ボクが女体化したのは、初恋の最強女教師を倒して恋人にしたいから

中七七三

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27.先生との約束

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 全国展開している中華料理系のファミレスでボクは先生と食事をしている。
 夏休みも残り一週間となり、あれだけ五月蝿うるさかった蝉もあまりいなくなった感じがする。

「おめでとうなのかしらね」

 百鬼《なぎり》先生は箸を止めて言った。

「素直におめでとうといってくれると、嬉しいです」
「おめでとう」

 先生は小さくぽつりと言った。

「結局のところ元凶はわたしだしね――」

「元凶」という意味は判る、地下闘技場カタコンペにボクを出場させたこと。
 ボクはそのため遺伝子改造を受け、女体化した。TSして女子高生になった。

「二学期になったらどうする気なの? 学校は」

「一応、周囲には「男」ということで通そうと思っています。なんとかなるでしょう」

「体育は?」

「あらかじめ下に着替えておくとかなんとかなりますよ」

「それにしても……」

 先生は箸でボクのおっぱいを射す。

「おおきいわね。大丈夫なの?」

「サラシを巻いてみたら、意外に誤魔化せることは確認済みです」

「そう」

 先生と生徒の会話なのだけども、勉強の話が一切でてこないのは、うちの高校が完全自由主義という名の放置教育だから。
 夏休みにも宿題がでるということはない。
 ただ、二学期早々に学力テストがあるだけだ。伝統的に生徒の自主性にまかせるというのが校風だった。

「学校が始まっても続けるのかしら」

「そのつもりです。だって先生と――」

「そのことだけど」

 先生は少し下をむいて、上目遣いでこちらをうかがうようにボクを見た。

「御楯君は……」とボクの名を呼ぶ。

「以前も、男の子にしては可愛い感じだったけど、女の子になって凄く可愛くなったわね」

「そうですか?」

 ボクは女性化したボクの容姿にあまり興味がないというか、ボクはボクだという認識しかない。
 確かに、ボクも思春期の男子だし、女の子の身体に興味があって、いろいろ確認をしてみたことはある。
 ああ、女の子の身体は、柔らかくて、敏感なんだなぁ――とは、思っている。

「もし、今――」

 そこで、先生は息を吸い込む。そして意を決したように言葉を続けた。

「今、止めてくれたら、御楯君の卒業後に恋人になっていいわ」

「え!?」

「地下闘技場で戦うのはもう止めて。このままでは、アナタは不幸になる」

「百鬼先生……」

「だから、今止めてくれるならわたしは、アナタの恋人になります。付き合います。ただし、卒業してからだけども」

「先生、それはボクが女の子になって、思いの外可愛かったかですか?」

「え!!!! え!? 違う、違うわ。全然違います!」

 先生は顔を真っ赤にして、ぶんぶんと手を振って必死に否定する。
 以前も、自分に同性愛傾向があることを完全否定している。必要以上に強調して否定していたはずだ。

「先生は本当にボクのことが好きでそう言っていますか? ボクに惚れているんですか?」

「え…… ええ、御楯君、可愛いし。本当に…… 正直にいえば好みなの……」

 最後は消え入るような声で言った。
 そこには、地下闘技場の「女帝」という威厳はなかった。

「それは女体化したボクの見た目が好みということですよね?」

「……」

 先生は無言で、ボクから目をそらす。

「ボク、いつでも男に戻れるんですよ。遺伝子操作をすれば、元の男にもどれるんです」

「え? そうなの」

 矢張り先生は、ボクが女の子になったのは永久的なものだと勘違いしていたようだった。

「先生の告白は嬉しいです。本当に嬉しいです。でも――」

 黙っている先生を見つめボクは言葉を繋ぐ。

「ボクは先生を倒して、ボクの強さを証明して、本当に先生に惚れてもらいたいんです」

「そう……」

 先生はすっと小さく息を吐くと、伏し目がちにボクを見る。

「いいわ。わたしを倒せるなら、倒したとき、アナタの恋人になってもいいわ」

 ボクの心臓がドクンと鳴った。
 先生の口から始めての言質が得られた。
 
「ボクが勝ったら―― 恋人になって、結婚を前提に付き合ってもらいますよ、先生!」

「いいわよ。勝てるならね」

 そして先生は「それに」と言って言葉を付け加える。

「わたしは、面倒くさいというより、異常な女よ。女の子になった生徒に手を出そうとするし、教師をしながら、人をボコボコに破壊することが大好き―― どうしようもない人間なのよ。それでもいいの?」

「いいんです。そんな先生だから、ボクは前より、最初に会ったときより、ずっと先生を好きになっているんです。絶対に倒します」

 この日――
 ボクの目標が明確な形をもった。
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