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7.戦闘終了
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ボフュン!
偶然か僥倖か奇跡か。はたまたまぐれか。
二発目は操舵室に直撃。
ガラスが砕け、内部で爆発が閃く。
操舵室の乗員が倒れ、砲艦の進路がわずかに乱れる。指揮系統の混乱は、片桐の狙い通りだった。
「よし、今だ!」片桐が吼える。「艇長、至近距離まで突っ込め!」
高速艇は全速で突進し、距離五〇メートルに到達。
砲艦の五〇ミリ砲は沈黙した。重機関銃の射撃も散発的になる。
距離五〇メートルでの戦闘は、片桐の戦術の真骨頂だった。
高速艇は砲艦の左舷を並走するように接近した。
船舶工兵たちは九六式軽機関銃を連射する。
砲艦の甲板を徹底的に掃射。鉛の驟雨が敵を襲う。
敵兵が甲板に倒れ、重機関銃が完全に沈黙。
片桐は迫撃砲の三発目を装填する。口の端には獰猛な笑みが浮かんでいた。
「指揮系統を破壊する!」
もはや距離が近すぎた。
通常四五度の角度で運用される重擲弾筒を艇の構造物を使って水平に構えた。
ボフュン!
三発目は甲板にいる中国兵のど真ん中に落下した。。
闇の中、爆発が赤黒い炎を噴き出す。
河川砲艦の攻撃は完全に停止し、黒煙が艦を包んでいく。
高速艇は急旋回し、砲艦から距離を取る。炎に包まれた砲艦は川岸に乗り上げ、動かなくなる。
中国兵の「アイゴー」の悲鳴と爆発音が遠くに響くが、戦闘は終結した。
片桐の戦術は無茶苦茶ではあったが、この状況では正着と言えた
高速艇の機動力と火力だけでなかった。、
何故か人を動かせる片桐のカリスマとリーダーシップ。
そして、かなりの狂気が虎口を脱する要因となったのは否定できない。
兵士たちは当初、突進命令に恐怖を感じたが、片桐の絶対的な自信が彼らを動かした。
自ら迫撃砲を操作する姿は、狂気を見せつつも「指揮官が最前線で戦う」姿勢を示していた。
艇長も片桐の狂気に従わざるを得なかった。
一九三九年の中国戦線では、河川戦が頻発。
蒋介石軍の河川砲艦は、欧米製の旧式艦や中国製の簡易装甲艦が多く、装甲は五から一〇ミリ程度。
重擲弾筒クラスの砲撃にも脆弱だった。
夜間戦闘の訓練不足も、奇襲の成功を後押しした。
片桐は汗を拭い、燃える砲艦を一瞥する。
「ふん、雑魚が。タングステンは絶対に入手する。ついでに山田、も助けてやる」
艇長が震える声で言う。
「片桐さん……」
「あぁ?」
「アナタ、本当に人間ですか…?」
「人間だ。だが、俺を舐める奴はこうなるってだけだ」
高速艇は再びエンジンを唸らせ、村へ向けて闇を突き進む。甲板には、戦闘の余韻と片桐の狂気が漂っていた。
夜明けの広東省。
川岸に陸軍の高速艇が静かに停泊する。
甲板には、阿片二トンを積んだ木箱と、汗と硝煙にまみれたはずの片桐が立つ。なぜかそんな戦闘など無かったかのように埃ひとつないスーツに身を固めていた。
眼光は依然として猛獣のそれだ。もうしくは猛禽。
艇長と兵士たちは、片桐の狂気じみた戦いぶりに呆然としつつ、村への道を指差す。
「国産か……故障しなきゃいいが」
会合地点に用意されていた九四式六輪自動貨車に阿片が積み込まれる。整備させてない道だと積載量は一五〇〇キログラム。二トンはいささか重いがなんとかなるだろう。
問題は故障発生率が外国の車両より若干高いことだったが、匪賊の村までならなんとかなるだろう。
「片桐さん、匪賊の村ですよ」
「だからどうした」
「……本当に一人で行くんですか? 護衛は?」
艇長の声には、半分心配と半分畏怖が混じる。
「当たり前だ。これが俺の商売だ。さっさと終わらせて上海に帰る」
片桐は木箱を指差し、兵士に積載を命じる。
そして、九四式六輪自動貨車の運転席に座った。
偶然か僥倖か奇跡か。はたまたまぐれか。
二発目は操舵室に直撃。
ガラスが砕け、内部で爆発が閃く。
操舵室の乗員が倒れ、砲艦の進路がわずかに乱れる。指揮系統の混乱は、片桐の狙い通りだった。
「よし、今だ!」片桐が吼える。「艇長、至近距離まで突っ込め!」
高速艇は全速で突進し、距離五〇メートルに到達。
砲艦の五〇ミリ砲は沈黙した。重機関銃の射撃も散発的になる。
距離五〇メートルでの戦闘は、片桐の戦術の真骨頂だった。
高速艇は砲艦の左舷を並走するように接近した。
船舶工兵たちは九六式軽機関銃を連射する。
砲艦の甲板を徹底的に掃射。鉛の驟雨が敵を襲う。
敵兵が甲板に倒れ、重機関銃が完全に沈黙。
片桐は迫撃砲の三発目を装填する。口の端には獰猛な笑みが浮かんでいた。
「指揮系統を破壊する!」
もはや距離が近すぎた。
通常四五度の角度で運用される重擲弾筒を艇の構造物を使って水平に構えた。
ボフュン!
