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sideノエル/八年後
玲凛です。
今回投稿した話は、前回投稿した『喪失』を改稿したものです。
なので今回の『sideノエル』は、『独りにしないで』の続きです。
前回書いた『喪失』とは、内容は変わっておりますが、物語の流れ自体は変わっておりません。
もう二度と、こんな分かりにくい事はしませんので、どうか今回だけはご容赦をください!!
あと、六年後ではなく、八年後に変えました!!
本当に申し訳ありません。
ーーーーーー
……飛び降りた。
目の前でアリステアが、三階の窓から飛び降りた。
「あっ……あぁぁぁぁぁぁぁぁ」
その事実にノエルは絶叫し、頽れた。
どうして、どうして?
どうして……こんな事になってしまったのだろう。
大切な親友、セレクは殺されてしまい……その上、アリステアまで死を望んで、窓から飛び降りてしまった。
「あっ……あぁぁぁぁ」
……苦しい、悲しい。
心が……心が壊れてしまいそう。
「ッ……アリステア……」
君まで……君まで、僕の前から消えてしまうの?
……嫌だ、
それだけは、絶対に嫌だ!
「アリステア、君だけは……」
君だけは、例えどんな状態であったとしても……絶対に、僕が……
「助けるッ……」
そう叫ぶと共に、ノエルは涙を吹いて立ち上がると、部屋を出て走り始めた。
……向かう先は、アリステアが落下したと思われる場所。
その場所に向かって、ノエルは血の臭いが充満する廊下を駆けた。
倒れ伏す死体も、血溜まりも……何も怖くなんてない。
ーーアリステアを失ってしまうほうが、怖いのだから。
そう強い思いを抱きながら、走り続け……階段に差し掛かった時だった。
「うわぁッ」
血に足を滑らせたノエルは、階段を転がり落ちてしまった。
「うっ……」
全身を強打して、体中が痛い。
意識が朦朧とする。
……思ったように、動けない。
だけど、だけど立たないと……アリステアの下へ行かないと。
ノエルは霞む意識の中、痛む体を抑えて、立ち上がると、鋭く痛む右足を引き摺りながら、歩いた。
「ア……アリス、テア……」
……何度も、何度も大切な友人の名を呼ぶ。
そうして、ノエルはボロ雑巾の様になりながらも、何とか玄関を通って……無事、屋敷の外へと出ることが出来た。
激しい雨に全身が打たれると同時に思う……もうすぐアリステアの所だ、と。
アリステア、君だけは僕が……
「絶対に……助ける、からね。」
そう掠れる声で、呟いた時だった
ーー近くに、見知らぬ少年がいる事に気付いたのは。
その少年は此方に背を向けた状態で、雨に打たれながら、ゆっくりと門の方へと歩いている。
……誰?
湧き上がる疑問と共に目を凝らして、少年を見つめていたノエルは……彼が誰かを背負っていることに気づいた。
その誰かとは……
ーーぐったりとしているアリステアだった。
「ア……アリス、テア!!」
ノエルは声を絞り出して、名を呼んだのだが……アリステアは意識を失っているのか、死んでいるのか……全く反応が無かった。
しかし、アリステアの事を背負っていた少年には、声が届いたらしく……彼はゆっくりと此方を振り返った。
その少年は、幼いながらも絶世の美貌を持っており、金と銀のオッドアイの瞳が特徴的だった。
歳は十歳程だろうか。
彼は、恐ろしさを感じさせる程、此方を冷ややかな目で見つめてきたのだが、直ぐに再び、前を向いて歩き始めた。
「ま、まって!!」
そう叫び、少年を追いかけようと一歩を踏み出したノエルだったが……既に、体は限界だった。
「ッ……」
雨によって泥濘んだ地面に、体が倒れ……一気に意識が遠くなる。
でも、そんな状態であったとしても、ぼやける視界に映る……大切な友人の姿。
何故……どうして?
何故、僕はこんなにも無力なの?
