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その35:終わりと始まり
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ふたりの視線が一瞬だけ絡み合う。
どちらかともなく、唇が近づく。
キスをした。
(ああ、ラグワム……)
その瞬間、汚れた自分の身体のことをアバロウニは思った。
キュッと身を硬くする。
自分にはその視覚はない――
だけども――
アバロウニの心は揺れ動く。
すっと、唇が離れた――
銀色の光を放つ糸がつーっと伸び、二人の間を繋いでいた。
糸は、音も無くすっと掻き消える。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
「なんで謝る?」
ジッとアバロウニを瞳を見据え、ラグワムは静かに言った。
「あ……」
ラグワムはキュッとアバロウニを強く抱きしめた。
(男の…… 男の身体だ……)
分厚く鍛えられた胸。
高い体温が、アバロウニの柔らかな胸に沁みこんでくるようであった。
男に抱きしめられるのは、初めてではない。
数えきれないほどの男に抱かれてきたのだ。
しかし――
その感じは今までとは全く違うものだった。
アバロウニは手を、ラグワムの頬に当てた。
余分な肉のそぎ落とされた精悍な顔――
頬には少しだけざらりとした髭の感触があった。
それが一層「男」を感じさせる。
「何も言わなくていい。謝らなくていい。悪くない―― 君は悪くない」
「……」
ラグワムは小柄で細いアバロウニを抱いたまま、呟くように言った。
耳の奥が痺れるような声音。
アバロウニは、沈黙をもってしか答えることができなかった。
自分は――
今の自分はラグワムに相応しくない…… それだけではない、彼を不幸にするかもしれない。
汚れきったこの身体は、ラグワムの子を成すこともできない。
強制妊娠させられ、盗賊に捕らえられ犯された。
その結果――
二度と子どもの生めない身体となった。
実際、娼婦として何度も男の種を身に流し込まれても、妊娠することはなかったのだ。
(ボクじゃ駄目なんだ――)
そう思う。
が、言葉がでない。
抱きしめられるだけで、頭が痺れてくる。身体の奥が熱くなってくる。
(ボクは賎しい――)
アバロウニは思う。
だが、同時にいつまでも抱きしめられたいとも思ってしまう。
相反する思いの中、アバロウニはラグワムを拒むことができなかった。
ただ、その身を逞しい腕の中で抱かれるにまかせた。
トンッと、軽くベッドに倒された。
アバロウニは、ベッドに横たえられた。
「あ、あぁ……」
アバロウニのあえかに開いた唇の隙間から、吐息に似た声が漏れる。
「俺の妻になってくれ。アバロウニ」
「え?」
「結婚して欲しい。一緒になってほしい」
戸惑。
困惑。
拒否。
歓喜。
そのとき、アバロウニの中に生じた感情はどのようにも名づけられないものであった。
ただ、身体を動かすことはできなかった。
服が脱がされ、胸に指が伸びる。
ラグワムは掌で、アバロウニの左乳房を優しく包み込んだ。
「あッ、あぁっ、あぁ……」
優しく蕩けるように、乳房をもまれた。
(ああ、だめ…… ああ、うぁ、ぁぁぁ……)
乱暴に強引に、時には優しく愛撫されたこともあったかもしれない。
この身体は金で買われ、多くの男の慰み物となった。
そのときは、感じたことのない強い快感が体の奥底から湧き上がり、頭の芯を痺れさせた。
「あああ、アバ……」
ちゅっと、乳首が唇に含まれる。
あれだけの荒淫の中にありながら、アバロウニの乳首は淡いピンク色を維持していた。
舌先で乳首が転がされる。
「あふぁ……」
甘くねだる様な声がアバロウニの口から漏れる。
「ああ、愛している」
乳房を揉んでいた手がすっと下がっていった。
(あああ、そこは…… だめ…… 汚れている)
アバロウニは身を硬くする。
「どうしたんだ? いやかい?」
