4 / 16
第四話 懐疑心
しおりを挟む
久しぶりに読み返してあまりに展開が性急だと思いましたので、いくつか変更しました。
すでに読んでくださっている方には申し訳ないですが、大まかな展開に違いははありませんのでご了承ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目の前で、漫画のキャラクターが動いている。
俺は未だ、その衝撃から抜け出せないでいた。
「君、ほんとうに大丈夫かい?ぼんやりしているし、まだ顔色も悪い。少し待ってね、今医者を呼ぶから」
固まったままの俺を尻目に、彼はサイドテーブルにあったベルを鳴らした。
直後、数回のノックが聞こえる。アルトゥールが入室の許可を出すと、執事服を着た初老の男が部屋に入ってきた。
その男はアルトゥールに一礼した後、俺を見て、ああ、目が覚めたのですねと無感動に言う。
「うん。まだ少しぼんやりしているようだから、念のため医者を呼んでくれ。それから、悪いけど僕は今から用事があるから、医者が帰った後は彼の世話を頼めるかい、ローデリック」
執事らしき男の名は、ローデリックというらしかった。
両手に3本線の入った白手袋をはめ、白髪混じりの黒髪をかっちりとオールバックにした彼は、まさに前世の記憶のアニメや漫画に出てくるような執事そのものである。
こんな執事の見本のような人物がいるのかと思うと少し面白かった。
そんな俺の内心を置き去りに、ローデリックは慇懃に礼をする。俺を見る目が少し厳しいが、まあ仕方がないだろう。警戒するのは十二分に理解できる。
「畏まりました」
ローデリックが恭しく頭を下げたのを満足そうに見て、再び俺に向き直った。
「用事が全部済んだら、またここに戻ってくるよ。その時体調が落ち着いてたら、ちゃんと話をしよう」
じゃあね、と俺に微笑みかける。
その美しいかんばせに笑顔が浮かべば、さながら天使のようである。
なぜかついでのように頭を撫でて部屋を出ていった。
それから俺は、あれよあれよという間に執事の連れてきた老年の医者に診られて、メイドに風呂に入れられて、髪を切られた。
色々と混乱していた俺は、ただただされるがままで、全部終わってやっとベットに戻された時、時計を見たら計2時間くらい経っていた。少々ハードスケジュールだったので病み上がりの体には負担だったのか、用の済んだアルトゥールが部屋に戻ってきた時には、俺はくたくただった。
「今戻ったよ。ああ、髪を切ったのか。見違えたようだ」
にこやかに、アルトゥールが俺のいるベットの前の椅子に腰掛ける。
「医師によれば、傷は塞がり切ってはいないものの、命の危機は脱したと。しばらく安静にしていれば大丈夫だろうということです」
後ろに控えていたローデリックが、彼に俺の診断結果を伝えた。
そうかい、それはよかったと、アルトゥールは満足そうに微笑む。
あまりにきらきらしい笑みに、ありもしない後光が差して見えた気がして、思わず目を瞬かせた。
「そうか。痛み止めを処方されたと聞いた。少しでも痛みはひいたかい?」
俺は返事をする代わりに、こくりと頷く。
「よかった。では、君には引き続きゆっくり休んでもらうとして、この話は終わりだ。それとね、後もう一つ話があって、これはどちらかというと僕からのお願いになるんだけど」
アルトゥールは、一瞬俺を見つめた後、再び口を開いた。
「君、僕の執事になってくれないかい?」
「アルトゥール様?!」
それまでただ黙って俺たちのやり取りを聞いていたローデリックが、思わずと言った様に大きな声を上げた。
無理もないことだ。
路地裏で得体の知れない、明らかに訳ありの子供を拾ってきた挙句、しまいには自分の執事になってくれというなどと。
今のアルトゥールは、俺よりも年下だろうが、それでも、背格好からして9歳、10歳と言ったところに見える。
貴族の子供だ、もう色々な教育は受けているだろうし、漫画のアルトゥールから考えても、考えの浅い馬鹿であるとは考えにくい。むしろ、余人よりずっと賢しらであると考えるべき。
こいつは、一体、何を企んでいる?