「あ……ありす……てあ……」
そう霞む声で呟くと同時に、零れる涙。
ああ、悲しい、悔しい……苦しい。
ごめん、アリステア。
「ごめ……ん……ね」
無力で、弱くて何も出来なくて……
ごめん。
そう心の中で呟いたのを最後に、ノエルは意識を失った。
ーー突如として起こった悲劇によって、大切な友人を奪われ、悲しみの底へと突き落とされたノエル。
しかし、悲劇とは連鎖するもので……ノエルは、知らなかった。
謎の少年によって、連れ去られたアリステアが、悲劇によって味わった悲しみと苦しみ……そして、飛び降りた時に負った頭部への外傷によって……
ーー過去の記憶、全てを喪失してしまっている事を。
己が身に起こった悲劇は勿論の事、アイゼアとの記憶もノエルとの記憶も……果ては、自分自身が誰であるのかも全て……
ーーアリステアが、既に忘れてしまっている事を。
§§§§
突如として起こったセーリアス侯爵邸での凄惨な事件は、貴賎問わず人々を震撼させ、恐怖のどん底に陥れた。
故に人々は、この事件の犯人が捕まるのを待ち望んだが……どれだけ力を尽くそうとも、この事件は解決には至らず、犯人も捕まらなかった。
人々は、それに不満を抱きながらも……明瞭にならない犯人像に妄想を掻き立てられ、様々な噂を立てた。
そして、その事件以外にも……
ーー惨劇から逃れながらも、何者かによって拐かされてしまった侯爵家の令息アリステア・メル・セーリアスの事についても話題に上がっていた。
アリステアの生死は、はっきりとしていなかったが、彼は国の総力を上げて、徹底的に捜索された。
しかし、見つからなかった。
そんな拐かされてしまった、生死の分からない令息についても……人々は面白おかしく噂した。
しかし、そんな人々の興味も年月が経る事に、徐々に薄れていき……
遂に、あの事件から八年が経ったーー
§§§§
此処は、とある僻地に存在する『神隠しの森』
……子供がよく、行方不明になる事からそう名付けられたこの森は、人々から恐れられており、誰も近づかないのだが……
二年ほど前から、突如としてこの森を出入りするようになった一人の少年がいたーー
小鳥の囀りと風に揺れる木々の騒めきが辺りに響き、木漏れ日が柔らかく差し込む。
そんな美しく幻想的な空間に、一人の少年がいた。
……神秘的な紫の瞳に、恐ろしい程整った造形。
そんな常人離れした美貌を持つ少年は、肩まである黒髪を揺らしながら、優しい眼差しで咲き誇る花々を見ていた。
赤や紫、橙に黄など……この森に咲いている全ての花は、どれも美しい。
その中でも、特に……
「私は、この花が好きだな……」
そう言うと、少年は屈んで、己の直ぐ傍に咲いていた花に触れた。
小さいが、深い青がとても美しい、この花の名前は……
「アリ……「こんな所にいたんだね……リオ。」
そう言葉を遮り、後ろから聞こえてきた青年の声に、リオと呼ばれた少年は振り返ると微笑んだ。
「リュカ!」
そう弾む声で、リオは青年の名を呼ぶと、立ち上がった……その時、
ーー小さな青い花『アリステア・エクロニー』が哀しげに揺れた。
今回投稿した話は、前回投稿した『喪失』を改稿したものです。
なので今回の『sideノエル』は、『独りにしないで』の続きです。
前回書いた『喪失』とは、内容は変わっておりますが、物語の流れ自体は変わっておりません。
もう二度と、こんな分かりにくい事はしませんので、どうか今回だけはご容赦をください!!
あと、六年後ではなく、八年後に変えました!!
本当に申し訳ありません。
ーーーーーー
……飛び降りた。
目の前でアリステアが、三階の窓から飛び降りた。
「あっ……あぁぁぁぁぁぁぁぁ」
その事実にノエルは絶叫し、頽れた。
どうして、どうして?
どうして……こんな事になってしまったのだろう。
大切な親友、セレクは殺されてしまい……その上、アリステアまで死を望んで、窓から飛び降りてしまった。
「あっ……あぁぁぁぁ」
……苦しい、悲しい。
心が……心が壊れてしまいそう。
「ッ……アリステア……」
君まで……君まで、僕の前から消えてしまうの?
……嫌だ、
それだけは、絶対に嫌だ!
「アリステア、君だけは……」
君だけは、例えどんな状態であったとしても……絶対に、僕が……
「助けるッ……」
そう叫ぶと共に、ノエルは涙を吹いて立ち上がると、部屋を出て走り始めた。
……向かう先は、アリステアが落下したと思われる場所。
その場所に向かって、ノエルは血の臭いが充満する廊下を駆けた。
倒れ伏す死体も、血溜まりも……何も怖くなんてない。
ーーアリステアを失ってしまうほうが、怖いのだから。
そう強い思いを抱きながら、走り続け……階段に差し掛かった時だった。
「うわぁッ」
血に足を滑らせたノエルは、階段を転がり落ちてしまった。
「うっ……」
全身を強打して、体中が痛い。
意識が朦朧とする。
……思ったように、動けない。
だけど、だけど立たないと……アリステアの下へ行かないと。
ノエルは霞む意識の中、痛む体を抑えて、立ち上がると、鋭く痛む右足を引き摺りながら、歩いた。
「ア……アリス、テア……」
……何度も、何度も大切な友人の名を呼ぶ。
そうして、ノエルはボロ雑巾の様になりながらも、何とか玄関を通って……無事、屋敷の外へと出ることが出来た。
激しい雨に全身が打たれると同時に思う……もうすぐアリステアの所だ、と。
アリステア、君だけは僕が……
「絶対に……助ける、からね。」
そう掠れる声で、呟いた時だった
ーー近くに、見知らぬ少年がいる事に気付いたのは。
その少年は此方に背を向けた状態で、雨に打たれながら、ゆっくりと門の方へと歩いている。
……誰?
