僕は精神病である。

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1.僕は精神病である。

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 僕は精神病である。まだ寛解していない。
 仕事がきっかけで病気になったらしいのだが、いつおかしくなったかはとんと見当がつかない。

 何でも、薄暗く誰もいない深夜のオフィスの床に倒れ込み、寝ていた事は記憶している。翌日、新人が僕を発見した。そこで絶叫されたので記憶は鮮明だ。
 
 彼女は「死んでたと思った」らしい。

 それから、会社での僕がおかしくなったのは傍目からでも分かってきたらしい。

 歩行は蛇行し、目は異次元に焦点があっていた。記憶が飛んで何年も一緒に仕事していた同僚が初対面のように思える。と言うかなってしまう。僕の脳の中では。

 受け答えは目茶苦茶で、当然の事ながら仕事も目茶苦茶であった。記憶が無いのに仕事らしきもの残骸は残ってる。
 病人の代わりに仕事してくれる小人はいないか、いても小人も病気なのだろう。
 現実はおとぎ話とは違って超厳しいものだった。

 やがて僕は、病院に連れていかれた。
 会社が契約していた産業医というやつであった。ぼんやりと覚えている。

 僕はそこで精神科医というものに初めて会った。

 そこからの記憶は断片的である。今ある記憶は後から学習した記憶の可能性もあるのであるが、判別不能だ。

 精神科医は「即休みなさい」と言い、診断書を出した。結果、僕は会社を休むことになった。
 最初は有給を消化していたが、どうにも仕事ができるようにならない。
 結局のところ長期療養休暇をとるようになったのである。

 僕は結婚して、奥さんと当時中学生1年生の息子がいた。
 さらに、JR船橋駅近くのマンションを購入し、ローンの支払いが残っていたわけである。

 ローンは月10万円以上。年2回のボーナス時にはプラス20万円くらいの支払いがあった。今思うと超弩級の阿呆の所業であるが、人生先のことなど分からんのだから仕方ない。
 
 幸い奥さんは収入があり、僕の方も健康保険組合から休職中の手当が支給され、いきなり生活に困るということは無かった。

 生活の方はいい。
 病気の方に話を戻そう。

 僕の病名は「鬱病」であった。まあ、心の風邪というやつである。
 しかしだ。風邪は厄介だ。
 世には「風邪は万病のもと」という諺もある。
 
 つまり、精神病も鬱病から始まり、そこで治さずズルズル行くと鬱病患者がジョブチェンジする。新たな症状(スキル)を身に着け、廃人レベルが上がっていく。

 鬱病はあらゆる精神病、癲癇発作、双極性障害、統合失調症などの元になっているから侮れないのである。
 現代に再現されるリアルエナジー・ドレインであって、キチンと治療しないと人間レベルがだだ下がり、廃人へと近づいていく。

 この物語は廃人一直線だった僕がなんとかギリギリ生きていくという情けなく、うだつの上がらぬ物語である。

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