一度は薄れていた警戒心が、再び湧き上がってきた。
いや、そもそも、一度でも警戒を解いたのが間違いだったのだ。
考えてみれば、今はのこれは、「傷を負った暗殺者が貴族に見つかって邸宅に運び込まれた」という状況だ。
普通に考えればわかることだ。貴族が、そこら辺に転がっている汚い平民の子供をなんの目的もなく助けるはずがない。
きっと、ついにうちの組織がこれまで犯した罪がばれたのだろう。
その情報を吐かせるために、俺を捕まえたのではないか?
さっきの突拍子のない発言は、俺を引き取り生活を保証すると見せかけて、証拠が集まるまで自分の手元に留めおくための策なのでは?
そう考えると、組織の奴らに殺されかけたことも、口封じで説明がつく。
なんということだ。
些細なことに気を取られて、こんな考えるまでもないことを思いつかなかったなんて。
帝国において、貴族殺しは重罪。現代日本の様に少年法などというものは存在しないのだ。
バレたら即刻死刑。
俺を捕まえた貴族が、たまたま前世で見覚えのある悪役の少年時代の姿をしていただけで、危機的な状況であることになんら変化はない。
逃げなければ。
せっかく命が助かったのだ。これを無駄にする道理はない。
俺は、今後の計画の算段を始めた。
すでに読んでくださっている方には申し訳ないですが、大まかな展開に違いははありませんのでご了承ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目の前で、漫画のキャラクターが動いている。
俺は未だ、その衝撃から抜け出せないでいた。
「君、ほんとうに大丈夫かい?ぼんやりしているし、まだ顔色も悪い。少し待ってね、今医者を呼ぶから」
固まったままの俺を尻目に、彼はサイドテーブルにあったベルを鳴らした。
直後、数回のノックが聞こえる。アルトゥールが入室の許可を出すと、執事服を着た初老の男が部屋に入ってきた。
その男はアルトゥールに一礼した後、俺を見て、ああ、目が覚めたのですねと無感動に言う。
「うん。まだ少しぼんやりしているようだから、念のため医者を呼んでくれ。それから、悪いけど僕は今から用事があるから、医者が帰った後は彼の世話を頼めるかい、ローデリック」
執事らしき男の名は、ローデリックというらしかった。
両手に3本線の入った白手袋をはめ、白髪混じりの黒髪をかっちりとオールバックにした彼は、まさに前世の記憶のアニメや漫画に出てくるような執事そのものである。
こんな執事の見本のような人物がいるのかと思うと少し面白かった。
そんな俺の内心を置き去りに、ローデリックは慇懃に礼をする。俺を見る目が少し厳しいが、まあ仕方がないだろう。警戒するのは十二分に理解できる。
「畏まりました」
ローデリックが恭しく頭を下げたのを満足そうに見て、再び俺に向き直った。
「用事が全部済んだら、またここに戻ってくるよ。その時体調が落ち着いてたら、ちゃんと話をしよう」
じゃあね、と俺に微笑みかける。
その美しいかんばせに笑顔が浮かべば、さながら天使のようである。
なぜかついでのように頭を撫でて部屋を出ていった。
それから俺は、あれよあれよという間に執事の連れてきた老年の医者に診られて、メイドに風呂に入れられて、髪を切られた。
色々と混乱していた俺は、ただただされるがままで、全部終わってやっとベットに戻された時、時計を見たら計2時間くらい経っていた。少々ハードスケジュールだったので病み上がりの体には負担だったのか、用の済んだアルトゥールが部屋に戻ってきた時には、俺はくたくただった。
「今戻ったよ。ああ、髪を切ったのか。見違えたようだ」
にこやかに、アルトゥールが俺のいるベットの前の椅子に腰掛ける。
「医師によれば、傷は塞がり切ってはいないものの、命の危機は脱したと。しばらく安静にしていれば大丈夫だろうということです」
後ろに控えていたローデリックが、彼に俺の診断結果を伝えた。
そうかい、それはよかったと、アルトゥールは満足そうに微笑む。
