僕は精神病である。

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2.僕は絶賛発狂中

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 そもそも鬱病とは、脳病だ。
 乱暴に言ってしまえば、脳内伝達物質のセロトニンが不足するとなる病気である。
 気分が落ち込むだけじゃなく体が全く動かなくなる。「ざわざわ」とカイジフォントで書いたような不安感が理由なく湧き出る。

 はっきり言って脳内はシッチャカメッチャカで、一日中風呂場で泣き続けるという訳わかんこともしてしまう。
 全然覚えてないのだが、泣いてる理由は家族に申し訳ないという物だったらしい。
 姉に後で聞いた事で、僕の中には今も記憶がない。

 姉がいきなり出てきたのだが、それは僕が実家で療養することになったからである。姉は実家にいた。

 家の母親が「大変だから家にいらっしゃい」と言って、何の反論も異論もなくその言葉に従ったわけだ。

 実家が近かったので、僕は実家にお世話になった。奥さんと息子は仕事と学校の合間に実家に顔を出すような感じだったはずだ。僕の体感だとずっといたような感覚が残ってる。

 実家には僕の両親と離婚して出戻ってきた姉がいた。姉には子供はおらず、僕と同業のシステムエンジニアだった。

姉は「給料良くてもアンタみたいな激務には絶対に嫌だ。やっぱり身体壊したし」と、僕に言ったようだ。

僕が「はぁ」とか「うん」とか受け答えしてるときはマシな方で、病気が酷いときは「ごめんなさい」と声を絞り出し手を合わせて謝りまくってたそうだ。よく覚えてないのだが。

 ただ、喉が枯れて痛かったのだけは生々しく覚えてる。
 嗚咽と慟哭の合間に動作を停止するような状況であった。この時点で廃人に近く入院も検討されたようであった。

 ただ、当時の家族にとっては精神病院に入院というのはちょっとハードルが高かった。奥さんも両親も僕をぶち込むのを躊躇った。
 長男だけ「入れたほうがいいんじゃね」と言ったが、子供なので発言力は弱いのであった。

 思えば、早期入院で徹底治療していれば、果てしなく続く闘病という名の坂を下る必要はなかったかもしれない。

 僕は絶賛発狂中で泣き叫んでは周囲に謝り、脳の燃料が尽きると倒れるように寝込むという日々を過ごしていた。

 この時はまだ妄想や幻聴、幻覚、希死念慮に襲われることもなく、狂気レベルはまだ低いと言えた。
 しかし、家族の負担や心配は大きな物であったろう。本当に申し訳ない思いであった。

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