イルカおちんちんに貫かれ愛を叫んだケモノ

中七七三

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2.生物学者の矜持と獣姦

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「室長本気ですか?」
「外部に漏れたら…… 大変なことに」
「そうです。あの動物愛護テロ集団に知られたら……」
「室長、さすがに研究の域を超えています。考え直してください」

 その日、研究室の中は騒然となっていた。
 なぜならば、室長である越前美月が、研究対象であるネズミイルカのニッキーとセックスすると言いだしたからだ。
 端的に言って獣姦である。

「研究者として、この機会を逃すわけにはいかないの。分かって欲しいわ」

 越前海月えちぜんみづきは凛とした声で言った。
 しかし「研究者」とか言っているが、言葉とは裏腹に、海月の脳内はイルカのおちんちんのことでいっぱいだったのだ。
 研究者ではなく、メスとして巨大な肉槍のようなおちんちんに貫かれたかったのだ。

(あああ、邪魔しないで…… お願い。あのおちんちんを味わいたいの…… ああああ)

 身をよじり、肉を焼くような思いがそこにあった。

 留学先の大学ではあらゆる人種と交わってきたのだ。
 やりまくった。セックスしまくった。
 フィストファックで両方の穴を責められたことも一度や二度ではない。
 アメフトをやっている黒人の太い腕を肘まで飲み込んだ経験もあるのだ。

 日本ではもうあのような経験は出来ないと思っていたのだ。

 やりたい―― 
 だからやる。理由などない。
 おちんちんがあれば、入れてみたい。それはメスとして自然な思考ではないかと彼女は思った。

「セックスは、高度な知性にとって最高のコミュニケーションだわ。すくなくとも、私はそう考えるわ――」

 彼女の言葉に、研究員たちは黙った。納得したわけではないが、その言葉には生物学的真実が含まれていたからだ。
 
「確かに、ボノボなど、高度な知能を持った動物ほど、性行為は単なる生殖活動ではなく社会性を持つという意見はありますが…… それとこれとは――」

「研究のために、動物とセックスをする。それは日本では違法なの? イヌとファックしているDVDが売られている国よ?」

 海月は言った。自分の欲望に基づく行為を、法解釈ではどうかという形で言いくるめる気だった。
 先進国――
 特に、キリスト教圏では「獣姦」を禁ずる法律が定められてるところも多い。
 イギリスや、アメリカの一部の州などでは、イヌとセックスして逮捕される人間などもいる。

 しかし、日本ではどうか?
 抵触するとすれば『動物愛護法』であろうか。

==========
 第四十四条  愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
 2  愛護動物に対し、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、又はその健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、百万円以下の罰金に処する。
 3  愛護動物を遺棄した者は、百万円以下の罰金に処する。
 4  前三項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
 一  牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
 二  前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの

(引用:動物の愛護及び管理に関する法律 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S48/S48HO105.html)
==========

 しかし、現実にイヌとセックスする動画はネットに多く存在し、DVD販売もされている。
 それで大きな摘発があったという話もきかない。
 イヌが喜んでいる場合、それは虐待といえないのではないかということになる。
 しかも、オスイヌのおちんちんを挿入されるのは人間の女だ。イヌの肉体に何ら傷をつけることはないのだ。
 むしろ、傷つく可能性があるのは人間の方である。
 
「しかし…… 危険です。ネズミイルカのペニスは……」

「危険だからやらないのでは、企画物のAV嬢以下だわ。イヌや馬とのファックだって危険なのよ」

 その程度のことはここにいるような生物学の研究員であれば当然知っている。
 ここにいるのは、海洋生物学の専門家とはいえ、生物の研究者なのだ。

「それとこれとは、問題が」

「なんで試さないで止まるの? そこに科学の進歩はあるの? どうなの、貴方には研究者としての矜持が無いの?」

「モラルが……」

「モラルより科学よ! モラルを求めたいなら、今すぐ教会にでもいきなさい!」

 海月は怒涛のように言葉を浴びせる。

「モラルは置いておくとして、室長。肉体に対する危険性はどうするのです? 室長に万一のことがあればどうなりますか?」

 別の研究員が言った。確かに危険だ。 

 人にとって最も身近動物であるイヌとの性交ですら、人間にとっては危険だ。
 オスイヌに犯されるというのは、非常に危険なことなのだ。
 
 イヌのおちんちんは、勃起すると根元が瘤のようにふくらみ容易に抜けなくなる。
 オスイヌがメスイヌにチンポを突き刺し、抜けないようにするためだ。
 
 人間の女がイヌとファックする場合、慎重に抜かないと大変なことになると言われている。
 イヌとの獣姦ですら、このような危険を孕んでいる。

「イヌとのファックも危険だわ。でも実際にやっている。それは専門的な知識、獣姦をどのようにすればいいか、分かっているプロがいるからよ」

 彼女は指摘する。それは事実であった。

「獣姦ビデオを撮る人たちより、貴方たちの知識は劣るの?」

 彼女は挑発的に言った。研究員たちの顔色が明らかに変わった。

「いい。危険を恐れていたら、科学は進まないのよ。それに、私は大丈夫。これでもプロなのよ。そして、貴方たちもプロでしょう」

 彼女の言う「プロ」を研究員は「生物学のプロ」と理解した。
 当然、海月もその思いを含めその言葉を口にしていた。
 しかし、彼女の中では、自分についてだけ「やりマン、ビッチ、変態セックスのプロ」という意味が濃かった。
 そこにも彼女の矜持があったのだ。

 その精神性は限りなく淫売のパンスケに近いのだった。
 天才であるが、モラルの面では完全に破綻しているのだ。

「とにかく、私はニッキーとセックスをするの。彼がそれを望んでいるから。いいえ―― これは、研究のため。動物との完ぺきなコミュニケーション。言語解析のための貴重なデータになるわ」

 もはや海月も我慢の限界だった。
 ニッキーのおちんちんを見てから、男を買ったり、逆ナンしたりして、セックスもしてみた。
 しかし、ニッキーのおちんちんを見て以降、どんなおちんちんでも満足できなかったのだ。
 もはや、ニッキーのおちんちんで、貫かれなければ、この天才の頭が沸騰して変になりそうなのだ。

「分かりました。室長がそこまで言うのなら……」

 研究員の中に同調者がひとりでた、それから連鎖するように、同調していく。
 その場の空気が、海月とネズミイルカのニッキーのセックスを容認すような感じになっていたのだった。
 室長である海月の強い主張が、空気を変えたのだ。 
 出来あがった空気には逆らわない。とりあえず、違法でないないし、本人も合意だし、研究のためだし……

 生物学者とはいっても組織の人間だ。上長が強く言えば逆らうことは難しい。
 日本的な空気を読むと言う文化。
 美月は初めてそれを高く評価した。
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