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28.ポルチオ「鬼雷崩」!!

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 ボクはここ地下闘技場カタコンペで三戦目を迎えていた。

 ――あと三勝で百鬼なぎり先生と同じ位置に立てるんだ。
 ――いや、そんな先のことより目の前の……
 
 ボクは目の前の相手。
 今日の敵―― 相手をみやった。
 トントンとリズムを刻むかのようにその場で細かいジャンプをしていた。
 その動きだけで、相当なバネの持ち主であることが、ボクには分った。
 
 綺麗な女の人だった。
 美しい。
 でも、それはよくある芸能人とかモデルとかの美しさじゃなかった。

 人殺しの道具である日本刀の刃――
 破壊と殺戮が目的である兵器のフォルム――

 この女の人はそういった美しさをもっていた。
 ある意味、見覚えがある。そう「先生と似た感じ」の美しさがあった。

 女の人は空に蹴りを繰り出す。
 見事に脚が頭上まで上がる。背中越しの相手を叩けるのではないかと思えるほどだ。
 ここまで風斬り音が聞こえてくる。

「空手かぁ……」

 ボクは小さく口の中でその格闘技の名を呟く。
 競技人口も多く、色々な流派がある。ボクには流派までは分らない。
 身体の動き、それに着ている服がいわゆる「空手着」だった。それくらいはボクでも分る。

 手の内は空手――と、決めていいのかどうか。
 こう思い込んでしまうのは、地下闘技場カタコンペでは危険であるかもしれない。どうにも、あからさますぎる気がする。

(空手を主体としても、組技、寝技が出来ないと決め付けるわけにはいかないか……)

 とにかくいつも通りに戦う。
 あの綺麗な顔を血まみれに染める。そう思うと肉がざわめく。お腹の下が熱くなる。
 ボクは敵の女をボロボロに蹂躙したくてどうしようもなくなってくる。
 ああ――
 凄く楽しい。ワクワクする。

        ◇◇◇◇◇◇

 空手だと思っていたら、思っていた以上に空手だった。
 怪鳥のような声を発し、突っ込んできた相手の突きをもろに受けてしまった。
 ゴングが鳴ったと同時だった。
 凄まじい踏み込みと、音速を超えるような速度の初弾。
 いきなり、お腹に中段突きを喰らった。
 女の子の急所でもある子宮のど真ん中をぶち抜かれた。
 衝撃で、子宮が跳ね上がり、内臓を押し上げた。ポルチオ激痛が全身を走り抜ける。

「ぼげぇぇぇ――ッ!!」
 
 子宮内粘膜が裏返り、口から出てきそうになる。
 
「ちぇぇぇぇ!!!!」

 狂気を帯びた猿叫とともに、拳の連打がダース単位で飛んでくる。
 そのどれもが、急所を的確に狙ってくる。

(それは――見える!)
 
 最初の数初は受けたが、残りはガードする。
 そしてなんとか、かわせるようになる。

 ボクも反撃する。
 左のリードブローを放った。
 パーンといい音がして、空手女の鼻先を捉えた。

「フリッカー?」空手女の唇がそう動いた。
 以前戦った相手の技をトレースしたものだ。
 ボクの持っている能力。相手の動きは一回見れば真似することができる。

 すっと、空手女が後ろに下がった。
 ちょっと間合いが開いた。
 ガードを固める。空手ではなくボクシングのガード。 

(ボクをボクサーと思った?)

 チャンスだった。
 ボクはそんな簡単にカテゴライズできる存在じゃない。
 身を沈め、ボクは地を這うようにしてタックルを敢行する。
 最高のタイミングだった―― はず……

 が――
 罠だ! くそ! 止まらない!
  
 ボクは後頭部をガードするのが精一杯だった。
 もしそれが出来なかったら、その時点で勝負は決まっただろう。
 
 ガンッ

「ぐはッ!」

 とんでもない衝撃で頭がゆすぶられる。
 後頭部に肘が落とされたのだった。
 一瞬、意識が真っ白になった。

 でも、でも、でも、でも、ボクは倒れなかった。
 先生と戦うため。先生を倒して、恋人にして、結婚するため――
 ボクは倒れない。
 
「くそぉぉ!」

 ボクはボディめがけてパンチを繰り出す。
 オマエも子宮をぐちゃぐちゃにしてやる!と、思って繰り出した。
 が、すかっとパンチは空を切った。

 空手女はもう、そこにはいなかった。左――
 ボクから向かって左に身体を滑らせていた。
 ふわりと、その身体が浮いた。
 
「きぇぇぇぇぇ!!」
  
 近距離からのとび蹴り。 
 脚の裏がボクの顔面に食い込んでいった。
 水平後方にボクの顔を踏みつけるかの重さをもった蹴りだった。

 ボクは仰向けに倒れていく。
 空手女は飛び込んで勢いのまま、ボクに身体を重ねてきた。
 そして、足首と膝を決めてきた。足首にねじ切れるような激痛。
 膝に灼熱の鉄棒をぶち込まれたような痛み。
 
「打撃しかないと思った♥」
 
 空手女はボクのかかとをひねりこみながら、揶揄やゆするように言った。
 ヒールホールド。
 踵をひねって、膝関節を極めに来る技だった。
 ボクの膝人体がギチギチと音を立てていた。

「がはぁぁぁぁぁッ!」

 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い――
 痛い以外の思いがない。気が狂いそうなほどに痛い。

 でも「あがががががが!」ボクは滅茶苦茶に脚を動かした。
 それが、ガツンと当たった。空手女の股間にだ。
 片脚は自由になった、それが偶然にも股間にヒットしたのだった。

 蹴った、蹴った、蹴った、ボクは無我夢中で蹴った。
 痛みの中で蹴った。滅茶苦茶に蹴った。

「んあんッ♥ はぁ あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ――」

 恥骨とその周辺をガンガン蹴られ、空手女の手が緩んだ。
 チャンスだった――
 ボクは思い切り脚を引き抜いた。

「痛い、痛い、あああああ、痛いぃぃぃ」

 ボクはケンケンをする。
 凄く痛いが、靭帯が切れたとか、骨がどうこうという感じではない。
 ただ、ひたすら痛い。

「あふぁぁっぁ、あ♥、あ♥、あ♥、あ♥、あ♥、あ♥、あ♥、あ♥、あ♥、あ――」

 ボクの股間への連打が子宮を揺さぶったのだろうか。
 空手女は目を虚ろにして、ゆっくりと立ち上がってきた。
 
「おぉぉぉ!!」

 ボクは、相手の子宮のあたりに手を沿える。
 緩くなっていた腹筋をぎゅっと握りこむ。
 外から子宮の感触が分った。ボクは子宮を握りこんだ。
 
 そして――

「鬼雷崩――ッ!!」

 身体の回転エネルギーを貫通力して、一気に叩き込んだ。
 子宮を掴んでの鬼雷崩。
 空手女は、泡を吹き、白目をむいて倒れた。
 ポルチオに膨大な打撃エネルギーを勃たこ困れたのだから、もう立つことはできなかった。

 ボクは三勝目を上げることができた。
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