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1.婚約破棄と反乱の嫌疑
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「我は宣言する。アルトワ公爵家、令嬢セラフィーナ・アルトワとの婚約を破棄する」
数え切れぬほどのシャンデリアに照らされた会場が、静寂に包まれた。
煌《きら》びやかな衣装を身に纏った貴族の子女たちの動きがとまった。
その視線は、声の主とその隣にいる女性に集まった。
「リオルガンド王国、第一王子ステールの名により、新たな婚約者、ウルネル男家、令嬢トゥーリア・ウルネルを紹介する」
それは、王家主催のパーティの場であった。
本来であれば、教会で誓いをたてた婚約が破棄されることなどあり得ない。
そもそも、公爵令嬢セラフィーナにとっては寝耳に水。
足元が崩れ、常闇の中へと落ちてく感覚を味わっていた。
艶やかなドレススカートがふわりと舞い、床に円を作る。
その中心で、公爵令嬢セラフィーナはその身を伏していた。
両足に力が入らない、ガタガタと全身が震えていた。
美しいエメラルド色をした髪も揺れていた。
「なぜ…… なぜですの?」
美しい双眸《そうぼう》がすがり付くような視線を向ける。
しかし、王子は冷淡な態度を崩さない。
男爵令嬢のトゥーリアは、虫けらを見るような目で、セラフィーナを見下ろしていた。
凍えるような氷塊を思わせる視線――
「なぜ、と訊くのか? セラフィーナよ……」
王子の口がゆっくりと動いた。
今まで自分に見せていた優しい表情が嘘のような険しく冷たい表情。
まるで仮面を被っているかのようであった。
「アルトワ公爵家――、そなたの家は、王家に反意を企てていたのだ。明確な証拠も上がっている」
「え? そんな!」
あり得ないと、セラフィーナは思った。
父も母も王家に忠実であった。
娘としてその点に疑いはない。そもそも、そうでなければ婚約などあり得ない話であったし、娘が婚約するというのに、謀反、反乱を起こすなど考えられなかった。
「何かの間違いです! 絶対に!」
「いや、違いない。反乱の計画書がそなたの家より見つかったのだ。南方諸国とよしみを通じ、王家を簒奪する計画――」
公爵家は南方の諸国との交易を多く行っていた。
その財力は非常に大きい。
しかし、王家に代わり国を乗っ取るなど父が考えるはずがなかった。
王家の守護があってこその交易だったのだ。父はそのことを何度も口にしている。
母も同じだ。確かに母は南方国家から嫁いできたが、王国への忠誠心では父にも負けないだろう。
トゥーリアは、優しい父母の顔を思い浮かべた。反乱などあり得なかった。
「そのような、計画書が……」
「男爵家の密偵が見つけたのだ。公爵しか知りえぬ情報もそこには書かれている。偽物とは思えぬ」
「そんな、ステール王子……」
王子の隣に立つ男爵令嬢トゥーリアがふっと唇を動かす。
口元に薄笑いが浮かんでいた。
数え切れぬほどのシャンデリアに照らされた会場が、静寂に包まれた。
煌《きら》びやかな衣装を身に纏った貴族の子女たちの動きがとまった。
その視線は、声の主とその隣にいる女性に集まった。
「リオルガンド王国、第一王子ステールの名により、新たな婚約者、ウルネル男家、令嬢トゥーリア・ウルネルを紹介する」
それは、王家主催のパーティの場であった。
本来であれば、教会で誓いをたてた婚約が破棄されることなどあり得ない。
そもそも、公爵令嬢セラフィーナにとっては寝耳に水。
足元が崩れ、常闇の中へと落ちてく感覚を味わっていた。
艶やかなドレススカートがふわりと舞い、床に円を作る。
その中心で、公爵令嬢セラフィーナはその身を伏していた。
両足に力が入らない、ガタガタと全身が震えていた。
美しいエメラルド色をした髪も揺れていた。
「なぜ…… なぜですの?」
美しい双眸《そうぼう》がすがり付くような視線を向ける。
しかし、王子は冷淡な態度を崩さない。
男爵令嬢のトゥーリアは、虫けらを見るような目で、セラフィーナを見下ろしていた。
凍えるような氷塊を思わせる視線――
「なぜ、と訊くのか? セラフィーナよ……」
王子の口がゆっくりと動いた。
今まで自分に見せていた優しい表情が嘘のような険しく冷たい表情。
まるで仮面を被っているかのようであった。
「アルトワ公爵家――、そなたの家は、王家に反意を企てていたのだ。明確な証拠も上がっている」
「え? そんな!」
あり得ないと、セラフィーナは思った。
父も母も王家に忠実であった。
娘としてその点に疑いはない。そもそも、そうでなければ婚約などあり得ない話であったし、娘が婚約するというのに、謀反、反乱を起こすなど考えられなかった。
「何かの間違いです! 絶対に!」
「いや、違いない。反乱の計画書がそなたの家より見つかったのだ。南方諸国とよしみを通じ、王家を簒奪する計画――」
公爵家は南方の諸国との交易を多く行っていた。
その財力は非常に大きい。
しかし、王家に代わり国を乗っ取るなど父が考えるはずがなかった。
王家の守護があってこその交易だったのだ。父はそのことを何度も口にしている。
母も同じだ。確かに母は南方国家から嫁いできたが、王国への忠誠心では父にも負けないだろう。
トゥーリアは、優しい父母の顔を思い浮かべた。反乱などあり得なかった。
「そのような、計画書が……」
「男爵家の密偵が見つけたのだ。公爵しか知りえぬ情報もそこには書かれている。偽物とは思えぬ」
「そんな、ステール王子……」
王子の隣に立つ男爵令嬢トゥーリアがふっと唇を動かす。
口元に薄笑いが浮かんでいた。
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