の後ろ姿を見つめていたのだった。
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