三発目は甲板にいる中国兵のど真ん中に落下した。。
闇の中、爆発が赤黒い炎を噴き出す。
河川砲艦の攻撃は完全に停止し、黒煙が艦を包んでいく。
高速艇は急旋回し、砲艦から距離を取る。炎に包まれた砲艦は川岸に乗り上げ、動かなくなる。
中国兵の「アイゴー」の悲鳴と爆発音が遠くに響くが、戦闘は終結した。
片桐の戦術は無茶苦茶ではあったが、この状況では正着と言えた
高速艇の機動力と火力だけでなかった。、
何故か人を動かせる片桐のカリスマとリーダーシップ。
そして、かなりの狂気が虎口を脱する要因となったのは否定できない。
兵士たちは当初、突進命令に恐怖を感じたが、片桐の絶対的な自信が彼らを動かした。
自ら迫撃砲を操作する姿は、狂気を見せつつも「指揮官が最前線で戦う」姿勢を示していた。
艇長も片桐の狂気に従わざるを得なかった。
一九三九年の中国戦線では、河川戦が頻発。
蒋介石軍の河川砲艦は、欧米製の旧式艦や中国製の簡易装甲艦が多く、装甲は五から一〇ミリ程度。
重擲弾筒クラスの砲撃にも脆弱だった。
夜間戦闘の訓練不足も、奇襲の成功を後押しした。
片桐は汗を拭い、燃える砲艦を一瞥する。
「ふん、雑魚が。タングステンは絶対に入手する。ついでに山田、も助けてやる」
艇長が震える声で言う。
「片桐さん……」
「あぁ?」
「アナタ、本当に人間ですか…?」
「人間だ。だが、俺を舐める奴はこうなるってだけだ」
高速艇は再びエンジンを唸らせ、村へ向けて闇を突き進む。甲板には、戦闘の余韻と片桐の狂気が漂っていた。
夜明けの広東省。
川岸に陸軍の高速艇が静かに停泊する。
甲板には、阿片二トンを積んだ木箱と、汗と硝煙にまみれたはずの片桐が立つ。なぜかそんな戦闘など無かったかのように埃ひとつないスーツに身を固めていた。
眼光は依然として猛獣のそれだ。もうしくは猛禽。
艇長と兵士たちは、片桐の狂気じみた戦いぶりに呆然としつつ、村への道を指差す。
「国産か……故障しなきゃいいが」
会合地点に用意されていた九四式六輪自動貨車に阿片が積み込まれる。整備させてない道だと積載量は一五〇〇キログラム。二トンはいささか重いがなんとかなるだろう。
問題は故障発生率が外国の車両より若干高いことだったが、匪賊の村までならなんとかなるだろう。
「片桐さん、匪賊の村ですよ」
「だからどうした」
「……本当に一人で行くんですか? 護衛は?」
艇長の声には、半分心配と半分畏怖が混じる。
「当たり前だ。これが俺の商売だ。さっさと終わらせて上海に帰る」
片桐は木箱を指差し、兵士に積載を命じる。
そして、九四式六輪自動貨車の運転席に座った。
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