「い、嫌じゃない。嫌じゃないけど。そこは…… 汚れて」
「君に汚いとこなんかないよ」
ラグワムはそう言ってキスをした。
舌を絡めあう、溶け合うかのようなキス――
指は、アバロウニの濡れた叢を書き分け、奥深くへと侵入していく。
「あぁぁぁあああ、あふぁぁ~」
アバロウニはキュッと下からラグワムを抱きしめていた。
身体の奥へと指が入ってきて蠢く。
その動きが、甘い痺れをアバロウニにもたらすのだった。
そして、ふたりはひとつになった。
◇◇◇◇◇◇
(ああ、好き、好き、大好き――)
アバロウニは悶えるように身を撓らせる。
真紅の髪が乱れ、純白のシーツの餓えに広がった。
まるで燃える炎のような色だった。
「アバロウニ…… 俺の物になってくれ」
「あぅ、なる。なる……」
ラグワムに貫かれ初めてと言っていいほどの快感を感じていた。
肉が、抉られるほどの快感――
アバロウニは、ベッドの上で乱れ、呼吸を荒くする。
なんども男に嬲られた。
蹂躙され、汚れきった身体。
それでも、ラグワムに抱かれたかった。
男に抱かれることは、アバロウニにとって、今までは苦痛以外のなにものでもなかった。
その身が意思に反する快感を生み出したとしてもだ。
今は、身も心も蕩けてしまいそうなほど、ラグワムに溺れていた。
「昔のことは忘れてくれ。いや、俺が忘れさせる」
ラグワムは一層腰の抽挿を激しくする。
「あふぅぅぅ、あひぃん、あぁっ……」
「ああ、愛している。好きだ」
腰を送りながら、キュッとラグワムはアバロウニを抱擁した。
そして、中に己が精を放った。
(ああ、もっと、もっと……)
体の奥に熱い物を感じながら、アバロウニは飢えた思いを抱く。
下から脚をからめ、ラグワムの体を自分から求めていった。
「あああ、好き…… ボクも愛している……」
「愛している」
「だから――」
アバロウニは潤んだ真紅の瞳で、ラグワムを見つめて。
「ずっと離さないで」
「ああ、離すものか」
ふたりは抱き合いながら、熱いキスをするのであった。
それは、永遠に続くかのような口づけであった。
――完――
どちらかともなく、唇が近づく。
キスをした。
(ああ、ラグワム……)
その瞬間、汚れた自分の身体のことをアバロウニは思った。
キュッと身を硬くする。
自分にはその視覚はない――
だけども――
アバロウニの心は揺れ動く。
すっと、唇が離れた――
銀色の光を放つ糸がつーっと伸び、二人の間を繋いでいた。
糸は、音も無くすっと掻き消える。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
「なんで謝る?」
ジッとアバロウニを瞳を見据え、ラグワムは静かに言った。
「あ……」
ラグワムはキュッとアバロウニを強く抱きしめた。
(男の…… 男の身体だ……)
分厚く鍛えられた胸。
高い体温が、アバロウニの柔らかな胸に沁みこんでくるようであった。
男に抱きしめられるのは、初めてではない。
数えきれないほどの男に抱かれてきたのだ。
しかし――
その感じは今までとは全く違うものだった。
アバロウニは手を、ラグワムの頬に当てた。
余分な肉のそぎ落とされた精悍な顔――
頬には少しだけざらりとした髭の感触があった。
それが一層「男」を感じさせる。
「何も言わなくていい。謝らなくていい。悪くない―― 君は悪くない」
「……」
ラグワムは小柄で細いアバロウニを抱いたまま、呟くように言った。
耳の奥が痺れるような声音。
アバロウニは、沈黙をもってしか答えることができなかった。
自分は――
今の自分はラグワムに相応しくない…… それだけではない、彼を不幸にするかもしれない。
汚れきったこの身体は、ラグワムの子を成すこともできない。
強制妊娠させられ、盗賊に捕らえられ犯された。
その結果――
二度と子どもの生めない身体となった。
実際、娼婦として何度も男の種を身に流し込まれても、妊娠することはなかったのだ。
(ボクじゃ駄目なんだ――)
そう思う。
