ジミ編

Raymond

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ジミ編

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「ねね、君って名前なんだっけ?編集者なんだって?かっこいいよねぇ」

(誰だ!職業をバラしたやつ…)

「あ、そんなかっこいい仕事じゃないですよ、実際はすごくジミなんですから」

「撮影とかやっぱモデルさんもか来るの?誰に会ったことあるの?」

「ははぁ…モデルさんはあんまり、わたしオフィスでしかまだ仕事してなくて」

だから合コンなんて嫌だったの、30手前になって独身非モテだけど、わたしにはわたしのタイミングっていうのもあるし、だいたい仕事の話すると大抵の男はひくんだから。へんな嘘ばっかつく羽目になるし、もー帰りたい~

大学時代の友人の強引な合コンセッティングにあってわたしは六本木にいた。

まだ、電線新聞とか月刊寿司とかの方がネタになる、私の仕事はマニアック中のマニアック、ニワカが泣き出す本物のオタ職だから…


「靖子さーんエンジン開発遅れで撮影あさってからだって、イラストのスケジュール調整お願いね。」

「やすこっち、翻訳出きてるよ、トラドスよろしく!」

「ほーい、オッケー」

翻訳をトラドスにかけていると隣の席の吉川君が目を覚ました。

「高峰さん、今何時?」

「またネトゲ?もうさ2じまわってるし、これからC社のDRでわたしは出かけるよ、そろそろ起きてよ、カバーしきれないし」

吉川君はネトゲ廃人、でも頼れるインハウスエンジニア、困った事は魔法のように解決してくれる。わたしの可愛い可愛い後輩。

世の中には誰にも愛されない書物がある、わたしはそれの編集者。
元々はファッション雑誌の編集者になりたかったけど、入社4年目これでよかったと実感してる。

家電製品を買えば付いてくるあの取扱説明書を作っているプロダクションに入社したのには深い訳はない、ただ「編集者」っていうステータスが欲しかっただけ。
でもいまは天職だと思ってるし毎日トラブル続きのアクション映画のような仕事が大好き。

理解される事はまぁ、ないけどね。

初めてからわかったけれど、わたしはオタクでメカフェチだった、学生時代はオシャレで新しもの好きのミーハー、流行ってると聞けば行列も苦にならないようなかるーい学生だったけど、それは今考えればみんながそうしていたから真似てただけかもしれない。

就活で数ある出版社の面接に落ちまくり、もう「電線新聞」でも「月刊かかし」でも構わないから編集者になりたいと志を下げていた時に拾ってもらった。
今考えれば、名だたる出版社の面接官もわたしを拾ったいまの会社の面接官も人を見る目があったってわけよね。
働くことがこんなに楽しいなんて思ってもみなかったもん。

ただ、憧れの出版社生活がピンク色のひらひらだとすると、ここは油にまみれた生成りの厚手って感じだけども。

「やーすこーさん!DRいくよー、社長がくるまだすって!」

「ほほーい、今行きますて。また谷崎さんいるかねぇ?」

「相変わらず枯れ専エンジニア好きだよなぁ、嫁にいけんよ」

社長、それは事実です。
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