湧き上がる疑問と共に目を凝らして、少年を見つめていたノエルは……彼が誰かを背負っていることに気づいた。
その誰かとは……
ーーぐったりとしているアリステアだった。
「ア……アリス、テア!!」
ノエルは声を絞り出して、名を呼んだのだが……アリステアは意識を失っているのか、死んでいるのか……全く反応が無かった。
しかし、アリステアの事を背負っていた少年には、声が届いたらしく……彼はゆっくりと此方を振り返った。
その少年は、幼いながらも絶世の美貌を持っており、金と銀のオッドアイの瞳が特徴的だった。
歳は十歳程だろうか。
彼は、恐ろしさを感じさせる程、此方を冷ややかな目で見つめてきたのだが、直ぐに再び、前を向いて歩き始めた。
「ま、まって!!」
そう叫び、少年を追いかけようと一歩を踏み出したノエルだったが……既に、体は限界だった。
「ッ……」
雨によって泥濘んだ地面に、体が倒れ……一気に意識が遠くなる。
でも、そんな状態であったとしても、ぼやける視界に映る……大切な友人の姿。
何故……どうして?
何故、僕はこんなにも無力なの?
「あ……ありす……てあ……」
そう霞む声で呟くと同時に、零れる涙。
ああ、悲しい、悔しい……苦しい。
ごめん、アリステア。
「ごめ……ん……ね」
無力で、弱くて何も出来なくて……
ごめん。
そう心の中で呟いたのを最後に、ノエルは意識を失った。
ーー突如として起こった悲劇によって、大切な友人を奪われ、悲しみの底へと突き落とされたノエル。
しかし、悲劇とは連鎖するもので……ノエルは、知らなかった。
謎の少年によって、連れ去られたアリステアが、悲劇によって味わった悲しみと苦しみ……そして、飛び降りた時に負った頭部への外傷によって……
ーー過去の記憶、全てを喪失してしまっている事を。
己が身に起こった悲劇は勿論の事、アイゼアとの記憶もノエルとの記憶も……果ては、自分自身が誰であるのかも全て……
ーーアリステアが、既に忘れてしまっている事を。
§§§§
突如として起こったセーリアス侯爵邸での凄惨な事件は、貴賎問わず人々を震撼させ、恐怖のどん底に陥れた。
故に人々は、この事件の犯人が捕まるのを待ち望んだが……どれだけ力を尽くそうとも、この事件は解決には至らず、犯人も捕まらなかった。
人々は、それに不満を抱きながらも……明瞭にならない犯人像に妄想を掻き立てられ、様々な噂を立てた。
そして、その事件以外にも……
ーー惨劇から逃れながらも、何者かによって拐かされてしまった侯爵家の令息アリステア・メル・セーリアスの事についても話題に上がっていた。
アリステアの生死は、はっきりとしていなかったが、彼は国の総力を上げて、徹底的に捜索された。
しかし、見つからなかった。
そんな拐かされてしまった、生死の分からない令息についても……人々は面白おかしく噂した。
しかし、そんな人々の興味も年月が経る事に、徐々に薄れていき……
遂に、あの事件から八年が経ったーー
§§§§
此処は、とある僻地に存在する『神隠しの森』
……子供がよく、行方不明になる事からそう名付けられたこの森は、人々から恐れられており、誰も近づかないのだが……
二年ほど前から、突如としてこの森を出入りするようになった一人の少年がいたーー
小鳥の囀りと風に揺れる木々の騒めきが辺りに響き、木漏れ日が柔らかく差し込む。
そんな美しく幻想的な空間に、一人の少年がいた。
……神秘的な紫の瞳に、恐ろしい程整った造形。
そんな常人離れした美貌を持つ少年は、肩まである黒髪を揺らしながら、優しい眼差しで咲き誇る花々を見ていた。
赤や紫、橙に黄など……この森に咲いている全ての花は、どれも美しい。
その中でも、特に……
「私は、この花が好きだな……」
そう言うと、少年は屈んで、己の直ぐ傍に咲いていた花に触れた。
小さいが、深い青がとても美しい、この花の名前は……
「アリ……「こんな所にいたんだね……リオ。」
そう言葉を遮り、後ろから聞こえてきた青年の声に、リオと呼ばれた少年は振り返ると微笑んだ。
「リュカ!」
そう弾む声で、リオは青年の名を呼ぶと、立ち上がった……その時、
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