が、言葉がでない。
抱きしめられるだけで、頭が痺れてくる。身体の奥が熱くなってくる。
(ボクは賎しい――)
アバロウニは思う。
だが、同時にいつまでも抱きしめられたいとも思ってしまう。
相反する思いの中、アバロウニはラグワムを拒むことができなかった。
ただ、その身を逞しい腕の中で抱かれるにまかせた。
トンッと、軽くベッドに倒された。
アバロウニは、ベッドに横たえられた。
「あ、あぁ……」
アバロウニのあえかに開いた唇の隙間から、吐息に似た声が漏れる。
「俺の妻になってくれ。アバロウニ」
「え?」
「結婚して欲しい。一緒になってほしい」
戸惑。
困惑。
拒否。
歓喜。
そのとき、アバロウニの中に生じた感情はどのようにも名づけられないものであった。
ただ、身体を動かすことはできなかった。
服が脱がされ、胸に指が伸びる。
ラグワムは掌で、アバロウニの左乳房を優しく包み込んだ。
「あッ、あぁっ、あぁ……」
優しく蕩けるように、乳房をもまれた。
(ああ、だめ…… ああ、うぁ、ぁぁぁ……)
乱暴に強引に、時には優しく愛撫されたこともあったかもしれない。
この身体は金で買われ、多くの男の慰み物となった。
そのときは、感じたことのない強い快感が体の奥底から湧き上がり、頭の芯を痺れさせた。
「あああ、アバ……」
ちゅっと、乳首が唇に含まれる。
あれだけの荒淫の中にありながら、アバロウニの乳首は淡いピンク色を維持していた。
舌先で乳首が転がされる。
「あふぁ……」
甘くねだる様な声がアバロウニの口から漏れる。
「ああ、愛している」
乳房を揉んでいた手がすっと下がっていった。
(あああ、そこは…… だめ…… 汚れている)
アバロウニは身を硬くする。
「どうしたんだ? いやかい?」
「い、嫌じゃない。嫌じゃないけど。そこは…… 汚れて」
「君に汚いとこなんかないよ」
ラグワムはそう言ってキスをした。
舌を絡めあう、溶け合うかのようなキス――
指は、アバロウニの濡れた叢を書き分け、奥深くへと侵入していく。
「あぁぁぁあああ、あふぁぁ~」
アバロウニはキュッと下からラグワムを抱きしめていた。
身体の奥へと指が入ってきて蠢く。
その動きが、甘い痺れをアバロウニにもたらすのだった。
そして、ふたりはひとつになった。
◇◇◇◇◇◇
(ああ、好き、好き、大好き――)
アバロウニは悶えるように身を撓らせる。
真紅の髪が乱れ、純白のシーツの餓えに広がった。
まるで燃える炎のような色だった。
「アバロウニ…… 俺の物になってくれ」
「あぅ、なる。なる……」
ラグワムに貫かれ初めてと言っていいほどの快感を感じていた。
肉が、抉られるほどの快感――
アバロウニは、ベッドの上で乱れ、呼吸を荒くする。
なんども男に嬲られた。
蹂躙され、汚れきった身体。
それでも、ラグワムに抱かれたかった。
男に抱かれることは、アバロウニにとって、今までは苦痛以外のなにものでもなかった。
その身が意思に反する快感を生み出したとしてもだ。
今は、身も心も蕩けてしまいそうなほど、ラグワムに溺れていた。
「昔のことは忘れてくれ。いや、俺が忘れさせる」
ラグワムは一層腰の抽挿を激しくする。
「あふぅぅぅ、あひぃん、あぁっ……」
「ああ、愛している。好きだ」
腰を送りながら、キュッとラグワムはアバロウニを抱擁した。
そして、中に己が精を放った。
(ああ、もっと、もっと……)
体の奥に熱い物を感じながら、アバロウニは飢えた思いを抱く。
下から脚をからめ、ラグワムの体を自分から求めていった。
「あああ、好き…… ボクも愛している……」
「愛している」
「だから――」
アバロウニは潤んだ真紅の瞳で、ラグワムを見つめて。
「ずっと離さないで」
「ああ、離すものか」
ふたりは抱き合いながら、熱いキスをするのであった。
それは、永遠に続くかのような口づけであった。
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