ただひたすらゾンビを殺す終わり無き日常

中七七三

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 追い詰められた――
 わたしは、辛うじてホームセンターに逃げ込む。

「誰か! 誰かいないの!」
 
 どんどんとシャッターを叩く。
 返事はない。
 背後からはゾンビが迫ってきていた。

「やばい!」

 出入口のシャッターを手で持ち上げた。鈍い金属音を奏で上がる。

「わぁぁぁぁぁ!!」

 訳の分からない叫びをあげて、わたしは中に転がり込む。
 灯りはついていた。
 慌てて、シャッターを閉める。
 重く軋むような音をたて、シャッターが下りた。
 
「あふぁ~ 助かった……」

 肺の中の空気を一気に吐き出した。横隔膜が痛い。
 
 ガン! ガン! とシャッターを叩く音が聞こえる。
 諦めの悪いゾンビがシャッターを叩いているのだろう。

「誰か! 誰かいないの!」

 わたしは声を上げた。でも、返事はない。残響の後に、冥々とした沈黙が広がっていく。
 店内は明るい。電力はまだ供給されているようだった。
 街の中でも電力は切れていなかったので、発電所からの供給がまだ止まっていないのだろう。

 わたしは呼びかけを続け、ひとを探す。わたし以外のひとがいないかどうか。

「誰もいないの?」

 けれども、呼びかけに応えるひともいなかった。
 氷のような真実が背骨を冷たくさせる。
 食料、日用品が使われた痕があった。
 店の中は、生活の残滓を感じさせる程度には荒れていたのだ。
 床は決してきれいとはいえず、塩のようなものが何箇所がぶちまけられていた。

 ――誰かがここにいたはず。

 店内を隅から隅まで歩くのに、そう時間はかからなかった。
 誰もいなかった。

 屋上に出てみた。
 駐車場になっている。
 ポツポツと車が止まっていた。動かせそうな車もあるのかもしれない。
 だけども、ひとはいない。誰ひとりとしていなかった。

「いたんだ。ここに人はいたんだ」
 
 屋上から地面に続くスロープ。車が出入りする道だ。
 そこは、グルグルの渦巻きのようになった有刺鉄線が張られていた。
 ゾンビの侵入を許さないためだろう。
 実際に、スロープからゾンビが入ってくる気配はなかった。
 そして、ここに「ひとがいた」という証拠だった。

「何処にいったの?」

 わたしはくるりと駐車場となっている屋上を探索した。
 いない。屋上にもひとはいなかった。
 ゾンビもいなかったのはラッキーだったけど。

 外で徘徊しているゾンビは、集団で行動するということがなかった。
 行動はバラバラだ。ただ、人間を視認すると襲ってくることは間違いなかった。
 ホームセンターに近づくゾンビはいたが、シャッターや有刺点線などの遮蔽物を乗り越えてくる物はいない。

 わたしは、階段を降りて、一階に戻る。

「倉庫、倉庫だ!」

 奥の倉庫に入った。鍵がかかっていたが、蹴飛ばしたら開いた。
 そとのき――
 地鳴りのような重低音が耳朶を撃った。
 次の瞬間、びりびりとする初期微動を感じる。
 まるで、アリの大群が脚を伝って這い上がってくるかのような不快感。

 いきなり来た。
 ドンと下から突き上げられたかのような揺れ。
 大地が粉砕されたかのような錯覚を刻み込まれる。

「地震! 待って!」

 待ってもくそもない。なにを間抜けなことをわたしは言っているんだ。
 激しい揺れ。轟振!
 眩暈に似た、強烈な揺れで視界の光景すら歪んだ。

 衝撃――

 その瞬間、わたしは意識を失った。
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