あまりにきらきらしい笑みに、ありもしない後光が差して見えた気がして、思わず目を瞬かせた。
「そうか。痛み止めを処方されたと聞いた。少しでも痛みはひいたかい?」
俺は返事をする代わりに、こくりと頷く。
「よかった。では、君には引き続きゆっくり休んでもらうとして、この話は終わりだ。それとね、後もう一つ話があって、これはどちらかというと僕からのお願いになるんだけど」
アルトゥールは、一瞬俺を見つめた後、再び口を開いた。
「君、僕の執事になってくれないかい?」
「アルトゥール様?!」
それまでただ黙って俺たちのやり取りを聞いていたローデリックが、思わずと言った様に大きな声を上げた。
無理もないことだ。
路地裏で得体の知れない、明らかに訳ありの子供を拾ってきた挙句、しまいには自分の執事になってくれというなどと。
今のアルトゥールは、俺よりも年下だろうが、それでも、背格好からして9歳、10歳と言ったところに見える。
貴族の子供だ、もう色々な教育は受けているだろうし、漫画のアルトゥールから考えても、考えの浅い馬鹿であるとは考えにくい。むしろ、余人よりずっと賢しらであると考えるべき。
こいつは、一体、何を企んでいる?
一度は薄れていた警戒心が、再び湧き上がってきた。
いや、そもそも、一度でも警戒を解いたのが間違いだったのだ。
考えてみれば、今はのこれは、「傷を負った暗殺者が貴族に見つかって邸宅に運び込まれた」という状況だ。
普通に考えればわかることだ。貴族が、そこら辺に転がっている汚い平民の子供をなんの目的もなく助けるはずがない。
きっと、ついにうちの組織がこれまで犯した罪がばれたのだろう。
その情報を吐かせるために、俺を捕まえたのではないか?
さっきの突拍子のない発言は、俺を引き取り生活を保証すると見せかけて、証拠が集まるまで自分の手元に留めおくための策なのでは?
そう考えると、組織の奴らに殺されかけたことも、口封じで説明がつく。
なんということだ。
些細なことに気を取られて、こんな考えるまでもないことを思いつかなかったなんて。
帝国において、貴族殺しは重罪。現代日本の様に少年法などというものは存在しないのだ。
バレたら即刻死刑。
俺を捕まえた貴族が、たまたま前世で見覚えのある悪役の少年時代の姿をしていただけで、危機的な状況であることになんら変化はない。
逃げなければ。
せっかく命が助かったのだ。これを無駄にする道理はない。
俺は、今後の計画の算段を始めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
72時間ワンオペ死した元球児、女神の『ボッタクリ』通販と『絶対破壊不能』のノートPCで異世界最強のコンビニ・スローライフを始める
月神世一
ファンタジー
「剣? 魔法? いいえ、俺の武器は『鈍器になるノートPC』と『時速160kmの剛速球』です」
あらすじ
ブラックコンビニで72時間連続勤務の末、過労死した元甲子園優勝投手・赤木大地。
目覚めた彼を待っていたのは、コタツでソシャゲ三昧のダメ女神・ルチアナだった。
「手違いで死なせちゃった☆ 詫び石代わりにこれあげる」
渡されたのは、地球のAmazonもGoogleも使える『絶対破壊不能』のノートPC。
ただし、購入レートは定価の10倍という超ボッタクリ仕様!?
「ふざけんな! 俺は静かに暮らしたいんだよ!」
ブラック労働はもうこりごり。大地は異世界の緩衝地帯「ポポロ村」で、地球の物資とコンビニ知識、そして「うなる右腕(ジャイロボール)」を武器に、悠々自適なスローライフを目指す!
……はずが、可愛い月兎族の村長を助けたり、腹ペコのエルフ王女を餌付けしたり、気づけば村の英雄に!?
元球児が投げる「紅蓮の魔球」が唸り、女神の「ボッタクリ通販」が世界を変える!
異世界コンビニ・コメディ、開店ガラガラ!
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる